2024年10月14日

 

放射線研究・・・今後の展望と異分野交流

 

3・11以後、日本の科学界は、大きな危機に見舞われました。それは、低線量・低線量率放射線の生体影響について、あまりにも科学者の意見が大きく分かれて、市民は何が本当かわからなくなり、果ては、科学及び科学者に対する不信を招きました。

しかし、逆に科学者の中にも、この問題への取り組みを通じて異分野交流を始めた人たちもいます。そして、科学者間の横のつながりが欠けているために、誤った判断をする場合も多々あることを痛感しました。こうしたなかで、取り組んできた様々な思いを一つに結集して、これからの科学の方向を見出そうとする動きがいろいろなところで見られます。

自分の専門を深く掘り下げてきた科学者の成果が社会につながっていくときには、異分野の科学者との連携が不可欠です。このことから、市民とのネットワーク、科学者間のネットワーク、そしてそれらの活動の中から得られた知見や情報を、どのようにすれば社会と共有できるかということが極めて重要だと考えます。

今回、そのような問題に取り組んでこられ見識をお持ちの有本建夫先生のお話を聞く機会を得ることができました。それに加えて、産業界と科学界を広く見渡しておられる長我部信行先生、そして、放射線に係わる科学的知見に関する情報発信のためのナレッジベースの構築にご尽力されている神田玲子先生をお迎えすることができました。

この三人の科学者の講演を軸として、参加者も加わり、これまでの取り組みを紹介しつつ今後の展開を見据えるべく踏み込んだ議論を行う機会を作ることとしました。このような議論の中から、現状と課題、そして未来につなげていくための方策を探りたいと思います。

どうか各々問題提起をいただき実のある議論をするためにお集まりください。


日 時:2019年3月8日(金)10:30~17:00(開場10:15)

会 場:京都大学東京オフィス (東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング 10階)

参加者:JST/JSPS関係者、行政関係者、市民、ジャーナリスト/メディア、研究者・専門家(20名程度)

プログラム:第一部:エビデンスを基にしたコミュニケーション

時 間 内 容 演者等(敬称略)
10:30~10:45  問題提起 「健康調査」「線量調査」「福島の野生動物調査」 「分野横断科学者ネットワーク」 その他 坂東昌子
(NPO法人あいんしゅたいん)
10:45~11:05  講演1 「放射線防護アンブレラの活動:学会の活動を中心に」 神田玲子
(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)
11:05~11:35  講演2 「基礎科学と社会への実装の理念  ・・・アセスメント科学にむけて」 長我部信行
(日立製作所ヘルスケア社)
11:35~12:05  講演3 「SDGsと科学技術  :STI for SDGs vs SDGs for STI」 有本建夫
(政策研究大学院大学
 
12:05~13:15  休憩(ランチmeeting) * お昼と飲み物の準備は各自でお願い致します。
              お昼の時間もディスカッションを予定しております。

      第二部:異分野交流・CASネットの組織化に向けて

時 間 内 容 演者等(敬称略)
13:15~13:25  報告1 「健康調査について議論していること」 鈴木和代(京都大学医学研究科)
13:25~13:30 質疑応答 
13:30~13:40  報告2 「JSPS委員会について」 和田隆宏(関西大学)
13:40~13:45 質疑応答 
13:45~13:55  報告3 「異分野交流の実践」 坂東昌子(NPO法人あいんしゅたいん)
13:55~15:30  総合討論  異分野交流の方法論、組織化について  コーディネート
  坂東昌子(NPO法人あいんしゅたいん)
  澤田哲生(東京工業大学)
13:55~15:30 休憩 
15:50~16:55  CASネット(市民と科学者のコミュニケーション ネットワーク)の方法論の模索
 小児白血病の放射線影響はどこまでわかっているか?(UNSCEAR 2017より)
 * 参加者の皆さんと一緒に「市民へどう伝えるか」について議論を深めたいと思っています。
話題提供(10分)
河本恭子(NPO法人あいんしゅたいん)
16:55~17:00  閉会のあいさつ 坂東昌子 (NPO法人あいんしゅたいん)

主催:「市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワーク(通称:CAS放射線ネット)」


関連リンク:科研費基盤研究B「放射線生体影響に関する物理学、疫学、生物学の認識文化の比較分析」
      科学技術振興機構(JST)