研究所紹介  

   

活動  

   

情報発信  

   

あいんしゅたいんページ  

   

超知能への道 その21 太平洋に進出する

詳細

「ベトナムなどに海外進出したが、それで終わりかね?」とゼウスが聞いた。

今度はめずらしく、海の神ポセイドンが発言した。

「いや、我々は太平洋の島嶼国家に進出しようと考えている」

「何のために?」とゼウス。

「二つ目的がある。一つは船を作ってその船籍を島嶼国家に置く。便宜置籍船という制度だ。病院船を建造して、そこで最新の治療を施すのだ」

「なぜ、日本でやらん?」

「日本のような先進国にはさまざまな規制があり、最新の治療や薬が認可されるには、長い時間がかかるのだ。そこで日本の規制を回避して、便宜置籍船の病院船で最新の治療をする。それは人助けにもなるが、儲けにもなるのだ」とポセイドン。

「なぜ儲かる?」とゼウス。

「欧米や中東の金持ちをターゲットにする。彼らに若返りや、がんの治療をおこなうと、どんなに高くても患者はいっぱい来る」とポセイドン。

「第二の目的は?」とゼウス。今度も珍しく、戦争の神マーズが発言した。

「島嶼国家の船籍で艦隊を作るんや」

「何のために?」

「中国と米国に対する抑えや」とマーズは言った。

世界には人口は1万程度の小さな国がいろいろある。その中でもバチカンやサンマリノのようなヨーロッパの先進国ではなく、太平洋上の人口の少ない発展途上国に進出することにした。そのような国としては、例えばパラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国、ナウル共和国、キリバス共和国、ツバル、 サモア、バヌアツ共和国、フィジー共和国、トンガ王国がある。この中でも特に人口の少ない国を選ぶ。

パラオの人口は2万人、ナウル共和国は1万人、ツバルは1万人であり理想的だ。この中でパラオは昔、日本の信託統治領であったこともあり親日的である。日系の大統領もいた。この国の一人当たりGDPは結構高い。ナウルは戦時中日本が占領していたこともある。リン鉱石が取れたので、国民は働かずとも豊かな生活をしていた。しかし最近になってリン鉱石が枯渇したので、国民は窮乏に喘いでいる。ここに援助するのは有効であろう。ツバルは海面上昇に伴って沈没しかけの国として有名である。大英連邦の一角を占めている。ここには住むための巨大な船を提供することを考えている。

ナウル

われわれはパラオ、ナウル、ツバルに代表団を送り、国民一人当たり年間100万円の援助をするので、色々便宜を図ってほしいと交渉した。かかる費用は年間400億円である。いわばこれらの国の主権をお借りするのである。キリバス、マーシャル諸島、ツバル、トンガ、バヌアツには便宜置籍船制度がある。我々はツバルの制度を利用することにした。便宜置籍船とは船の船籍をその国に置くことにより、いろいろな規制を逃れる制度である。

われわれはこれらの国の船籍を持つ巨大で豪華な病院船を神戸の我々の東播磨造船所で建造した。船上で最新の治療を施すためである。われわれはナノボットを使うことにより、ほとんどの病気を治すことができる。もちろん心臓発作や脳出血のような急性の病気は間に合わない。しかしガンのような不治の病気を治すことができる。難病を治療することができる。脳出血により身体不自由になった人も回復を早めることができる。年取った人を若返らせることができる。完全な美容整形手術をすることができる。

われわれは病院船を大阪湾に浮かべることにより患者を治療することにした。ただし治療費は保険がきかないので結構、高いものになる。だから当面は誰でも利用できるというわけにはいかない。金持ちのみである。我々は同時に国内の病院に依頼して、我々が発明、発見した新薬の治験を始めた。我々の新薬を一般国民が保険で利用できるようにするためである。しかし我々の新薬が認可されるのはこの先何年もかかるであろう。それまでは新薬は治験での使用など制限が多い。またナノボット治療法は当面は秘密であるので、公開できない。時期を見て公開する。それまでは病院船の出番である。

この病院船は、一応は外国であるので、入院するにはパスポートを必要とする。診察だけなら日本国内でも問題ないので、われわれは診察専門の病院を大阪と神戸の人工島に作った。治療を受けたい患者はその病院で診察を受け、その後病院船に送り込まれる。病院船は患者を乗せると太平洋に航海に出る。そこで手術なり治療を受け、患者は1-2週間ほど海上生活を送る。

このシステムは欧米や中東の金持ちの人気を呼んだ。彼らは大挙して海外から関西国際空港にやってきた。そして病院で診察を受け、病院船に乗り込み、病気を治療するために、あるいは若返るために、 1週間から2週間の優雅な船上生活を満喫した。映画に描かれたエリジウムの世界のようなものだ。ただエリジウムと異なる事は、誰でも金を払えば行くことができるということだ。というわけでわれわれは儲けたのだ。しかし日本ではこのシステムをもっと安く、庶民でも使えるようにして欲しいという要望が巻き起こった。それに関しては我々の秘密の計画があり、将来のお楽しみである。

われわれはさらに観光業にも進出した。太平洋上の島々やベトナムにリゾート地を作ったのだ。そこに豪華なホテルを建設した。ホテルのメイドはロボットと言うわけにいかないので現地の人たちを雇用した。また島嶼国家のホテルには病院も併設した。そこでは最新の治療を受けることができるのである。日本人の金持ちは病院船よりはリゾート地の病院を選んだ。船ではなく陸地にあるので揺れることもなく安心できるからだ。

われわれは新しい航空会社を作り、関西国際空港と島嶼国家やベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーとのあいだの定期航路を作った。その航空会社は新日本空輸、略称新日空と言う。

われわれはナウルのリン鉱石場の後に広大な宇宙基地を建設することにした。この島は海岸部に人家があるが、内陸部はほとんどが荒れ果てたリン鉱石場の跡である。そこにロケット基地を作った理由は、ナウルがほぼ赤道直下にあることだ。我々は神戸の東播磨重工でロケット製作を始めた。人工衛星は三洋電子が作った。これらは船でナウルに運んだ。こうして我々は国家ではなく、企業として自前のGPS衛星網を構築した。GPS衛星の他に実用衛星として、通信衛星、気象衛星、海洋観測衛星、偵察衛星などを打ち上げた。科学目的としては、宇宙観測衛星をたくさん打ち上げた。衛星との通信を確保するために、衛星通信船「観測島1, 2, 3・・・」を建造して、南北太平洋、南北大西洋、インド洋、北極海に派遣した。

将来的には小惑星にデーターセンターを作る予定である。そのための計画も着々と進めている。

続く

   
© NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん (JEin). All Rights Reserved