2017年10月20日

第96回:「危険を煽るだけでは、本当のメッセージは伝わらない!」by 宇野

最近読んだ本に「低線量汚染地域からの報告」チェルノブイリ26年後の健康被害 (馬場朝子、山内太郎著)がある。NHKETV特集緊急出版となっていました。

この番組を見落としたので、一応読んでおこうと買いました。ところが番組のイメージとあまりにもちがったのです。もちろんウクライナの子どもたちが沢山健康状態に問題を持っていることは書かれてあるのですが、ネットで読む、番組の感想とはトーンがかなり違うのです。たとえば、ウクライナの医師は、この地域の子供はヨウ素が不足しているので、---日本は海産国だから福島はちがうかもわからないけど、気をつけてねという調子なのです。福島を真剣に心配してくれている様子が伝わってきました。

放射線・もろもろのストレス、全て統合して今の問題があるというニュアンスでした。日本には緑茶があっていいね、という言葉もありました。この本から伝わってくるのは、ウクライナがチェルノブイリ事故を引きずっている。それは事実です。でも前向きに生きることで、乗り越えようとしている人びとの意見も多く紹介されていました。そして全ては放射線のせいではなく、むしろ今のバランスを欠いた食事の方が問題だ!との指摘もありました。
(昔、私はチョルノブイリの人達に大阪府大の先生の開発したクロレラを送るプロジェクトに関与したことがあります。その時に聞いたのは慢性的に緑黄色野菜の不足地帯なので、これがとても効果ある、と聞きました、私はこれ結構気に入っていましたが、要するに抗酸化食です。もう生産はされていませんが。)

ともかく、この本はとても冷静なのです。そしてウクライナの医師達が日本に言っているのは要するに、「住民の健康調査をし、そのデータをしっかり取ることです」というのが一番のことではないかと思いました。ウクライナは十分にそれが出来なかった点もある。予算的にも難しい点を抱えている。色々なことが述べられています。

著者である、馬場朝子、山内太郎がウクライナへ行って取材して聞いたことの核心、即ちウクライナからの福島へのメッセージは、色々チェルノブイリの影響はある。確かに、体調不良の子供が増えているように見えるとこともある。それは放射線、ストレス、食べ物諸々の事の総合であろう。ウクライナの医師達のいっていることは、本当の事を知るためにも、きちっとした調査が必要だと口々に言っている。

そしてこの本の取材者が最後に思ったのは、「いま、福島でデータを取ることが、将来の被災者の健康を守ることに結びついていくーその大切さを、私たちはまだ十分に、認識していない!」と。即ち、ウクライナからのメッセージは「住民の健康調査をし、そのデータをしっかり取ることです」ということが本当のメッセージのように思いました。

この本のあとがきにETV特集のチーフプロデューサーの矢吹寿秀氏がかいていましたが、それはまさに番組のイメージの通りで、二人の著者とは違って、全ては放射線であるとして騒ぎ立てているという印象です。このギャップは何でしょうか。

福島県での住民健康調査も、今ひとつ回収が進んでいないところもあると聞いています。きちっとしたデータをとることが、将来の住民の健康に繋がる、危険を煽り騒ぎ立てることでは、本当のメッセージは伝わらない!と思った次第です。

「あいんしゅたいん」では、先月末に京大原子炉での被災者を対象としたホールボディ検査を行いました。また来週、関電の協力で同様の検査を行います。この過程で、検査を受ける方々がずいぶんと勉強をされました。来週の検査でもバスの中、行った先での待ち時間を利用しての学習会が企画されています。被災者の方々が、自ら学び、自分の健康を客観的にみていこうという姿勢に頭が下がる思いです。そして「あいんしゅたいん」に集う研究者や市民研究者が、微力ながらお手伝い出来るということを嬉しく思います。