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世界征服計画 その23

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23. 要塞住宅

夢のような1年間はあっという間に過ぎた。僕は1年がすぎて、現実世界に戻ったが、何か浦島太郎の心境である。しかし浦島とは違って、現実世界ではたった1日しか経過していないのである。その1日で僕は大きく変わった。肉体的にはほとんど変化がないが、精神的には大きく成長したのだ。知識が山のようについた。だから周りの人を見ると、バカに見えてしかたがない。

それをアテナに言うと、いずれ現実世界にスーパーコンピュータを使ってIBMのワトソンの様な人工知能を作り、それを僕に接続するという。それでいかにも人工知能と接続していますという様に、頭にはヘッドマウントディスプレイを接続するという。僕が賢いのは僕の頭がいいからでは無く、人工知能のせいであるということにする。要するに世間を欺くGDP作戦である。

いや、サギというわけでもない。こんな人工知能と人間を接続して知能増強をするのが、人類補完計画の一環なのである。僕以外の人間は精神と時の部屋に入る事はないが、彼らも現実時間の範囲内で徹底的に鍛える事はする。ただ僕は彼らの365倍勉強している事になるだけだ。

30日、つまり30年がたった後でも、精神と時の部屋には何時でも戻れるのである。例えば現実世界の学会や研究会で、ある人があるテーマで話したとする。僕は聞いている間に、精神と時の部屋に戻り、そのテーマについて徹底的にリサーチするのである。その時間は数日の事もあれば、数週間、数ヶ月の事もある。要するに僕はそのテーマに関して専門家になるのである。するとどんな話にも興味が持てる。また著者がそのテーマをどれくらい理解しているかもよく分かる。僕は講演後に適切なコメントを発することができる。その問題はかくかくしかじかの文献の何ページの何行目に書いていましたよとか。そのテーマについて僕も研究して見ましたが、あなたは間違っていますよとか。

僕の30年間に及ぶ特訓を行いながら、平行して作戦開始である。まずは家を移った。しばらくは護衛のアバター達とともに、高級ホテルのスイートに滞在した。ビーナスのアバター達はその間に京阪奈に土地を買い、そこに要塞として機能する建物を作った。ビン・ラディンがパキスタンで住んでいた建物を彷彿とさせる建物だが、それよりも立派である。アメリカのエリート特殊部隊であるNavy SEALsの攻撃に耐えられなければならない。ビン・ラディンの失敗を繰り返してはならないのだ。

Navy SEALs

<Navy SEALs>

ビン・ラディンの失敗

<ビン・ラディンの失敗

建物は口の格好をした2階建てである。外に面した窓はほとんどない。あっても物見のためだけである。屋根も陸屋根ではなく、急な傾斜があり、侵入を阻んでいる。真ん中に中庭がある。そこはヘリコプターが着陸出来ないように、池になっている。池の中には逆茂木が植わっている。ロープで池に下りるとプスリとなる。建物の窓は中庭に対して開いている。建物の入り口は南に向いた一カ所である。そこは分厚い防弾ガラスで仕切られた入り口がある。入るとロビーになっている。そこから左右の廊下に入るには分厚い扉がある。普段は開いているのだが、緊急時には閉じる。この手の非常ロックが建物の中にたくさんある。ロビーの左側には警備員室と事務所がある。24時間警備のアバターが詰めている。ロビーの右には応接室とこれから作る財団のオフィスがあり、外部の者はここで応対して、そこより内には入れない。

左手の廊下を行って、突き当たりを右に曲がるとそこは食堂、調理室、サロンなどの共用スペースである。その前の廊下を北に行くと、北側のウイングは図書室、計算機室などである。東側のウイングは道場に当てられている。居室は全て2階に作られている。二階に上がる階段は2カ所にあるが、いずれも夜間はロックされて、内側からしか開けられない。

というわけでコマンド部隊が侵入するとしたら、中庭の上空にホバリングして、ロープを伝って隊員を降ろすしかない。それを防ぐためにヘリコプターを銃撃したり、ミサイルを撃ち込んだりする事は平和な日本では出来ない。そこでヘリコプターを墜落させる為にバードストライクを利用する。夜中に普通の鳥は飛んでいないので、ロボット鳥を飛ばせて、エンジンの吸気口に突入させるのである。中庭に墜落したヘリコプターは池に落ちる。

<ロボット鳥>

コマンド部隊が侵入するのではなく、いきなりアパッチヘリコプターからヘルファイアー・ミサイル攻撃をかける場合を想定して、地下には防空壕がある。これはコマンド部隊が侵入した場合にもパニックルームとして緊急避難室の役割を果たす。夜はここに寝るのがよいかも知れない。

<ヘルファイアー・ミサイル攻撃>

実はこんな大掛かりな仕掛けも、みんなGDP作戦の一環なのである。というのも敵の意図はホワイトハウス、CIA、ペンタゴンなどに仕掛けられたスニッファーを通じて、見え見えなのである。その敵の意図を企画段階でくじく事も出来る。例えば担当者が交通事故に会うとか、階段から転がり落ちるとか。しかしやらせて見て、大失敗に終わらせる事も出来る。カーター大統領の時代にイランで捕虜になった大使館員を救うイーグルクロー作戦が大失敗に終わったように。あの時は、アメリカが勝手に失敗したのである。

僕の現実世界での日常は、関西科学財団の理事長として、要塞住宅の一角にあるオフィスに通うことだ。要するに家と職場が一体化している。江戸時代の奉行所では奉行の仕事場と住居は同じ所にある。役宅という概念である。僕の要塞住宅は、城、事務所、住居を兼ねたものである。住人は僕の護衛の他には、神々のアバター達がいる。彼らは外に出かけて仕事をするものもいる。

続く

   
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