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超知能への道 その14 いよいよ金儲け開始

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世界一極委員会が開催された。ゼウスが言った。

「森くんは十分に学習と特訓を受けたことだし、そろそろ世界征服をはじめよう」

「はい、そのつもりです。でも何から始めればいいのでしょう?」

「まずは世界征服のための資金を調達しなければならない。この問題に関しては、マーキュリーに任せる」
マーキュリーが発言した。

「世界征服をするためには超知能を作らなければなりません。そのためには、資金が必要です。金儲けの正当な方法は起業するのが良いのですが、実業では時間がかかりすぎます。まずは手っ取り早く金融業から始めるのがいいと思います」とマーキュリーが口火を切った。

「具体的にはどうするのですか?」と私。

「日経先物の取引からスタートするのがいいでしょう。君は株価予測の人工知能プログラムを作って、資金を稼いでください。アテナの作るプログラムは非常に優れていますが、私はファブレットを飛ばして、情報を集めますので、確実に儲かります」とマーキュリー。

「なんか、インサイダー取引みたいですね」と私。

「我々は目的のためには手段は選ばん」とゼウス。それで決した。マーキュリーが私のコンサルタントになることが決まった。

私はマーキュリーの指示により詳細な計画を練った。その方法として日経先物に投資することにした。日経先物とは日経平均が上下するのを予想して売ったり買ったりして差額を儲けるのである。それにはミニとラージがあり、それぞれ100倍と1,000倍のレバレッジがかかっている。例えばミニを1枚買ったとする。日経平均が100円上がったとすれば、その時点で売れば100円×100で1万円の儲けになる。ラージなら10万円の儲けになる。逆に100円下がったとすれば、それぞれ1万円、 10万円の損になる。始めから下がると予想できた場合は、初めの段階に買うのではなく、売りから入れば良い。そして後で買い戻すのだ。株とは違って、上がるにしろ下がるにしろ、正しく予想すれば儲かるのである。日経平均は大体1万円程度だから、 100円の上下は1%にしか過ぎない。この程度の上下は常に起きている。

売り買いをその日のうちに済ませることをデイトレードという。手っ取り早くするにはデイトレードがよい。相場は9時から始まって3時には終わるのだが、夜は夜のセッションがまた別にある。まずは証券会社に口座を開くこと、証拠金を支払うことが必要だ。証拠金は損をした時に証券会社に支払うための金だ。証拠金の金額は会社により、その時により異なる。しかしミニの場合は10万円、ラージの場合は100万円もあれば十分である。日経先物と似たものにTOPIX先物がある。こちらは日経平均ではなく、東京証券取引所の株全体の平均指標を予想するのである。しかし基本的にはどちらも似たようなものだ。売り買いをすると証券会社に手数料を支払わなければならない。だからあまり少額の上下で売り買いすると利益が出ない。

アテナとともに日経平均売買の予想プログラムを書いてみた。日経平均は要するに上がるか下がるかだけなので、それを予測するのだから、 1ビットの予測なのである。言ってみれば丁半博打のようなものだ。プログラムの勝率が50%では、意味がない。手数料を考えると損である。勝率が60%程度あれば勝つことができる。我々のプログラムで、過去のデータを使ってシミュレーションしてみたところ、だいたい70%程度の勝率があった。これは極めて良いプログラムである。ただいつも絶対に勝つと言うわけではないが、それでも十分長くやっていればほぼ確実に勝つ。問題は損が続く場合である。その場合に耐えきれるだけの資金力がなければならない。貧乏人がいつも損をするのは資金力が無く、負け続けに耐えられないからである。

相場は朝9時に始まるので、その時点で上がるか下がるかを予測して、買うか売るかを決めるのである。そして十分に利益が出たら、反対売買をして利益を確定する。逆に損をするような場合は、一定程度の損をしたところで、損切りを行う。私とアテナのプログラムは売買を自動的に行うようにした。

まずは証拠金となる資金を確保する必要がある。私はあまり貯金がなかったので父親に相談してみた。父と母は京都と大阪の中間の街に住んでいる。父はすでに退職して、現在は雇用延長の形で同じ会社で働いている。私は父にシミュレーション結果を見せて確実に儲かるから投資してくれるように言った。父は株式売買の経験があったし、現在も株を持っている。つまり一定の知識はあるのだ。

父は同意して、退職金から当面100万円貸してくれた。さらに証券会社の口座も開いてくれた。私では信用がないから口座が開けないのだ。その資金を証券会社に入れて証拠金として、ミニなら10枚程度、ラージなら1枚で勝負を始めた。毎日ほぼ確実に勝てた。一日の利益は10万円程度であった。相場は月曜から金曜まで5日間ある。ひと月は4週程度だから、ほぼ20日間相場が立つ。最初のひと月で200万円儲けた。それをもとに次の月は証拠金を300万円に増やし、ほぼ600万円儲かった。父はそれを見て有頂天になった。

このまま個人で売買を続けるよりは、会社を作ろうと父が言い出した。そこで株式会社を作ることにした。私は京都の東天王町の黒谷(くろだに)にある民家を月11万円の家賃で借りた。そこを黒谷先物取引研究所と名付けた。社長は父で母は重役になった。その他、親戚に話しかけて投資をしてもらい、重役になってもらった。私はしがない高学歴ワーキングプアーだから顧問ということにした。父も母も親戚も取引には口出ししないように頼んだ。役員会の時に座っていてくれれば良い。

黒谷

しかし黒谷の民家は数ヶ月借りただけで、今度は大学近くの大きなオフィスを月30万円で借りた。取引に使うコンピュータは、元は私のMacBook Airを使っていたが、そのうちにそれでは心もとなくなり、アマゾンのレンタルサーバーであるEC2を借りた。これはアマゾンが世界的に展開しているAWSサービス(アマゾン・ウェブ・サービス)の一環で、計算時間のレンタルをするのだ。コンピュータを使った時間だけ支払えば良い従量課金制なのだ。さらによいことは最初の一年はなんと、タダだという。資金のないスタートアップ企業などが使うのに便利だ。

コンピュータ操作のために大学生や大学院生をアルバイトで雇った。面白いように儲かっていった。最初の月の利益は200万、次の月は600万、さらに1,800万、 5,400万、 1億となり、半年後には月2億円の利益になった。父と母は月給が100万円、親戚のおじさんたちは50万円ということにしてもらった。月に一度の役員会に来て、黙って座っていれば、金が転がり込んでくるのである。

果たしてここまでうまくいくのだろうかと自分でもいぶかったが、マーキュリーはファブレットを飛ばしてインサイダー取引まがいの事もしているといった。これでは損をするはずがない。でもそんな事は私と神々だけの秘密で、誰にも言ってない。父も母も有頂天になっていた。 1年後にはなんと年間100億円の利益が出るまでになった。オフィスは京都のビジネス街である烏丸通のビルの部屋に移った。もっとも会社の名前は黒谷先物取引研究所のままであったが。取引も日経先物だけではなく、TOPIXや株式、海外の先物や株式にも投資した。FXもやった。こうなるとアマゾンのコンピュータだけでは足りず、自前のコンピュータを導入した。

父と母、それに親戚には、この儲けは研究資金獲得のためであるので、あまり欲張らないでほしいとお願いした。月に一度の役員会に出席して、黙って報告を聞いているだけで、給料が入るのである。役員会の後は、会社持ちで料亭で宴会がある。舞妓をよんで大騒ぎをした。会社に社長室、重役室を用意し、秘書と車をあてがったので、みんなはそれだけで満足していた。

続く

   
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