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世界征服計画 その12

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12. 秘密基地

「人類補完計画を行うためのコンピュータは、はじめは普通のコンピュータで、普通のOSを使ったものです。IntelのチップとOSとしてはLinuxのシステムになるでしょう。金にものを言わせて巨大なデータセンターを日本各地に構築します。一部は秘密めかして、地下に構築します。CIAや米軍の注意をわざと引くためです。そのためには、いかにも秘密めかして作らねばなりません。はじめは日本国内、それから徐々に世界に広げます。設置場所としては、いかにも秘密基地めかした場所に設置します。今考えているのは、アフガニスタンの盲腸ともいうべきワハン回廊です」

ワハン回廊?! いったいどこにあるのです。どんなところなんです?」

<ワハン回廊>

「アフガニスタンの北東の隅に嘴のように突き出た地域です。ここは4000メートルくらいの高地で、周りを山に囲まれています。南側はヒンドゥークシュ山脈です。ここは昔はシルクロードの一部で、玄奘三蔵やマルコポーロが通ったことがあります。大月氏国があったのもこのあたりです。しかし現在では、ほとんど人跡未踏の地域です。データセンターはそのヒンドゥークシュ山脈の山中の地下に置きます。いかにも秘密基地めいていいでしょう」

「なんでヒンドゥークシュ山脈なのです」

「あなたは『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』という映画見たことがありますか?」

<プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂>

「はい」

「タミーナ姫が守っている短剣は、実はタイムマシンなのです。そのタイムマシンを隠すべき本来の場所がヒンドゥークシュ山脈なのです。ペルシャ帝国の最東端です」

「タイムマシンと何の関係が?」

「ゼウスがあなたに話した、精神と時の部屋というのは、一種のタイムマシンです。だからそのタイムマシンを作るためのコンピュータを隠すのに、ヒンドゥークシュ山脈より適した場所がありましょうか」

「そういえば、アレキサンダー大王がこのあたりまできていますね」

アレキサンダー大王

「アレキサンダー大王はガウガメラの戦いでペルシャのダレイオス三世を破り、ペルシャを滅ぼしました。そしてさらに東に進み、各地にアレキサンドリアと名付けた植民都市を造りました。現在残っているのは、エジプトのアレキサンドリアだけですけれどね。アフガニスタンにも何カ所かにアレキサンドリアを作りました。カンダハルもその一つです。アレキサンダー大王はヒンドゥークシュ山脈を越えて攻め込んでいます」

<ヒンドゥークシュ山脈を越えて>

「なるほど、ヒンドゥークシュ山脈は古来から由緒深いのですね」

「それからフランスには無断でインド洋の絶海の孤島ケルゲレン諸島にも秘密基地を置こうかと考えています。フィヨルドの奥深くに地下基地を作って、潜水艦で出入りします」

「ケルゲレン諸島?なんですそれ?」

「南インド洋にあるフランス領の南極地域のケルゲレン島です。ポルトーフランセというフランスの基地がありますけれどね。いつも暴風が吹き荒れている島です」

<フランス領の南極地域のケルゲレン島>

「なんでそんなところに?」

「いかにも、秘密めかしているからですよ。もっとも計画だけで、本当にできるかどうかは調査する必要があります。米軍はB2爆撃機バンカーバスターでこれらを攻撃するかも知れません。しょせんおとりですよ」

B2爆撃機

<B2爆撃機>

バンカーバスター

バンカーバスター

「えらく高くつくおとりですね」

「もしこれらの秘密基地が攻撃されれば、マーズが大々的に反撃します。反撃すればするだけ、敵は必死になるでしょう。敵はこれらデーターセンターの破壊にうつつを抜かすでしょう。別に壊されてもいいのです。ちなみに反撃にはロシアのS300かS400対空ミサイルを導入します。プーチンの横面を札束ではたいて買うのです」

<S300かS400対空ミサイル>

僕は疑問にかられて聞いた。

「なんでロシア製のミサイルなのです。あなた方は自前のミサイルないしはレーザー兵器を簡単に作れるでしょうに」

それにたいしてアテナは答えた。

「もちろんです。でもそんなことをすると敵の猜疑心をあおるでしょう。あくまでも人類開発の兵器で応戦するというポーズが重要なのです」

うーん、なんという大規模な偽装作戦なんだ。あるかないかしれない敵の攻撃を誘うために、僻地に秘密基地とデータセンターを作るなんて。そしてそれをロシア製対空ミサイルで防御するなんて。

ビーナスがトイレのために、席を外した。キューピッドもついて行った。そのすきにアテナは僕にそっとささやいた。

「ビーナスはあなたを誘惑するかも知れませんが、乗ってはいけませんよ。ビーナスにはバルカンという夫が居て、マーズという愛人が居ます。マーズは気が短いので注意した方がいいですよ」

確かに、会議の席上で甲冑を着てヘルメットをかぶり、剣を振り回すマーズはけんのんである。アテナは言った。

「手を出すなら、私にしなさい。私には夫も愛人もいないから大丈夫です」

こんな美女に手を出していいなんて。でもこんな直接的な誘惑は、自信にあふれた女神ならではのことだ。そのときビーナスが帰ってきたので、アテナは代わりにトイレに立った。

ビーナスがささやいた。

「アテナに手を出すと私は許しませんよ。手を出すなら私にしなさい」

あーあ、この嫉妬深い女神二人に囲まれて、ぼくはどうなるのだろう。僕は言った。

「でもあなたには夫が居る。愛人もいるのではありませんか?」

「かまいません、彼らの目にとまらないところなら良いのです」

いやはや。どちらに手を出しても、だれかの天罰が下る。そもそも女神に手を出すなど不遜きわまりない。何もしないのが最善だ。

続く

   
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