2024年12月05日

東日本大震災 ー 放射線の影響 - 200ミリシーベルト以下の場合 その1

始めに

このスライドは、免疫学が専門である宇野賀津子常務理事を中心に、坂東理事長、松田副理事長の意見も取り入れ、ワーキーングチームの方々の意見をもとに推敲を重ねたものです。
このスライドには、

 1)地球上の生命が進化の中で獲得してきた放射線から身を守るシステム
 2)私達の身を守る免疫機能

を強化することが、放射線による発癌のリスクを低減させることであることを伝えることを目的としています。いろいろな場で活用されることを願っています。
併せて、あいんしゅたいんブログも参考にしてください。(ブログは日々更新されています。http://jein.jp/ から、ブログのチェックをお願いします。)

あいんしゅたいん情報発信グループ文責:宇野賀津子(常務理事) 2011年3月28日

始めに

このスライドは、免疫学が専門である宇野賀津子常務理事を中心に、坂東理事長、松田副理事長の意見も取り入れ、ワーキーングチームの方々の意見をもとに推敲を重ねたものです。
このスライドには、

 1)地球上の生命が進化の中で獲得してきた放射線から身を守るシステム
 2)私達の身を守る免疫機能

を強化することが、放射線による発癌のリスクを低減させることであることを伝えることを目的としています。いろいろな場で活用されることを願っています。
併せて、あいんしゅたいんブログも参考にしてください。(ブログは日々更新されています。http://jein.jp/ から、ブログのチェックをお願いします。)

あいんしゅたいん情報発信グループ文責:宇野賀津子(常務理事) 2011年3月28日

放射能汚染問題

東日本大震災そして、福島原発事故と続いて、今まで私達が経験したことのない危機に見舞われています。
福島の原発事故の影響は、数ヶ月から数年のスケールで様々な影響が及ぶと考えられます。時々刻々問題点は変わっていくでしょう。私達が今まで経験をしたことの無い問題も含まれていると考えられます。正確な情報に基づき、対応を考えていきましょう!ただ、その前に、恐れるべきは不確かな情報によるパニックです。正確な科学的情報をもとに、時々刻々変わる事態に対応していきましょう。

何故パニックが危険か

何よりも危険なのはパニックです。不確かな情報による、不安はストレスとなり、免疫力の低下に繋がります。その結果、感染症にもかかりやすくなり、また発ガンのリスクをも増大させます。考えようによっては、低容量の放射線以上の悪影響を身体に及ぼします。

放射線の急性障害と慢性障害

放射線障害には高容量の放射線を短時間に浴びたときに数週間以内に起こる急性の直接的な影響と、低線量を長期に浴びたときに起こる影響が考えられます。急性障害は特に白血球や精子など、分裂中の細胞に放射線の影響が大きく現れます。福島の原発事故の最前線で働いている人達は高容量の放射線を浴びる危険性と背中合わせで、現在の危機的状況を収拾するために奮闘しておられるわけです。
特に白血球は他の細胞に比べても放射線による障害を受けやすく、この場合健康な人からの骨髄移植により救命できる場合もあります。また、ガン治療の最前線では、ガン細胞を死滅させるために、局部的ではありますが、5から10シーベルトの放射線を照射して、ガン細胞を死滅に追いやろうとしています。一方、現在多くの人に取って問題なのは、低容量の放射線の影響です。
今までに報告されている範囲では200mSv以下では、直接的な身体への影響はないと考えられています。ただ、発ガンのリスクが上昇する可能性が心配されていますが、数十ミリシーベルトでは、一番懸念されているのは、小児への甲状腺がんへの影響です。子供に比べて、大人にはほとんど影響はないとされています。

放射線障害急性作用と慢性作用

前のスライドで説明したように、一度に大量の放射線を浴びた場合と、低容量の放射線を長期にわたって浴びた場合では、身体への影響は異なります。
特に私達の身体は、放射線障害に対する修復機構をもっていますので、低容量の放射線を長期に浴びた場合では、一度に大量に浴びた場合とは異なり、積算して同じシーベルトでもその影響は異なります。

放射線障害と活性酸素

放射線が遺伝子の本体であるDNAにあたり直接的に障害する場合もありますが、多くは体内の水分子に放射線が当たり、活性酸素が発生して、それによりDNAが傷害するケースが大部分です。
一方、通常は傷つけられたDNAは、すぐさま酵素により損傷部位が取り除かれ修復されます。

障害修復機構

現在生きている地球上の生命体にとって、酸素というものは有用でもあり、また危険なものでもあるのです。酸素を取り入れ、そこからエネルギーを生み出すとともに、私達はその過程で作られる、活性酸素の害に対する防御機構を備えてきました。
実際、1日に1細胞あたり最大50万回ものDNA損傷が起こり、それが修復されているとも言われています。修復しきれなかった変異細胞は大部分は死滅するるのですが、一部はガン化します。
実際この修復するための酵素が欠けている人では、高率でガンが発生します。ガン化した細胞は、自ら死ぬか、免疫細胞によりほとんどは除去されます。

身の回りの酸化ストレス

放射線障害の70%は、活性酸素によると先に説明しましたね。実は、活性酸素は私達の身体では日夜生成され、消去されているのです。
また、紫外線や大気汚染物質、たばこは生体内で活性酸素を作りだし、DNAや細胞成分に損傷を与えるのです。そういった意味では、放射線の害もたばこの害も対比して比較できるのです。

「がん貧乏くじ」の話

低容量放射線の影響として、一番心配されるのは発ガンのリスクの上昇です。ただ、この場合、同様の放射線を浴びた全員に、同じようにガンが生じるのではありません。実際は多くの要因がからまって、ガンになるので、ここではガンの要因となるようなものを、ガン貧乏くじとして表現しました。
くじはたくさん買えばあたる確率があがりますが、1枚でもあたることもありますよね。特に、免疫機能を低下するような要因、過度のストレス、恐怖、絶望もまた、ガン貧乏くじの札となることを理解ください。

がんの成長の自然史

ガンは1日でできて、短期間で命を脅かすほと大きくなるのではありません。多くのガンは20年以上前にその芽が出来ていたことになります。
何故そんなにかかるのか、それはガンといえどもそう簡単に増えられない監視システムを私達はもっているからです。

ナチュラルキラー細胞

その最前線を担っているのが免疫細胞です。とりわけナチュラルキラー細胞というのは、日夜出現するガン細胞(変異細胞)を除去するのに働いています。
右のグラフからわかるように、NK活性の低い人は、11年の間にガンになった方が、活性が高かった人に比べて高率であったことが報告されています。
左と下の写真は、ヒトのNK細胞がガン細胞を攻撃している写真です。

ナチュラルキラー細胞とガン

ナチュラルキラー細胞というのは、ストレスにとても弱く、恐怖や絶望はこの活性を低下させます。
一方、笑いや生き甲斐をもつということ、心理的サポートはプラスに働くことが明らかにされています。また食事やある種の乳酸菌の摂取も、NK細胞を始めとした免疫細胞の活性化にプラスとなることも明かにされています。

がん貧乏くじを打ち消す札

そこで、がん貧乏くじを打ち消すくじについて更に書いてみました。

まとめ その1

原発事故で放射能を恐れると言うことは、とても大事なことです。
ただ、必要以上に低レベル放射線をおそれたりすると、免疫力を低下させたりする別の悪影響があるということを理解しましょう。

まとめ その2

福島の原発事故の影響は、数ヶ月から数年のスケールで様々な影響が及ぶと考えられます。時々刻々問題点は変わっていくでしょう。私達が今まで経験をしたことの無い問題も含まれていると考えられます。正確な情報に基づき、対応を考えていきましょう!無用な心配をして、免疫力を低下させることの方が危険なこともあります。希望をもって、この困難を克服していきましょう。

最後に・・・情報発信者からのお願い

このスライドを利用される方へ

東日本大震災、そして福島原発事故を目の当たりにして、幸い関西にいてこれらの影響をほとんど受けなかった私たちが「今何をすべきで、私たちに何ができるか」を議論した結果、研究者や科学教育に関心の高いNPO法人あいんしゅたいんの会員を中心に「情報発信グループ」を立ち上げました。

「日本大震災 ー 放射能の影響」シリーズは、同グループが発信する情報の1つです。急きょ作成したものですので、今後も皆様のご意見を取り入れつつ、よりよいものへと更新していく予定です。

従って、人にこの資料を紹介するときは、ダウンロードした資料を送るのでなく、リンク先を紹介するようにしてください。1週間もたてば、状況は変わります。私達も出来るだけ新しいデータをもとに適切な資料を作りたいと考えています。
http://jein.jp/ をチェックの上、最新版を使ってください。また、このファイルの一部を取り出して使用しないでください。本来の意図と違った形で、使われるのを懸念しています。

あいんしゅたいん情報発信グループ【担当責任者:宇野賀津子(常務理事)・坂東昌子(理事長)】