福島からの避難者へ検査の機会を提供するために(ブログ その94)
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2012年10月11日(木曜)12:45に公開
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作者: 坂東昌子
3・11今回の事故で、科学的真実に基づかないおびただしい情報がながれ、市民を巻き込んだ混乱が起こした被害は甚大です。どうして、放射線関連情報の収集や発信ができなかったのか、心を痛めています。そして、私たちは、3・11以後、東日本大震災情報発信ページを通じて、原子炉事故をめぐる情報を、発信してきました。また、この8月には、基礎物理学研究所で科学者の分野の壁を乗り越えた研究会を開催する代表世話人として取り組み、その純学問的な内容を補完する「プレコンファレンス」も当あいんしゅたいんの中西寄付資金をもとに開きました。
こうした中、民間事故調委員長である北澤宏一氏からのご紹介で、京都に避難されているお母さんが、当NPOを訪ねてこられました。そして、福島県から避難してこられた方々は、放射線の影響について、極端に異なる情報の洪水の中で正確な知識を得る機会が少なく、また自分の被ばく量に関してもほとんど点検がされないまま、今日に至っているということを知りました。避難されている方々は、特にお子様の放射線被ばくについて大変心配され、現在の体内に存在する放射性物質を丸ごと測定できるホールボディカウンター(WBC)での測定を切望されています。そこで、京都府災害対策本部長あてに、(株) 東京電力福島第一原発事故による避難者の医療に係わる協力依頼を送付しました。この間の事情は、ブログその90でお伝えしています。
福島県も、県外の避難者にはまだ手が回らない状態であり、京都府も動きが取れない状況のなかで、私達も、京都で検査を受けられるよう、福島県とも連絡をとりつつ、WBCがどこになるのか、情報を集めていました。WBC搭載車を呼ぶ可能性も探りました。そして最終的には、京都近くでは、WBCを所持しているのが、関西電力の原発立地周辺(原発で働く方々の測定に必要です)の関西電力の原子力発電所に属するものと、京都大学に所属するものしか存在しないことを知りました。それをお持ちの機関に、避難者のための測定をお願いするしかありません。現在、この2機関の可能性を探っている状況です。
こうした状況なので、この度、京都大学総長あてに、原子炉実験所にあるWBCで測定できるようお願いした文書「東京電力福島第一原発事故による避難者の医療に係わる協力のお願い」送付いたしました。これは、京都大学原子炉実験所のWBCを、県外避難者への医療サポートとして1日だけでも使わせていただくようご配慮いただきたいというものです。
ただ、京大の原子炉実験所は、京都大学所属とはいえ、場所は、熊取原子炉実験所にありかなりの距離があります。しかし、そういう問題はあるにしろ、もし京都大学が、例えば10名程度でも招待して、熊取の原子炉実験所にあるWBCで全身の放射線量を測定する機会をご提供いただければ、それは、とても皆さんを力づけるものとなると思います。これは、県外避難者への初めての試みであり、これをきっかけにして、大きく支援の輪が広げることにもなるでしょう。
京都大学の色々な部署におられるみなさま、ぜひ実現のためにご協力いただくようにお願いします。
なお、先日、福島県民避難者とのひざを突き合わせた話し合いに出席させていただきました。その報告は、別途また、させていただきます。
追記:この報告を書いているなか、「ノーベル生理学・医学賞 - 京大の山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授が受賞」というニュースが飛び込んできました。山中さんは、「受賞は光栄だが、さらに研究を続けて、一日も早い本当の意味での社会貢献をしたい」と、取材を受けて言われました。「命を大切にする」山中さんの、謙虚で優しい性格が伝わってくる会見に、ほっとしたものを感じています。(もっとも、嬉しいニュースがはいってきて、私たちの要望書が、書類の山に埋もれて気がついてもらえないことがないようにと願っています。)