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世界征服計画 その6

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6.この銀河の知的生命はアーキテクト達と我々人類のみ

「この銀河で知的生命体は我々と君たちだけだという事実に驚いたかね?」

「もちろんびっくりしました。アメリカの天文学者ドレイクが1961年に提案したドレイク方程式によれば、我々と交信可能な知性を持った地球外文明の数が計算できます。実際私はあなたとこうしてファーストコンタクトをしたのですから、そんな宇宙文明が最低1つはあることが証明されたわけです。その方程式では、交信可能な地球外文明の数は、恒星のできる速さ、惑星系を持つ恒星の割合、生命の存在する惑星の数、生命が発生する割合、その生命が知的生命体に進化する割合、その知的生命体が星間通信をする割合、そんな技術文明の存続期間の積で決まります」

「もちろん知っている」

「カール・セーガンは、文明の存続期間をのぞいては比較的高い値であると推定しています。セーガンの時代はアメリカとソ連の核戦争の危機が一番重要な問題で、超大国間の核戦争で世界は核の冬になり、文明が崩壊するのではないかと危惧されていました」

「しかし、ソ連が崩壊して、その危機は、一応は去った。しかし、インドとパキスタンの間の核戦争とか、イスラエルのイランに対する核攻撃とか、北朝鮮の暴発などの可能性は残っている」

「ええ、確かにそうです。しかし仮に全面核戦争の危機が存在しないとしても、人類は様々な危機にさらされています。地球温暖化、隕石衝突、キャリントン現象クラスの太陽面爆発、致死的な疫病の蔓延などです」

<隕石衝突>

「地球温暖化で人類は滅亡しない。それより地球寒冷化の方が大変だ。人類は氷河期を生き抜いてきたが、1万年前に間氷期になってから農業が始まり、人類文明が発生したのだ。過去の記録では氷河期は約10万年続き、間氷期は1万年間続いてきた。もうそろそろ君たちの暖かい間氷期も終わるかもしれん。そうしたら、農業が壊滅的打撃を受けるので、今あるような文明は存続できない。もっとも地球全体が氷河に覆われる全球凍結のあとで、それまでの生命が滅んで、他の生命が爆発的に発生した。君たちが滅んだら、その後はゴキブリの天下かもしれない」

「そうした自然災害的な要因の他に、人口増加による人類文明の崩壊が予想されています。ローマクラブがメドウス助教授に依頼して、人類の未来を計算しました。その結果が有名な『成長の限界』です。それによると、人類は人口増加、食料の欠乏、資源の枯渇、汚染の増大などにより、2030年の頃を人口のピークとして、その後急速に崩壊に向かいます」

「人類の危機は地球温暖化などよりも、確実にこちらの方が問題だ。君の想定では、知性体の発生は容易だが、ローマクラブの計算から、技術文明の存続を2050年まで、つまり技術文明の存続期間を150年程度と短く評価して、知的な宇宙人はいないか少ないと想定していたのだろう。しかし君は間違っている。現に、我々の技術文明の存在した期間は遙かに長いのだ。むしろ問題は知性がこの宇宙では容易に発現しない点にあるのだ」

僕は好奇心を持って尋ねた。

「どうしてですか。生命の生成に必要な有機物は宇宙に蔓延しています。だから生命の発生は容易なはずです」

アーキテクトは答えた。

「確かに生命の発生は容易だ。我々の訪れた多くの惑星で原始的な生命を発見している。問題は大型の陸上生物だ。これが発生するには、まず陸地と酸素が必要だ。酸素の発生にも実は陸地が重要なのだ。なんと言っても陸地だ。ところがこの銀河で地球型惑星を観察すると、ほとんどが水浸しなのだ。水浸し惑星という。水が多すぎる。ところが地球は水がきわめて少ない。少ないと言っても0ではまた生命が発生しない。知的生命発生のために、地球の水の量はちょうど適当なのだよ。地球環境は我々の母惑星と非常に似ているのだ。水が少なく、かといって0でもなく、ちょうどうまいだけ存在している。ほとんど奇跡だよ」

僕はうーんとうなった。考えたこともない可能性だ。いやいや、最近の地球物理学の知識ではそうなっているのかもしれない。よく地球は水の惑星と言うが、そうではなくて水に乏しい惑星なのだ。そのことが知性発生に有利とは、今まであまり聞いたことがない。

「そんな可能性は想像していませんでした」

「先にも言ったように、この銀河系では現在の所、知的生命体は我々と君たちだけだ。君たち人類は貴重なのだよ。だから、その人類を様々な厄災から守ってやろうというのが、我々の倫理的・宗教的ミッションなのだ」

続く

   
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