2017年03月30日

親子理科実験教室だより その2(ブログ その34)

5月から始まった親子理科実験室も、6月27日に第2回が終わったと思っていたら、もう7月25 日(日)に第3回目を迎えます。
電気・磁気の性質を終えて、いよいよ第3回は、「電気を流して磁石をつくろう」に入ります。

電磁気といえばマックスウェルの美しい方程式を知るまでは、右手や左手を使って、「なにやってんねん」という感じが私には強かったのです。
しかし、実際に、電磁気の話をしっかり子供たちに分かってもらおうと議論していると、いろいろわからないことが出てきます。特に、磁石なんていうのは、昔からよく知られていて、大して新しいことはないと思っていたのですが、第2回の「磁石にくっつくものとくっつかないもの」のテーマをとりあげてみると、これだけでも十分面白いのです。
それは、1つには、磁石というのは、切っても切っても磁石になるという面白い性質を持っているからです。私は、この磁石の性質は、原子まで行き着くのだということを明言しないといけないので、「ものは原子からできている」ということを、伝えるべきか、小学校では原子など習わないのだから、こういうミクロなものの見方はやめた方がいいのか、どちらなのだと迷っていました。
しかし、原子まで行かなくても、まめ磁石というレベルで話をして十分にいろいろな現象を理解できるのではないかということに初めて気がついたのです。
そこで、子供たちがまめ磁石になることによって、鉄などのまめ磁石の集まりが「磁石になる」とはどういうことか、つまり「磁化」現象とはどういうことか、体で体験できるように工夫してみました。
子供たちが磁石の中の「まめ磁石」になって、外から磁石が近付いた時にどうそれぞれが反応するのか、を演じてもらうという企画です。これは、私が愛知大学時代に、500~700人もの受講生に、「ウラン核分裂」や「自発的対称性の破れ」を自ら原子になって体験することによって理解を深めることが大変有効であることを確かめてきたものの応用編です。
もともと自発的対称性の破れなんて難しい概念は、あまり普及していなかったのに、南部陽一郎先生がノーベル賞をもらわれて、大変有名になり、こんな難しいことを言っても、少なくとも言葉としては知れ渡ったので、使いやすくなったのですね。
これをうまく説明する模型として、従来から「Ising」モデルというのがありました。これは原子が磁石の基になる「スピン」をもっており、スピンの方向が磁石の向きを決めるので、物質中の原子のスピンがそろうと全体として磁石になる沢山の原子の集まりの模型です。これを、今度は原子といわず「まめ磁石」という原子の集団に置き換えて、子供たちに演じてもらうというストーリーで、今度は、磁石の不思議にせまる体験実験を子供たちと行ったのです。
そのために、今回親子理科実験教室の企画会議で、いろいろな議論を積み重ねました。
「原子という概念をまだ小学校では習わないなあ」というのから始まったさまざまな議論は白熱しました。特に、電気を通す金属は沢山あるのに、どうして磁石になりにくいのでしょうか。
当たり前ですが、磁石の方向が揃うということは、まめ磁石同志の間には反発力が働くということです。それに打ち勝つだけの「結びつける力」が必要になります。原子同志の相互作用が、こういう引力を引き出しているような物質はそう多くはないのですね。
温度が高くなると、よけいまめ磁石は活発に好き勝手な方向を向こうとしますので、規律正しく揃ってはくれません。電気を通しても磁石にならない金属が多いのは当たり前なんですね。

さて、第2回の親子実験教室でまめ磁石になったゲームを初めて試みてみたのです。小学校高学年は、「釘を磁石にするのに、磁石で同じ方向にこするといい」というのは、知っています。
孫に「なんで?」と聞いてみたら「中の磁石がそろうからや」と当たり前みたいに言われてしまいました。そうか、それぐらい知っているのか、というわけです。ですので、高学年では、これを「まめ磁石」で演じるのは、その理解を確実なものにします。低学年はそこまで知りませんが、自ら磁石になるので、体験できて、しかも楽しいみたいでした。
この試みは、手伝ってくれた京大理学部の大学院生(実験サポート役TAと言っています)にも、インパクトを与えたようで、「こんな試みは僕にとって初めてです。画期的ですね。僕も小学校の時にこういう実験に参加してみたかったです」と感激を込めて語ってくれました。
TAたちの積極的な姿勢、彼らの情熱と真摯さが伝わって爽やかなものを感じました。若い人たちが、自分の研究を追求しながらも、科学普及に関心を抱いてくれていることに、とても心強いものを感じました。

昨日、第3回の親子理科実験教室の準備の最終段階で、スタッフ一同で、印刷物を全部完了し、当日使う「子供が自ら方位磁石になって、電流が流れた時の、自分の振る舞いを演じる教材道具」も何とか手作りで出来上がりました。
不要になったDVDに印刷した絵を張り付けた手作りの方位磁針は、出来上がりまずまずです。それに加えて、磁力線の向きを実感させる「場」の模型を作って、直線電流の周りの磁場を可視化します。この磁場は空間が3次元ですから、たくさん作って重ねる必要があります。
ところが、この、電線の周りに張り付ける印刷物について、ちょっとした間違いをしてしまいました。「右まき」磁力線の図を書いたものだけ作って「裏も同じだな」と勘違いしてしまい、同じものをたくさん印刷したのですが、貼り付けてみて「あれえ、裏と表が同じ周りの円周うにならないわあ」と気付いたのです、なんとまあ、当たり前ですね。ひっくり返しただけでは、左周りの図にならないことは、ニュートリノを出すまでもなく、よく知っているはずでしたのに・・・。全くお恥ずかしい限りでした。
これだけがまた未完成ですが、たりあえず、今回は、厚紙を丸く切って使うということで、切り抜けることにしました。

あと、直線電流の作る場を、鉄粉で見せる演示実験だけが、まだうまくできるかどうか残っていますが、予備実験を、今度の講師である藤原さんと松林さんで確かめて頂くこととなりました。
藤原さんは、理科教材の会社、リテンの社長さんですが、教員免許状もおもちで、これまで、いろいろな大学や科学館で行われる実験教室の講師を何度も務めておられ、実績のある方です。いろいろな道具(電流計、パスカル電線の電源アダプター、ねじの見本等)も、この実験教室のためにお貸しいただき、大変感謝しています。
さらに、今度は、パスカル電線を用います。これは、杉原和男先生(前京都市青少年科学センター 指導主事)が開発されたものです。当初は「大電流電線」という名前だったのですが、これが多様な実験に使えることが分かってきて、「パスカル電線」という名前になりました。
1978年に最初の試作品ができたそうです。東レ理科教育賞も受賞されました。海外でも有名になり、2007年にはタイ国に受賞者代表として招かれたそうです。その時世界に通じやすいように「S-cable」と名付けられたそうです。このSは、杉原の頭文字のように思われますが、杉原先生は、そうはおっしゃらないようです。
理科実験教室で指導を頂く松林先生(前光華小学校理科専任で、たいへん人気の高い先生です)と藤原先生(理科教材づくりの会社を営みながら教材の歴史等の研究もされており、夢は親子でいろいろものづくりに集まる理科工房を作って楽しみたいとか・・・)のお二人が杉原先生をご紹介くださり、こうして、この素晴らしいパスカル電線を使わせていただけることになりました。
次回第4回もこれを使っていろいろな実験をします。パスカル電線でたしかめながら、電磁場を自ら演じるゲームも盛り込んで行う理科実験教室の経験は、単なる普及活動を超えて、大人まで、そして研究者にまで、自然の仕組みの新しい側面をみせてくれ、この実験を通して、私たち自身も、磁石の不思議を実感し、わくわくしています。
この催しは前期は計5回行われ、希望者が殺到したため、急遽、3日間の夏休み集中講座を企画しましたが、それも定員に達したので締め切ったところです。夏には東京や愛知など遠いところからも参加希望者が出ています。私どものささやかな組織で、この大きなイベントを支えているので、かなりの負担がかかってはいますが、可視化実験室のスタッフをはじめ、周りの支えてくださるたくさんの方々のご協力を得て、今度、第3回実験教室までこぎつけました。
問題は来年以降、この試みをどう継続、発展させていくかです。今のところ、めどは立っていません。ただ、今は、本質の分かる、科学教育の次の発展にも貢献できるものにすることが、今の任務かなと思っている次第です。

みなさまのご支援をお願いします。

親子理科実験教室の様子は、当法人ホームページ ニュースカテゴリ第1回の様子 第2回の様子)でご覧ください。