「あいんしゅたいん」でがんばろう 23
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2010年8月02日(月曜)12:15に公開
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作者: 佐藤文隆
近刊予定の二著
だいぶブログが途切れてしまったが、この間、甲南大学の須佐君と共著の物理の教科書の細かい最後の直しなどで時間がくわれていた。
数式のある教科書、しかも量子力学以外は、全部書いてあるとすると、数式の番号チェックだけでも大変でした。宣伝しておくと佐藤文隆・須佐元共著「一般物理学:一歩先に進みたい人へ」裳華房である。8月末に出ますが、「売れないと目された」ようで税込3990円と高め。剛体や弾性体を含めた、最近あまり見ない、「古くさい」古典物理の題材を多く盛り込んだ。
「章末問題」とか作っていて気づいたことだが、普通の質点運動問題でもなぜ「こういう初期条件でどうなるか解け」という“やりっぱなし”パターンになるのか不思議だった。
現実に多いのは「あそこにこういう条件で着くにはどう初期条件を与えればいいか」という“意図をもった”問題なわけで、演習問題をみな「どうなるか」でなく「どうすればいいか」に書き換えると面白いとおもった。今度はやっていないが、次はこういう演習問題集を書いてみたい。
電磁気学もあるが、私は主に力学と熱統計を書いたが、拘束運動、剛体、弾性体というのを重点にしたのは、専門の物理学者には余りにも原子しか知らない人が多いからある。これではいろんな分野の基礎としての物理学の衰退が激しくなると心配するからである。また「力学」というもののイメージが粒子運動に極限されているのを変えたいからである。
近刊予定のもう一冊は、まだ完成していないが、現在追い込みに入ったのが「職業としての科学」という本である。年内には出ると思う。もちろん科学技術人材の政策マタ―の動機だが、あまり直接的でなく、たぶん邦書では見たことないような歴史話をいくつか紹介している。
アマゾンで買った十冊近い英語の本で調べたものだが、2,3ページの記述に厖大なものを読んだりしたので、いささかもったいない。英語の本が手元にあるとインターネットでの検索が固有名詞のスペルが正確になるので、どんどん情報があつまる。すごい時代だとおもった。寝転んでiPadでながめて歩くのは時間を忘れる。
ノーマン・ロキャーという19世紀末の人物はいまは雑誌NATUREをつくったということで名前を聞くが、彼の生涯はおもしろかった。
ケンブリッジ大学に物理教室(キャベンデイッシュ実験所)を造ることにもなる、政府のいわゆるデボンシャー委員会の秘書役がロキャーだった。当時は陸軍の官僚で事務方の幹事役である。早く退職し自宅に望遠鏡をつくって天文学者として研究し、年とってから大学に迎えられている。むかしは植民地官吏や軍人をやると、40歳代で退職しても高い恩給で一生好きなことが出来る経済的基盤があったようで羨ましい。