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新型コロナとビタミンD

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要約

ビタミンDは骨の健康に必要であることは昔から知られていた。ビタミンDは新型コロナの予防に効果があるかもしれない。もちろん確証はないが、ビタミンDが一般的に風邪やインフルエンザを予防する効果があるとする論文はある。ビタミンDにはそのほかさまざまな有用な効果があり、ビタミンDのサプリメントを摂ることは無駄ではなく、むしろ推奨される。

本文

今回も新型コロナに関する話題である。新型コロナに感染すると治療法はなく、自分の持つ免疫力で戦うしかない。ここでいう免疫力とは人間が本来持つ自然免疫の強さのことだ(免疫学では免疫力という言葉は使わないが、ここでは使わせてもらう)。免疫力が強ければ、大部分の人は多少たちの悪い風邪程度で治ってしまう。ただし老人と基礎疾患を持った人は危険であるし、若者でも完全に安全ということはない。注意するに越したことはない。

それではどのようにしたら免疫力を上げることができるか。上げられないとしても、免疫力を弱らせないためにはどうしたら良いか。ネットでビタミンDをとるとよいという話が流れた。するとある病院が、その話には根拠がないという否定的な見解を流した。

私は、それは言い過ぎではないかと思う。たしかにビタミンDが今回の新型コロナ感染症の予防ないし治癒に効くという証拠はない。そんな治験をやっている時間的余裕はないからだ。つまり科学的な確固とした証拠はないことは先に言っておこう。しかしビタミンDを摂ることは気休め以上の効果はあるというのが本文の主旨だ。

昔からビタミンDは呼吸器疾患に効くのではないかという話はあった。たとえば呼吸器疾患の代表として結核があった。抗生物質が発明される前は、結核の治療は安静と日光浴であった。ビタミンDは太陽の紫外線を浴びることにより皮膚にあるコレステロールから生成される。だから結核療養のためのサナトリウムは高地にある場合が多かった。例えば堀辰雄の小説「風立ちぬ」ではヒロインの節子は富士見高原のサナトリウムに入院していた。ジブリの映画「風立ちぬ」でも主人公の堀越次郎の妻菜穂子はサナトリウムで日光浴しているシーンがあった。

ビタミンDは一般的に言って免疫力を強化することが分かっている。というよりむしろ、ビタミンD不足の人は免疫力が弱いという証拠がある。そしてビタミンD不足の人はけっこう多いのだ。

風邪やインフルエンザは冬にかかりやすいのは、冬は低温で乾燥していてウイルスにとって都合が良いという面もあるが、人々が太陽光を浴びる機会が少ないし、浴びても紫外線が弱いからビタミンDが不足しているという可能性もある。例えば米国では80%の人がビタミンD不足だと言われている。それは過剰な日焼け止めをするからだ。

また米国では黒人の方が新型コロナの被害が多いという。それには経済的な側面もあろうが、皮膚の色が黒いと太陽光を浴びてもビタミンDの生成が少ないということもあるのではないかとされている。

だからビタミンD不足を補うためにサプリメントで摂ることはお勧めである。さらにビタミンDは今まで知られていなかった、さまざまな良い効果があることが分かってきた。ビタミンDはビタミンというよりは、むしろホルモンであると考えられるようになった。身体中の細胞にビタミンDの受容体があるからだ。だからビタミンDは、たとえ新型コロナ感染を防いだり、治癒できなかったりしても、それを摂ることには十分な利益があるのだ。

そういうと、すぐにビタミンD過剰症を心配する人がでる。ビタミンDは脂溶性、つまり水溶性ではないので過剰症というものは原理的にはある。ビタミンA, D, E, Kのような脂溶性ビタミンの場合は体内に蓄えられる。だからあまり摂りすぎると過剰症は原理的にはある。しかしよほど過剰に摂取しない限りほとんど心配する必要はない。(いっぽうビタミンBとCは水溶性なので、たとえ過剰にとっても、尿として流れてしまう。)

具体的な数値でいうと日本の場合、ビタミンDの摂取基準は年齢と性別にもよるが220国際単位程度だ。これは明らかに少ない。米国の場合、ビタミンD摂取の推奨量は600-800国際単位である。ビタミンDの専門家はこれでも少ないという。専門家は個人的には5000国際単位も摂取するという。またある研究では50,000国際単位までは過剰症の問題はなかったという報告もある。流石に50,000国際単位もビタミンDのサプリメントを摂る人はいないだろう。だいたい、そんなにとればとてつもなく高い。

ビタミンDはもちろん食事からとることもできるが、あまり十分な量はとるのが難しい。私は、ビタミンDはサプリメントからとるのが良いと思う。私が新型コロナ関係で毎日見ている英国のお医者さんのキャンベル博士は動画で、自分は普段はサプリメントを取らないがビタミンDだけはとっていると言っていた。お店などで普通売られているビタミンDのサプリメントは1000国際単位である。私は1000-2000国際単位で良いと思う。実際、私は毎日1000国際単位のビタミンDのサプリメントを飲んでいる。

ところで新型コロナとビタミンDだが、これが効くという証拠はまだないことは述べた。しかしビタミンDは肺の健康にとって重要であることは知られている。だからビタミンDはふつうの風邪やインフルエンザの予防に効くのではないだろうか。それについての研究は昔からかなりあるのだ。ところが結論が断定的ではない。つまりビタミンDは風邪やインフルエンザ予防に効くという論文もあれば、効果がないという論文もある。それらの論文をまとめて調査した論文がある。その結論は、ビタミンDは効果があるとする方に旗を上げている。特にビタミンD不足の人にとっては、サプリメントで補うことは効果が大きいという。

どのような摂取形態が良いだろうか。つまり毎日ないしは隔日にビタミンDのサプリメントを飲むか、あるいは一時に大量に飲むか。これは結果がはっきりしていて、一時に大量に摂取しても効果はない。やはり毎日、例えば1000-2000国際単位程度を飲むのが良い。何度もいうが、ビタミンDのサプリを適量飲むことは体にとって悪いことではない。だから新型コロナが流行している昨今、私はビタミンDのサプリを飲むのである。

ビタミンDの風邪予防効果について話したが、ビタミンDの重要性がもともと知られていたのは骨の健康である。健康な骨を作るにはカルシウムが必要なのだが、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける。いくらカルシウムだけ摂ってもビタミンDも同時に取らないと、骨にはならない。だから骨粗鬆症を心配する人はカルシウムと同時にビタミンDを摂取する必要がある。(それからビタミンKも必要なのだが、これは不足することは少ない。)

ビタミンDは多重硬化症、心臓病を予防する。またビタミンDはうつ状態、不安神経症を改善する効果もある。冬になるとうつ状態になりやすいのは、太陽光が少なくなり、ビタミンD不足になるからだろう。また老人が老人うつになりやすいのも同じ理由だろう。だから元気でいきいき過ごすにはビタミンDが必要なのだ。

また線維筋痛症という正体不明の慢性疼痛にも効果がある。体重減量にも効果的だし、不眠にも効くという。

私にとってもっとも関心のあるのはビタミンD不足と認知症、とくにアルツハイマー病との関係である。研究によればビタミンD不足の人はアルツハイマー病にかかる可能性が倍増するという。詳しい機構はよくわからないが、そのような相関がある。

まとめ

ビタミンDが新型コロナの予防と治療に効くという確かな証拠はないが、肺の健康一般には重要であることが分かっている。また風邪やインフルエンザの予防にも効果があるとする論文がある。さらに骨の健康に重要であり、うつ予防とか認知症予防にも効果がある。その他様々なご利益がある。そういうわけで、積極的に太陽光を浴びるか、それが難しい場合はビタミンDのサプリメントを飲もう。

【付録】

ビタミンDと新型コロナウイルス

私が毎日視聴している(ゼヘール)Seheult博士のMedCramというチャンネルで、ビタミンDが新型コロナ予防に重要かもしれないという話をしている。(ちなみに彼の英語は非常に明瞭でわかりやすい)。

Coronavirus Epidemic Update 30: More Global COVID-19 Outbreaks, Vitamin D May Aid Prevention 3/4/20
(世界的Covid-19の勃発、ビタミンDは予防に役にたつかもしれない。3月4日)

そこで引用されている論文

Vitamin D and Influenza—Prevention or Therapy? (ビタミンDとインフルエンザ - 予防か治療か?)
Study confirms vitamin D protects against colds and flu (研究によればビタミンDは風邪とインフルエンザを予防する)
Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data (急性呼吸器疾患を予防するビタミンDサプリメント: 個人のデータにもとづく組織的なメタアナリシス)

これも私が毎日視聴している英国のキャンベル博士のチャンネルである。ここでも上の論文を参照して、ビタミンDの重要性を力説している。(キャンベル博士の英語も典型的なイギリス英語であるが、聴きやすい)。

Vitamin D and immunity (ビタミンDと免疫)

ビタミンDのその他の効用

8 Signs Your Body Is Begging for Vitamin D (あなたの体がビタミンDを欲している8つの兆候)

ビタミンDとアルツハイマー病との関係

健康本で有名なパールミュター博士がビタミンDは認知症とくにアルツハイマー病予防に重要であることを語る。

Vitamin D and Alzheimer's Disease: Could Deficiency Increase Your Risk?
(ビタミンDとアルツハイマー病: 不足すると危険性が増すか?)


<2020年4月15日追記>

ビタミンDのサプリがインフルエンザと新型コロナの予防に効くであろうという論文が現れた。なんと数週間10000国際単位を飲んで、急速に体内のビタミンDのレベルを上げて、そのあとは5000国際単位を飲むことを推奨している。

Evidence That Vitamin D Supplementation Could Reduce Risk of Influenza and COVID-19 Infections and Deaths (ビタミンDのサプリはインフルエンザと新型コロナの感染と死の危険性を減らすかもしれないという証拠)

   
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