2024年10月11日

ウイルスはこれからの興味深いテーマ!(ブログ その169)

親子理科実験教室(特別編その1)第3回の報告を、鷹野典子さんが市民と科学者のCOVID-19コミュニケーションネットワーク(通称:CASコロナネット)のページに書いてくださっています。どうぞご覧ください。 

今回のタイトルは、「徹底追跡 ウイルスってなーに?―コロナウイルスから生き物の世界へー、第3回「ウイルスってなーに?」で、2022年1月9日、新春に行われました。この会では、加藤茂孝先生の若い頃のお仕事のお話しから始まりました。

風疹感染の胎児診断で、妊婦が風疹に罹ると、胎児に影響するとしてほとんど赤ちゃんが生めない状況でした。「ほんとに胎児に影響するのか?」ということに疑問を持った加藤先生は、このことを調べてみようと思われたそうです。そして、ちょうどその頃開発されたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を駆使した測定法を取り入れたのでした。今ではよく耳にするPCRですが、このPCRは、ほんの少しのDNAでも、それを増やせば測定が可能になるというアイデアだったのですね。この発明によって、ゲノム解読というすごい計画が一気に可能になったというすごい発明でした。この新しい測定法で、加藤先生が調べた結果は、「ほとんどの胎児は感染していない」ということだったのです。

そういえば、私がPCRの話を知ったのは、子供たちの人気ものの1人生物学を専攻する学生だった西嶋稜平さんからでした。西嶋さんは、親子理科実験教室でも、楽しんで貢献してくれました。

当時、3・11以後放射線の生体影響の研究に挑戦を始めた頃で、物理屋の私は、生物のことは、わからないことだらけでした。そもそも私が高校生の頃は、生物の教科書には、DNA などまだの話はなかった時代でしたから。

こんな時、このあいんしゅたいんで、いつも若者と議論をしていたので、生物でわからないことはいつも生物系の学生たちが何人も出入りしていたので、いろいろ教えてもらったものです。その時、西嶋さんが、次世代シーケンシング(NGS)を使った研究をしていました。次世代シーケンシング(NGS)は、数千から数百万ものDNA並列を同時に決定できる強力な技術でした。高度でかつ高速な処理が可能になって、医療の現場で、遺伝性疾患や臨床診断で革命を起こしていたのでした。このNGSについて、「これ、マリスはサーフィンが趣味で、サーフィンで遊んでいるとき、このアイデアを思い付いたそうですよ」と教えてくれました。実は、西嶋さんはその後「親子理科実験教室で子供たちと仲良しになっているうちに、人と関わる仕事をするのが好きになった」と言って、医学部に代わりました。そして、今は京大病院の研修医として頑張っています。  ただ、最近このブログを書くのに、確かめようと調べてみると、マリスが思いついたのは、車の運転中だったとウィキには書いてありますね??? 

まあ、どちらにしてもこのアイデアは思いついてみると当たり前の話、生物は増やせるのだから増やして調べればいいじゃないというものだったようです。わずかなDNAを大量に複製するPCRを開発した米生化学者キャリー・マリス氏はいろいろなエピソードがあります。確かにサーフィンがとても好きだったようです。このPCRの詳しいお話は、鷹野典子先生が、3月に行われる2022年度親子理科実験教室(特別編その2)でお話し下さるでしょう。

話を元に戻しますと、加藤先生の思いは、「リスクを大きく見積もりすぎて沢山の赤ちゃんが犠牲になっていた当時の状況を考えると、何とか犠牲を少なくしたい」という熱意に裏打ちされたお仕事だったのですね。この結果の意味は大きく、当時のニュースも動画で紹介いただきました。

ニュースに出てこられた加藤先生、お若いなあ!(人のことは言えませんがね!)

科学者のお仕事が、こうして、人の命にかかわること、そういうのを知ると、ほんとに、医学と繋がる分野の思いが伝わってきます。

この日のお話の中心は、「ウイルスってなーに」ということでした。ウイルスというと、まるで悪者のように思っている人が多いのですが、実は、違うのです。ウイルスにはいろいろな種類があり、人の体に侵入して病気を起こさせるものが最初に目立って、人に害を与えるというイメージができただけなのです。加藤先生のお話を聞くことで、ウイルスのイメージがすっかり変わってしまいましたね。ウイルスは、まだまだ分からないことだらけ、種類もどんどん増えていて、たくさん研究することがあるということで、子供たちの好奇心がおおいにかきたてられ、大人も子供も楽しみました。