大人のため科学教室へのお誘い(ブログ その95)
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2012年10月29日(月曜)14:05に公開
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作者: 坂東昌子
大人のための科学教室 第2回講座は、学校が冬休みに入る頃でクリスマスの前、12月22日、に決まりました。当初11月3日に設定していましたが、この日はたいていの方が既に予定が入っていて、「出たいのですが延期できませんか」という声がたくさん寄せられたからです。
めったに行けない放射線管理者用の放射性同位元素総合(RI)センターの講習会場で、しかも放射線を見ることができる「霧箱」の新しい方法を開発されたRIセンターの先生方が自ら指導して作成する講習会です。どうしても出たいと思う愛知の小学校の先生は、「キューリー夫妻の測定器や京大方式の霧箱(ネット上で動画は見ました)は、ぜひ実物を見たいものだと思いました。せっかくなので多くの方が参加できる機会が良いですね。次の機会を楽しみにしています。」と言ってくださいました。遠くからも来ていただきたい、またご自分で霧箱作りに取り組んでいる先生方にも参加いただいて、工夫したことの交流もやりたいと期待しています。
どうかみなさん、この日は今から予定をしておいてください。
以下は、RIセンターの見学記です。
戸崎先生「じゃあ、今から見に来ますか?」
私「え? でも今スグってお忙しいのじゃあ・・・」
戸崎先生「今すぐなら大丈夫です。すぐ行きましょう!」
戸崎先生は、RIセンターの放射線教育担当、今度、角山先生とお二人で、大人のための科学教室で指導にあたってくださる先生である。大人のための科学教室 第2回講座を、せっかくRIセンターを使わせていただくのだからたくさんの方に来て欲しいなあと思い、戸崎先生に相談を持ちかけた。
自転車に乗って、京大医学部に構内の放射性同位元素(RI)総合センターにある教育訓練棟講義室を見学することになった。RIセンターの近くには研究棟がある。事務室や研修担当の方に紹介していただいて、見学させてもらった。
そして、今度の教室で使う道具をみせてもらった。実を言うと、私たちの周りには宇宙から、地面から、いろいろな形で放射線がやってくる。それを自然放射線というのだが、これは普段は見えない。しかし、これを見る方法がある。それが「霧箱」である。ちょうど、飛行機の通ったあとに白い飛行機雲ができるが、遠くて飛行機自身は見えない。しかし、白い筋ははっきり見えるのだ。
ところが普通は、先生方が霧箱で自然放射線を見ようと努力しても、その白い筋は簡単には見えない。周りを真っ暗にするために、わざわざ夜に実験する先生のご苦労もあるようだ。インターネットで「霧箱」という単語を入れて色々と検索してみると、とても綺麗な飛行機雲がみえる写真もあるが、真っ暗にしなければならない様子もうかがわれる。
戸崎先生、角山先生の指導する霧箱はちょっと違う。自然放射線が昼間でもくっきりと見えるということだ。いったい工夫がどこに仕掛けられているか、興味があるではないか。どうやら、その1つは霧箱を別の素材で作るということらしい。それとドライアイスの置き方にも一工夫いるらしい。どうしてこんな工夫をすればうまく見えるのかも考えてみるのも科学の訓練だ。実際には、インターネットで調べてみれば沢山霧箱の教材が販売されている。しかし、今回使う霧箱の素材とはどうも違うようだ。
今まで霧箱を作ったことがある人もたくさんいるだろう。当あいんしゅたいんでも、昨年2011年11月に、若手の物理学会員が前日苦労して徹夜に近い作業をして、忙しい中霧箱を作成してみせてくれた。大変な作業を横で見ていて、やっぱり私にはこんな物づくりはできないなあ、とそのご苦労に頭が下がった。
じゃあ、今度の霧箱はどこがどう違うか、しっかり見てみたい、と私は思っている。学校の先生、若い学生や高校生にもぜひ試してほしい。
当日は、先生方が道具を一切用意してくださるそうだが、実は素材は空き缶なのだ。空き缶なら家にもそこらに捨てている人は多いだろう。
「当日は空き缶を持ってくればいいですか?」と先生にきいたら、
「そうですね。一応こちらでも準備しますが、みなさん、試してみたい人はもって来てくださるといいですね。」ということであった。
「じゃあ、ミカンの缶詰なんかの空き缶でもいいですか?」ときいたら、
「あれはちょっと底面積が小さすぎます。もう少し底面積が広いほうがいいですね」といわれた。
「そうですか、じゃあ、どれくらいの大きさですかね?」と再度きいたら、
「いや、いろいろ試してみればいいと思います。こちらが用意するより、もっといい素材が出てくるかもしれません」とのことであった。
「形は丸くなければだめですか」としつこく聞いた。
「いえ、どんな形でもいいですよ」ということだった。
自分で持参してどんなのがいいか試してみるといいのではないだろうか。どなたの作ったものが最もよく見えるか、競争するのもいいのではないか。
みなさん インターネットでしっかり勉強して、どうすれば自然放射線がよく見えるのか、しっかり考えた上でこの科学教室に参加されてはいかが? そして、どんな空き缶を持ってきたら一番よく見えるか試してみては? ご自分の空き缶を持参して、みんなで比べてみては? |
それに、自然放射線を見るという作業1つとっても、なかなか面白いのだ。最初は、やっぱり放射線を出すランタンなどを使ってよく観察しておくことが必要だという。放射線が「これだ」とわかるように観測の訓練をしてからだと、最初は見えなかったもっと細くて見えにくい自然放射線がミエルのようになるのだそうだ。
なるほど、そうなのか、見るとうことも、訓練が必要なんだ、と初めて納得した。やっぱり、科学教室では、コツがあって、いい指導を受けると違うものなのだなあ、と感心した。
「心ここにあらずんば、見れども見えず」というけれど、一生懸命見ても、訓練していないと見えないのだということばが身に染みる。親子理科実験教室を始めてみて、私も松田副理事長も、「理論屋は口先ばかりでわかってないなあ」と実感している。式で納得するのも大切だが、世の中のいろいろな現象は、それだけでは見えない、思いがけないことが起こるものだ。それを痛感したのは、本当に年を取ってからだったのが、いかにも悔しい。
そういえば、よくお医者さんが、レントゲン写真をみて、すぐに、異常を見つけるのも訓練がいる。私などは、どれがどれだかさっぱり分からない。素粒子の実験でも、ヒッグス粒子を見つけるのに、どんなに苦労しているか、ぼやっと見るのでなく、相手の性質をしっかり把握しておかなければ、せっかく新しい粒子が出てきて見逃してしまう。科学とは、こういう訓練もするものだと納得である。
あと、もう一つだけ、宣伝しておこう。ここには、フランスのフレデリック・ジョリオ・イレーヌ・キュリー夫妻が使っていたという放射線計測器が展示されている。初代センター長の清水榮先生が、フランスに滞在された時に頂いたもの妥当ことだ。また、清水先生たちは、広島原爆投下後は調査に駆けつけられたし、ビキニ水爆実験の被害にあったときも、いち早く放射線の計測と防護のために働かれた。その報告書も展示されている。またとないチャンスなので、ぜひ、参加していただきたいと願っている。
あいにく、11月3日という設定で予定を立てている人も多く、今のところ、せっかくの教室なのに、参加者が少ないのがとても残念だ。またとない機会なので、ちょっと無理して参加して欲しい。
今度の講師の先生方は、いろいろなところでたくさん指導してこられたベテランで、講義の仕方も上手である。ついこの間、ノートルダム小学校で、角山先生は、「放射線って何? ~広島で平和学習を行うノートルダム学院小学校 5 年生に向けて~」という学習会の講師としてお話された。そこに、間浦幹浩君(京都大学理学部 2 回生)と水野彰人君(京都大学医学部医学科 2 回生)と一緒に私も出かけて見学させていただいた。角山先生のお話は小学生に話しかけながら、高度な話まで盛り込んでとても勉強になった。この報告は水野君が書いているが、話の運び方がうまい。とても参考になった。そして大人も勉強になった。
放射線の話は、これまで学校教育では取り扱ってこなかった。やっと教科書に登場したが、先生も父母も、放射線の授業は受けていない。この、教室は、そんな世代のみなさんに、子供も連れて出かけて欲しいと企画したのである。
大人の科学教室を始めて、これが2回目。まずは、テーマとして、放射線とその影響を考えることとした。そして、9月22日の第1回は、その導入部として、「本当はどうなの?放射能」というタイトルで、食品の抗酸化食品の見分け方を中心に実験を行った。親子理科実験教室で講師をしておられる工藤博幸先生や松林昭先生、大学の先生や学生、それに、小学校の子供たちも親御さんと一緒に、生徒になって、ご一緒に実験に参加してくださり、バラエティのある教室となった。後で大阪大学の医学部にお勤めの先生までいらしていたのに、びっくりした。お互いの交流にも役立つ。この教室が新しい情報の発信地になる予感がしている。その様子は動画も公開している。参考にしていただきたい。
お子様と同伴でもいっこうに構わない。ただし、大人が中心だからお子様には同伴の大人が説明やサポートをしてあげてほしい。そして、ご一緒に実験を楽しんでいただきたい。新しいネットワークの場がそこにある!
詳しくは、以下のページを参照のこと。http://jein.jp/science-learning/course-info/132-lecture02-2012.html