2017年11月21日

事前討論

今中氏への質問と回答(事前討論 No. 6)

今中氏からのメールによるご回答を、一瀬氏がQ&A形式にまとめたものです。

Q1 今中さんはDS02の作成に関わられたそうですが、残留放射線の効果が取り入れられなかった経緯について詳しく知りたいのですが。
     
A1 ●  私は、DS02策定にあたった日米WGのメンバーだったので、DS02には責任を感じていますし、DS02が(LSSコホートにかかわる)原爆線量推定方式として不適切であるとすればその旨を発表すべきだと思っています。
  ●  DS02の対象は、『放影研LSSコホートの解析に使うための被曝線量推定方式』であって、誘導放射能・放射性降下物(残留放射能)を含めた一般的な『広島・長崎原爆線量評価方式』ではありません。
  ●  残留放射能については、DS86の際に長崎大学の岡島先生がまとめられた章があります(いろいろ批判がありますが、私はいい仕事だと思っています)。
  ●  早期入市者については、最近のLSSではリスク解析の対象になっていません。”黒い雨”については、(LSSコホートの大部分が被曝時にいた)広島市内デルタ地域では『大きな線量ではなかった』ということで、DS86では考慮されず、DS02でもそれが踏襲され、DS02の策定でとくに議論はされていません。
  ●  DS02策定後に、誘導放射線や黒い雨線量がどれくらいであったのか、キチンと見積もっておく必要があるということで、私なりに残留放射能の再検討というようなことをやっています
     
Q2 沢田氏の内部被曝説について、今中さんのご見解をお聞かせください。
     
A2 ●  沢田先生と私との関係ですが、沢田先生とは彼が『内部被曝説』をとなえ始めて以来何度も議論し、『個人的にはrespectしているが、彼の説はsupportしない』という関係にあります。
  ●  私流に言わせてもらえば、『遠距離で認められた脱毛や下痢は急性放射線障害であった』という仮説に基づく議論です。仮説の上にいくらりっぱな建物を作っても、仮説の確かさ以上にしっかりした建物にはなりません。
  ●  私は『Dosimetry屋』なので、沢田先生にはいつも『では、どういう放射線核種がどれだけ地表沈着して、人々がどの核種をどれだけ取り込んだのか』と聞いていますが、キチンとした答えはもらっていません。私の直感では、内部被曝で急性症状が出るくらいの放射能が地表沈着すれば、地表1mではべらぼうな空間線量率になると思っています。
     
Q3 黒い雨とその影響について、どれくらいわかっているのですか?
     

A3

●  「広島黒い雨研究会の中間報告」の中で私は、日本人科学者による原爆直後の放射線サーベイをレビューしましたが、理研グループ、京大グループ、阪大グループによって質の高い調査が行われています。その範囲では、爆心地近辺の誘導放射能と己斐・高須近辺の黒い雨地域を除き、大きな残留放射能は観察されていません。DSを批判されている方々は、『枕崎台風で放射能が流れた』といっておられますが、私の記憶では、広島では、原爆後の数週間は雨らしい雨はなかったはずです。
  ●  繰り返しになりますが、私の話は、Dosimetry屋として、『Gy単位の全身線量をもたらすほどの残留放射能が市内全域にあった』という説には乗れません、ということであって、急性放射線症状なり、それに似たような症状があったということを否定するものではありません。

※「広島原爆“黒い雨”にともなう放射性降下物に関する研究の現状」(2010),http://city.youth-service.com/01publication/0301BlackRain2010.pdfのp.11に、今中氏の「広島原爆直後に行われた放射能調査活動」が収録されている。