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2045年問題・・・コンピュータが人類を超える日

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iPhone中毒

私の同年代の友人がiPhone4からiPhone5に買い替えた。余ったiPhone4を1歳の孫娘にやると喜んで、使いこなしているという。孫娘の機嫌が悪いときなどiPhoneを持たせると機嫌が良くなるので重宝するそうだ。また若い友人が1歳4ヶ月の娘にiPadを使わせているという。それで絵本を読むのだそうだ。ところが紙の本でもページをめくるときにスワイプの動作をするという。もうiPadがその女の子のデファクト・スタンダードになっているのだ。人間の知能は2歳までに決まるという。このときにデジタル機器を使いこなしている子供は、旧来のアナログ人間とは異なる新世代である。

私がiPhoneに出会ったのは2009年夏のことである。それまで携帯電話は持ってはいたが、使いこなしているとは言えなかった。私は旧世代の人間として、そもそも電話が好きになれないのだ。若い人にとって携帯が命の次に大切だ、などという話を聞いて、何をバカげたことをと思っていた。アップルがiPhoneという携帯電話を発表したという話は聞いていたが、コンピュータ会社がなんで携帯電話を売るんだと思ってバカにしていた。

ところがその夏の8月、神戸大学で集中講義をしたときに、太陽面爆発によるコロナ質量放出でアメリカの人口のかなりな部分が死ぬかもしれないという、アメリカ科学アカデミーの報告の話をした。そうしたら前に座っていた学生が後でやってきて、その話はドラマとなってYouTubeにアップされているといって、私にiPhoneの画面を見せた。さらに世界カメラというアプリもデモをして見せてくれた。私は正直言って圧倒された。iPhoneは電話というよりはコンピュータなのだ。それも超小型の。私はコンピュータに対しては異常な愛情を持っている。博士の異常な愛情というやつだ。

私は次の日に近くのソフトバンクに家内を連れて駆け込んで、自分と家内のiPhone3GSを買った。その後、私は2011年10月にiPhone4Sにバージョンアップした。もっとも安さに引かれて16GBモデルにしたのが失敗であった。アプリが多すぎて、入りきらないのである。また iOS6にバージョンアップする余地がないのである。 しかしiOS6のマップアプリの不出来を考えると、当面はiOS5で十分である。家内は途中で3GSを失い、それが無くては仕事にならないと言って、iPhone4を買った。2年縛りの中であったので、大損であったのだが。

私は今はどっぷりとiPhoneにはまっている。朝起きるとまずiPhoneでメールとフェイスブックをチェックする。夜寝る前は、iPhoneかiPadでYouTubeを見る。トイレに行くときも持っていく。それが手近に無いとなんとなく不安なのだ。調べ物はなんでもGoogleで調べる。とてつもなく便利である。

家内はブログにはまっている。それまではテレビ漬けであったのだが、今は完全にiPhone漬けである。朝起きると寝床の中でiPhoneを見ている。ところが今日また家内のiPhoneに悲劇が起きた。iPhone4を風呂の中に落としたというのである。風呂の中で携帯を使うというのは論外と思うのだが中毒患者としては仕方ないであろう。電話番号などのデータはすべて失われた。結局、2年縛りの中、新しいiPhone4に交換して、それでも高い金を取られた。二人とも完全にiPhone依存症になっている。

iPadに関しては、私は2010年に発表された初代iPadは見送った。しかし2011年4月にiPad2の発売が開始されると、WiFiモデルをすぐに買った。2012年3月にはにはRetina Displayを持つ第3世代が発表され、それも買った。そして2012年の11月にiPad miniが発売されるやすぐにそれを買った。これは64GBモデルである。データをなんでもダウンロードしてやろうと思っている。これはRetina Displayでないので世間では不評であるが、私はとても重宝している。何と言っても軽いのだ。私は寝転んでiPadを使いたいので、わざわざアームまで買ったのだが、使いこなせていない。アームに装着したiPadを動かすより、自分の体を動かさなければならないので不便なのである。その点、iPad miniは片手で楽々と持つことができる。

スティーブ・ジョブスはiPadをPCとiPhoneの中間に位置づけているが、iPad miniが出た今となっては、iPadの重さではむしろPCに近いと思う。iPadは寝転んで使うことはできず、やはり机に座って使うものだ。だとするとPCの方がいろいろと機能が多く便利である。というわけで、最近はもっぱらminiを使っている。私は結局iPhoneは使っていないものも含めて2台、iPadは3台、それにMacも13インチのAirとMacBook Pro Retina 15インチを持っている。Windows PCも3台、Linux機も1台持っている。私はコンピュータが好きなのだ。

デジタル革命

次の革命的デバイスは2012年6月に発表されたグーグル・グラスであろうと思っている。これは眼鏡の横についた小さなディスプレーにさまざまな情報を表示するものである。これは1,500ドルでディベロッパー用として売り出された。消費者用として出てくるのは2014年であると言われている。この種のヘッドマウント・ディスプレーは今までもあったのだが、流行らなかった。というのもいかにもつけているということが、あからさまだからだ。一部の非常に先進的な少数の人だけがこれを付けていた。

グーグルがこれを発表したという意味は大きい。というのは今後は非常にたくさんの人が装着するであろうからだ。そうするとヘッドマウントディスプレーを装着することに違和感がなくなり、一斉に流行すると思う。現在電車に乗ると若い人、特に若い女性はみんなスマートフォンを見ている。一昔前は電車の中で携帯電話で話をする行儀の悪い若者もいたのだが、最近はそのような人はほとんど見かけない。というのもみんなメールを読んでいるからである。それが2014年からは皆が一斉にグーグル・グラスをつけてそれでメールを読むようになるであろう。

グーグル・グラスのようなヘッドマウント・ディスプレーを用いると増強現実(オーグメンティッド・リアリティ)が実現される。数年前にNHK教育テレビで放映された、子供向けのアニメ「電脳コイル」の世界が実現するのである。電脳コイルの時代設定は2020年代であるが、その頃までには多くの人がグーグル・グラスのようなヘッドマウント・ディスプレーをつけているであろう。それにはカメラがついているので、色々と新しいプライバシー問題も発生するであろう。

現在アップルのiPhoneにはSiriという人工知能がついている。Siriにいろいろ言葉で話しかけると用事をしてくれる。例えばメールを出すとか、目覚ましを依頼するとか、時間を聞くとか、調べ物するとかいろいろである。将来はヘッドマウント・ディスプレーの視界に、Siriのようなバーチャル・アシスタントの顔が表示されるであろう。男性用のバーチャル・アシスタントはセクシーな女性になるであろうし、女性用のものはハンサムな男性になるかもしれない。今ですら草食系男性が多いのが問題になっているのに、セクシーな女性のバーチャル・アシスタントがいつも視界のそばにいると、多くの男性はそれにのめり込むであろう。多くの男性が現実の女性とのコンタクトを諦めて、バーチャルな女性で満足するであろう。

バーチャル・アシスタントはどこかクラウド上にあるスーパーコンピュータや巨大なデータベースに接続している。だからどのような質問や計算も、簡単にバーチャル・アシスタントがやってくれる。外部からその人を見ると、非常に知能が増強されたように見える。これは知能増強である。

さらに将来はコンピュータと人間とのインターフェイスがもっと密になる。脳とコンピュータを直接つなげることができるだろう。その萌芽はすでにあるのだ。私はそのような日が、一日も早く来て欲しいと切に願っているのだ。

2045年問題・・・コンピュータが人類を超える日

私は最近「2045年問題・・・コンピュータが人類を超える日」廣済堂新書、2013年1月1日第1版発行、800円という本を上梓した。2045年問題とは、最近アメリカの未来学者レイ・カーツワイルが喧伝している技術的特異点が2045年に起きるという話だ。技術的特異点に達するとコンピュータの知能が人類全体のそれを超えて、またコンピュータが自分自身のプログラムを書き換えて独自の進化を始めるので、その先の世界がどうなるか予見できないという。カーツワイル自身は楽天家で、技術的特異点に達することにより、人類の様々な問題は解決されると楽観している。

いっぽうオーストラリアの人工知能学者ヒューゴ・デ・ガリスは、21世紀後半にはコンピュータの知能が人間の1兆倍の1兆倍になるという。そのようなコンピュータを彼はゴッド・ライク・マシンとよぶ。ゴッド・ライク・マシンから見ると人間は害虫みたいなもので、人間を滅ぼすだろうという。そこでゴッド・ライク・マシンを作ることに賛成する人間を宇宙派、人類の存続を第一とする人たちを地球派とよび、21世紀の後半には人類の存続をかけた大戦争が起きるという。ゴッド・ライク・マシンは人類を滅ぼした後は、全地球、全太陽系、全宇宙をコンピュータ化して、その後で新しい宇宙を創世するという。キリスト教では神が宇宙を作ったと言っているが、それは間違いで、人間が神を作り、その神が新しい宇宙を作り、そこにまた人間が現れて・・・という輪廻転成の世界を作るという。

そのころまで生きて、人類の行き末を見たいものだ。


松田卓也(まつだたくや)
1943年生まれ。宇宙物理学者・理学博士。神戸大学名誉教授、 NPO法人あいんしゅたいん副理事長、同付置基礎科学研究所副所長、中島科学研究所研究員、ジャパン・スケプティックス会長。 1970年、京都大学大学院理学研究科物理学第二専攻博士課程修了。京都大学工学部航空工学科助教授、英国カーディフ大学客員教授、神戸大学理学部地球惑星科学科教授、国立天文台客員教授、日本天文学会理事長などを歴任。主な著書に「これからの宇宙論--宇宙・ブラックホール・知性」 (講談社ブルーバックス) 、 「正負のユートピア-人類の未来に関する一考察」 (岩波書店) 、 「新装版 相対論的宇宙論--ブラックホール・宇宙・超宇宙」 (共著、講談社ブルーバックス) 、 「なっとくする相対性理論」 (共著、講談社) 、 「タイムトラベル超科学読本」 (監修、 PHP研究所)、「2045年問題--コンピュータが人類を超える日」(廣済堂新書)など
   
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