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新型コロナと温冷浴

詳細

要約

新型コロナに感染しないためには、手を洗うとかマスクをするとかいろいろあるが、万が一感染した場合に、それが重篤になるかどうかはその人の自然免疫によって決まる。自然免疫を強化する一つの方法としてサウナ風呂に入るか、あるいは熱いシャワーと冷たいシャワーを交互に浴びる温冷交代浴を勧める。

サウナ風呂の効用

私は米国のMedCramというYouTube番組を見ている。そこではゼールト博士(Dr. Roger Seheult)が新型コロナに関する最新の情報を伝えてくれる。また博士のアイデアも話してくれる。彼は現役の医者としてカリフォルニアの病院でコロナ患者を救うために日夜健闘している。12時間シフトだというが、それでいて新しい論文を読み、毎日情報を発信しているのはすごい。そのMedCramで面白い話があった。

Coronavirus Pandemic Update 46: Can Hot/Cold Therapy Boost Immunity? More on Hydroxychloroquine
(コロナウイルス・パンデミック更新 46 温冷療法は免疫を強化するか? ハイドロキシクロロキンに関する続報)

まず風邪とかインフルエンザにかかると熱が出る。普通は熱が出るとそれを下げようとして解熱剤を飲む。しかし熱が出るのは、体が体温を上げることによってウイルスや細菌と戦っている証拠で、それを無理に下げることはむしろよくない。病気になると熱が出るのは、人間に限ったことではなく、例えば鳥でもそうなのだ。つまり体温を上げるということは、ウイルスや細菌と戦うために生物が進化的に獲得した手段なのだ。そこでそのことを逆に使って、あえて体温を上げることにより、風邪やインフルエンザ、さらには新型コロナと戦えないかという話である。

人体がウイルスや細菌と戦う機構が免疫である。免疫には大きく分けて自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫は体内に細菌やウイルスが入ってきたときに、最初に発動される免疫だ。主として白血球などが担う。獲得免疫はしばらくして体が細菌やウイルスを殺す抗体を作るもので、感染直後には働かず、しばらくしてから働く。ワクチンとはまさにこの獲得免疫を利用するものである。ここでの話は獲得免疫ではなく、自然免疫である。

新型コロナウイルスに感染すると、ウイルスは人間の自然免疫を低下させる作戦をとる。具体的には単球とかナチュラル・キラー細胞という免疫細胞を減らすのである。そこで人間サイドとしては、なんとか自然免疫の低下を防がなければならない。そのためにあえて体温を上げるという手法を考える。

最近の研究で分かってきたことは、単に体温を上げるだけではなく、そのあとに冷やすとさらに良いという。例えばサウナ風呂がそうだ。サウナでは空気を高温にした部屋に入り、体温を上げる。そのあと、冷水浴をする。これを数度繰り返す。

サウナはフィンランドでよく使われている。そこでフィンランドと地理的にも人口的にも似た国、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーと比較する。とくに人口100万人当たりの死者数を比較するとフィンランドが有意に低いのである。これはサウナのおかげではないかというのが、ゼールト博士のアイデアである。ちなみに日本人も風呂好きである。日本が欧米に比べて新型コロナの被害が少ないのは、そのせいではないかと彼は言う。あくまでも憶測であるが。

というわけで、サウナが良さそうなのだが、とはいえ我々がサウナに簡単に入れるわけではない。家にサウナ風呂がないからだ。街のサウナ風呂に行くのも、それはそれで他人との接触があり、感染の恐れがあるかもしれない。そこでサウナの代わりに自宅で熱い風呂に入り、そのあと冷水シャワーを帯びればよいのではないかと思った。それについては後述する。

動画の最後で語られるハイドロキシクロロキンについては別に論じる。 

スペイン風邪の治療法の教訓

先の動画の続きである。

Coronavirus Pandemic Update 47: Searching for Immunity Boosters & Possible Lessons From Spanish Flu
(コロナウイルス・パンデミック更新47: 免疫増強法を探る、スペイン風邪からの教訓)

体温を上げることが感染症の治療に効くのではないかという考えは昔からあった。第二次大戦前の話だがワグナー・ジュレッグ(Julius Wagner-Jsuregg)というオーストリアのノーベル賞学者が、神経梅毒の治療法として、患者をわざとマラリアに感染させて、体温を上げて免疫を強化して神経梅毒を治した。もちろんそのあとでマラリアは別の薬で治した。

しかしマラリアにわざと感染させるというのは、はなはだ乱暴な治療法である。体温を上げるためなら、そんなことをしなくても患者を熱い風呂に入れればよいのではないだろうか。そこで温熱療法というものが考えられた。ケロッグ(John Harvey Kellogg)が温熱療法を開発した(ちなみにケロッグ兄弟はケロッグ・コーンフレークの発明でも有名である)。

1918-19年にスペイン風邪が大流行して、世界中で5千万人の人がなくなったといわれている。当時はちょうど第一次世界大戦の最中であり、戦場から戻った米軍兵士の20%がスペイン風邪に感染した。陸軍駐屯地では、スペイン風邪に感染した兵士の16%が肺炎を発症した。当時は抗生物質も集中治療室も人工呼吸器も何もない時代である。ひとたび肺炎になると、その約半数は死亡する。実際、陸軍駐屯地では肺炎を起こした患者は16%で、そのうち40%が死亡した。つまり全体的にみるとスペイン風邪に感染した兵士の6.4%が死亡した。

あるサナトリウムではスペイン風邪の治療法として温熱療法を行った。入院患者と外来患者で成績は違うのだが、外来患者では肺炎になったのは8%で、そのうち47%がなくなり、つまり死亡率は3.8%であった。入院患者では肺炎になったのは2%で、そのうち55%がなくなった。つまり死亡率は1.3%であった。この死亡率は陸軍基地での死亡率6.4%よりははるかに低い。つまり温熱療法により肺炎になる確率が非常に低下するのである。

もっともこの種の温熱療法は戦後の抗生物質の普及とともに、病院での治療法としては完全に忘れ去られてしまった。しかし新型コロナウイルスに対して昔の温熱療法が使えないだろうかというのがゼールト博士のアイデアだ。新型コロナに感染した人が、重症になって病院に入院する前に1週間ほどの余裕期間がある。この時に温熱療法を行って免疫力を高めれば、病院行きの人が少なくなるはずだ。やってみる価値はある。 

温冷交代浴

調べてみると、この種の健康法は既にあり、温冷交代浴という。そのやり方も様々あるが、まず熱い風呂に入り、そのあと水風呂に入るか冷水のシャワーを浴びる。それを繰り返すのである。風呂に入る代わりに、熱いシャワーと冷水シャワーを交互に繰り返すだけでも良い。そしていずれにせよ最後は冷水で締める。そうすると体がポカポカとして気持ちがよい。この種の健康法は既に民間療法としてあり、免疫力を強化するとうたわれているが、具体的には単球という白血球の一種を増やすという機構のようだ。

ゼールト博士は毎日、病院から帰宅すると真っ先にシャワーを浴びる。そのやり方はまず5分間熱いシャワーを浴びる。それから1分間冷水シャワーを浴びて、また3分間熱いシャワーを帯びて、1分冷水シャワーを浴びて、3分熱いシャワーを浴びて、最後に1分間の冷水シャワーで締める。

実は私は、以前に熱いシャワーなしの冷水シャワーだけを浴びていたことがある。私は潰瘍性大腸炎という難病を患っていた。その症状を抑える薬にプレドニンというステロイド剤がある。これは免疫抑制の作用があるのだ。大腸に潰瘍ができるのは、自分の免疫が自分を攻撃するからなのだ。そこで免疫を弱めることにより、潰瘍を治そうという作戦だ。ステロイドはよくきくのだが、長い間使うと重篤な副作用がある。

ステロイドは本来、副腎皮質が作り出しているもので、薬でそれを補給すると副腎皮質がステロイドを作る能力が弱くなる。そこで私の主治医は、副腎皮質を鍛えるために冷水シャワーを勧めたのだ。冷水を浴びることはストレスである。ストレスを感じると副腎皮質からステロイドがでるのだ。

というわけで私は冷水シャワーを体験した。そのやり方だが、いきなり冷水を首や背中にかけるのは大変だ。まずは足先にかける。それから手にかける。つぎにお尻にかける。こうして徐々に慣らしてから、背中や首にかける。冷水をかける時間は10秒ぐらいと短くてよい。

冷水浴だけをすると風邪をひくことがある。それは冷水を浴びることはストレスであり、ストレスは免疫を下げるからだ。そこでまず熱い風呂に入ったり、熱いシャワーを浴びたりしてから冷水シャワーを浴びると、逆に免疫が強化されるというのが温冷交代浴だ。

ただし冷水シャワーを浴びるのは、けっこう勇気がいるので、冬から始めるのではなく、暖かくなってから始めるほうがよい。また高血圧の人はしないほうがよい。血圧が上がるからだ。私はむしろ低血圧なので問題はない。それから温冷交代浴をする前に、また後に水分の補給を忘れないように。普通の水よりはイオンが含まれたスポーツドリンクのほうがよい。

まとめ

新型コロナを防ぐために、あるいは感染した後に肺炎のような重篤な症状に至らないように自然免疫を強化するのがよい。その一つとして温冷浴がある。これが本当に新型コロナに効くという臨床的検証はまだなされていないので、アイデア段階ではある。でもできることは何でもして、免疫力を上げて新型コロナと戦いたいものだ。

付録

温冷交代浴のやり方の動画である。

Hydrotherapy 15 | Contrast Shower

 

   
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