2020年12月04日

戦争の中の物理学者(ブログ その149)

すっと前から皆様にご紹介しようと思っていた本があります。それは、政池明さんの書かれた「荒勝文策と原子核物理学の黎明」という大作です。

この著者の政池さん(京大名誉教授)は同じ物理学の先輩ですが、この本を何年もかかって出来上がった分厚い本です。よくここまで資料を集め整理されたものと感銘を受けました。
事実を確かめるために米国滞在中米国議会図書館公文書館に何度も訪問し原資料に直接触れられた苦労話(目で見るだけでコピーできないそうです)も聞かせてもらいました。
荒勝研究室をGHQが検査してみんな資料も含めて没収したとき、荒勝先生が、「これだけは残してほしい」と言われた研究ノートのこと、それに対して医学部の学生だった堀田進(のちの神戸大教授)先生が嘆願書を出した話とかが印象的です。

あいんしゅたいんで、政池さんにお話していただいた事もありました(今読むとえらい誤字脱字だらけで冷汗ものです…いつものことですが・・・)。この話を聞いた当あいんしゅたいん名誉会長佐藤文隆さんが勧められて、京大出版の話が進んだのでした。

さて、今日はお知らせです。

 8月15日 午後7時半~(NHK総合テレビ) 「太陽の子」
 8月16日 午後10時~(NHKBS) 「原子力を解放せよ~戦争に翻弄された核物理学者達」

が放映されます。

「太陽の子」はドラマですが、これは「大戦中の京大の荒勝研究室の学生たちの行動をドラマ化」したもので、その縮小版が放映されます。
この撮影には政池さんもアドバイスされており、実はこの中にウラン濃縮の講義のシーンが出てくるらしいのですが、それを俳優さんが黒板に書くシーンもあるそうです。ウラン濃縮の研究をされていた、当副理事長の松田さんのところにも問い合わせがありました。ドラマだということで「史実」と異なったところも多く、政池さん自身も甚だ気がかりだそうです。
この映画は米国でも上映されることになっているそうですが、米国では現在でも原爆を日本に投下をしたことを正当化したいと考えている人が多いので、大戦中の日本の原子兵器の基礎研究を実際以上に誇大に受け取られないかも心配だと言っておられました。「荒勝文策と原子核物理学の黎明」という分厚い本を読んでドラマ化するのも大変なことだったろうと思います。
さて、真実を正確に伝えることが求められるドキュメンタリーの方は、どのような内容になるのか、興味深いです。

今年は原爆投下の広島長崎も小基部の式典で終わりましたが、この機会に、75年前の原爆に至った「科学者の苦悩」とともに科学の在りかあ、核兵器廃絶への道筋を今一度考えてみる機会にしていただければと思います。

以下に、政池さんのお話の中で使われたパワーポイントのいくつかを紹介します。

<当時尋問された京都大学荒勝研究室、並びに湯川秀樹教授>

 
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<医学部学生が出した手紙(政池さんは堀田先生に会いに行かれた!)>

 
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当時尋問の役だったスミスさんは、つらい思いをしたことも確かめられている。
義務とはいえ、荒勝先生の研究ノートを没収したことは後々までスミスさんの心に残り、のちに荒勝先生に会いに行かれたということである。
戦争のために人間同士の気持ちがわかってもつらい思いをする様子が心に染みる。
 
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