2017年10月20日

第95回:「科学者の一人として福島に生きるを支える」by 宇野

大前研一原発再稼働最後の条件を読みました。北澤氏の民間事故調の報告書がやや情緒的なのに対し(これもとても興味深いでした)、技術者側からみた事故調とも位置づけられるでしょう。この間、あんしゅたいんで、北澤氏から話しを聞いたり、その後もと原子炉技術者の方々からの話を聞いて、技術者の事故調も必要と思っていただけに、大前氏の報告がほぼこれに当たるかと思いました。(国会事故調の報告書は、報道で伝えられる限りの理解で、あまり読む気になれず、読んでいません。)

最近は、情緒的に、

「子供の命を守る→脱原発」
「生命科学者なら→脱原発」

こんな言葉にうんざりしています。

特に最近、南相馬と相馬での日赤の講演会では、むしろ、福島の方を傷つけているのは、風評やもう福島はだめというような、放射能の危険性を煽る方々の発言です。今、福島で私がお話しているのは、「低線量放射線と対峙して生きる」ことを余儀なくされている方々に、その克服法の紹介です。

南相馬と相馬ではむしろ、こんな話もっと東京や他でも話してください。福島は元気ですよと、言われました。

そういった意味でこの間の動きに、興味をもったお二人の動きを紹介しましょう。
お一人目はわたり病院の斉藤紀さんです。事故1ヵ月後のNHKでの発言を聞いて、私はこの人が一番確かだとおもったのですが、あとで知ったことは、この方は広島原爆訴訟に係わられました。(ICRPの丹羽大貫さんに言わせれば、微量の放射線の影響を医師の立場から言われたようで、今回の斉藤さんの発言を聞いて驚いておられました。)肥田舜太郎さんと「低線量内部被曝の脅威」を訳しておられます。

でも、私は、現在の福島の状況を多分広島で活動されてたこの頃の「ドグマ」でもって語れば、福島から全員逃げ出さないといけない!となります。その別のマイナス影響の方が大きいと、軌道修正されたのかもしれません。何時の日かお会いしたい方です。ちなみに、福島市のわたり地区は、市内でも特に放射線量が高く、0.3μSv/hでした。本当に患者のこと、きちっと考えておられる方で、柔軟な対応が出来る人と思いました。(この方については、肥田舜太郎さんが、裏切られたと、寝込んだとの間接的ですが、ネットで読みました。)

もう一人は、安斎育郎さんです。この方とは3月11日の京都での講演会でご一緒しました。先日『原発と環境』(ダイヤモンド社)を古本で見つけて買って読みました。御本人が言うには、33歳のときに書いたものだとのことでしたが、今読んでみても新鮮です。今、原発の危険性を煽る人の本はこの域を出ていません。3月11日の京都での研究会こちらも参照)で、原発の段階的縮小を言われたのには驚きました。先日ルイ・パストゥール医学研究センターの藤田晢也先生に『原発と環境』をお貸しし、読後の意見交換をしたのですが、むしろ『原発と環境』に書かれている内容よりは、一見後退した発言のように見えるが、実は現実的対応を今は語っておられる、と一致しました。そして彼は間違いなく、筋は通しつつ柔軟な考えをもつ科学者であると。本当に被災者に寄り添って、現実的対応を考えている人という印象をうけました。

この間、色々な研究者と議論してきました。緊急時に対して、勉強して、柔軟に対応出来る人と、あまり勉強を深めることなく、原則論を言う人に分かれると思いました。本当の研究者は、前者だと思っています。坂東さんも含めて、京都の私周辺の研究者は、こんな方たちです。

先日、東京でお話したとき、「原発推進派」に利するということをどう考えますがと言われました。それでも私は、福島へ行ったら、私の考えを語らずにはおられないと、といいました。そして、主催者が何処であろうと(県、市、県議、日赤、消費者庁)私の考えを聞いていただける場が設定していただけるなら(よっぽどおかしな団体は断りますが)、対応しようと思っていると言いました。

来週、7日プレコンで8日から基研で研究会が開かれます。今まで同席することの無かった、物理、原子力、生物学、医学、教育の研究者が一同に集まって議論するのを楽しみにしています。

福島からのおやつや懇親会用の野菜果物は手配しました。うまくいくかどうかはわかりませんが、明日届いたものの一部は、浅漬けにして出そうと、坂東さん等と相談中です。研究所で、きゅーりを明日刻んで、仕込みの予定です。これもJA福島の方たちが、野菜うりあげの落ち込みを克服するために開発した浅漬けの素を使用の予定です。