京阪奈放射線疫学ゼミ
福島甲状腺癌疫学論文を読むための統計学
<スケジュール>
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津田氏の甲状腺癌の論文をメインに、同じデータを使用しているohira氏の論文や、低線量放射線の影響について欧米で行なわれているINWROKSの論文なども読み進めております |
注 意 点 |
複数の方から、この論文への問題点をご指摘いただき、また、このゼミの開催趣旨についてご意見をいただきましたので、ご説明申し上げます。 今回のゼミの開催趣旨は「この論文の内容を鵜呑みにする」というものではございません。統計の専門家である田中が統計の観点から論文の内容を解説することで「論文を読み解く統計的手段を身につける」というものです。この論文を題材に選んだ理由は、まず査読を通った論文であること、そして現在の放射線関連の問題の中で社会的に関心の高いテーマであることの2点です。内容を統計学的にきちんと読み解いた上で、論文固有の問題点や、疫学や統計で明らかにできる範囲はどこまでなのか、といったことを議論できればと思っております。 よろしくお願いいたします。 |
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概 要 |
放射線生体影響に関心のあるあらゆる分野の科学者を対象に、全3回のゼミを企画しました。福島原発事故後に、以下のような疫学研究の結果が報告されています(詳しくは以下の抄録をご覧ください)。理解に必要な統計学・疫学を補いつつ、京都大学医学研究科に所属する統計学・疫学の専門家がこの論文について解説します。医学以外の分野や学外の方も歓迎ですので、奮ってご参加ください。 |
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論文鍾愛 |
背 景 |
2011年3月の東日本大震災と津波の後、福島第一原発から放射性物質が放出され た。これまで得られた知見から、その結果、被ばくした住民で甲状腺癌発生が増加するかどうかが懸念された。 |
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方 法 |
放出後、福島県は超音波甲状腺検診を18歳以下の全住民に行った。第一回検診参加者は298577であり、2014年4月に第二回検診が開始した。我々は、2014年12月31日までの第一回・第二回検診の県内の結果を解析し、日本の年間発生数と福島県の基準地域内の発生数と比較した。 |
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結 果 |
4年間の潜伏期間を用いると、日本の年間発生数と比べた最も高い発生率比は、県の中央地域でみられた(発生率比50倍、95%信頼区間25~90倍)、甲状腺癌の有病数は100万人あたり605人(95%信頼区間302~1082人)であり、福島県内の基準地域と比べた有病オッズ比は、2.6倍(95%信頼区間0.99~7.0)であった。第二回検診で、残りの参加者に疾患がなかったという仮定の下でも、12倍(5.1~23倍)の発生率比が既にみられた。 |
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結 論 |
福島県の子どもと青年では、放出の4年以内に甲状腺癌の増加が超音波により検出されており、これはスクリーニング効果によって説明できそうにない。 |