動脈硬化とオメガ3脂肪酸
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- 作成日 2021年6月20日(日曜)20:00
- 作者: 松田卓也
なんで動脈硬化を取り上げるかというと、それが心筋梗塞、脳梗塞などの原因になるからである。歳をとってからの死亡率の高い病気としてガン、心臓疾患、脳卒中がある。そのなかで心臓疾患と脳卒中は基本的に血管の病気、つまり循環器病である。血管の健康は大事だ。
私が大学時代に所属していた合気道部の後輩が最近、脳梗塞で亡くなった。会社の同窓会があり、その席上で急に倒れたとのことである。信じられない思いであった。というのも、彼は合気道が無茶苦茶強く、70を越してからも稽古をしていた。あるとき100キロを超える巨漢の若者が、技に逆らったので、少し力を入れたら腕が折れたとのことである。その技は「一教(いっきょう)」といって最も基本的な技で、とりたてきつい技ではない。それで腕が折れるとはどんなことかと驚いたものだ。そのように強い後輩も、脳梗塞であっという間になくなったのだ。彼はがっしりとした体格ではあったが、腹が出ていた。これは危険因子である。
私自身、脳のMRI写真をとったことがあるが、軽い脳梗塞のあとが見つかった。自分でも気づかないうちに、軽い脳梗塞になっていることはあるようだ。また別の後輩も、やはり軽い脳梗塞を患い、狭心症や心臓発作を経験し、糖尿病を抱えていて、それがさらに腎臓病にまで及んでいる。これらの慢性の病気の原因は、基本的に不適切な生活習慣によるものである。これらの慢性の病気は、昔は成人病と呼ばれ、いまは生活習慣病と呼ばれている。
動脈硬化とくにアテローム性動脈硬化について話を絞る。アテローム性動脈硬では太い動脈の壁が繰り返し傷つけられて、それを修復するためにコレステロールや白血球が集まって来る。これは炎症反応である。そのとき修復に用いられたコレステロールや白血球などの残骸が残り、柔らかい塊を血管の壁に作る。その塊が大きくなると血管を塞ぎ、それより下流の臓器が障害を受ける。それが心臓の冠動脈で起きると心臓発作を起こし、脳の血管でおきると脳梗塞になる。症状が軽い場合は組織への酸素の供給が不足するので痛みや筋肉の痙攣を感じる程度だが、ひどい場合は死に至る。
コレステロールだが、これが少なければ良いというわけではない。コレステロールには善玉コレステロールである高比重リポタンパク(HDL)と悪玉コレステロールである低比重リポタンパク(LDL)がある。LDLは少ないのが良いが、HDLはそうではない。つまり何が何でもコレステロールが少ない方が良いということではない。一時期、卵の黄身はコレステロール源であるので、1日の摂取量は1個以内にすべきという説が流行ったが、現在ではそれはない。1日に3個くらい食べても問題はないといわれている。
動脈硬化になる要因として、努力ではどうしようもないことと、努力次第で変えられることがある。どうしようもない要因は遺伝と、歳をとることだ。
動脈硬化の原因としては高血圧、タバコ、糖尿病、高い血中のコレステロール値、肥満などがある。だからアテローム性の動脈硬化を防ぐには、血圧のコントロール、禁煙、糖尿病のコントロール、コレステロール値のコントロール、体重のコントロールなどがある。どうしようもないことではなく、努力次第で動脈硬化は予防することができる。適切な食事をすることと適度な運動をすることが重要である。ここでは食事の話をしよう。
動脈硬化予防のための食事や食物の話をしよう。というのも私はこの5月からマイクロバイオームに興味を持ち、徹底的に勉強した。洋書は10冊以上読んだし、YouTubeで米国の講演をそれこそ山のように聞いた。その過程で正しい食事をすればいろんな病気が予防できることを知った。正しい食事は薬なのである。
実際、私はそれ以来、植物中心食を実践して、肉は控えめにした野菜中心の食事をしている。また食物繊維を積極的にとるためにイヌリンという水溶性食物繊維のサプリを摂っている。そのためか、私の持病である潰瘍性大腸炎が劇的に改善している。潰瘍性大腸炎とは安倍元首相もわずらっているあの病気である。
先に動脈硬化がおきる機構として、血管の壁が傷つき、それを治す過程でカスがたまって血管を塞ぐと述べた。このような反応は炎症反応である。炎症には怪我をした場合とか、風邪を引いた場合のような急性の炎症と、今述べているような慢性の炎症がある。慢性の炎症は万病の元であり、老化の原因なのだ。そのために慢性炎症を防ぐような食物を取れば良い。ここでは動脈硬化を防ぐ代表的な食品をあげよう。
日本で手に入りやすい食物に限定する。食べるべき食物として、例えば、にんにく、緑茶、ブロッコリなどの野菜、トマト、ターメリック、オリーブ油、オメガ3脂肪酸などがある。このなかでターメリックについては次回にカレーライスと絡めて話をするので、ここではとくにオリーブ油とオメガ3脂肪酸の話をしたい。これらは油であり、要するに脂肪である。
一時期は脂肪をできるだけ減らすべきだという説が流行ったが、脂肪には良い脂肪と悪い脂肪があり、悪い脂肪は減らすべきだが、良い脂肪は積極的にとるべきである。
悪い脂肪の代表としてトランス脂肪酸がある。これは工業的に作られたもので、マーガリンが代表的だとされている。そのほかにファストフードやジャンクフードに含まれている可能性がある。ようするに加工食品は避けたほうが無難だということだ。
飽和脂肪酸もどちらかといえばあまり好ましくない脂肪酸である。飽和脂肪酸は赤身肉つまり牛肉や豚肉、牛乳、チーズ、バターなどに含まれている。
不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられる。一価不飽和脂肪酸には多くの植物油が含まれている。オリーブ油が代表的である。
多価不飽和脂肪酸の中にオメガ3不飽和脂肪酸とオメガ6不飽和脂肪酸がある。どちらも必須脂肪酸である。つまり体内では生成されないので、食事からとるしかない。オメガ3 不飽和脂肪酸を多く含む食品はイワシ、サバなどの魚である。またそれらの魚から取れた油、つまり魚油はサプリメントとして売っていて人気である。オメガ6不飽和脂肪酸はいろんな植物油に含まれる。オメガ6不飽和脂肪酸は、ふつうは十分に摂取できているので、オメガ3脂肪酸を積極的にとることが重要だ。
オメガ3不飽和脂肪酸は植物では亜麻仁油などに含まれているのだが、植物から取れたオメガ3不飽和脂肪酸は生物的に活性でないので、あまり有効ではない。やはり魚か魚油からとるのが有効だ。マグロはオメガ3不飽和脂肪酸を含むので、推奨すべきなのだが、水銀を含む可能性があり、難しい。マグロのトロは寿司の代表であり、それを食べられないというのは辛い。ほどほどに食べれば良いのではないだろうか。マグロは所詮値段が高いので、そう毎日食べられるものでもない。
積極的に推奨できる魚はサケ、サバ、イワシ、ニシンなどである。これらは安い魚なので、貧乏な自分にはありがたい。もっとも正直言って、魚を料理するのは好きではない。難しいし生臭いからだ。これらの魚は缶詰で食べるのが手っ取り早いと思う。あるいは魚油として売られているサプリメントから取るかだ。世間の栄養学者の多くはサプリメントよりは、自然の食材を推奨する人が多い。ビタミンDを除くビタミンなどでは、サプリメントよりは自然食材が良いであろう。
まとめとして動脈硬化を防ぐには、正しい食生活が重要である。とくに植物中心食は有効である。また脂肪に関してはオメガ3脂肪酸が重要である。それは魚に含まれる。