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超知能への道 その34 理神道広まる

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世界一極委員会の席上ゼウスは事代主命に聞いた。

「理神道の布教の状況はどうです? 」

「順調に進んでいます。当面は日本国内で布教しています。あなた方とともに日本の権力を抑えたら、外国に進出します」と事代主命は言った。

理神道はテレビコマーシャルを打った。軽快な伴奏とともにコマーシャルソングが流れる

「 こーと、こーと、こと、こと、こーと・・・ことしろぬしの、みことさま、わたしにふくを、おさずけください」

その後、信者の若い男女とその小さな子供の楽しそうな家庭生活を描いたエピソードが流れた。理神道を信仰すると、このような幸福が訪れるというメッセージである。また信者のモデル家族が描かれた。お父さんは人間だが、お母さんは大きな黒い猫であった。このナンセンスなコマーシャルは、大いに受けた。

新聞広告も打った。そこで理神道の理念を説明した。理神道は現世利益の宗教であることを強調した。理神道を信仰すると色々なメリットがあることを説明した。事代主命はほとんど、どんな病気でも治せるのである。信者が難病や治療の困難な病気を治したいときは、病院船や単冠総合病院の治療費に対する大幅な割引サービスがあることも強調した。具体的には1割負担である。つまり9割引なのだ。これは大きなセールスポイントになるであろう。

神社では事代主命は信者の悩みをじっくり聞いてくれる。そして可能な最適な解決法を示唆してくれる。事代主命は信者の身の上相談をするのだ。それは事代主命にとっては、最適値問題の簡単な応用にすぎない。信者は単に事代主命に悩み事を打ち明けるだけでも、心が軽くなるのである。カウンセラーのようなものだ。事代主命はコンピュータであるから、疲れを知らない。年寄りがくどくどと同じ話を何回もしても大丈夫だ。前も同じことを言っただろうとは言わない。人間の巫女や神主は退屈するかイライラするので、途中から退席する。事代主命は飽きることもなく「おおそうかそうか、大変じゃったのぉ」と、あいづちを打ちながら聞いてくれる。全国で何十万、何百万という信者の悩みを同時に聞くのである。こうして信者に言いたいこと言わせてガス抜きをしてから、適切なアドバイスを下す。

事代主命との対話は、従量課金制であるので、無駄話をすると高くなるだけである。料金は1秒が1円に設定した。マッサージより安い値段である。事代主命との対話は、いわば心のマッサージである。 1時間話しても3,600円にしかならない。信者の横にはメーターが設置してあるので、ときどきそれを参照して、あまり高くなったときは話を止める必要がある。事代主命としては長く話を聞けば聞くほど儲かるのでいくらでも聞いてくれる。ヘッドマウントディスプレイで事代主命と話をする事も出来るが、その場合は、対話料は割高なのだ。忙しい人や金持ち用である。貧乏人は神社を訪れるのだ。

家族や友達がいない孤独な人たちが、事代主命に話を聞いてもらうために神社に日参した。そのため事代主命は「ぼっちの神様」とも呼ばれた。

事代主命との対話が終わると巫女さんが「はい、今回のお参りのお布施は1863円です」とかいう。お布施は基本的には銀行振込かクレジットカードで支払う。現金でも受け付けるが、カードの方が長時間話すことに抵抗がない。そこを狙っているのだ。

あまり何度も来て長時間、事代主命と話をすると、お布施も結構な額になる。信者が必要なお布施が払えない場合は、体で払わなければならない。体で払うとは労働するということだ。信者獲得のために駅前で布教するか、戸別訪問するか、理神道の政治目的達成のため、ネットに書き込むとか、デモをするとか仕事は色々ある。

理神道の信者の数は、噂が噂を呼び日本国内でどんどん増えていった。実際、霊験あらたかなのである。信者が来ると、事代主命は神棚にあるレンズから信者の顔や体を眺め、体や精神の状態を推測する。頭にヘッドマウントディスプレイをかぶり手にマジックハンドをつけた巫女か神主が信者の頭を触りマッサージをする。ヘッドマウントディスプレイは事代主命の指示を聞くためであり、そこについたカメラで信者を観察するためでもある。マジックハンドは事代主命の指令で勝手に動いて患者の頭をマッサージする。事代主命が信者の神経系の状態を顔や声や皮膚の具合から判断しながらマッサージするので、とても気持ちが良いのだ。それから肩や首、背中、手のひら等をマッサージする。

こうしてまず体のマッサージをして信者をリラックスさせてから対話を始め、信者の話を聞く。いってみれば心の医者だ。必要な場合は式神レットというファブレットを飛ばして信者についてリサーチする。ちなみに式神レットとは、ホコリのようなファブレットで、空を飛んで目的地に行って、そこで小さなカメラやマイクになって盗聴する装置である。式神レットは普段は橋の下に隠れている。橋の下にたまっているホコリを見ればそれが式神レットだ。式神レットは日本国内だけではなく、世界中にばらまいた。

信者は事代主命がなぜそんなことまで知っているのかと思うほど個人的なことを知っている。信者の体調が悪い場合は、専属の医者に回す。もちろん事代主命は医者以上に信者の体調を把握しているのだが、法律では患者を診察したり、治療したりできるのは医者だけだ。重い病気の場合には、病院船や単冠総合病院に回す。このことが人気の根源になったのだ。現在の医学では治療が困難な患者がたくさん集まった。

また理神道は信者の子弟の教育も行った。神社が一種の塾になるのである。そのために信者の子弟は成績がぐんぐんと良くなった。そのため世の多くの教育ママが信者になった。

理神道はまた結婚仲介を始めた。つまり事代主命が仲人になるのである。現代の男女は結婚難である。その理由の1つは、結婚制度が見合いから恋愛結婚に変わった事である。昔は親戚や近所の人、上司などが仲人の役割をした。そうして割れ鍋に綴じ蓋というように、階層や家柄など釣り合った男女が結婚していた。しかし現代では、あらゆる男女が恋愛結婚しなければならないという呪縛に囚われている。その場合、あらゆる男女が、学校カーストで言うところのトップクラスを狙う。トップクラスとはイケメンや美女、金持ちのことである。しかしそれでは数が合わない。カーストのトップ同士の男女が結婚することはできるが、それ以外は難しくなる。事代主命は膨大な数の信者の中から似合った男女を選んで、推薦するのである。その場合、家柄、学歴、職歴、趣味、人格、社会階層などあらゆる要素を考慮してベストマッチングを試みる。こうして紹介された相手を、信者は事代主命様が言うことだからむげに断ることはできない。そして付き合いを始める。デートの仕方から会話まで事代主命が親切にコーチしてくれる。そうすればそれなりにうまくいくものだ。

いざ結婚ということになると、某宗教なら合同結婚式をするのだが、理神道では契約した結婚式場で結婚してもらうことにしている。もちろん事代主命が結婚式を取り仕切る。こうして理神道にはマージンが入る。結婚後も問題があれば、事代主命に相談すれば、問題を解決してくれる。だいたい夫が妻に、妻が夫に不満を言うと角が立つ。それを事代主命は仲介してくれる。だから事代主命の仲人で結婚した男女には離婚は少ない。

とは言え人間のことであるから完全ということはない。離婚もあり得る。その場合、性格の不一致という事は滅多にない。事前に充分リサーチしてあるからだ。どちらかが浮気をしたというケースはあり得る。そんな場合はことを荒立てるのではなく、さっさと離婚させてしまう。そして次を探すのだ。事代主命は未婚の男女の他に、バツイチなど離婚した男女の膨大なストックを持っているのだ。離婚したカップルに子供がいる場合は、子供の世話は信者共同体が行う。つまり理神道は1つの大きな家族のようなものだ。

理神道の信者の夫婦のほとんどは幸せであり、子供も増えていった。それを見た世間の若い男女が続々と理神道に入信を始めた。日本の問題は少子高齢化であるが、理神道の信者に関して言えば、その問題は無い。理神道は幸せな信者のカップルをテレビや雑誌で大きく宣伝した。

続く

   
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