10万円の運命(ブログ その146)
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作成日 2020年5月19日(火曜)08:00
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作者: 坂東昌子
コロナ危機のなかで、医療支援、子供たちの支援、文化芸術の危機を支える支援などなど、様々な思いが市民1人1人にある。
幸いなことに今のところ、科学者の情報発信がほぼまっすぐに市民に届いており、みんなが同じ方向を向いて困難を乗り越えようとする気概が感じられる。自発的な政策への提言は世論となり、政府を動かし、一票を投ずるよりずっと有効に自分の意思を表せる機会ともなっている。
こんな折、あいんしゅたいん会員お2人から、次のような「情報共有のお願い」が届いた。
市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワーク(CAS放射線ネット)を通じて、今もなお議論する場がずっと続き、トリチウム水をめぐる問題の議論が粘り強く続いていたところにコロナ感染の問題が起こり、自然にその議論も始まった。その中で、意気投合したお二人からの申し入れである。
要望書:あいんしゅたいん理事長 坂東昌子さま
緊急事態宣言のもと、コロナ問題で仕事ができなくて、既に多くの人が経済的に困っており、今後さらに深刻になると憂慮されます。
政府は10万円を各個人に一律に給付すると言うことで、10兆円規模の経済対策を打ち出しています。 これに対し、収入に大きな影響がない場合、受け取らず節税に協力すべしという考え方が報道されています。が、むしろ積極的に受け取り、地域毎の事情が把握できている各都道府県の知事あてに寄付することで、よりきめ細かく効率的に給付金が使えます。
既に、大阪府の吉村知事や神奈川県職員労働組合は、そのような寄付を呼びかけています。 このようなそれぞれの人が所属している都道府県知事宛に寄付する活動が更に拡がることを願って、以下の呼びかけを始めました。会員の方々に情報提供いただければ幸いです。
どうぞ宜しくお願いいたします。 |
もちろん、コロナ災害のために仕事を失った方々が、来るべき日のために自分や家族のための生活費の補てんというのが、今回の給付金の意味である。
一方、「余裕のある人は10万円を遠慮せよ」という声もある。しかし、「こういう支援が必要だ」という私たちの意思を明確にできる機会なのではないか。上の提案は、自らの意思で貢献するという国民投票のような形となり、「どういうところに寄付したか、どういう形で使いたいか」を自ら選択できる一票を投じることにもつながらないか。
地方自治を支援するという上の提案もその1つの表れであり、地方自治の自発的な動きを支援するという気持ちの表れである。幸いなことに、科学的評価は分裂しておらず、放射線の影響の議論と違って、同じ方向を向いている。市民は、創意工夫しながら、この困難に立ち向かっている。「どういうところを支援したか、どういう形で使ったか」の動向がわかれば心強い。
そういえば、昨年トリチウム水問題をめぐって、土田さん、河本さん、山崎さんと福島を訪問し、田口さんのお仲間の皆さんと膝を突き合わせて話し合ったが、その時宿泊した、岳温泉の櫟平(くぬぎだいら)ホテルがコロナ禍によって宿泊客減少にともない倒産したというお知らせをいただいた。
「原発事故による危機を乗り越え、観光客がようやく戻ってきた矢先のコロナ禍です。」というメールを田口さんからいただいた。山間の素晴らしい思い出のレストランで、田口さんとお仲間も一緒に夕食をとったことは忘れられない思い出になった。
ほんとに残念である。トリチウム水問題では科学的事実の認識の違いを埋めるのに何度も話し合いをしたが、今回はほとんど意見の食い違いはない。原発とのダブルパンチ経営が深刻になると予想される福島の窮状も明記しよう、との提案もあった。
コロナ禍後の日本、そして世界は大きく変わっていくだろう。人々の価値観、人生観、世界観、基本的人権、民主主義の形も変革するはず。コロナ禍が貧富の差(個人間も国家間も)をさらに加速的に拡大するという予想もあるが、市民の思いが大きな力になっていくことにつながってほしいと思う。
ハラリは、 ”信頼のおける科学的情報の共有”、 そして、 ”人々は科学の専門家を信頼し、国民は公的機関を信頼し、各国は互いを信頼する必要がある” と語っているという。そうでないとこの危機を乗り越えられないと心から思う。
椚平の食事写真(11月13日 田口さん訪問 岳温泉の櫟平ホテルにて)
※ 山崎さんのFacebook:https://www.minyu-net.com/news/news/FM20200425-481395.php