2017年09月24日

第21回:「法廷と科学」by 中村

法廷と科学、というと、縁遠いものに思われますが、実際には、法廷実務でも「科学」はひょっこり顔を出します。私は、弁護士になって以来、法廷の「科学」になんとなく違和感を抱いてきました。算定根拠非公開の「統計」結果って、法的判断の根拠として適切なの?とか、検体が存在しない(つまり検証不可能な)科学鑑定って、科学的といえるの?とか、未解明な課題の残る科学論文って証拠としての信頼性はないの?などなど。ぼんやりした私の疑問も、実は海外では正面から課題として取り上げられていると言うことを知った私は、日常業務にやりくりをつけ、世界一周航空券でちょっと諸外国の取り組みをのぞいてきました。

ブラッセルでは、EU議会の STOA委員会 とEU委員会の Science in Society でそれぞれお話を聞きました。パリでは、類似の問題に取り組む弁護士、社会学者と議論をしました。その後、ミュンヘン経由でボストンに飛び、ハーバード大学でのScience and Democracy Networkの年次研究会では、日本における科学者証人尋問のあり方に関して 共同発表 をしました。その後、ワシントンのAAASで、公的専門家証人制度(CASE Project)や全米法曹協会(ABA)との法律家と科学者による全国会議(NCLS)の取り組みについてお話を聞きました。

法廷は、限られた時間の中で、科学的論点を含む社会的な問題について、一定の結論を出さねばなりませんが、法的判断において科学的合理性を保つには、法廷の仕組みの中で、科学的方法論を調和させる必要があります。社会的文脈の中で、「科学的方法」とは何であるのかを模索していく諸外国の取り組みは大変興味深かったです。詳細は、いずれご報告する機会があると思いますが、今後、日本でも、科学者と法律家の協働が必要となるのではないでしょうか。