2024年12月06日

岡田晴恵さんの実行力(ブログ その145)

コロナ問題が浮上してきて、私はほぼ、事務所に来る時刻を遅らせて、テレビ朝日をチェックしてから出かけることにしていました。
この番組では、説得力のある議論を展開しており、その頃からずっと一貫して、データの公表と科学的知見を基礎に、医療危機の現状を訴え、早急な行政措置が必要なことを述べていました。

そして、そこに岡田晴恵さんのお姿を見つけたのです。感染症ワクチンの専門家だから当然といえば当然で、私もどこかのマスコミで見かけるのではと予想していました。というのは、実はちょっとしたつながりがあったのです。

そう、それは2001年の出来事でした。

当時、私は愛知大学に勤めていました。新学期が始まってゼミもやっと興に乗ってきたころ、ゼミ生が「体調が悪い」とか「風邪を引いた」とか、いろいろな病気で休む人が多くなっていました。

岡田さんと出会ったのはその頃でした。ちょうど、ドイツ留学から帰国されたばかりでした。留学中に(宇野さんと一緒に書いた)「理系の女の生き方ガイド」(ブルーバックス)を日本の上司からもらって読んでおられ、帰国後すぐに「会いたい」と連絡されたのでした。

というわけで、私が東京出張した機会に、お会いしましょうということになったのです。確か銀座の喫茶店でお会いしたのだと思います。

さて、そのお話の途中私が、

「この頃の学生は、なんかしゃんとしないのですね。風邪とかなんとか言ってゼミをたくさん休むんです」

といったとたん、

「え、それ、はしかじゃないですか?」

と言われたのです。

「え、はしか?誰もはしかなんて言っていませんけど?」

とびっくりしました。

はしかといえば、わが子供たちが2~5歳ごろ年末に流行ったことがあり、お友達の子供がはしかにかかったと聞いて、「はしか貰っていいですか」と連れて行ったことがありました。今のうちに免疫をつけるのがいいと思ったからです。そしたら年末からお正月にかけて、2人ともはしかになりました。それで私は、

「よしよし、親孝行や。これで休みの間に治るわ。仕事休まないで済むわ」

などと残酷なことを言ったことを思い出しました。るからなるはずはないだろうと思っていたのです。しかし、その後、はしかのワクチンができて、流行しなくなったので、忘れ去られており、お医者さんも別名でみんな処理し、はしかという診断を受けた人はいませんでした。

まだ当時ははしかなどという言葉も巷ではでていなかった頃です。

「大人のはしかは、怖いのですよ。子供の時のとは違います」

と言われてびっくりしました。

岡田さんの行動は素早かった!すぐに、愛大にとんでこられました。はしかの前振れをとらえたのです。

その実行力と素早さに私は、びっくりしました。そして、教養部の同僚浅野さんとも相談し、保健室や体育研究室の先生方に相談をかけ、素早く調査に乗り出すことができたのです。
はしかの感染率は、コロナどころではありません。大教室にいると教室全体にすぐに広がるのだそうです。

こうして岡田さんの熱意につられて、疫学調査(??)がスタートしました。こうして、共同研究が始まり、岡田さんに言われて、確か、駒沢病院の研究会に報告を発表しに出かけたこともありました。初めての医療分野の仕事ですねえ。
この経緯は、愛知大学総合科目の取り組みをまとめた、「生命のフィロソフィー」にあります。ここで面白かったのは、実は、はしかになった人を調べるのに一番有効な方法は、保健室ではなく、生協学生保険の窓口でした。そして。瞬く間に生り始めたところだったのです。そして、ワクチンは一生持たず、青年期にもう一度打つ(2度うち)必要があることも知りました。とこのとき、プロのすごさを知ったのでした。
私には気の付かない彼女は故っとした兆候を素早く察知して、しかも、すぐに対策を立てて疫学の流行を止める実行力!ボーっとしていた私には驚愕の連続でした。

久しくお会いしていないその岡田さんと、テレビでお目にかかり、プロとしてのご意見を拝聴することとなりました。そこで学んだことはたくさんあります。そして、今度は放射線のリスクの評価のように、科学者の間でぶれないという思いをしっかり持つことができました。

岡田さんはいつも「事実に基づいて、科学的真実を語る」という姿勢を貫いておられます。そうだ、そうだ、といつもうなずきながらご意見を拝聴しています。ここずっと、本当に一貫した主張をされている姿に敬意を表したいです。そして、医療分野の科学者は、ぶれていないことをとても頼もしく思っていました。

放射線の生体影響についての世論の分裂は、科学者の中の異分野交流のなさと立場の異なる科学者グループの意見交流がなかったことに大いに原因がある、と思っていました。国際的にも、科学的知見を純粋に検討する組織とそれを行政に乗せる原則を立てる組織が、きちんと役割を分けていなかったこともその原因ではないかと思っています。

しかし、今回のコロナ問題については、疫学の長い歴史の中で築いた伝統の重みと、医療という厳しい現実の前に、ほぼ知見が一致している(もちろんわからないこともあるのですが、わかっていることと分かっていないことが明確に区別されています)、ほんとに心強いです。

ただ、最近になって、科学的知見を、政策に近づけるあまり、科学的知見が、価値観やイデオロギーや政治的移行で、ゆがめられるような危惧を感じています。科学は科学、真実を貫き、情報を公開するという姿勢を、専門家委員会をはじめとする医療関係者の皆様が貫いてくださることを切に願っています。

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