2021年10月22日

 

新型コロナウイルス情報発信ページの立ち上げについて

忘れもしない2011年3月、東日本の大震災と福島原子力発電所の事故、この日本を揺るがした事故を受けて、日本のみならず世界中に衝撃が走りました。

毎日のように集まって議論をした日々、分野の異なる科学者も学生も主婦も、みんなで議論をしました。こういう時は、うわさが乱れ飛び、市民も極端に対立したまま、意見が平行線になるので、世論もいろいろと極端な意見の対立になってしまいます。
そして次第に、これは科学者の意見が極端に異なっているために起こっていることではないか、分野も価値観も異なる科学者の間であっても、客観的な事実は事実、そこが違うはずはないではないか、どうして科学的知見を共有できないのか、それを痛感したのでした。

私たちは立場か違っても、科学的に正しいことをしっかり伝えることが必要だ、そういうところから自らも情報を発信しようと、東日本大震災情報発信ページを立ち上げました。

当時、連日のように集まっては議論をしたことを思い出します。ちょうど、JST(科学技術振興機構)で「科学のウソを暴く」という市民講座企画が決まっていたのですが、急遽JSTに願い出て、「東日本大震災をめぐる問題」にテーマを変えていただき、活動が動いたのでした。

そして、今度はこの新型コロナ危機に遭遇したのです。同じ危機でも様相は異なっていました。多くの人は、この2つの危機を比較して同じことが起こっていると言いますが、そうでしょうか?
このことは別に論じるとして、当法人あいんしゅたいんも情報発信を始めることになりました。

既に、医療関係者は、初期から専門家として情報発信をされ、ノーベル賞受賞、山中先生、本庶先生も揃って様々な情報発信を始めておられます。専門家のこのような一致した動きも大きく世間をリードしています。ここで、いくつかの視点から、この動きに見習ってサイト内にコロナウイルス問題の情報発信ページを立ち上げることにしました。


<市民と科学者のCOVID-19コミュニケーションネットワーク(通称:CASコロナネット)プロジェクト>

1.CASコロナネット情報発信を始めるにあたって

このプロジェクトは、市民と科学者が一緒に調べ、議論することから生まれました。思い起こせば、2020年1月20日クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス(DP)から、私たちはコロナウイルス感染症(COVID-19)を身近に知りました。それまでは、海外のニュースを聞く限り「インフルエンザと似たようなもの」という受け取り方だったと思います。

その後徐々に感染が広がり人々の危機感が増していった頃、NPO法人あいんしゅたいんのメーリングリストに、市民の艸場さんから新型コロナ感染問題が提起されました。

あいんしゅたいんでは、これまでも学術会議の問題やトリチウム水の問題はじめ、社会をにぎわすさまざまな科学の問題をメーリングリストで議論していました。このメーリングリストは、科学者と市民が遠慮なく議論してどんな質問もみんなで受け止める場です。かつて朝永振一郎博士が開いておられた「愚問の会」のように、素人もプロでも対等に議論し合う場です。分からないことは分からないと遠慮なく言い、間違うことを恐れない湯川秀樹博士の伝統を受け継ぐ物理屋が始めたグループなので、遠慮はいりません。

非常にオープンな場なので、いつの間にかさまざまな専門家や見識のある著名なジャーナリストの方も参加してきます。ときには海外在住の方々も一緒に議論することもあります。専門家も市民も同じ目線で話し合う習慣がついていて、学者の先生も「さん」づけで呼び合いながら、ユニークな場として議論を続けてきました。

新型コロナ感染症についても、自由に疑問をぶつけ、分かるまで食いつき、海外や国内の資料を紹介しながら議論が続きました。「疫学の分野は伝統があり、基礎となる方程式SIRモデルというのがある」という話を聞いたのもこの頃で、全国のあちこちの物理屋さんが、この結構シンプルなモデルを改良したり計算したりし始めました。

新型コロナは初めて人類が経験するウイルスです。特に、無症状の感染者が多く存在することや、この無症状感染者を含め免疫を持っている人がかなりいそうなこと、また感染症によるリスクは年齢依存性や地域依存性があり、アジア特に日本では初期の段階ではリスクが少ないことがわかってファクターXとかダークマターなどと言われて奇跡的に難を逃れていたことも不思議な現象の1つでした。また年齢依存性が大きく高齢者のほうが大変だということも分かってきて、症状が出始めると突如呼吸困難に陥り急速に危機状態になることも特徴でした。

新型コロナは、2011年の福島原発事故のときに放射線の生体影響の議論が沸騰したときとは違い、医療に関する限り医者も研究者もそれほど意見が異なることはなく、感染予防の原則である迅速性と透明性が貫かれていると思われました。

一方、あいんしゅたいんのメーリングリストでは、当初から感染状況の変化を分析される方もいれば、死亡率のリスクを観察し続ける方、また日本の政治的社会的状況における専門家組織の発言やあり方について提案や意見を述べる方など、議論と考察が広がっていきました。さらに、あいんしゅたいんにいる物理屋は、疫学の伝統的なシミュレーションだけで満足しないので、新型コロナについていろいろな要素を取り込んでモデルを改良していましたので、そうした状況、特にイギリスの伝統的疫学に代わる新しい方法論を用いた結果などや、SIRモデルの専門家西浦勉強会に提出した質問を「コロナウイルス情報発信ページ」で報告したように、感染症の専門家の情報をお伝えする程度でした。

しかし、徐々に、世論が分裂してきました。いくつかの例を示しますと、

1.2020年事態の深刻さがまし、初めて安倍首相が「緊急事態宣言」を発したのは4月7日でした。そして徐々に「無症状感染者の存在」が議論の的となっていきました。国内の感染状況の分析には必要不可欠な陽性率という指標を知るにはPCR検査の拡充が必要ではないか、という議論と、ベイズ統計を用いて「擬陽性が多く出るからまずい」といった主張もありメーリングリスト上でも意見が割れていました。当時私は、この意見に対して、「ベイズ統計という言葉に騙されてはいけない。子供でも分かる話だ」と思って不可解なものを感じていました。また、当時、本庶先生が「敵を知らずして戦えない」と言われ、山中先生が「大学に応援を求めれば検査を充実できる」という提案がある一方、メーリングリストの仲間たちの内、どちらかというと専門に近い仲間の中では、(日本疫学会あるいは日本感染症学会のどちらか?今探しても見つからないのはなぜでしょうか?)の声明文を紹介して否定的な意見も出され、PCR検査をむやみに増やすのは問題と主張される方が多く、「むやみ」という意味がよくわからないまま、意見は一致しませんでした。しかし、政府発表も学会の声明と歩調を合わせたように尾身発言で「なぜPCR検査を増やせないか」の理由を5つほど上げられました。その中には保健所の容量の問題など、社会的な理由が多く、「科学者は科学的見地に立って必要性を説くべき」と力説したことを覚えています。これ以後未だPCRの問題の決着はついていませんが、海外では徹底的にPCR検査を増やしている事例も多く見られます。(余談ですが、放射線量を知りたい市民が増えた頃、科学者は簡単に測れる放射線測定器がどんどん開発し、今では福島では子供も含めてほぼ皆さん放射線測定器ができるようになりました。ウイルス量測定もそのうち温度計やせいぜいパルスオキシメーター程度の手軽さで測定できるキットが開発されるのではと思いますが、どう思いますか。科学技術の進歩は、速いのですよ。)

2.感染者予測が、海外の情報も加味した誤差付きの計算ではなく、ある仮定を置いた結果であるのに、そのことが十分伝わらない発表が多かったのです。わがメーリングリスト上ではSIRのモデルに基づいて計算する人、もっと簡単な形で予測する人など、焦点は初期から「無症状者の存在」をどう取り入れるか、ある政策を取ったときその影響がいつどのように表れるか、という問題の議論が多かったと思います。簡易計算をごく初期から粘り強く続けていたのは松田慎三郎さんで、週刊ニュースのように、エクセルを使って、東京、大阪、日本全体、そして世界各国の感染者の分析を報告されていました。私自身は、この計算は、従来伝統的に定着していたSIRモデルにとりこめるはずで、ビッグデータを処理する能力も十分にあるプロが当然やっているのではと思っていたのです。しかし、このエクセルモデルの予測が結構他の予測より現実を再現に合致したので、SIRを改良して計算を試みていた土岐さんたちもすごいといいだし、仲間が徐々に注目し始めました。当初から粘り強く各国のデータと比較しつつ、「隠れ感染者」の存在を取り入れるのが特徴だったのですが、専門家もこれぐらい取り入れているのに、よく粘り強くやられるなあ、という思いで見ていました。特に最近、ワクチン効果で、免疫保持者が増えてきたことも手伝って仲間の殆どがこのエクセルモデルに注目するようになり、最近ではワクチン効果も入れて重要な予測をされていることにかんがみ、わがHPで情報発信することになりました。特にSIR に隠れ感染者、隠れ免疫保持者を取り入れるのはなかなか難しく、四苦八苦していた土岐さん、感染予測の必要性を痛感している加藤さんや出口さんが、この情報発信をのぞまれておりました。しかし、私は「疫学のプロがたくさんいるのにこういう効果を取り入れてないはずはない。やはりSIR でも同じことが出せるはずだから、対応関係を明確にしてほしい」と粘りました。山崎さんと私と土岐さん、この3人は、物理屋!物理屋というのは、こんな時徹底的にわかるまで粘って議論するのです。Zoomでの議論は夜中まで続いて、みんなあきれて「どうぞこころゆくまで議論してください」と言って任されてしまいました。山崎さんはお風呂にも入っていなかったそうで、申し訳ない限りでした。そうしてようやく、土岐さんがSIR との対応関係式を明確に出されたのを理解するところまで来ました。では、一体なぜエクセルモデルが取り入れている効果を他のプロたちがやっていないのでしょうか?それが最後の私の抵抗でした。最近になって、西浦先生もこの効果を考慮し始めておられ、エクセルモデルでのパラメター(無症状者数の割合)を当初から粘り強く検討していたおかげかなと思ったりしています。無症状の割合を掛け算で入れるのか、足し算で入れるのかの違いとしか思えず、正直なところ、それがどう計算の複雑さに影響するのかはまだ理解していません。おそらく手を動かしていないで想像しているだけではわからないのだと思います。このあたり、私は仲間の皆さんの意見を尊重し、簡易にできる計算ということと、少なくとも様々なデータをここ1年半、粘り強く解析し、かなり現実に近いパラメターを得られたところがすごいのだと思っています。

ただ、このことがプロにもわかってもらえるかどうかは、これからいろいろと議論を投げかけてみて、ご判断願うということになると思います。ビッグデータを楽々と処理できるコンピュータ環境の整備された現代、多少複雑でもシミュレーションできないはずはないので、専門家の中では無症状者やそこから派生する免疫保持者を取り入れた計算を行っているプロがいないとは思えませんが、少なくとも我々の仲間の中では、予測を示し即刻状況を知らせることができるエクセルモデルの結果がわかりやすく、この情報を皆様と共有したいと願った次第です。特に、当面の動きは結構ワクチン接種率と感染抑制とのせめぎ合いになるので、ワクチン効果と免疫保持者の予測に加え、無症状感染者からの「隠れ免疫者」の考察が取り入れられることの重要性を考えて、予測しながら検討することがとても重要だという認識に基づいてお届けする次第です。

詳しくは土岐さんの解説を見ていただくといいのですが、こうした専門外科学者の粘り強さともいえるかもしれません。この点は今後、ぜひプロの方々との議論を詰める必要があるかと思います。ただ、私の言いたいのは、プロの方々が、異分野交流を通じて、新たな視点や方法論を馬鹿にしないで受け止めて議論できるシステム、異分野からの意見も評価できるような姿勢が専門家会議の中にあるといいなと心から願っています。

3.日本でワクチン接種が始まったのは2月17日、まずは医療従事者への先行接種、そして、3月から本格的にワクチン接種が始まり、ワクチン接種後の副反応について、様々な不安の声が巷でささやかれ始めました。友人からも「若い医者の死亡例も出てきました」というメールが入ってくるようになり、厚生労働省は,ワクチン接種後,数日で亡くなった例を挙げています。厚労省のホームページです。

「厚生労働省は,余程明解な事例が出てこない限り,認めないと思います。イスラエルや米国の報告の方がマシですから添付します。」との声もありました。調べてみると100件程度の殆どが「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」とあって参考になりません。むしろ海外の調査の方がしっかり原因を追究していました。「まあ、100万人に数人程度だから、しょうがないな」とあきらめていたところ、メールの仲間は、山崎さんを中心に、中でも最も深刻な死亡者について、議論が噴出し、いろいろと原因についての調査の情報がメール上で紹介されました。わたしはあきらめていたことを恥ずかしく思いました。真実を明らかにするには、粘り強く正しい情報をつかむために努力する、たとえ、今それがすぐ何らかの大きな問題を巻き起こすことがなくても、その時に正確な情報をきちんと残していく、これが大切なのですね。

山崎さんは、当初から、コロナ禍の中で最も明確で深刻な死亡例を調べておられました。感染者は無症状者がどれだけかがわからないのですが、死亡者は明確にわかるということでした。それでも「超過死亡」との関係も必要で、これも2020年5月ごろから山崎さんがずっと調査を開始しておられ、1000件以上のメールのやり取りが行われていました。特に死亡率は年齢依存が大きいことも明確でした。ワクチン接種後の最も深刻な死亡率に着目して分析をされ始めたのが、このワクチン接種後の死亡事例との比較だったのは当然の山崎さんの論理過程ですね。ワクチン接種後の死亡例についても、1000件を超える仲間とのやり取りが活発に行われました。それが今回報告する山崎論考です。

年齢別に感染により死亡例とワクチン接種による死亡例との比較をされたのは、まさに科学的先見性の表れです。これは情報発信価値のある論文にしてほしい情報です。流石! 年齢依存性を問題にしたのは、私自身も以前から直感的にすごいと思っていたのですが、それが市民と一緒の仲間の中で議論したことが大きくかかわっているなということも事実です。

最近やっと専門科学者たちもその問題の議論を始めたようで、Natureに結構長い解説があります。勿論、これまでの年齢によって感染病のリスクが異なることは、いろいろな形で調べられており、その原因究明にもいくつかの論が出ております。しかし、昔のファクターXとかダークマターとか言った不思議なコロナ⒆の特徴が議論されましたが、それと同時に「なぜ子供がかかりにくいか」も、昨今の若者に感染が広がる中で、問題にし始める専門家が増えてきたのでしょう・ACE2レセプターが子供は少ないのでウイルスが同じだけ入ってきても細胞が受け付けないとか、いろいろな考察などが紹介されています。また、今後現れる変異株がどうなるかも未知ですが、1つの論点であることは確かですね。山崎さんの視点はこの線からいうとかなり早くから年齢依存性について問題意識があり、それをワクチン接種に結び付けたという意味で、さすが!とその目の付け所に感銘を受けています。

初めてのワクチンで、未知のことが沢山あることは当たり前です。遅れて始まった日本ですから海外の事例もしっかり把握しながら、手間がかかってもしっかり把握する事こそ、今必要なことですよね。それを「個別の症例の検討もするが、副反応の全体の傾向をモニタリングし、それを元に接種を継続する等の方向性を考えるのがワクチン分科会副反応検討部会の目的」だという形で科学的なエビデンスを正確に把握することを放棄しているのでは、専門家の仕事としては非常にまずいですね。科学的事実の確認とはそんな表面的な実用主義だけでは、国の将来が思いやられます。それでは、将来に禍根を残します。

科学に基づく感染者(特に無症状感染者)の状況把握や、ワクチン接種後に起こる症状や死亡件数などの厳密な検討も、日本では明らかにされていません。肝心の情報をしっかり把握し、世界での研究の先端を押さえておられるブログや解説もあるのに、それと公的な情報が連携していないのです。「日本中の優れた専門家の意見が届いていないのでは」、「新型コロナウイルス対策を議論する基本的対処方針分科会を担当するプロたちが、専門家としてのやるべきことを自覚されているのかな」、といった疑念を抱くようになりました。後遺症の情報、ワクチン接種後の症状、など、海外の新聞や雑誌にある豊富な情報をつかんでいる科学者もたくさんいますが、こうした専門家の諮問機関、基本的対処方針分科会、や新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード、あるいは新型コロナウイルス感染症対策分科会などにそうしたベテランをもっと起用したらいいのにと思います。ともかく、真実をしっかり把握し、祖⇒削除透明性をもって市民に伝えなければ、市民はよけい不安を募らせるのです。その上に立った施策なら市民は頑張って受け入れるのです。

そこで、私どものグループの中で活発に議論され、これからの在り方に大変重要な情報を、今伝える必要があるのではという機運が高まり、この度、あいんしゅたいん理事会で皆さんに諮り、新たに、「2021年秋:コロナ情報」をHPに掲載するという形で情報を発信することになりました。

すでに多くの解説や情報が飛び交っていますので、ここでは、それとは異なり、今欠けている大切な情報と議論されていない論点をお知らせし皆様と共有したいと思っております。その最初の試みとして2つの点について、科学的な事実のみに基づいたしっかりした情報をお届けすること、その中で、日本の検討事項として最も欠けているのではと思われる点を皆さんにお伝えし、重ねて行政の方々にぜひ、今後のために資料を充実させていただくようにという思いを込めて、この度情報発信することになりました。

こうして、このたびCASコロナネットのページを掲載し情報を発信することになりましたが、初めて経験する感染症でありウイルスも変異するため、情勢は時々刻々変わっていきます。あいんしゅたいんでは、正確な情報を確認する作業をみんなの手で行っており、市民と科学者が一緒になって評価しながら情報をまとめているため、発信の時期がずれて最新情報が入ってない場合もあります。重要な情報はできるだけアップ前にフォローしますが、記事の作成日を明示して、追加事項をできるだけ「Note added in proof(点検後の追加事項)」という形で紹介するつもりですが、誤解のないように原稿完成の日程を入れておくこととしたいと思います。

これを読まれてご意見をお持ちの方は、ぜひコメントやご意見を発信していただき、それを基に、議論を煮詰め情報を更新していきたいと思います。読まれた皆様、どうかご意見をお寄せ下さるようお願い申し上げます。沢山の方のご意見と知恵を集めていくことこそ、偏見や思い違いを克服し、正しい情報を得て、自ら考える素材とできるのだと思います。

2021年9月12日 坂東昌子(NPO法人あいんしゅたいん理事長)

2.感染症対策で大切なこと

人々の恐怖を和らげ・不安を減らす:感染症対策で最重要の事

2019年末に中国湖北省武漢で発生し、2020年に世界に広がった新型コロナウイルス感染症。専門家を含めて誰もその出現を予測できなかった。コロナウイルスで起こる重症の肺炎は21世紀になってSARS、MERSと既に2回出現しているが、その経験が一部役立ったけれども、それらとは全く違う戦いにくい側面を持った困難な感染症であった。

最大の問題点は、約60%の患者が無症状者から感染している事であった(米国のデータ、CDC)。どこに患者がいて、感染を避けるために何に注意すべきか、目に見えない恐怖・不安を皆が抱いた。世界に広がりパンデミックとなった背景は、人、物の大量迅速な移動であったが、それに加えて情報の世界拡散が一瞬にして起こり、世界同時不安に陥った。

感染症対策で重要なことは、技術的には早期対策(検疫・隔離や行動自粛)、早期診断(PCR検査、抗原検査)、早期治療(抗ウイルス薬、抗炎症薬、呼吸機能維持)であるが、無症状者からの感染があることから対策は困難を極めた。しかし、10か月と言う歴史上例を見ない短期間での遺伝子技術を使ったワクチンの開発・実用化で、収束の先行きが見えてきた。それで安堵しかけたのもつかの間、δ(デルタ)株などの変異株が出現して収束が甘くないことを知らされて、不安は未だに続いている。ワクチンの副反応も既存のワクチンよりもはるかに多かった。

未知の病原体に対する理解や治療技術とその提供システムが十分ではないことが引き起こす恐怖感・不安感が人々の日常生活に影響を与えている。情報の開示が遅れたり、隠されたり、相反する解説や予想が流されたりするのが不安をより増幅する原因である。恐怖や不安を乗り越える唯一の道は、正確な情報の迅速な発信である。

進行中の感染症において100%完全な情報はどこにもなく、また、データは刻々と変化して行く。その中にあって、正確な情報がどこにあるのか、またなぜ皆が疑問に思っている事に対して十分に応えられていないのか? これらが誰しも感じる情報発信の現状への疑問である。その中にあってメディアがほとんど取り上げていないが、実は重要と思われることをデータに基づいて発信して行こうというこのブログの果たす意義は大きいと期待される。

このブログが人々の恐怖を和らげ・不安を減らす一助になることを切に祈っている。

2021年9月14日 加藤茂孝(ウイルス学者)

3.議論した仲間たちの声

● 私が学び、共感した「あいんしゅたいん」のスタンス 艸場〈くさば〉よしみ(編集者)

2020年の春、新型コロナ感染者が日本でも増え始め、分からないことだらけの感染症に心配が募ってきました。このとき厚労省のホームページには、たしか都道府県別に陽性者のデータが載っていましたが、どうも整合性が見えません。

そこで専門家の考えを聞こうと、前から関わっている「NPOあいんしゅたいん」のML(メーリングリスト)に質問を投げかけました。このMLは物理と生物を中心にさまざまな専門の科学者が集い、いつもオープンで忌憚のない議論が繰り広げられています。新型コロナについても何らかのレスポンスを期待しました。

すぐに意見が届きはじめました。さらに物理の人は手に入るデータで分析と解析に取り組み始め、生物の人は感染や免疫の仕組みを解説し、また自分の専門で分からないことは知り合いの専門家に聞き、世界中の論文を紹介し合いながら議論が広がっていきました。

その後も、PCR検査のことが気になれば尋ね、ワクチンのことが気になれば尋ね、そのたびに議論を繰り返しています。

5年前、「あいんしゅたいん」に集まる科学者と『放射線必須データ32』という本を刊行しました。4千~5千通にも及ぶメールのやり取りと、何十回にもなる長時間の生の議論を繰り返して、完成させた本です。

この本では、科学的な事柄について「根拠を元に分析・解析する。今どこまで分かっていてどこから分かっていないかを明確にする」という態度を貫きました。この本作りを通して私が学び、共感した「あいんしゅたいん」のスタンスは、

・根拠を元に論じる。
・自分の好みやイデオロギーを補強するためではなく、事実を知るために根拠となるデータを集め、解析する。
・公共に貢献するために分析・解析・考察し、社会に提案する。

ということでした。

私も含め「あいんしゅたいん」に集う者は、これらが常に貫けているわけではありません。しかし何とかふんばろうとしています。揺れれば互いに牽制しチェックし合います。今後もそうでありたいと思っています。

これからスタートする新型コロナの情報発信でも、このスタンスで行われることを期待しますし、私は市民の立場から多少なりとも役立てればと思っています。

● 「初めてであるがゆえに分からないこと、そして生じる不安」にどう向き合うか 土田理恵子

新型コロナウイルス感染症が流行し、欧米では死者が多く出てロックダウンが続く状況で、日本でも先行きが見えず自粛要請が続く中、感染への不安を感じる日々を過ごしていました。そんな時、zoomでの新型コロナ勉強会にお声掛けいただき、新型コロナに向き合ってみようという気力が湧いてきました。

ウイルスやワクチンをご専門にされてきた先生の天然痘やポリオワクチン等に関するお話は分かりやすく、豊富な知識・ご経験から尽きない話題をお伺いするのは、新しいことを知る充実した時間でした。前の回で話題になった新型コロナに関わる様々な疑問にかかわる事柄の解説をしていただき、新たな疑問を出し合い、毎回2時間3時間があっという間に過ぎてゆきました。

mlにはzoomには参加されていない方も多く参加されていて、ワクチン、PCR検査、抗体価など新型コロナに関する実に様々な情報が寄せられています。

今回、HPにアップされるご論考は、それぞれご自身の視点でずっと新型コロナの流行を追ってこられた方の今の時点でのまとめです。データを集め根気強く更新され、データの足りない中で工夫されるご様子を拝見して、初めて出合った分からないことに向き合う姿勢を学ばせていただいたように思います。

ネットなどの記事を鵜吞みにせずに、自分でまずは、できるだけ元の情報を調べてみようという気になり、厚労省のHPや海外の同様の機関のHPを検索して時間が過ぎていくこともありました。自分が知るだけでなく、調べたことをmlに載せれば、読んでくださる方がいると思うと、手間を惜しまずにやってみようという気持ちになりました。そして、そのように調べたことをさらに深堀された結果をお伺いすることもありました。

新型コロナ勉強会は、自分の興味のためだけでなく社会のために、ご多忙な中、この会に時間を使って下さる方々によって成り立っています。次の回の内容を設定してくださる方、zoomの会議室をご用意してくださる方、質問を投げかけられる方・質問にご回答くださる方、mlに専門的な情報をご紹介下さる方、ご経験を語ってくださる方、講師をご紹介して下さる方、等々が、いらして続いています。このような開かれた学びの場の存在は大変貴重であると思います。そして、情報や知識を得るだけでなく、社会に対する前向きな姿勢から得ているものの大きさも感じています。

最後に、この場を借りて、日々、新型コロナウイルス感染症の現場でご尽力くださっている方々への感謝をお伝えしたいと存じます。

● 私が「あいんしゅたいん」に参加した“理由(わけ)” 出口忠夫

「あいんしゅたいん」に参加するようになったのは松田慎三郎さんに紹介されたのがきっかけです。参加と言ってもまだ1年にも満たない新参者で、多士済々の方々に囲まれてかなりプレッシャーもあります。それでも、この会に参加し続けられるのは、主宰の坂東昌子さんが飾らない、とっても包容力のある方であることが一番なのですが、他に「専門家だけでなく市民も参加できる場であること」そして「女性の方の参加が多いこと」の2つがあるからです。

1つめの「専門性が無くても市民も参加できる」は私自身の経験上最も大事なことだと思っています。恥ずかしながら以下に私の経験を記します。40年近く会社人間を貫き、地元を(家庭も)全く顧みなかった身として罪滅ぼしのつもりで何か地域貢献ができないか考えていた時、地元の相模原市ではほぼ全ての審議会に一般市民が委員として参加できる市民公募制(1期2年という期限付きで全委員の1~2割程度)があることを市の広報で知りました。それ以降、「水道」「生物多様性」「男女共同参画」に参加し、今は「環境審議会」にリモートで議論に加わっています。学識経験者やその道の活動家に交って素人が参画する訳ですから大変です。多くの有識者は委員を長年継続されておられるためか、いろんな前提条件を当然のこととして話され、難しい専門用語が飛び交います。その中で、市民委員からは「なぜそうなのか」「意味が分からない」と素朴な質問を出します。専門家は一瞬いやな顔をしますが、丁寧に説明してくれます。こうしたことが続くと、空気を読んで回を追うごとに口数が少なくなる市民委員が多いのですが、私は、生来いやな性格の持ち主ですから、性懲り無く次々と質問します。「素人に分かり易く説明できない人は本当の専門家ではない」が私の持論です。議論や審議に効率性を求めてはいけないとも考えています。市民参加のメリット・デメリットはいろいろあると思いますが、大事なことは「市民目線で率直に疑問点を出せるかどうか」「一市民も、ほんの僅かとはいえ、政策策定に関われること」、そして何より重要なことは「広報の在り方に一石を投じられないか」だと思っています。

2つめは「女性の方の参加が多いこと」です。何か誤解を受けそうな文言ですが、この事は、人生の大半を費やした会社生活そして相模原市の男女共同参画審議会で痛烈に考えさせられました。40年の会社生活を振り返った時、どの部局の会議でも、どんなに重要な経営会議でも出席者はほぼ100%男性ばかりでした。もちろん当時は女性職員のことも配慮しながら議論していましたが、今改めて振り返ってみると突き詰めれば男目線でしか考えていなかったのではと痛恨の思いをしています。冷静に過去を振り返ると、普通の職場でも確実に物事を変えてきたのは女性の行動や発言だったと気づくことが多い。その意味で「女性のトップを増やすこと」、「クオーター制にしてでも女性のポジションを確保すること」が何より大事だと思っています。しかし簡単に実現できるものではないことも知りました。女性からは率先して賛同して頂けると思っていましたが、意外にも女性から反論や苦悩をぶつけられます。かつて部下だった男性からは「男性差別だ。モチベーションが下がった」とも言われました。「男女共同参画推進」と唱えること自体が男性目線なのではないかと悩みます。

こうして悩みながらも楽しく「あいんしゅたいん」のコロナ勉強会に参加しています。貢献度ゼロに近いですが、「参加することに意義がある」と自分勝手な解釈をして、これからも一市民のスタンスを大事にしながら参加しようと思っています。皆さんも一度参加されてみてはどうでしょうか。

4.感染動向を調べる

● 東京都の今後予測(第2報) 松田慎三郎・土岐博(2021.9.25記)

東京都の今後の政策決定のための判断材料とすべく、感染症再生産数EXCELモデルではワクチン接種に関する以下の改良も含め、今後の予測を行った。 ワクチン接種に関しては、

  1. ワクチン接種データを接種実績から求めるに際してファイザーとモデルナの1回接種者数Xの有効性75%と2回接種者数Yの有効性20%から実効的な接種者数を X×0.75+Y×0.2より求め、これをワクチン接種による免疫保有者とした。1回接種と2回接種の比率があまり変わらない限り、1回接種、2回接種それぞれの入力をする代わりに、実効的接種速度を予測に使うことができる。具体的には直近の1~2か月間の接種実績から実効的な接種速度 人/日を求め、この接種速度が今後も変わらないとして使う。
  2. ワクチンの効果は接種後2週間経過してからとした。
  3. デルタ株に対しては効果が低下するとの報告があるのでα株に対する前記実効接種速度から決まる感染者数に低減率δを考慮する。 厚労省コロナアドバイザリーグループ資料に東京都のスクリーニング検査結果があり、その中にデルタ株(L452R変異株)の占める割合の時系列変化があったので、この割合でデルタ株が増えているとしてワクチン効果低減を取り入れた。
    デルタ株ではファイザーやモデルナに比べて約1割有効性が低下するのでδ=0.9とし、そのときのワクチン免疫保有者に対してデルタ株保有者割合がσのとき) ファクター(1-σ(1-δ))を掛けることにより、全部がデルタ株に置き換わったとき(σ~1.0)にファクターがδになるようにした。
  4. 第5波立ち上がりの中でα株とデルタ株が共存することを利用してデルタ株に対する基本再生産数がもとめられている。第6波の立ち上がりはこれを一つの基準として使うこととする。

これまでの経緯  

図1はこれまでの経緯を示したもので、6月中頃から第5波が始まり、その感染拡大過程でデルタ株に置き換わりが始まり8月末には殆ど100%がデルタ株となった。

図1 東京都のPCR感染者の発生経緯(青)とEXCELモデルによる計算曲線(オレンジ)

第5波の感染力はこれまでにないもので、その区間再生産数での詳細を時間軸を拡大して図2に示す。

図2 第5波のピークと区間再生産数解析。青線はPCR感染者の実測値fittingで求めた計算曲線(赤線)と対応する区間再生産数を数値で示す。区間の境界は赤△で示す。7月12日以降は緊急事態宣言、それ以前はまん延防止特別措置。

7月23日にはデルタ株の割合が70%に達しており、m=4.9は緊急事態宣言をものともしないデルタ株の感染力の大きさを表すもので、もし都民の危機感による行動変容が無ければ、m=4.9の状態が継続して感染者は10000人に達していたことが予測されていた。幸いにして都民の行動変容により、区間再生産数は

m=2.1 → 1.72 → 1.55 → 1.15 → 1.0

と小さくなり、感染は縮小に向かった。
図2の最後の区間で求めた再生産数m=1.0で予測曲線をつくると、その後の観測値はほぼ予測曲線に沿って下降している(図3)。即ち、感染の特徴である指数関数に乗っかったことになる。

図3 感染者発生数はm=1.0の予測曲線に沿って下降中であるが、10月1日以降も仮に緊急事態宣言を終息まで続けた場合の予測曲線図。
青が観測値オレンジが予測曲線緑はワクチン接種による実効的免疫保有者数の2000分の1。

図3は緊急事態宣言を10月1日以降も継続し、ワクチン接種も同じ接種速度で継続した場合の予測である。もし、対照的に10月1日で規制を完全に撤廃し、都民の行動もコロナ以前に戻った場合はどうなるかを図4に示す。

図4 10月1日に規制を完全撤廃、都民の行動変容もコロナ以前となった場合の予測曲線。ワクチン接種を継続しているにもかかわらず、PCR感染者の発生は第5波を超える。感染者は9000人を超えたところで集団免疫条件の達成により、ピークを迎えその後減少に転じる。11月末には完全な終息を迎える。ここで用いたデルタ株の基本再生産数は巻末の手法にしたがって求めたm=9.4である(補足1)。

何故、このようなことが起きるかを9月30日時点の免疫関係を調べると、PCR感染者発生数:257人/日、免疫を持たない人:509.6万人、免疫を持った人は890万人で、そのうち感染により免疫を獲得した人169.3万人(内訳はPCR感染による人36.7万人、その他無症状感染者など132.6万人)、ワクチン接種による免疫保有者が721万人、なので、

免疫を持たない人の割合 B/A = 509.6/1400=36.4%
免疫を持つ人の割合   R/A = 1-B/A =63.6%

デルタ株の基本再生産数m=9.4に対する集団免疫条件(閾値)は、meff = B/A×m においてmeff =1 から求めることができる。

m=9.4に対して B/A=1.0/9.4=10.6%  

即ち、免疫を持たない人の割合をワクチン接種により36.1%から10.6%まで減らさないといけない。その差は25.5%であり、人数にして 1400万人×25.5%=357万人となる。
感染により免疫をもつ人はワクチン接種に比べて1/5程度しかないのでほとんどワクチン接種で決まる。そこで357万人にワクチン接種するには現在の実効的接種速度が続くとすると、357万人/7.76万人/日/0.9=51日(0.9はデルタ株に対する有効性低下効果である。ファイザー、モデルナについての有効性は7.76万人/日の中にすでに考慮されている。)

即ち約50日間ワクチンを打ち続ければ集団免疫によるピークに達するということである。当然、ピークからの下降中にも感染者は発生する。また、9月30日時点では第5波を超える感染者を生み出すだけの感染候補者のポテンシャルは十分存在することを意味する。これらを含めてワクチンの効果を図示したものが図5である。

図5 免疫を持たない人が第5波の約3か月半でどれだけ免疫を持つ人に変わるかを示す図。縦軸の単位は万人である。日本の場合、人口当たりの感染者が少ないため、感染による免疫獲得者は少ない。
(9月30日から集団免疫達成までは取りえる政策によって感染者数が変わるが、大勢に影響が無いため変化なしと仮定した。)

図5では第5波の直前(6月14日)と直後(9月30日)でどれだけ免疫を持つ人が増えたか、また集団免疫までどれくらい近づいているかが示されている。3か月半でワクチン接種が大きく進んだことがわかる。

10月1日以降に採りえる選択肢

以上の基礎的理解の上に立って、10月1日以降に選択し得るシナリオを検討する。2つの極端な予測を既に示した。緊急事態宣言を終息まで続ける図3と、完全規制撤廃の図4である。
もちろん環境をコロナ以前に戻す図4のシナリオも感染者が多い海外諸国に比べればあり得ないわけではないが、政策としてはできるだけ感染者発生を抑えつつ、社会経済活動を始めたいわけである。そこで2つのアプローチが考えられる。

1)緊急事態宣言の解除時期を遅らせる。

そこで、まず緊急事態宣言解除の時期を遅らせて、その間にワクチン接種が進むことを期待したシナリオが考えられる。その場合、解除したときに当然感染は増えることになるが、どこまで許容するかという限界を設定しておくことが重要である。

2)緊急事態宣言解除の後にまん延防止措置で一定期間繋ぎ、その後規制を解除する。

このアプローチはまん延防止措置などの少し緩やかな規制につないで感染者を抑えながらワクチン接種をする段階的なアプローチである。この場合、予測として難しいのはまん延防止措置における再生産数の選び方である。デルタ株に変わってからの感染は一つの波しか経験していないので、適当な再生産数を見出せるかという問題がある。この場合も許容できる感染者の最大レベルを決めておく必要がある。

 

1)緊急事態宣言の解除を遅らせるアプローチの場合

緊急事態宣言期間を9月30日に終えて、10月1日から解除するのではなく、解除を遅らせると、例えば2週間遅らせ、その後コロナ以前の規制なし、行動変容無しに戻した場合にどうなるかである。規制の完全撤廃後感染者発生はデルタ株に対する集団免疫条件を満たしてピークを迎え、その後減衰して終息に至る(図6)。

図6 緊急事態宣言を2週間延期して10月15日解除とし、完全規制撤廃、コロナ以前に戻した場合

そこで、宣言解除を何処まで延期するかについていくつかの例を纏めると、 表1のようになる。結果は延期の日数に極めて敏感であることが分かる。延期の期間中にワクチン接種者が増えるからである。

延期の期間 第6波のピークのPCR感染者発生数 終息時期 10/1から終息までの累積PCR感染者発生数
 延期なし(図4)       9340 (人/日)   11/29         274,000人
 1週間(10/7まで)       2350   12/8          79,000人
 2週間(10/14まで) (図6)        513   12/11          20,000人
 3週間(10/21まで)        108   12/12          6,000人

 表1 緊急事態宣言の終わりを9月30日より先に延期し、その後完全規制解除した場合

緊急事態宣言期間を延長すればその間に感染者数を抑えられるが、第6波に対しては初期値以上にこの間のワクチン接種が効いていることを示している。500人程度までの感染者を許容するのであれば、2週間程度の延期は現実的な解としてあり得る選択肢である。また、3週間延期できるのであれば、第6波は殆ど消えてしまう。

2)緊急事態宣言の後にまん延防止措置を一定期間取り、その後規制完全解除のアプローチの場合

図2をみると7/8-7/20の区間再生産数m=2.25は規制の影響が1週間程度遅れることを考慮すると、まん延防止措置の影響下にあると判断される。しかし、この区間のデルタ株の割合をみると、平均約半分しかない(図7)。
次の区間の7/23-7/28ではm=4.9となっており、この区間では70-90%がデルタ株に変わっているが規制としては緊急事態宣言下である。したがって、もしデルタ株100%でまん延防止措置下であれば再生産数はこれより大きくなると考えられる。したがってm=4.9を10月1日以降のまん延防止措置下での最小限の数値と考えることはできる。

もう一つまん延防止措置におけるデルタ株の再生産数の求め方は、図7でまん延防止措置下でのデルタ株割合がずっと低い6月中~7月初めの期間におけるα株とデルタ株の感染力の比からデルタ株のまん延防止措置下での再生産数を求めることが考えられる(補足1)。それによれば変異株の区間再生産数は アルファ株がm=1.35 に対してデルタ株は m=2.75と求められている。そのフェーズではデルタ株はまだ増加途中で1/3以下に留まっている段階なので、アルファ株はまだデルタ株による強い圧迫は受けていない。二つの株の再生産数の比から2.75/1.35=2.04倍、即ち、デルタ株の再生産数はアルファ株の約2倍で m=2.75 と求められる。第5波と第6波では都民の規制下における行動変容は同様と考えると(補足2)、10月1日からまん延防止措置に移行した時の再生産数としてm=2.75を用いることが考えられる。

図7 PCR感染者発生曲線と、デルタ株の占有割合の関係図。デルタ株は5000の目盛で100%である。7月11日ごろが2500で50%になる。矢印はまん延防止措置の開始時期(青)緊急事態宣言開始時期(赤)を示す。

まん延防止期間の区間再生産数を m=4.9 とするか、m=2.75とするか、大きな違いがある。
図8はm=4.9とし、まん延防止措置の期間を1か月とし、その後規制解除した場合の様子を示す。図9はm=2.75とした場合である。

 
図8 まん延防止策1か月実施の後、規制を完全に解除。m=4.9(まん延防止期間中)、11月1日から m=9.4 として規制を完全になくした場合の予測図   図9 まん延防止策1か月実施の後、規制を完全に解除。m=2.75(まん延防止期間中)、11月1日から m=9.4 として規制を完全になくした場合の予測図。

ワクチン接種は図8、図9ともに一定速度(77600人/日*0.9=698001人/日の実効速度)で継続して接種している。11月20日ごろにはデルタ株の基本再生産産数に対して集団免疫条件を達成し12月10日ごろには完全に終息する。

図8では規制の完全撤廃にあたっての初期値が大きいことが大きなピークを生む原因となっている。
集団免疫の閾値(ピーク)に達してからあとは放置しても必ず終息するが、ワクチンを接種せずに放置した場合は下降は感染による免疫獲得者が増えることのみに依存するので極めてゆっくりとしか減衰しない。したがって、ピークに達してからもワクチンを打ち続ければ一番早く終息する。

まとめ

ここまで検討してきたことを政策決定という視点から俯瞰してみると、恐らくは図6のように緊急事態宣言を延長して、その後解除するか、図8、図9のように一旦まん延防止措置につなげたうえで半月か1か月後の解除かの選択になると予想される。

緊急事態宣言を2週間ないし3週間延長した後に、完全に規制を撤廃することが最も不確実性が小さく、完全終息に導くことができるシナリオである。このシナリオを強く勧めたい。

どうしても緩和措置を一定期間続ける場合は、デルタ株に対するまん延防止措置のデータが十分でないため再生産数の見積もりに大きな幅があり、まん延防止措置期間の感染者発生数は相当な違いが出てくるであろう。したがって、まん延防止措置立ち上がり時の特性をモニターして規制の程度を強化/緩和によって調整することが必要となろう。

第5波の困難の上にこの3か月の間でワクチン接種による多くの免疫保有者を生み出している。このおかげでウイルスに対する環境が大いに変わり、先の見通しが定量的にできるようになってきた。また、そのため、政治的、政策的に採りえる選択肢も絞られてきた。

この影響はワクチンによる拡大抑制効果とデルタ株の感染力の鬩ぎあいで感染者のピークが決ることになり、従来強調してきた初期値を小さくすることの重要さとともにワクチン接種日数を稼ぐことの重要さを認識させる。すなわち、初期値と共に免疫を持たない人の割合を小さくすることが第6波のピークを抑えることにつながる。第5波は予想よりも早く終息しそうであるが、このことはワクチン接種日数を短くすることでもあり、楽観してはならない。

何よりも我が国の特徴は感染による免疫獲得者に比べてはるかにワクチン接種による免疫保有者の割合が高いことである。このことが感染を収めるには何よりもワクチン接種がカギとなることを最大限に使うべきである。ワクチンの大量入手、即座の接種が重要である。

(補足1) 基本再生産数の求め方

2021.8.10付報告書のデルタ株基本再生産数導出のエッセンスを抜き取る。
東京都健康安全研究センターがまとめた都内のデルタ株のスクリーニング検査の結果を引用すると、新規陽性者のうち、50%を超える人について変異株PCR検査(どの株であるかを調べる)を実施してデルタ株L452Rの感染者割合が求められている。

期間 6/14-6/20 6/21-6/27 6/28-7/4 7/5-7/11 7/12-7/18 7/19-7/25 7/26-8/1
 新規陽性者数
 7日平均感染者数
  2716
  388
  3342
  477.4
  4074
  582
  5137
  733.9
  7478
  1068.1
 10175
  1453.6
 21735
  3105
 変異株PCR検査実施数   1516   1770   2331   3050   4220   5688   3577
 うちL452R株感染者数   127   261   501   934   1948   3674   2779
 L452R株陽性率   8.4%   14.7%   21.5%   30.6%   46.2%   64.6%   77.7%
 デルタ株感染者数   32.6   70.2   125.1   203.2   493.5   939   2413
 従来株感染者数   355.4   407.2   457   531   575   515   693

付表1 東京都健康安全研究センターが纏めたデルタ株に関する調査結果。健安研究センターだけでなく大学病院、民間など全てが含まれている。

これをグラフ表示すると、付図1となる。ただし、α=3.61である。
7月8日を境に前後に区間を分けて区間再生産数(実効値)を求めると、各区間と再生産数は付図1のようになる。

付図7 7月8日を境とした前後の区間と区間再生産数(実効)を記載。 オレンジはデルタ株(L452R)、グレーはα株青はtotal 感染者である

total 感染者数の実効区間再生産数は6/17~7/8の前期は m=1.32、7/8~7/29の後期は m=2.04となる。デルタ株は前期 m=2.39,後期 m=3.25,従来株は前期 m=1.21、後期 m=1.14でこれらは全て実効値である。
したがってデルタ株と従来株の区間再生産数の簡易見積もりとして、区間の新規陽性者の実効再生産数と再生産数の比を求めるとき、代表値をそれぞれEXCEL計算値から選ぶと、前期について1.32と1.50なので

デルタ株の再生産数=(1.50/1.32)x2.39=2.75
従来株の再生産数 =(1.50/1.32) x1.19=1.35

となる。 即ち前期ではデルタ株がアルファ株の約2倍の感染力がある。

また後期について実効再生産数と再生産数の代表値は2.04と2.25 なので 

デルタ株の再生産数 =(2.25/2.04) x 3.25=3.58
従来株の再生産数 =(2.25/2.04) x1.14=1.26 

となる。

まお、ここに求めた区間再生産数meff は

meff = B/A(全人口Aに対する免疫を持たない人Bの割合)×m (区間再生産数)

から求めたものなので、集団免疫効果B/Aは除いているが、行政による規制や住民の行動変容の効果は除かれていない。したがって、基本再生産数と比較できるものではなく、もし第1波の環境に置かれたならばm=2.75~3.58より遥かに大きな数値になっていたと考えられる。基本再生産数の粗い見積は次の方法で当たることができる。

例えば東京都の第1波ではα=3.61のとき、基本再生産数(=実効再生産数)m=4.4であった。この従来株が2021年6月28日時点でも続いていたと仮定すると、実効再生産数は m=1.29となっているので、これを参照基準として第1波の環境に戻してみると、デルタ株の基本再生産数は m=4.4/1.29 x (2.75~3.58)= 9.38~12.9 と見積もられ、株間の競合の影響が無い前期の特性を選ぶとデルタ株の再生産数はm~9.4と見積もられ、これは従来株(m=4.4)の約2倍強の大きさである。
これは米国、英国におけるデルタ株と比肩できる大きさであり、極めて強い感染力を持っていると言える。

(補足2)

一般にどこの国、どこの都市であっても(インドのデルタ株を除く)第1波に対して第2波では同じウイルスであっても区間再生産数は小さくなる。東京では詳細な検討で第1波の基本再生産数m=4.4~2.5に対して第2波ではm=2.1~2.5とちいさくなっている。コロナ感染の危険に対する市民の自己防衛意識が行動変容となった現れと考えられる。
第5波はデルタ株に対する最初の波なので、2番目にあたる第6波はそれなりの低減効果があると期待されるが、第1波―第2波の時と同じように低減するかは定かではない。したがってここでは第5波と第6波は変わらないと仮定して検討した。

● 東京の感染・日本の感染 2021.8.28 松田慎三郎

はじめに

ここに纏めた方法は感染症の実務的な利用に適しており政策決定に関わりのある人の近くで使われることを目指したものである。

最初にこのレポートで使われている感染症基本産数EXCELモデル(略してEXCELモデル)について簡単に説明する。2020年新型コロナ感染症が始まった時に如何にしてこの感染症が終息するかを予測するために作られた。その基本は可能な限り明確な観測値に基づくこと、また予測する量もわかりやすいものであり、使われる諸量も意味のある指標であることである。

予測のために使われるのは1人の感染者が感染期間(τ日間)の間にm人に感染させることを基本としている。このmは感染の強さを表し、再生産数と呼ぶ。そして日々の感染者発生数を入力して、予測するのも感染者発生数である(注1)。

誰もが感染するわけではなく免疫を持った人は感染しない。感染して回復した人、ワクチンを接種した人は免疫を持って感染しないので、国や都市など集団の感染を調べるにはどれくらいの割合の人が感染の対象となるか、集団全体(A)の中から免疫を持った人(C)を差し引いて感染のターゲットとなる免疫を持たない人(B)の割合B/Aを知る必要がある(注2)。

感染が始まる段階では誰もが免疫を持っていないので、全員が感染の対象であるが、免疫を持った人が増えてくると感染対象となる人数はB/Aの割合だけ減ってくる。このため再生産数mの感染力はB/Aに比例して弱くなりm×B/Aとなる。これを実行再生産数と呼ぶ。したがって予測をするにはこのような集団の免疫状態を知る必要がある。

ところでコロナウイルスに感染して抗体を持つ人はPCR検査で陽性となる人だけではない。いわゆる無症状感染者などの潜在的感染者も結局は抗体を持つに至る。EXCELモデルの特徴の一つは集団の中にPCR感染者以外にそのα倍の無症状感染者の集団の存在を認め、この感染者もPCR感染者と同様に感染者を作り出し、回復すれば抗体を持つとしている(注3)。この無症状感染者の存在により感染によって免疫を持つ人が全てわかり、先に述べたBがB=A-Cから求められるので実効再生産数が決り、明日以降の感染者発生数が決るのである。

感染力を表す再生産数mは集団とのかかわりの中で決まるものであり、その集団の生活習慣、年齢構成、自然免疫の強弱などによって異なる。まだ誰も感染していないとき、即ち感染の第1波の立ち上がり時の再生産数mを特に基本再生産数と呼ぶことにするが、これは対象とする集団(国、県、都市など)毎に決まるものであり、そのウイルスがその集団に対して持つ特徴的な感染力である(注4)。

感染が進むと行政によるロックダウンや緊急事態宣言などの規制とそれに伴う住民の危機感の表れとしての行動変容によって感染のしやすさに変化が出てくるがこれを再生産数mの変化と捉える(注5)。

EXCELモデルが予測できるのは次のいずれかの場合である。

1)規制や行動変容が変わらない場合
2)過去の感染者発生の経験(第1波、第2波・・)から得られた状態が未来において予想される場合

このうち、1)は現状が変わらないのでこれまでの感染力であるmを一定にすることで近未来(経験的には1か月ぐらい)の予測をすることが出来る。2)については何時から規制がかかるかとか人々の行動変容など人的要素が大きな影響があるため、どれくらい感染者数が予測曲線に正確に沿うかではなく、大局的に見て終息までにどれくらいの大きさの波を越えないといけないか、その時間スケールはどれくらいか、などを知るために役に立つ(経験的には数か月、日本では終息が予見される年末くらいまで)。

例えば米国の予測を例にとれば、当初7月に入って終息することを予測していたが感染が急拡大したので7月18日までのデータでmを求め、その後の予測を計算した(図01)。

図01 米国のデルタ株感染拡大の初期の様子と予測曲線。青は観測値(PCR感染者発生数)、オレンジは予測曲線。ワクチン接種はこの時点ではデルタ株に対する効率低下までは考慮していない。

その後8月28日まで(7日平均では8月25日まで)の観測値をプロットしたのが図2である。図中の数字は再生産数mである。最後の波は再生産数が大きなデルタ株に対する波であり、そのピーク値を越えればあとは終息に向かうことになる。

図02 図01に約40日間の観測値を追加記入したもの。図中の数値は各波の立ち上がり時の区間再生産数である。このまま推移すれば9月中にデルタ株に対しても感染は終息すると見込まれる。α値は図01、図02ともに2.5を仮定し、ワクチンは実績を踏まえた一定速度での接種を仮定しているがデルタ株に対する効率低下は含んでいないので、感染の縮小は予測曲線よりも緩やかとなろう。

注記

注1)τ日後に生まれたm人の感染者は次の感染期間内にはそれぞれがm人の感染者を生むので、2τ日間にm m人の感染者が生まれることになり、経過日数と共に感染者発生数は指数関数的に増えていくことになる。

注2) 正確には感染して回復する人は新型コロナウイルスに対する抗体を持つ。抗体を持った人が100%免疫を持つわけではないとの指摘がウイルス学者の一部からある。しかし、疫学に使えそうな観測値のデータは何処にもみあたらない。したがって予測計算では矛盾が出てくるまでは抗体を持った人は全て免疫を持つとして扱う。さらに付け加えれば、自然免疫が強くて感染しない人もいるに違いないが測定する手段が無い。感染が完全に終了してその結果からはじめてわかることである。したがってこれもゼロとして検討をすすめる。

注3)このαの仮定を観測値から決める方法が抗体検査と累積感染者の比較である。市中の一般人からランダムに選ばれた数千人~数万人を対象として新型コロナウイルスに対する抗体検査をし、抗体検査陽性率から集団の抗体保有者数を求める。これと抗体検査実施日までの累積の前感染者(=PCR感染者×(1+α))を等しいと置いてαの値を求める。最初の測定結果が公表されたのは米国NY州で求められたαは2020年4月~6月にかけてであり、αの値としては7~13であった。日本ではソフトバンク(2020年5-6月)や厚労省(第1回2020年6月、第2回12月)が行っており、この報告では厚労省の第2回の測定の見直し版(2021年3月30日発表)に基づいている。

注4)SIR法では主たる変数は現に感染している感染者数(人)であり、これを知ることによって医療関係をどれくらい整備すれば良いかなどを判断する根拠となる。これに対してEXCELモデルでは主たる変数は日々の感染者の発生数(人/日)であり、今後どのように感染者が発生し、終息までにどのような変遷となるかに焦点を合わせているので、緊急事態宣言などの判断や人々の心構えに資するものである。

注5)殆ど例外なく、どの国、どの都市においても同じ程度の感染力であれば第1波の感染力(再生産数)よりその後に現れる第2波、第3波の立ち上がり時の感染力は低くなる。これは住民のウイルスに対する防御意識が高まることの反映である。唯一の例外はインドのデルタ変異株が現れた時である。このときは第2波の方が再生産数は第1波よりもはるかに大きかった。

次章から東京都と日本全体について検討する。 2020年3月以来これまでに国内では日本全体、東京都、大阪府、国外では中国武漢、英国、スウェーデン、米国NY州、米国全体、フランス、イタリア、ポルトガル、イスラエル、インド、タイ、マレーシアなどを調べてきており、予測計算の適応性は検証済みである。

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1.東京都

いつ感染者は減少に向かうのか?

東京都は一番デルタ株による感染(注7)が進んでおり、緊急事態宣言も一番早く出された都道府県なので、東京都の動向が先行きを示すと考えられる。東京都では7月12日に緊急事態宣言が出されたので時間遅れを考慮してもその効果は8月に入ってからは十分出ているはずなので、もし、緊急事態宣言継続中に感染者発生が指数関数からズレていくとすればそれは市民の意識変化による行動変容の表れとみられる。このところの東京都の感染者の動向は不思議な変化を示しており、逡巡しながら少しずつ変化している様子がみられる(図1)。なお、以下のデータは全て7日間移動平均の中央値であり、原因は1週間程度前(注6)にあるとして考える必要がある。

図1 東京都の感染図
大雑把にみると、この2週間程度感染者の発生は区間再生産数(注:再生産数の説明はまとめのあとを参照

m=3.0 → 2.0の予測曲線に沿っていたが、そこからずれの兆しがみられた

図1を子細にみるため、以前に求めた予測曲線上に感染者データをプロットしたものが図2である。図2から7/22日くらいまでと、7/23日~7/28日まで、7/29~8/6日まで及び8/7日以降で特徴が異なっていることが読み取れる。

図2 感染者の発生数(青)予測曲線(緑)およびその内訳としてデルタ株(オレンジ)従来株など(グレー)

この感染拡大の観測値の詳細から区間生産数を詳しく求めたものが図3である。東京都の緊急事態宣言は7月12日である。時間遅れを考慮すると、第1の区間(7月22日くらいまで)は緊急事態が宣言される以前のまん延等防止特別措置の影響を表していてm=2.15である。第2の区間(7/23~7/28)は緊急事態宣言の効果が出ていても不思議でない時期であるが感染が急拡大している。これは7月16日ごろにデルタ株が主役交代(図2のオレンジとグレーの線が交差)して感染拡大に威力を発揮し始め、緊急事態宣言下であるにもかかわらず、区間再生産数m=4.9という大きな感染力で拡大したためである。

第3の区間はデルタ株に対する緊急事態宣言の効果がようやく見え始めた期間でm=2.1であるが、都民の行動は緊急事態宣言慣れしている。 これは8月初頭までは従来株でさえ減少に転じていないことからもわかっている。このとき(m=2.1を維持したとき)の予測では感染者は10000人を超えたが、幸いにして8月6日を過ぎてから同じく緊急事態宣言継続中であるにもかかわらず、明らかに特性が変化してきた。これは過去最高だった第3波のピーク値1800人を遥かに超えた3000人超となった7月末に至って、政府や都によるキャンペーンもあって都民にようやく危機意識が芽生えてきたことの現れではないかと推定される。その後今日に至るまで感染拡大は緩和されつつあるが、まだ減少に向かうかは予測計算をしない限り定かでない。8月6日以降の感染者発生数は何とも規則性が無い変化であり、これをどのようにみるかによって今後の予測が異なってくるが、データ平均的な予測として8月4日から22日までのデータで区間再生産数を求めると、m=1.68となる。これが図3の最後の赤線部分である。

図3 東京都の感染者発生曲線とfitting で求めた区間再生産数。青が観測値、赤がfitting 曲線。また数値は各区間の再生産数。8月4日以降の区間再生産数は(m=1.68)、赤の三角点からが予測曲線でこれに従ったらどうなるかが次からの図4以下である。

これからどうなるの?

そこで、もし規制がこのまま継続し、都民意識も変わらずに行動変容も無い場合、即ちm=1.68がこのまま変化しないとした場合はどうなるかを調べた。すなわち図3の延長が図4である。

図4 区間再生産数m=1.68を維持できる場合の感染者発生予測曲線。緊急事態宣言継続で感染者が1000人以下となるのは10月8日以降である。緊急事態宣言を解除すれば再度感染拡大が起きる。

図4によれば8月21日ごろ7日平均の感染者が4560人くらいでピークを迎え、その後減少に転じている。区間再生産数mが1.68という大きな値であるにもかかわらず、EXCEL計算では実効再生産数が1.0となってピークを迎えている。ピークとなる時点での免疫を持たない人は836万人である。即ち、(免疫を持たない人)/全人口=(836万人)/1400万人=0.597となり、実効再生産数=0.597x(区間再生産数=1.68)=1.00 となっている。免疫保有者の増加の効果が実効再生産数の低下に寄与している。免疫保有者の内訳はワクチン接種によるものが実効的に443万人、感染による免疫保有者が111万人(PCR陽性感染者1:それ以外の感染者3.6)であり、大部分がワクチン接種によるものである。ワクチン接種者の人数は東京都の接種実績データから求め、従来株に対してはファイザー及びモデルナを対象として、1回目75%、2回目接種で20%追加の有効性とから求めた。また、デルタ株に対しては有効性が最近の報告では85~88%とあるので従来株に対する有効性の90%とし、デルタ株が従来株より優勢になる7月15日以降に10%劣化した有効性を使った。接種後の抗体効果を発揮するのは2週間後からという仮定で計算した。

図5 東京都のワクチン接種状況 1週間ごとに纏められている。

ワクチン接種の実効速度の72580人/日は東京都の7月1日から8月22日までのワクチン接種速度(図5)から1回接種、2回接種の比がこのまま変わらないとして求めたものである。
図4で注意しなければならないのはピークを迎えたのちに減少に転じるのは緊急事態宣言が継続しているからであり、規制なし、行動変容なしで集団全体の免疫を達成したわけではないことである。

新規感染者数が570人以下にまで下がった時に規制を外すとどうなるの?

すなわち、図4はとりあえず感染拡大を抑え、収束(終息とは異なり、一時的な平衡状態)に向かうときの曲線であり、このまま終息を迎えるわけではない。緊急事態宣言は現在のところ、9月12日までとなっているが、その時点での感染者発生数の予測は3500人強もあり、宣言の解除は考え難い。そこでもうしばらく宣言を維持することとし、感染者発生数が6月30日時点と同じレベル(~570人)に低下したときに規制を外したらどうなるかを図6に示す。

ところで規制を完全撤廃し、市民の行動変容もコロナ以前の環境に戻ったときの予測には基本再生産数を求めなければならない。もしコロナの始まりから現在まで継続して存在するコロナ株があればその株を参照基準としてデルタ株の基本再生産数を求めることができる。しかし複数のコロナ株が共存するときの構成割合に関するデータが取得されているのは日本では比較的データが整っている東京でも2021年2月以降に限られる。そこで次善の推定として2021年6月中旬からのデルタ株と共存していた従来株(正確には従来株を含むその他)の構成比データにおいて、従来株はコロナの始まりから存在していたと仮定して(同じ株でなくても基本再生産数が同じような株であればよい)デルタ株の基本再生産数を求めると、m=11.3となることが別の解析でわかっている。これを用い、6月30日と感染者が同じレベル(570人程度)に低下した10月16日から m を1.68から m=11.3に変更して得たものが図6である。この数値はデルタ株が従来株に対して約2倍の感染力があるとする海外筋の情報とも矛盾しない。

図6 6月30日と同じレベル(~570人)まで感染者が減衰した時点で規制を完全撤廃、都民の行動もコロナ以前に戻したと仮定した時に予想される感染再拡大。11月18日に感染者発生が第5波を超える高さに達し、基本再生産数に対する集団免疫条件を満たして急速に低下し、終息する。

図6はワクチン効果を最大限に生かした早期緊急事態宣言解除の感染終息のシナリオである。感染の終結も早い。第6波では無症状感染者を除いてワクチン接種により全員が感染を免れる。この場合は規制なし、行動変容無しの場合の集団全体の免疫が効くので終結した後に再度感染は起きない(というよりもはや感染の対象となる免疫を持たない人がいない状態なので、感染の広がりようがない)。
終息に向けては感染期間が長引くことを許容すれば別のシナリオも考えられる。第6波のピークはデルタ株の基本再生産数に対するものなので、これを過ぎれば感染はワクチン接種が無くても低下していくはずである。例えば図7は11月12日からワクチン接種を停止した場合の変化である。

図7 ワクチン接種を11月12日から停止した場合の感染者発生曲線。緊急事態宣言解除は10月16日を仮定。

ワクチン接種の効果が表れるのは接種の2週間後としているので11月12日からワクチン接種を止めても11月18日のピークを迎える時点ではワクチンによる免疫保有者の数は変わらず、接種停止の影響が現れるのは11月26日からである。因みに図7のシナリオでは感染終息は12月末、無症状感染者のほかに感染を免れる人は約21万人(1.5%)となる。

感染を抑える立場からはワクチンの接種速度の違いがどれくらいの影響を与えるかが関心事である。そこで図6を標準として接種速度を変化させてみる。もし、ワクチンの供給不足などによって7月当初からの接種速度を8月22日以降に維持できなくなればどのような影響があるかを調べてみた。仮に図6の接種速度を9月15日から10%減の65300人/日であったとすると、図8のように緊急事態の規制解除した途端に感染は急拡大し、ピークでは8000人/日に達する。

図8 ワクチン接種速度がこれまでの接種速度を維持できず、9月15日からそれまでの90%に低下した時の再感染予測。感染のピークは8000人に達する。

これとは逆にワクチン接種を加速した場合はどうなるか、例えば接種速度を2割upしたとすると、図9のように規制なしで感染は再拡大するがピークは3000人以下に下がり、11月20日過ぎに終息を迎える。ワクチン接種加速の効果は顕著である。

図9 9月15日からワクチン接種速度を1.2倍の87100人/日としたときの規制解除後の感染拡大。

加えて緊急事態宣言規制解除の基準を第2波終わりに近い200人/日以下となるまで約10日間、10月28日まで延期すれば感染は図10となり、殆ど第6波のピークは見えなくなる。緊急事態宣言解除にあたっては感染者発生数を十分低く抑えることが肝要である。
11月14日にはm=11.3に対しても実効再生産数が1.0を下回るので、これ以降ワクチン接種を止めても感染は下降するが、大きな再生産数のために極めてゆっくりとしか下降せず、感染者が100人/日を切るのは2022年1月末となる。このとき約100万人は免疫をもたなくて感染を免れているが、感染が終息している訳ではないのでワクチン接種ができなければ再度緊急事態宣言を1か月ほど設けて抑えるしか方法が無いだろう。これらの感染者発生数が極めて低くなった終息直前の検討はα値や免疫獲得率、自然免疫保有率(幼児など感染しにくい年代の人もこの部類に入れられる)、ワクチンを接種できない人の割合などを見直した総合的検討が必要であろう。

図10 ワクチン接種速度を9月15日から現行より20% upして87100人/日とし、かつ緊急事態宣言解除を10月16日から10月28日に延期したときの感染者発生予測。

因みに図10の感染でワクチン接種がどのように効いているかを図11に示す。ワクチンは接種の2週間後から効果を発揮し、ファイザー、モデルナの効率、および7月15日からのデルタ株に対する効率低下を考慮している。

図11 図10に対応する免疫関係図。赤が全免疫保有者でその内訳として、青が感染による免疫保有者(無症状感染者も含む)、黄色がワクチンによる免疫保有者、緑が免疫を持たない人である。

注記

(注6)これまでの観測値データでは緊急事態宣言が発せられてから感染が減少にむかうまでに5日間から10日間の遅れがあることが分かっている。
(注7)東京都健康安全研究センターのスクリーニング検査の結果によればデルタ株(L452R)が8%以上になったのは6月17日ごろである。それが50%を超えるのは約30日後の7月17日ごろ、さらに8月初めには80%に達し、8月9日ころには90%を超え、16日の週では94%、23日の週では97%に達している。

東京都のまとめ

これらのことから感染を抑えるためにはワクチン以外に手段が無く、しかも従来想定されていたよりもデルタ株の感染力が大きい分だけ

1)集団全体の免疫を達成して終息するために必要なワクチン数は従来株に対するものより大きくなること。これは終息に必要な免疫保有者の人数が大きく変わることによる。
2)感染者の発生はワクチン接種速度に敏感である。
3)感染者の発生とワクチン接種は時間的競争である。ワクチンの量は確保できてもその接種速度が小さくなってしまうと規制解除後の感染者再拡大のピークは容易に第5波を越えてしまう。
4)第6波を低く抑えるには、ワクチン接種の加速を目指すこと、緊急事態宣言解除を急がず、感染者発生数が十分低くなること及び免疫を持たない人の割合(B/A)が十分小さくなることを待つことが最重要である。

最優先すべきはワクチンの早期大量入手と迅速な接種、そして宣言解除を急がないことである。

2.日本全体

日本全体の今後はどうなるの?

 日本全体では都道府県別で違いがあるが関東では既に東京都と首都圏では感染は均一化している。一方関西圏では大阪が先行し、少し遅れて関西圏の兵庫、京都などで感染が拡大し、また地方中核都市を中心としながら多くの都道府県で感染者数の過去最大値の更新が続いている。日本全体としてのデルタ株像が見えるのは東京都より遅れることになると予想されるが、現時点でわかっているデータを纏めてみる。
そこでまず、どれくらいの区間再生産数で推移しているかを調べたのが図12である。m=2.7の予測曲線は8月8日ごろまでの感染者データに基づいて求めたものであるが、その後の感染者観測値はこの予測線に沿って上昇している(8月26日現在)。

図12 日本全国の感染者発生数。横軸原点は2020年3月1日、縦軸は日別感染者発生数である。青がPCR感染者の7日間平均の中央値、赤はfitting で求めた曲線、数値は対応する区間再生産数である。
区間再生産数は、デルタ株立ち上がりの最初からm=1.8 (7/2~7/9) m=3.2 (7/10~8/1) 及びm=2.7 (8/2~) である。

少し遡って7月30日付の検討では感染の初期に図13の予測をしている。ここで求められた区間再生産数はm=3.5程度で数値だけ見れば第1波と数値的には大きな差は無いが、東京の場合に推定したように、第1波と第5波では同じ区間再生産数でもウイルスを取り巻く環境が異なっている。第1波の立ち上がり時点では殆ど規制なし、市民の警戒心も薄い段階なのでウイルスの特性がそのままに出てくる。東京ではデルタ株を第1波の環境に合わせて基本再生産数を求めると約2倍の大きさとなる。したがって、第5波の時点でデルタ株の区間再生産数が3以上というのはとてつもなく大きな感染力である。

図13 7月末に纏めた感染者発生数(青)からfitting で求めた区間再生産数と予測曲線(赤)

図13の後に図11が求められたが、この間に再生産数は少し緩和され、区間再生産数は3.2を経て2.7となっている。そしてもしこのまま規制が継続し、国民の行動変容も変わらなければ再生産数は維持されて図14となる。感染者は9月下旬に35000人を超えて減少に転じる。しかし、東京都と同様にこの場合の感染者縮小は終息に向かうものではない。異なる点は再生産数が東京都の場合のm~2に比べて最後の区間再生産数が少し大きいことであるが、これは東京都とフェーズの違いであることが考えられるので現段階で余り気にしなくても良いと考える(図3と対比)。

図14 本全体のPCR感染者の発生予測。ただし、現下の状態が継続した場合の図12の予測延長である。

図14ではワクチン接種の効果は取り入れているが、デルタ株がどの段階で何割を占めたかのデータがないので、ここでは従来株に対する有効性を仮定している。したがってデルタ株に対する効率低下を考慮に入れてないのでやや楽観的な予測と言える(ピークが分かれば計算できるのでその段階になれば先の予測は可能)。

日本全体のまとめ

東京都以外の道府県では緊急事態宣言の発令が遅れて出され、しかも道府県で規制が一定の条件ではなくバラバラで、また時間遅れの効果も考慮する必要があるため、「現下の状況が継続」するかどうか、感染結果から読み解くには9月初旬までデータの蓄積を待つ必要があろう。
ただし、全体的には遅れてスタートしているものの、デルタ株が変わるわけではないのと、ワクチンの接種率は東京都とあまり変わらないので、注意すべき点は同じように考えられる。即ち、ワクチン接種の大量確保と迅速な接種が必須である。

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用語の説明

この感染モデルは、一人の感染者が一定の感染期間(τ日)内にm人に感染させ、m人の感染者はまたそれぞれm人の感染者をつくるという基本原理に基づいて作られているので、mはウイルスの感染力を表しており、これを再生産数と定義する。環境の変化が無ければmは一定で感染者の発生はmを底とする指数関数で変化する。τとmはセットで決まるが、一連のレポートでは感染期間を10日に選んでいる。

 

基本再生産数

感染が始まる前の環境(行政的規制が無く、人々もウイルスに対して無防備のとき)におけるその集団(国とか、都市とか)に対するウイルスの感染力を表す用語であるが、そのようなあり得ない状態で疫学的データを得ることは不可能なので、これを近似するものとして第1波の立ち上がり時の環境における感染者数のデータから求めた再生産数を基本再生産数と定義する。基本再生産数は対象とする集団の生活習慣、年齢構成、自然免疫力の強弱などを反映するのでウイルスが同じでも集団ごとに異なった数値となる。

区間再生産数

もし、環境(行政的規制や人々の行動変容)がある一定期間変わらないときは、その期間ウイルスの感染力mは変わらないので、これを区間再生産数と定義する。感染を経験するとウイルスを囲む環境は第1波の時とは変わっているので区間再生産数はその影響を反映させた感染力である。次の集団免疫効果を考えなければmが1より大きいときには感染は拡大し、1より小さいときには感染は縮小する。緊急事態宣言などの行政的アクションやそれに伴う人々の行動変容の影響は直接この区間再生産数の変化として現れる。感染の波の中で一定期間変わらない再生産数、区間再生産数を見出すことが予測計算に欠かせないが、EXCELモデル法では感染者曲線から指数関数のfitting によってこれを求める。

 

集団免疫効果

感染して免疫を持つ人が増え、あるいはワクチン接種により免疫を持つ人が増えるにしたがって免疫を持たない人の(全人口に対する)割合が低下してくる。免疫を持たない人が感染の標的となるが、その割合が低下した分だけウイルスからみれば感染力が低下することになる。例えばコロナが始まる前は全員が感染の対象であったが、感染が進んで免疫を持つ人が20%になったとすると、免疫を持たない人は人口の80%となる。仮にm=3 即ち、濃厚接触によって3人に感染させる強さのウイルスであっても、全体の20%の人は既に免疫を持っていて感染しないので、20%減の 3x0.8=2.4 の感染力しか発揮できないことになる。このときの低減効果 (免疫を持たない人数)/(全人口) を集団免疫効果と呼んでいる。

実効再生産数

実効再生産数と区間再生産数は次の関係で結び付けられる。

実効再生産数 = m (免疫を持たない人数)/(全人口)

感染が始まったばかりの頃は区間再生産数と実効再生産数の間に差はないが、感染が進行して免疫を持つ人が増えてくると両者の間の差はおおきくなる。感染者曲線は実効再生産数を反映させたものであり、=1.0は感染曲線のピークを示すので、ピークを求めるだけであれば実効再生産数を調べるだけでよい。
ところが同じ環境(同じ規制、同じ行動変容)であっても感染の進行程度によって集団免疫効果が変化するので実効再生産数で書かれた感染図は違ったものとなる。このため行政的にどのようなアクションを行えばよいか、これまでの波と比べてどうかといった判断をするためには波に拠らない共通の指標が必要であり、それが区間再生産数である。

● 感染症再生産数EXCELモデルの優れたところ 土岐博(9月10日)

感染症再生産数EXCELモデルは感染症SIRモデルをエクセルソフトで計算できるように工夫している

コロナ感染の定量的な記述では、感染者と非感染者(免疫を持たない人)の接触で感染者が増えるとし、感染者は一定期間で治り免疫獲得者となる。今回のコロナ感染の特徴は無症状感染者がPCR検査で陽性と診断される数倍から数10倍くらい存在する可能性が抗体検査により指摘されていることである。そのために感染源を突き止めることが非常に難しくコロナの勢いを止めるにはワクチン接種しかない状態にある。これらの関係を表すのに使われる感染症SIRモデルに無症状感染者の効果を取り込む計算は煩雑になり、毎日変化する陽性者数の変化に対応させるのは難しい。そもそも無症状感染者はどれくらいの感染力で人を感染させるのかが定かではない。アルファ株とデルタ株ではその感染力が変化している可能性もある。

感染症再生産数エクセルモデルはSIRモデルの特徴を正確に捉え、エクセルで計算できるようにすることで、毎日の変化に対応することが可能になっている。さらに無症状感染者の存在を取り込み、毎日発表されるPCR陽性者数からだけで基本パラメータである再生産数を決定している。無症状感染者の存在およびワクチン接種の効果を免疫獲得者として取り扱うことで、集団免疫効果が大きな役割を担う今の状況を定量的に扱うことができる。毎日発表されるPCR陽性者数は変化するので再生産数も毎日変化する。ところが、政治的な変化や人の意識や行動の変化がない限りは毎日の変化量は小さい。そこで、ある区間内では変化しないと仮定することで区間再生産数を導入する。そのことにより、予言力のあるモデルになっている。つまりは環境の変化がない場合には区間再生産数を変化させる必要がなく、近未来を予想することができる。

感染症再生産数エクセルモデルは微分方程式を解くのではなくて、感染症という病気が感染者の数によって支配されていることと、病気が治ると免疫保有者になることを簡単な数式で表現しているところである。この単純さのおかげで、無症状感染者も見事に導入できているところである。毎日発表される感染者数を単純に取り込むことができるので、ロックダウンや緊急事態宣言やテレビの放送などで人の行動が変化するとそれを反映して再生産数が変化することで取り込むことができる。これは無症状感染者が存在することの有無にかかわらず単純に現象論的なパラメータとして決まる。ワクチンの効果も免疫保有者として簡単に取り込むことができる。

多くの感染症モデル(SIRモデルやそれを少し変更したモデルなど)ではこの無症状感染者の存在を過小評価している。その存在はアメリカやソフトバンクの抗体検査において報告されており、たとえPCR検査で陰性でも抗体を持っている人は数倍から数10倍いる。よく見受ける議論ではPCR陽性者数の数10%くらいという数字で議論されることが多い。抗体を持っているかどうかは抗体検査でしかわからない。日本ではワクチン接種がかなりのスピードで行われており、約50%の人が2回ワクチン接種をしているにもかかわらず、無症状感染者が免疫を持っている状態になっていることを取り入れない場合には、集団免疫効果は十分ではない。エクセルモデルではこの効果を最初から取り込んでいることが定量的な議論では非常に重要である。第5波において東京や日本全体の感染者数が増加から減少に転ずるのに大きな役割を果たしている。今後の予想を行う際には無症状感染者の取り扱いとワクチン接種のスピードが鍵になる。

この感染症再生産数EXCELモデルは実測値を用いて簡便に計算ができ、流行の近未来予測が迅速に出来ることから、感染症対策に極めて有効である。COVID-19の迅速な終息に応用されることを期待する。

5.ワクチンをめぐって

● ワクチン打ちますか?打ちませんか?  山崎泰規(2021年8月17日資料整理終了 2021年9月17日脱稿 2021年9月20日追記2)

―コロナ感染による健康被害とワクチンの副反応を、科学的視点から比較しました―

結論:高齢者はワクチン接種、お勧めです!

ワクチンの副反応によって死亡する確率は多めに見積もっても、新型コロナで死亡する確率より非常に小さいためです。
ただ、年齢が下がると新型コロナで死亡する確率が減少し、接種に伴う危険性との差が縮まります。これがどの年齢で逆転するかは、感染で死亡する確率が国ごとに大きく異なること(日本は欧米の多くの国よりかなり低いため、ワクチンの相対的危険性が増す)や、危険のとらえ方が文化的背景によって異なることなど、これまでの情報だけで正確に結論づけるのは難しそうです。
なお、新型コロナに感染して死亡するリスクだけでなく、深刻な後遺症が残る可能性と、ワクチンで深刻な副反応が起こる可能性も考慮して比較することがさらに望ましいですが、まだ適切なデータがそろっていません。また、症状の異なる後遺症と副反応の深刻さをどのように定量的に比較できるかも大変難しい問題です。したがって、ここでは死亡例に注目して考えてみます。
ここでは議論していませんが、感染の拡大・鎮静の推移は、緊急事態宣言の発出や停止、そのタイミング等も大きな影響を与えます(参照:松田さんの論考)。ただし、各国のどう言う対策がどの程度、どういう風に貢献したか、するかの詳細は、必ずしも分かっていないようです。“ファクターX”という呼称はそれを象徴的に表わしています。

以下、できるだけ公的機関から公表されているデータをもとに、どんなことがわかるか“科学的に”議論します。話の順番は以下の通りです。

I. 新型コロナ感染症の特徴
II. mRNAワクチンの接種効果
III.ワクチン接種に伴う副反応

それぞれの話の最後に、箇条書きでまとめを載せました。まず要点だけ知りたいという場合は、そちらをごらん下さい。

I.新型コロナ感染症の特徴 ~感染率や死亡率は年齢によってどう変わる?~

  【図1】
 
  【図2】
 
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【陽性率や死亡率から読み取れる特徴】

図1をごらんください。横軸は年齢層で、10歳ごとの目盛りです。20は20歳~29歳を意味します。ただし80は90歳以上の高齢者も含みます。縦軸は陽性率・死亡率で、1目盛ごとに10倍になる対数目盛になっています。対数目盛を使うと、非常に小さな量と大きな量を、それぞれの特徴を残したまま一つの図で示すことができます。

赤い破線は、日本の新型コロナ陽性率です。新型コロナ感染が始まった2020年1月から2021年6月20日までの1.5年間の累積陽性数を年齢で分けて1年当たりに換算し、さらに各年代の人口で割ったものです。こうすることで年代ごとの新型コロナ陽性率が得られます。(新型コロナウイルス 国内感染の状況 | コロナウイルスの恐怖 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
この時期は、日本国民のほとんどはワクチンを打っておらず、かつデルタ株が主流になる前に該当します(図4、および、図5とその説明をごらん下さい)。
赤い破線を見ますと、20代の陽性率が最も高く、0.01くらいです(100人に1人)、70代が最も低く0.002くらい(500人に1人)になっています。比較的平坦な分布で、年代によって大きな違いはないことがわかります。
赤い実線は、日本の新型コロナ死亡率です。
赤い実線は、赤い破線と同じ時期の累積死亡数をやはり年換算し、さらにその年代の人口で割ったもので、新型コロナ死亡率です。陽性率とは異なり、年代が若くなると急激に低くなっています。例えば70代の死亡率は~0.0001(1万人に1人)ですが、30代だと~0.000001(100万人に1人)と、70代の死亡率の100分の1になります。この赤い実線で示される死亡率はほぼ直線で、20歳若くなるたびに10分の1低くなるという覚えやすい変化をしています。
10代以下の年代は死亡例がなく、赤の実線は20代のところでとまっています。黒の実線については後で説明します。

【諸外国のコロナ死亡率は?】

諸外国における、コロナ感染による死亡率と比べて見ましょう。図2は、図1で示した日本の新型コロナ死亡率(赤実線)に諸外国のデータ(青実線)を重ねたものです。詳しく説明しましょう。
青い実線は、欧州各国をはじめとする10数か国と地域の、2020年3月から5月にかけてのデータです。
赤い実線は、上にも記しましたが日本の年代別新型コロナ死亡率です。年齢層別死亡率の絶対値は各国異なりますので、年齢と共にどう変化するかを見るため、青実線を上下にずらせ、赤実線と重ねてあります。左下の赤い破線は、赤実線を0歳代に向けて直線的に延長したもので、日本の10代、0歳代の予想死亡率になっています。諸外国の新型コロナ死亡率と良い一致を示しています。
20代から70代にかけて、青実線と赤実線は見事に重なっています。これは、相対的な年代別死亡率は、日本も諸外国もほぼ変わらないことを示しています。
青実線で示した諸外国の10代と0歳代の死亡率は日本の予想死亡率である赤破線とほぼ一致しています。日本でこの年代の死亡例が見られなかったことも理解できます。
このように、新型コロナは年齢によって怖さが何桁も変わる特異な伝染性疾患です。新型コロナの感染対策をたてる際にも、考慮に入れるべき重要な特徴と言えます。
なお、2021年8月以降主流になっているデルタ株でこの傾向がどう変化するかは大変気になるところで、あとで検討します。

  【図3】
 
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【コロナ感染で死亡する確率を、全死亡率から考える】

日本で病気や事故など様々な理由で亡くなる率と、新型コロナで亡くなる率を比較してみましょう。図1の赤実線と黒実線の比較です。
新型コロナ感染による死亡率と比較するため、2020年の一年間に何らかの理由で死亡した人数を対応する年齢層の人口で割ったものを図1の黒実線で示しました。ここでは全死亡率と呼びます。
70代だと~0.02(100人に2人)、10代だと~0.0002(10000人に2人)程度です。このように全死亡率は、おおまかには30歳若くなるたびに約10分の1になっており、新型コロナ死亡率よりゆっくりと変化することがわかります。

つまり、新型コロナ死亡率が全死亡率に与えるインパクトも高齢者で大きくなり、70代以上では~0.8%(死亡者1000人中8人が新型コロナで死亡)ですが、20代では~0.1%(1000人中1人)まで小さくなります。この見方でも、新型コロナは高齢者により怖い感染症になっています。
ただ70代を見ましても、新型コロナ以外の死因が99.2%で、我々のまわりには様々な危険が潜んでいることがわかります。新型コロナは深刻な感染症であり、不用意に感染することは極力避けねばなりませんが、ロックダウン等、一般的な社会活動/生活/人権をどの程度制限するのが適切かは、広い視野から議論すべきで、科学的知見だけで判断できる事項ではないと考えられます。

図3は、日本(赤線)と米国(黒線)、英国(灰色)の1000万人当たりの新規陽性者数(破線)と新規死亡数(実線)の推移です(新型コロナウイルス感染 世界マップ:日本経済新聞 (nikkei.com))。縦軸は図1,図2と同様対数となっており、一目盛で10倍です。図から、英国や米国の陽性率や死亡率は、ほとんどの期間日本の数10倍でしたが、緑枠で囲んだ2021年4月以降に注目しますと、陽性率は英米に近いレベルで感染拡大していることが分ります。
図1の陽性率・死亡率(赤破線、赤実線)は、図3の赤の横棒で示した期間に対応しており、感染初期から4つのピークを含み、5番目の陽性数増加が始まるまでになります。

  【図4】
 
  【図5】
 
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図4は65歳以上の高齢者の新型コロナワクチン接種率の推移です(日本国内のワクチン接種状況 副反応の情報 新型コロナウイルス|NHK特設サイト)。図1で引用したデータは、2020年1月から2021年6月20日までの1.5年間にわたるものでした。ワクチンが効き始めるのに3週間程度を要すると言われているので、図1の陽性数と死亡数の年齢依存性はほぼワクチン未接種時の様子を反映していることになります。

図5の紫棒は、東京都におけるデルタ株比率の推移を示します。赤紫は英国型(アルファ株)・南アフリカ型(ベータ株)・ブラジル型(ガンマ株)、紫はインド型(デルタ株)、灰色は従来型です。8月に入るとほぼ感染力の強いデルタ株になっています。全国的にも少し遅れながらこのような経緯をたどっていると考えられます。
したがって、図1のデータはデルタ(δ)株が有力になる前の傾向を反映しています。逆に、8月以降の陽性者数や死亡数は、ワクチン接種とデルタ株という2つの要素が綱引きしながら推移していくことになります。
なお図3から分かるように、第5波の感染拡大は6月末に始まっており、図5でデルタ株の割合が急速に伸びているときとほぼ時期が一致しています。

Iのまとめです。

  1. 新型コロナの陽性率は年齢層で大きく違わない
  2. 新型コロナ感染による死亡率は年齢層で大きく異なり、高齢者ほど危険(20歳違うと10倍になる)
  3. この死亡率の年齢依存性は、陽性率、死亡率の大きく異なった諸外国でもほぼ共通していた
  4. デルタ株は日本では2021年6月以降拡がりはじめ、8月にはほぼデルタ株になった

II.次にワクチンの接種効果を見ましょう。

まず新型コロナワクチンの特徴からはじめます。
mRNAワクチンという画期的なワクチンが開発され、開発期間が大幅に短縮されるとともに、これまでのワクチンよりはるかに高い有効性が実現されています。今後現れるであろう新種のウイルスでも迅速に対応できるようで、大変心強い限りです。人類は、ウイルス感染症に対してこれまでとは質的に異なる強力なツールを手にしたといえます。

【有効性とは?】

ファイザー社ワクチンの有効性は95%と報告されています。これは、完全接種(2回接種)のあと2週間以上経ってからの陽性率が、未接種の場合の陽性率の5%(20分の1)に抑えられるという意味です。ただし感染は発症数で確認しているので、未発症数(不顕性感染)は含まれないようです。例えば、図1の70代の陽性率を見ますと~0.002(1000人に2人)ですので、この時期にワクチン接種ができたと仮定しますと70代の陽性率は~0.0001(10000人に1人)になる計算です。このように有効性は、ワクチン未接種グループの感染率と接種グループの感染率の比から導きますので、感染率の異なる国や地域でも使える普遍的な概念になっています。
なお、5%(=100%-95%)が独り歩きして、接種しても5%は感染するという説明がネット上で見られることもありますが、誤りです。たとえば、未接種グループの10000人が一か月の間に100人感染するような感染状況の時、同じ環境で接種したグループの10000人だと一か月の間に5人(100人の5%)しか感染しないというのが、有効率95%の意味です。従って、人出が増えるなり、接触が増えるなりして未接種グループの10000人中200人が感染するような状況になりますと、接種グループの感染者も10人(200人の5%)に増加することになります。
有効性と年齢層の関係も気になるところですが、ほとんど年齢によらず、90-95%の範囲内だという報告がありました。
ちなみに、なじみのあるインフルエンザワクチンの有効性は60%程度で、新型コロナ用に開発されたmRNAワクチンが優れモノであることがわかります。

【ブレークスルー感染:接種後に感染・死亡する確率は?】

ワクチン接種後の陽性率は接種前の5%に抑えられますが、感染しなくなるわけではありません。これをブレークスルー感染と呼びます。接種後感染したことを驚いたような報道が時になされますが、はじめからわかっていたことです。未接種者への陽性率が上がりますと、接種者の陽性率(ブレークスルー陽性率)も比例して上がることになります。
ブレークスルー感染でも重篤化したり死亡したりする可能性があります。
ブレークスルー感染死亡率(ブレークスルー感染による死亡数/接種人数)は未接種時の死亡率と比べてどの程度になるでしょうか。これは、有効性に加えてワクチンの効力を評価する上で、重要な要素になります。
国内のデータは見つかりませんでしたが、米国のCDCがレポートを出しています。それによると、今年の2021年1月1日から4月30日の4か月間(図3の黒横棒の範囲)において、ブレークスルー感染が10000例余り報告され、ブレークスルー感染による死亡は160名だったようです。米国は州の独立性が高く、死亡例報告が各州から適切になされたかは不明だとの注釈もありました。
米国では1月中旬からワクチン接種が始まり、4月末における米国の完全接種率は全人口の~31%で、ほぼ1億人です。したがって、平均5000万人の4か月間のブレークスルー感染死亡率(ブレークスルー感染死亡数÷接種人口)は、~0.00032%(100万人に3.2人)と評価できます。
同じ期間の米国の新型コロナの陽性数は1250万人、死亡者は23万人(新型コロナウイルス感染 世界マップ:日本経済新聞 (nikkei.com))でしたので、未接種の場合は新型コロナ陽性率(陽性数/未接種人口)と死亡率(死亡数/未接種人口)はそれぞれ~4.5%と~0.08%のようです。
このことから、ブレークスルー感染死亡率は、未接種者の感染死亡率の~0.4%(0.00032÷0.08)、すなわち1/250に抑えられている計算になります。報告から漏れているブレークスルー感染死亡数は不明ですが、死亡率を抑えるという意味でも大きなワクチン接種効果がありそうです。

では、日本におけるワクチンの接種効果を見ましょう。

  【図6】
 
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【高齢者のワクチン接種は陽性率と死亡率を下げる】

図6は、65歳以上へのワクチン接種とデルタ株の蔓延によって陽性率と死亡率が、それ以前と比べてどう変化したかを示しています。赤線は図1と同じで、ワクチン接種とデルタ株蔓延が始まる前の状況で、赤破線は陽性率、赤実線は死亡率です。

青線は、8月5日から8月18日の2週間を年換算した陽性率(青破線)と死亡率(青実線)で、デルタ株に置き換わって感染が拡がり(図3)、同時に高齢者へのワクチン接種も進んだ時期のものです。この時期の65歳以上へのワクチン二回接種率は80%程度、一回接種率は88%程度なので(図4)、65歳以上の新型コロナ感染可能人口(未接種人口)は1/5以下に減ったはずで、陽性率も1/5以下に減少すると予想されます。なお、図中の“接種者当たりの死亡率”については、IIIの「ワクチンの副反応を考えよう」で説明します。

【デルタ株で50代以下の陽性率が13~15倍に】

図6の青点線を見ると、ワクチン未接種の50代以下の人が新型コロナに感染する率は、年代によらず赤点線の13~15倍高くなっています。実際、これまでにない勢いで感染の拡大している時期であることが、図3の赤破線からもわかります。これはデルタ株の蔓延によって陽性率が増加したことが重要な要因だと考えられます。

【70代以上の陽性率の伸びは50代以下の1/5に】

いっぽう70代以上を見ると、陽性率は接種前より増えてはいますが2.5倍程度で、50代以下と比べて伸び率は1/6~1/5に抑えられ、ほぼ予測通りの結果になっています。60代は65歳以上がワクチン接種対象であったため50代以下と70代以上の中間的なふるまいになっています。
なお上でもふれましたが、50代以下の陽性率増加は年代によらず13~15倍でした。これは年齢によらない、何かの共通の原因があることを強く示唆しています。既にふれたようにデルタ株の蔓延がその大きな原因だと考えられます。これまで感染が新しい局面に入るたびに20代から30代の行動が問題視されてきましたが、この指摘は必ずしも的を射ていないようにみえます。現象の正確な説明には、定量的観察と科学的思考が必要であることがわかります。

【70代以上は死亡率も減少した】

50代以下では青実線は赤実線の5~6倍になっていて、陽性率ほどではありませんが、死亡率でも感染拡大が確認できます。いっぽう、ワクチン接種が進んでいる70代以上の死亡率は、接種前のほぼ1/2に下がっています。図3からも分かるように、全体の死亡率は増加に転じたばかりで、今後どこまで増加するかは要注意ですが、これまでのところ70代以上は低く抑えられていることがわかります。
なお、青実線の50代以下での傾きは、赤実線より緩やかになっているようにも見えます。年代ごとのワクチン接種率の違いも影響していると考えられますが、今後の注意深い観察が必要です。

【デルタ株とアルファ株でワクチンの有効性は変わる?】

デルタ株については英国で詳しい調査があり、陽性率が高くなるばかりでなく、ワクチン未接種の場合は感染者が入院に至る確率もアルファ株の2倍近く高いようです。
ワクチン接種の有効性も90%程度まで下がるようです。ただ、感染者の入院率はアルファ株と同程度に抑えられたようで、ワクチン接種のもう一つの利点が明らかになってきました。
デルタ株に対する年齢層による有効性の違い、ブレークスルー感染死亡率違い等々、今後の研究がまたれます。
なお、イスラエル保健省は7月6日付で、mRNAワクチンのデルタ株に対する有効性が40%程度まで低下したと発表しています。これは、上に紹介しました米国、英国からの報告とは大きく異なっており、今後、国内、また諸外国からの情報がどう推移するか目が離せません。ただ、日本におけるデルタ株のこれまでの振る舞いは、図6で見ましたように、英米と同様の傾向になっています。

IIのまとめです。

  1. mRNAワクチンの有効性は高く、ワクチン接種を済ませた高齢者の新規陽性率は50代以下に比べて予想通り減少しました。ワクチンの接種効果が明瞭に認められたといえます。
  2. 米国の報告では、ブレークスルー感染による死亡率は未接種時の死亡率より大幅に減少しているようにみえます。
  3. デルタ株は陽性率が高いことが知られていますが、ワクチン未接種の場合、陽性者のうち入院に至る確率もアルファ株の2倍程度高くなるようです。いっぽうワクチン接種を済ませていると、入院率はアルファ株の場合と同程度で済むようです。
  4. ワクチン接種後、時間が経つと抗体価が減少することが分ってきました。抗体価減少とブレークスルー陽性率との定量的関係は不明で、今後の研究がまたれます
  5. 死亡率は年齢が下がると急激に低下するので(図1)、今後のワクチン接種は60代前半、50代、次いで40代と、高齢者側から適切な年齢層まで順次進めることで、新規のコロナ死亡数を急激に減少させ、それによって総死亡数も最小化できると考えられます。

III.最後にワクチン接種の副反応を考えます

  【図7】
 
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今回開発されたmRNAワクチンは、これまでにない高い有効性を持っています。しかしまったく新しい考え方で開発された強力なワクチンであるだけに、副反応も大きいのではという懸念もあり、非科学的な噂も含めネット上で様々な話題が飛び交っています。
いっぽう、ワクチン接種を勧める立場からも、副反応を定量的に議論せず安全を前提に情緒的なメッセージを発信している場合が多々あり、かえってワクチンに懐疑的な人々の不信感をつのらせているように見えます。
そこで、厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会でとりあげられた死亡事例について、できるだけ定量的にどんなことが言えるかを考えてみます。

まず、2021年7月30日までにワクチン接種に伴なって報告された年代別死亡数を図7に示します。横軸は図1と同じで、例えば、50は50歳から59歳までを示します。縦軸は報告死亡数です。死亡事例が高齢者に大きく偏っていることが分ります。
なおこの部会は、報告された死亡例がワクチン接種を原因としているかどうかを判断していません。これについてはあとで議論します。

【高齢者へのワクチン接種は推奨される】

厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で取り上げられた死亡数(以下、「報告死亡数」)は、2月の1件にはじまって、7月30日までに912件あります。接種数は~8300万回程度だったようですので、この場合の接種者当たりの死亡率は~0.00001(10万ショットで1人)です。912件のうち830件(90%以上)は、接種を受けた70%以上を占める65歳以上でした。
この段階で、65歳以上の1回接種率は~88%、2回接種率は~80%なので(図4)、65歳以上の人口を3600万人として、接種数は~6050万回です。したがって、65歳以上の接種者当たりの死亡率は、~0.000015(10万ショットで1.5人)となります。
新型コロナ感染による一年当たりの死亡率と比較するため、接種者当たりの死亡率を灰色の横線で図6に示しました。赤実線よりじゅうぶん下にあることがわかります。実際、65歳以上のコロナ累計死亡数は8月半ばで12000人程度だったので、2020年1月から2021年8月までの期間の累計死亡率は~0.0003(1万人に3人)となり、上のワクチン接種に伴なう接種者当たりの死亡率の20倍あります。
したがって、報告された死亡例すべてがワクチンを原因だった場合でも、高齢者はワクチン接種によって余命の伸びることがわかります。

【65歳未満の接種者当たりの死亡率は、コロナ感染による死亡率に近づく】

次に65歳未満のワクチン接種後の死亡例を考えます。59例の報告がありました。7月30日時点での65歳未満の接種回数は2300万回程度のようなので、接種者当たりの死亡率は~0.0000026(10万ショットで0.26人)と65歳以上の場合の~1/6になりました。
65歳未満接種の年齢分布はよく分からないので、接種者当たりの死亡率を図7にグラデーションのかかった黒横線で示しました。実際、感染が原因で亡くなった65歳未満の人は累計で900人程度になりますので、この間の新型コロナによる死亡率は~0.00001(10万人に1人)であり、ワクチン接種後の接種者当たりの死亡率の~4倍あります。接種者当たりの死亡率との差は大幅に縮まったものの、65歳未満の場合でも全体としてはワクチンを接種することが有利と言えそうです。
事例が少ないことや年代別の接種数がわからないため、ここでは65歳未満の平均値での議論にとどめざるを得ませんが、図1や図6で見たように新型コロナによる死亡率は年齢層が下がると低くなります。したがって、ワクチン接種に伴う相対的危険性は若くなるにつれて高くなるものと予想されます。
ちなみに、日本におけるワクチン接種年齢の下限は当初16歳以上となっていましたが、ファイザー社は接種年齢を12歳以上に引き下げたい旨2021年4月に申請しました。厚労省の対応はすばやく、翌月の2021年5月31日に開かれた第22回厚労省予防接種ワクチン部会では、接種年齢を12歳まで拡げることを決めています

【厚労省はワクチン接種後の死亡例を精査・分析・公表せよ】

厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会では、死亡報告例のほぼ全数を「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できない」と、判断保留を続けています。報告死亡例はワクチン接種に伴う最も深刻な副反応に関わる重要情報ですが、全く活用していないことになります。
国民の命と健康に責任を持っている担当官庁の部会としては、情報が不足しているというなら、不足情報を集めて精査し、それを公表して国民と情報共有することで、mRNAワクチンへの信頼感も増すと考えられます。
なお厚労省第66回予防接種/ワクチン分科会副反応検討部会資料1-5-1の<参考>では、これまでの死亡事例で「mRNAワクチンとの因果関係があると結論できた事例はない」と記した後、「副反応疑い報告制度と健康被害救済給付制度は独立しており・・・、当該事例が、健康被害救済の対象外である旨決定されるものではない」、また「個々の事例単位では、偶然に何らかの疾患を発症した場合との判別が困難であっても・・・統計的に解析の上、報告される各種疾患と接種との因果関係を評価していくことは重要である」との記載があり、一定の配慮を示すとともに、これまでは、個々の事例単位の検討にとどまっていたことを示唆しています。

【海外のワクチン接種後の死亡例は?】

諸外国の例を見ましょう(厚労省第66回予防接種/ワクチン分科会副反応検討部会資料1-5-1 )。
米国では2020年末から2021年7月26日の間に3億4200万回の接種があり、6340件の死亡報告があったようです。接種者当たりの死亡率~0.000019(10万ショットで1.9人)と日本の倍程度です。
英国では2021年4月から7月下旬にかけて行われた接種のうち160万回について8件の死亡報告があったようです。統計が悪いので、単なる参考ですが接種者当たりの死亡率~0.000005(10万ショットで0.5人)となります。
韓国では、8月末までに~4150万回の接種が行われ、756人が亡くなったようです。死亡率は~0.00002(10万ショットで2人) と米国と同程度になっています。なお、韓国では死因を調査検討し、3人について因果関係を認めたようです(公的機関のレポートは見つけられませんでしたので要注意ですが、記事があります。また、1人について因果関係を公式に認めたという記事がKorea Biomedical Reviewにありました。日本政府の判断保留より進んでいると言えます。

【海外での若年層への接種は?】

2021年9月3日、英国のワクチン・予防接種合同委員会は、ワクチン接種はまれに心筋炎を発症すること等があり、12-15歳には推奨しないという報告を最高医務責任者(Chief Medical Officer)に提出しました。しかしその10日後、英国政府は、12-15歳への接種を決定したようです。医療業界でも様々に議論がなされ、政府もぎりぎりの決断をしたことが伝わってきます。人口当たりのコロナ死亡率が日本の10数倍ある英国でも若年層への接種は慎重に議論していることは印象的です。日本では、ファイザー社の申請からわずか一か月後の2021年5月に12歳までの接種を認めています。
いっぽう、CDCレポートでは、米国で2020年12月14日から2021年7月16日までの7か月間に12-17歳の890万人に接種し、副反応を接種後1週間にわたって調査し、14の死亡例を含む9246の副反応報告があったとしています。分析した結果、米国は12-17歳へのワクチン接種継続を推奨しています。なお、12歳未満へのワクチン接種は予定していないということです。
この米国の接種者当たりの死亡率は、~0.0000016(10万人に0.16人)となり、米国の全年齢層の接種者当たりの死亡率のほぼ10分の1です。これを、図6の該当する年齢層のところに灰色の横線で示しました。灰色の横線は、赤点線よりは高く、青実線の延長と交差するように見えます。
ワクチン接種に伴う接種者当たりの死亡率は、日・米・英・韓では大きく変わらず、全年齢総平均では10万ショット当たり1~2人、若年層ではほぼその10分の1になっています。
ところで、日本の新型コロナ死亡率は米国や英国の15分の1程度で、2021年9月1日段階では10代と0歳代の死亡者は出ていません。日本では、10代以下への接種は、英米以上に慎重な検討と判断が必要であることがわかります。

追記1:本稿完成後の9月7日に、新型コロナに感染していた基礎疾患を持つ10代の男性が亡くなりました。
追記2:ファイザー社は9月20日、5-11歳への接種を各国の規制当局に対し、近く承認申請すると発表しました。上にも記しましたが、厚労省の冷静で慎重な検討が望まれます。

  【図8】
 
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【ワクチン接種後の接種者当たりの死亡例は、接種直後に集中】

次に、日本における報告死亡例(ワクチン接種後の死亡)について、厚労省も言及していた簡単な統計的分析を試みました。先にも書いたように、厚労省分科会では、これらの死亡例は接種との関係を判断できないとし、それ以上の分析は行っていないようです。
まず、報告された死亡がワクチン接種後の何日目であったかを図8に示します。縦軸は報告死亡数で、黒実線が全報告例です。
目につくのは、接種した次の日に鋭く高いピークが現れ、数日で減少することです。ワクチン自体が死因かどうか不明ですが、ワクチン接種に伴う一連の作業が影響して死が誘発された様に見えます。
“高齢者へのワクチン接種”の項で見たたように、報告例の90%以上が65歳以上でした。そこで、65歳未満の59例についての分布を、図8の青実線で示しました。65歳以上の場合と異なり、接種から数日後に幅広のピークが見られます。死亡に至る経緯が異なるもののように見えますが、詳細は不明です。

【ワクチン接種後の死亡は、基礎疾患が悪影響】

次に健康状態との相関を見るため、「基礎疾患無」と記載のあった例に注目しました。69例あり、これを図8に赤実線で示しました。青実線と人数も分布も似ています。69例の内訳は、65歳未満が8例、65歳以上が61例となっています。65歳未満の59例中51例は基礎疾患のあったことがわかります。
このように、65歳以上の接種者当たりの死亡例では90%以上、65歳未満でも80数%が基礎疾患を持っており、年齢によらず基礎疾患とワクチン接種後死亡率は強い関係があるようです。基礎疾患によっては新型コロナ感染による死亡率も高くなるでしょうから、両者を見比べてワクチン接種の判断をすることになります。
基礎疾患の有無で接種者当たりの死亡率がどの程度変わるかは重要な情報ですが、ワクチン接種人口中の基礎疾患割合のデータが手元になく、今回、評価できませんでした。
なお、報告死亡例における基礎疾患の有無については、死亡報告を受けた後、分科会が精査しているようで、当初“基礎疾患無”、“不明”とされていたもののうち36例は基礎疾患あり(腰痛、認知症を含む)に変更されています。従って、ここで引用した基礎疾患無の69例は、そのような精査を経てなお基礎疾患とするに足るものが見つからなかった場合に限られていることがわかります。

名大医小児科の小島勢二さんは、図8と同じ趣旨の図で接種と死亡の相関を議論するとともに、ワクチン接種と血管系疾患誘発との関係を分子レベルで議論しています
そこで、報告死亡例のうち基礎疾患無と記されている69例について死因を調べました。すると、~40%の29例が心臓血管系疾患でした。さらに65歳未満の基礎疾患無に条件を絞ると、20代が2例、30代が1例、40代が2例、50代が1例、60代(60-64)が2例の合計8例で、2例を除く6例が心臓血管系疾患を死因としていました。ワクチン接種と心臓血管系疾患誘発との関係が強く示唆されています。

【ワクチン接種の妥当性は、接種年齢と感染率で大きく変わる】

ワクチンを接種すべきかどうかは、接種しなかったときの危険性と接種したときの危険性を比較することで判断されます。
感染が拡がって死亡者が増えると、ワクチンに要求される安全性は低くなり、死亡者が減ると高くなります。つまり、死亡者が多くなるとワクチンの安全性よりも効果を重視し、死亡者が減るとワクチンの効果より安全性を重視することで、死亡数の最小化を図ることになります。
米国ではこれまでに新型コロナで63万人余りが亡くなっており、人口当たりで日本の~15倍に達しています。米国ではワクチンに要求される安全性が~15倍程度低くてもよいことになります。ドイツでも新型コロナ死亡率は日本の9倍程度に達しています。ファイザー社が接種年齢を12歳まで引き下げたのは、米国やドイツなどの感染状況を反映してのことと考えられます。
これまで見てきたように、新型コロナによる死亡率は年齢と共に大きく下がります(図1,6)。このため、若い年代ほどワクチン接種に安全性を求めるのは自然なことと考えられます。

【接種の適否をどう判断するか?】

具体的にどの年代まで接種すべきかは、感染に伴う死亡率とワクチン接種に伴う死亡率を比べることが一つの考え方になります。
現在の日本政府の基本方針は、このような得失を考慮し、各個人が接種を判断してほしいという個人の基本的人権に配慮した妥当なものになっています。地域や職場、学校現場などで集団接種を進める際、この原則が守られるよう十分な配慮をすることが大変重要になります。
もちろん、判断を個人にゆだねる場合、新型コロナの後遺症や死亡例とともにワクチン接種後の副反応の事例や死亡例、基礎疾患との関係等、じゅうぶんな情報開示をし、専門家の分析や見解を示すことは必須と言えます。
なお、感染は世代をまたいで起こるので、重症化しにくい若年層の感染は重症化が懸念される高齢者や体質等の理由で接種がうけられない人への感染も拡げる可能性があります。したがって、全世代を含む社会全体や国単位で死亡数を最小化することを優先するという全体主義的な考え方を採用することも可能で、この場合は、若年層には若干の不利益/不安があっても接種を全年齢層に拡げるべきだという結論になります。日本の公共放送が繰り返し流している若者向けショートメッセージにもこの傾向が見られます。
上に書きました二つの判断基準は、科学的事実の確認と分析だけでは結論が出せず、社会や政治が深く関わる問題であって、接種前に公開で公平な議論を深めておくことが強く望まれます。
なお、高齢者は優先的にワクチン接種を受けることで、すでにかなりの便宜を社会から得ています(図6)。ワクチン接種については、このような社会的公平性の視点も重要だと考えられます。

【ワクチン接種における軽微な副反応と重篤な副反応は、関係しているか?】

若いほど、また、一回目より二回目の接種で、副反応が多く強くなることが知られています(例えばこちら)。このような傾向は、より深刻な副反応(最悪は上で議論した死亡)についても成立する可能性があるのではと懸念されます。
米国では10代のワクチン接種に伴う接種者当たりの死亡率が10万人に0.16人と、日本の65歳未満の死亡率と同程度であったことを考えると、さらなる調査と検討が必要に見えます。

IIIのまとめです。

  1. ワクチン接種に伴う接種者当たりの死亡率は日・米・英・韓でほぼ一致し、10万ショット当たり1~2人と同程度の率になっています。
  2. 日本の65歳以上高齢者の場合、ワクチン接種に伴う接種者当たりの死亡率は、報告例がすべてワクチン接種に由来すると仮定した場合でも、2021年8月半ばまでの新型コロナ感染による年間死亡率の~1/20程度にとどまっており、接種が強く勧められます。
  3. 日本の65歳未満の場合でも、接種に伴う接種者当たりの死亡率は、なお新型コロナ感染による死亡率より低く、65歳未満全体としては接種が勧められます。
  4. ワクチン接種に伴う報告死亡例の~90%は基礎疾患を持っていました。したがって、基礎疾患の無い場合、実質的死亡率は、接種者当たりの死亡率よりかなり低くなると予想されます。定量的考察には、年代ごとの基礎疾患を持つ割合に関する情報が必要になります。
  5. 若年層の接種者当たりの死亡率は、米国に12-17歳のデータがあり、10万人に0.16人で、米国ではこの年齢層への接種を推奨しています。ファイザー社も米国と同程度の新型コロナ陽性率・死亡率の国を標準として、12歳までの接種が可能だとしていると考えられます。
  6. 一方、米国と同程度の新型コロナ陽性率・死亡率の英国では、ワクチン・予防接種合同委員会は9月のはじめ12-15歳への接種は推奨しないとしていましたが、英国政府は10日後接種を決定しています。ぎりぎりの選択であったことがわかります。日本は対照的で、ファイザー社の申請から一か月後の5月末には12-15歳への接種を認めました。
  7. コロナ感染による死亡率の低い日本でのワクチン接種年齢の下限を考える際は、接種者当たりの死亡率と各国で大きく異なる新型コロナ感染死亡率を慎重に比較検討することが求められます。
  8. 日本では、ワクチン接種に伴って報告された死亡例は、すでに900を越えています(7月30日現在)が、すべての報告例について「情報不足でワクチン接種との因果関係は評価できない」と判断を保留したままです。厚労省分科会は、これらの死亡例を精査/分析し、その結果を公表すべきです。

<その他の発信情報>

1.松田卓也副理事による情報発信

● 当法人松田副理事長が、当法人附置機関である「基礎科学研究所」のページ内、科学・科学周辺のエッセイ、論考など、今後の研究所の活動につながる問題提起を行う「科学の散歩道」のコーナーを通じて情報発信をしております。

 英国の新型コロナ対策の基礎英国の新型コロナ対策の基礎
 新型コロナウイルス: マスクをするかしないか、それが問題だ
 新型コロナとビタミンD
 新型コロナとジョンソン首相、トランプ大統領
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8  新型コロナと人種、血液型
9  新型コロナと緑茶、玉ねぎ
10  新型コロナでアジアの死者が少ないこととBCG予防接種仮説
11  新型コロナと森林浴
12  新型コロナとスウェーデン、アジア諸国
13  コロナ後の世界
14  カール・フリストンの新型コロナに対する動的因果モデル
15  新型コロナと免疫的ダークマター
16  新型コロナとうがい
17  新型コロナとマスク
18  新型コロナとバチャ充の世界
19  コロナは客観的に見れば怖くない
20  新型コロナとファクターXとマスコミ信頼度

● 松田副理事長執筆エッセイ

新型コロナとシンギュラリティ

2.西浦博オンライン講演会

2020年5月12日(火)に、 Mathematical Biologyの専門家として厚労省クラスター対策班の活動を支えておられる西浦博氏(北海道大学教授)を招いてのオンライン講演会(8割おじさん西浦教授に聞く~新型コロナの「実効再生産指数」のすべて)が開催されましたが、ここでNPO法人あいんしゅたいんより事前質問を行いました。

詳細はこちらをご覧ください