2018年12月12日

 

市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワーク勉強会 報告

1.概 要

日  時:2018年1月26日(金) 14:30~17:00
場  所:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室
話題提供:坪倉正治(東京大学医学研究所特任研究員)
話  題:南相馬の診療から見える、福島原発事故の健康被害の本体
講演資料:相馬地方の診療から見える福島原発事故の健康被害の本体

2.参加者所感(報告と感想)

最初に、参加者が簡単に自己紹介を行いました。
坪倉医師は、東日本大震災直後、若手医師派遣の一環で福島入りされました。ご自身は大丈夫と判断されていたが、家族からは大きな反対を受けたとのこと。派遣先の病院は、福島第一原発から23kmの南相馬市にあり、当時、20~30kmが緊急時避難準備地域でした。現在は、医師として勤務されるだけでなく、アドバイザー的なお仕事もされているとのことでした。

「放射線災害における健康被害の実態とは何か」

 ● 避難することの影響:

低線量の放射線災害やインフルエンザのような、元凶が目に見えないものを、津波や洪水のような災害と分けて、silent disaster(沈黙の災害?)というそうです。
その場合、弱者を避難させない場合と避難させる場合で、避難しない方が、影響が少ない(死亡リスクが低い)ということもあるとのこと。
(弱者は新しい環境に弱いため。)坪倉医師は、ホールボディ検査にも関わられ、福島原発事故後の被曝は低線量であったこと、2017年現在は内部被ばく量は、特殊な食生活例を除きほとんどないことを示されました。また、避難した場合の高齢者の死亡リスクと避難しなかった(被ばくする)場合の若年者のリスクを見積もり、今回の線量では避難しない方がリスクが小さいことを示されていました。
このような「結果的に判明した事実」を示しても、実際には「避難しない選択」は難しいという話もされていました。

● 放射線の影響:

実際の甲状腺の計測または線量推定により、福島第一原発事故の場合、最初の甲状腺被ばく量は平均で約4から高くても数十ミリシーベルトだったと推定されていました。
チェルノブイリ原発事故の場合は、ベラルーシで平均1100ミリシーベルトだったとのことで、比較にならないほど少ないものでした。福島で行われている甲状腺がんの検査でも、放射線起因性の小児甲状腺がんは(ほとんど?)発生していないという説明でした。
これに対し、「小児甲状腺がんが見つかっているという報告がある以上、影響はなかったとはいえないのではないか?」という質問も出ました。坪倉医師は、見つかったのはスクリーニング効果であり、検査をしなければその後の処置もする必要もなかったかもしれず、また、これまで判明しているように被ばく量がほとんどない状況では検査はしないという選択肢もありえるという立場を示されていました。
甲状腺がんの発見率と死亡率は関連性がないというデータも示されており、放射線の影響以前に、甲状腺がんに対する知識も必要だと感じました。

● 震災後の健康被害について:

震災後の環境変化から生活習慣病(糖尿病)になった方が増えたというお話がありました。
生活習慣病患者はがんになるリスクも上がるそうです。今回の放射線被ばくによってがんになるリスクと糖尿病からがんになるリスクを比較すると、後者の方が40倍高いというお話もされていました。また、乳がんが末期で見つかる方も増えたというデータがあるそうです。
これは、同居する家族(特に娘さん)がいなくなったことと関連があるとのことでした。

全体を通じ、単に「怖い」「大丈夫」という二択ではなく、どちらの道を選んでも、それぞれのリスクがあることを知ることが大事だと感じました。

(NPO法人あいんしゅたいんスタッフ 河本恭子)

 

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