2024年12月09日

くさばさんとの会話『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』(ブログ その117)

坂 東 「くさばさん。データ集、だいぶ完成のときが見えてきましたね。沢山の人が待ってますよ。市民が科学者・専門家に質問し、中身を理解しながら原稿を修正するこの行き来、何度ぐらいやったのかなあと思って今までのメールを勘定してみたら、1200回以上やりとりしてますねえ。新しくお願いした人も含めると、執筆者は14人で50本近くの原稿です。1つの原稿について20回以上メールのやり取りをしている計算よね。」
   
くさば 「ご本人とは、スカイプとか直接お会いしたりもします。理解できない専門知識や、わかりにくい書き方などを説明してもらい、書き直しています。共に校閲してくれる土田さんとは、一つの原稿で2時間くらい『ああでもないこうでもない』とスカイプすることもたびたび。だけど出版社から遅すぎると言われてクビになりそうで(笑)、焦っています」
   
坂 東 「よう、やりましたね。私など、『ここ、ややこしいからまあ適当に誤魔化して仕上げよう』と書いたところを、見事に指摘されたわ。こればっかりやってたとしたら、割に合わない仕事のはず。ごめんなさいね」
   
くさば 「この間、いくつか仕上げた本もありますよ。それにこの本は、私としてはぜひいいものに仕上げたいんです。この企画で得た知識や執筆者の方との交流は、財産ですし」
   
坂 東 「ほんとね。世間のほとんどの人が元のデータも見ずにいろいろと言っているので、みんな何を信じてよいのか困っているのよ。かといって、データを自分で集めるのは大変だし、だいいち、見てもそれを読みこなせない・・・。だからみんな、こんな本が欲しいって言ってますよ。頑張りましょう!ところで、最近出した本って、どんな本?」
   
くさば 「『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』です! 書いたのではなく、編集したんですけどね」
   
坂 東 「へえー、面白そうな本じゃない。知らなかったわ。」
   
くさば 「場違いな気がして、言わなかったんです。でも、そう思ってくださるなら持ってきます。」

そういって間もなく持ってきてくださった。私は、これを読んで、目の覚める思いがして、一気に半分ぐらい読んだ。執筆者は、もと自衛隊の人である。そう聞いたたけで、きっと戦争したいと思っているんだなと、勝手な想像をしていたが、実は違っていた。その論理明解、引き込まれるように読んだのだ。そして、科学サロンに参加するためにここを訪問された方にこの話をしたら、彼もたちまち引き込まれたようで、サロンが始まるまで没頭して読んでおられた。サロンが終わったとき「これ、貸してくださいませんか。最後まで読みたいので」といわれたので、気前よく貸してしまった。くさばさんの編集した本、ホントは買わないといけないなあ、そう思っているところである。
で、くさばさんとその後話した。

坂 東 「どうして、この人の考え方を知ったの?」
   
くさば 「きっかけは、私が加わっている市民フォーラムのメーリングリストで、彼、泥憲和さんがときどき書いてくる文章に「この人、すごい」と思ったことです。非常に論理的で説得力があり、加えて言葉に「腕力」がある。同時に、温かいヒューマニズムが底流に流れているのも感じました。」
   
坂 東 「ふーん。すごい人がこうやってメールに迫力のある意見を書いているのね」
   
くさば 「後で聞いたところによると、市民フォーラムの中心メンバーは前から泥さんに『本を書け』とけしかけていたらしいです。」
   
坂 東 「なるほど、みんな同じように思っていたんですね。よくすぐにここまで持っていく気になったものだわ。」
   
くさば 「無名の人ですが、中身を分かってもらえたら、共感してもらえると思いました。今思えば、私自身が、この人の本を読みたかったんだと思います。もちろん「伝えたい」から本を作るのですが、根底に「この人(の考え)を知りたい、この人が書いたものを読みたい」という気持ちがあるんだと思います。佐藤先生との本もそうです。で、知り合いの「かもがわ出版」の編集長に打診し、泥さんにも声をかけたら、話が一気に進みました。ほぼ同時期に、泥さんの街頭演説(本の冒頭に書きました)がネットですごい勢いで拡散され、『これは行ける』と確信もしました。昨年夏の2~3か月、データ集の動きが鈍かったのは、この本に集中していたからです。すみません…」
   
坂 東 「ふふふ…。ともかく、その直観力もすごいけど、こんな説得力のある議論、見たことないわ。私はこの本を読んで、『自衛隊に入る人は、勉強したいけど、大学に行くには日本ではすごいお金がいる。だから、お金のない人にとって平等に受け入れてくれるのが自衛隊だ』と思い知ったわ。佐藤さんの言う、軍隊は出自によらず平等だ、というのがよくわかるわ。」
   
くさば 「ええ。『自衛隊員のほとんどはノンポリです』と泥さんが言ってました。泥さんは、貧しい環境に育ち、軍隊志向の父の指図で自衛隊に入り、自衛隊を辞めたあとの工場経営で差別されている人たちと交流し、工場をたたんだ後に働いた弁護士事務所で多重債務者の救済に奔走しと、ずっと「地べた」からものを見てきた人です。」
   
坂 東 「そういう人は、足が地についているから強いですね。尊敬するわ。」
   
くさば 「また彼はここ何年か、ヘイトスピーチのカウンター行動を行っています。在特会の人たちとじかに対面して、論破します。このヘイトスピーチ、『スピーチ』っていうから、話がおかしくなるんですけどね」
   
坂 東 「この本は、論点をごまかさずにしっかり押さえているので、説得力がありますね。それに平易に語るので、とても分かりやすい。こんな風には、なかなか人にしゃべれないなあ。ところで、この本をどういう風に編集したの?」
   
くさば 「泥さんへのインタビューと、これまで彼がネット上に書いてきた文章をまとめるのと、同時進行で行いました。どういう構成にしたらよいか、原稿をまとめながら、そして泥さんとやりとりしながら、かなり考えました。インパクトがあり、しかも論理構成を分かりやすくすることがポイントだと思いました。実は、泥さんとじかに付き合い始めて、驚いたことがあるんです。」
   
坂 東 「興味あるなあ。くさばさんが驚いたことって?」
   
くさば 「見た目と違って(笑)、すごい勉強家なのです。主張に必ず根拠がある。彼は何かを言うとき、できるだけ一次資料にあたり、文献や公文書を読み込んで論陣を張ります。かつて、人から聞いた話をそのままして、大恥をかいたことがあるらしい。」
   
坂 東 「耳が痛いわ。研究者とかインテリとかで、ヒトの話をうのみにするのはいっぱいいるからねえ。それに、データ集でもつい誤魔化して楽をしようとして、土田さんとくさばさんに見つかって書き直している体たらくだからねえ。」
   
くさば 「いやいや。それから泥さんは、予想外に(大笑)頭がいい。『ここ、もうちょっと論理がつなげられないか』『説得力がない』などと注文すると、こちらの意図を的確に察して、すぐに原稿を追加したり変えたりしてくれました。」
   
坂 東 「あ、これも耳が痛い。ちゃんと理解しないで、適当に修正すると、また、『わかってないなあ』という雰囲気で返事が来る。すみません!そうだったんだ。頭悪いんだなきっと!」
   
くさば 「というか、泥さんが『何がどう間違っているかを、何とか人に分かるように伝えたい。みんなが知らないままでいることを、何とか伝えたい』という気持ちが強かったからだと思います。坂東先生だって、分野は違うけど、そういう思いがあるんじゃないですか? ともかく、泥さんは、ただワーワー言っているのではない。「根拠」を持って主張している。それを示したいと思って、できるかぎり注記をつけました。ふつうは、こうした注記をつけると、難しい本だという印象を与えて読み手を逃すので避けたいのですが、本書の場合は、それこそが特徴としたかったのです。」
   
坂 東 「ふつう、安倍さんの言っていることはおかしいと思うけれど、尖閣はどうなるの?中国が攻めてきたらどうなるの?と思うし、安倍さんをきっちり論破する論理が持てない、そういう人が多いですものね。」
   
くさば 「ええ、多くの人がそう思っていると思います。そんな人に、手に取ってほしかったからです。」
   
坂 東 「泥さんも大変だったんでしょうね。気持ちわかるわ!」
   
くさば 「編集途上では、泥さんに嫌われたかも。校了のぎりぎり最後まで、さらに印刷に回す最後の最後まで、泥さんに「ここ、おかしくないですか?」としつこく電話をしたので、『またかよ~』って。」
   
坂 東 「さすが、執念ね。くさばさんらしいわ!」
   
くさば 「だって、この手の本で「抜け」があると、駄目だと思ったからです。」
   
坂 東 「泥さんもくさばさんの気持ちわかってくれているでしょうよ。」
   
くさば 「そうですね。今では信頼してもらってます…かな…?」
   
坂 東 「憲法9条を自衛隊の人が守っていきたいと言っていることに、驚いたわ。」
   
くさば 「自衛隊は、時の政府の命令に従うしかないんです。だから、イラクに行けと言われたら嫌とは言えない。でも、憲法9条のもとにある部隊だから、彼らは現地ですごく配慮するんです。イラクでも、他国軍はいつでも応戦できるように銃口を斜めに向けているけど、自衛隊は銃口が市民に向かないよう、いつでも真下に向けていたと聞きました。丸腰で、現地の人をリスペクトすることから始めたそうです。他にもいろんな話を、この本で具体的に書いています」
   
坂 東 「自衛隊って、9条に違反して作られたのだから、そういう偏見でしか見ていなかったので、その論理展開にびっくりでした。」
   
くさば 「私もです。これまで私は、自衛隊は頭ごなしに嫌いだったし、軍事アレルギーでした。でもこの本を作って、考えがずいぶん変わりました。今は、いずれ出てくるだろう改憲論議に、自衛隊の存在をどう考えるのか、つまり自衛権も放棄するのかをちゃんと考え、そして軍事的な側面からも考えていかないとダメだと思っています。加えて言えば、憲法9条がどう具体的に世界に貢献しているかが、あまり知られていない。それも具体的に書きました。西洋とアジアと中東とアフリカに、等距離で付き合える強みがあるはずです。それを捨ててはいけない。」
   
坂 東 「でもさ、この表紙ちょっとこわいなあ。」
   
くさば 「この本、魔除けにもなりますよ。」

と言って、くさばさんは、「本書の中にあるこのフレーズを、私はとても納得しています(一部改変)」といわれた。

脆弱な非武装日本を、国民の多くは望んでいない。同時に、軍国主義や国家主義を嫌悪している。圧倒的多数の国民は、納得できる安全保障政策を望んでいる。憲法9条を土台にした、現実的な安全保障政策を提案しなければならない。

そしてくさばさんは言われた。

「これまで日本はイスラム圏には好感をもたれてきました。これは、泥さんからだけではなく、イスラム圏の国で紛争後の武装解除を行ってきた伊勢崎賢治さんや瀬谷ルミ子さんという人たちから、実際に聞いた話です。でもこのところの日本は平和国家というブランドを手放そうとしている、と、印象が少しずつ変わっていると聞きます。
人質になった後藤健二さんも、伝わっていない本当のことを伝えたいと、紛争地に生きる人たちの取材を続けてきました。彼には、前に国際支援の本を書くときに的確なアドバイスをもらいました。もし日本の私たちが理不尽な仕打ちを受けたら、「誰か世界に伝えてほしい。そして助けてほしい」と思うでしょう。パレスチナでもシリアでも、人々は「誰も助けてくれない。世界から見捨てられた」という絶望の中に暮らしていますが、それを何とか伝えたいと、後藤さんみたいな志のジャーナリストが現場に行くのですよね。」