2025年11月14日

宇宙の始まりの謎と生命の謎(ブログ その203)

ご近所のお母さんが、子どもたちを10人くらい連れてやってきて、「原子のお話をしてください」と言われたことがありました。

そのとき、「ほんとに、なんでも原子からできているの?」と聞かれたのです。

私は「うーん、ダークマターなどはまだよくわかってないけどなぁ……」と思いながらも、「そうやで。なんでも原子からできてんねんよ」と答えました。

すると、「じゃあ、生き物も原子からできているの?」と聞かれました。

「ほんまやね。生きていない原子が集まって、生き物ができているんやなあ。不思議やね」そう思いました。子どもたちは本当に素直に、根っこからものごとを考える。真っ白な紙の上に、いろんな面白いことをいっぱい描いているのですね。

大人になると、私たちはまだまだわかっていないことがたくさんあるのに、つい目先のことばかり考えてしまいます。でも、「生き物はそもそもこの地球上だけにいるのか?」「もっと広い宇宙のどこかにもいるのか?」──そう考えるとワクワクします。星を眺めながら、「あの宇宙のどこかに、私たちと同じような生き物がいるのかな?」「宇宙人がいるとしたら、どんな形をしているのかな?」と想像が広がります。

今では、宇宙へ飛び出すことも夢ではなくなってきました。宇宙探査で岩石を採集し、地球に持ち帰って調べてみると、その中に“生き物のもと”となる有機物が含まれていることがわかってきました。もちろん、有機物そのものは生き物ではありませんが、生き物が有機物からできているのは確かです。そんなことが次々とわかる時代になってきました。そうなると、「宇宙にもやっぱり生き物がいるのかも」と夢がふくらみます。

私は2011年の福島原発事故後、原子核・素粒子の研究者としての義務感もあり、「放射線はどれほど生き物に害を与えるのか」という問題に取り組みました。生物学の専門家である宇野賀津子さんたちと、物理と生物の垣根を越えて議論を重ね、やがて放射線の生体影響を研究することになりました。

そこで知ったのは、生き物は少量の放射線で遺伝子が傷ついても、体の中でそれを修復し、排除する“したたかな仕組み”を持っているということです。生物学ではそれが常識でしたが、それを定量的に示す公式がなかったのです。そこで、私たちは物理学の立場から議論し、「モグラたたきモデル」──WAM(Whack-A-Mole)モデルを提案しました。これは、「どこまで放射線が害を与えるのか」を数式で表せるモデルです。

しかし、このおよそ100年間、放射線のリスクは「どれだけ浴びたか」という総線量で決まるという考え方(LNTモデル)が常識になっていました。

私は放射線の生体影響を研究するうちに、社会的な問題だけでなく、生命の起源そのものへの好奇心がますます強くなっていきました。宇宙線という“宇宙からの贈り物”にも、まだ多くの謎があります。地球から最も近い太陽系でさえ、ようやく少しずつ理解され始めたばかりです。

いまや火星に行く計画も出てきています。そこへ行くには“年単位”の旅になりますが、その間に浴びる放射線量はかなりのものになります。宇宙に飛び出すと、すぐに地上の規制値を超えてしまうのです。「ほんとに宇宙に行けないの?」──そう思うかもしれません。

でも、WAM公式を使うと、長期間・低線量率の被ばくでは変異細胞が増えないことがわかります。そうした研究を通して、宇宙への夢が私の研究の視野に入ってきました。

夜空を眺めていると、「あの星まで行ってみたいなぁ」と夢みたいなことを考えてしまいます。そして、「そうだ、今度はこの問題を考えてみよう」と思うのです。そんな話をヒッポクラブの皆さんにしていたら、「なんでもやってみたい!」というヒッポクラブがDNAの勉強を始めたのです。大人も子どもも一緒にワイワイ議論しながら、楽しく疑問を出し合い、みんなで調べていくこの親子集団は本当に元気です。

そしてとうとう「バンちゃんと一緒に勉強会をしたい!」という話になり、「じゃあ、『あいんしゅたいん』も呼んでよ!」と割り込んで、11月23日の企画がどんどん進行しました。

2025年親子理科実験教室(秋の特別企画) テーマ:宇宙の起源と生命の起源!

子どもたちが集まってワイワイ議論し、DNAの模型を作ったり、「宇宙人ってどんな形をしているのかな?」と考えたりしています。当日は、そんなアイデアや作品も持ち寄って、みんなで楽しく盛り上がりたいと思っています。

すでに申し込みは200人に達する勢いです。興味のある方は、ぜひ親子でお申し込みください。参加費は親子で500円(大人のみの参加も同額)です。楽しく、ワクワクする会にしたいと思っています。間もなく締め切りになりますので、どうぞお早めに!

さらに、これに刺激されて、「そうだ、それならDNAの勉強の次に、宇宙へのロマンを語るイベントもやろう!」という声があがりました。

そこで「あいんしゅたいん」が呼びかけ、12月21日に、なんと土井隆雄宇宙飛行士を迎えて『宇宙のロマンを語る集い』、若者や子どもたちと一緒に夢を語るイベントを開催します。日本物理学会京都支部と「あいんしゅたいん」の共催です。どうぞお楽しみに!