2024年12月05日

JST科科学技術コミュニケーション推進事業に採択されました!(ブログ その129)

「科学の信頼を取り戻すこと、これが今回の福島事故の課題です。科学が信頼を失墜したことは、この先ずっと人類の歴史に長くお影響するでしょう」

この言葉は、2013年12月14日に開かれた京都大学原子炉実験所が主催する国際シンポジウム「東京電力福島第一原子力発電所事故における環境モニタリングと線量評価(Environmental monitoring and dose estimation of residents after accident of TEPCO's Fukushima Daiichi Nuclear Power Station)」のときに、Prof. Wolfgang Weiss 博士から聞いた言葉だった。
ワイズ博士は、第18・19回の国連放射線科学委員会(UNSCEAR)の議長をなさった方である。彼は、その国際会議で、行われた講演のすべてに、鋭い質問を投げかけ、適切なコメントをされていた。そのころ、ムラサキツユクサの変色、蝶々の奇形などを見つけたといって大騒ぎしていたツイッターの話が飛び交っていた。どうして日本のツイッターなどの中身までよくご存じなのかびっくりして、私はワイズさんに

「私は今日の先生のコメントに大変感銘を受けました」

と話しに行ったのである。そして

「あなたも物理学者でしたか!」

とさらに親近感を持ったのである。この事故の真実の姿をしっかりと把握し、市民に本当の姿を明らかにすることなしに、福島の復興はありえない。

科学の信頼を取り戻すには、科学者が正しいデータに基づいた情報をきちんと伝えることが必要だ。しかし、噂ではなく、データを本気で元に戻って自ら調べてきちんと評価するには、いろいろな専門の方と協力すること、そして、市民が疑問をもっていることに対して科学者が真正面からごまかさずに検討して答えることが必要だ。
そういうことを、市民である艸場さんや土田さん(といっても高い関心を持つ積極的な市民)と話し合った。そして、「みんながデータをよめるように、そして理解できるように、データ集を作ろう」という艸場さんの提案に賛同した。これが、5年以上前、3・11事故後の直後から始めた低線量放射線検討を、大学に入りたての学生たちや、集まった市民たち、そして、様々な分野の科学者たちで始めた中ででてきた計画だった。こうして市民と分野の異なる分野の専門家が集まって作り上げたのが、「放射線必須データ32」である。このことについては、ブログ128に書いた。おそらく世界中探しても、これだけ市民と科学者が意見をまともに交換しあい、疑問をぶっつけあって作った本はないだろう。世界初といってもいいのではないかと自負している。この本を手掛かりに、これからさらにたくさんの「わかりたい」と思っている方々と議論し、知識を共有していくことが課題だと思っていた。

この本が出来上がったこの3月、丁度それに合わせたように、科学技術振興機構(JST)は、科学技術コミュニケーション推進事業として問題解決型科学技術コミュニケーション支援「ネットワーク形成型」の募集を始めた。JSTの公募には、これまで長い間NPOには開かれておらず、大学とか研究所とか大きな公的組織だけが応募できていたのである。ところが、今度は、なんと久しぶりにNPOに応募できる。それなら頑張らなくては。
早速、細かな応募書類を角山さんや澤田さんをはじめとする仲間の協力で仕上げた。そして7月10日にヒアリングにまでこぎつけた。
アリングでは、いろいろな質問が出たが、最後の「もし坂東さんがいなくなったら、続けていけるのですか」という質問が出た。
え?そうやな!いつどうなるかわからんなあ!・・・・
一瞬そう思ったが、でも、即座に、「周りには頼もしい方々がたくさんいる。そうなんだ。それがあいんしゅたいんの強みだ」と思い直し、私は答えた、

「たくさん若い人が頑張ってくれています。」

一昨日、採択通知がきた。

これからみんなと手をつないで頑張らなくちゃ、と覚悟を決めている。このプロジェクトはどなたでも関心のある方ならどんどん参加していただくことで発展する。みなさんのご参加を心からお待ちしている。