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頭の良くなる食べ物

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神経新生の話である。神経新生とは脳の神経細胞つまりニューロンが新しく生まれる現象のことをいう。神経新生はとくに脳の奥深くにある海馬とよばれる部分で起きている。海馬は記憶に関係している。海馬の神経細胞が多く失われて、海馬が萎縮すると物忘れが激しくなる。わかっているはずの物の名前が出てこないとか、ちょっとそこに置いたものを忘れる。それが極端になると、認知症になる。

また海馬は感情とも関係している。海馬が萎縮すると鬱になる。人生に対する不安や心配が増す。つまり海馬が萎縮すると、頭が悪くなるだけでなく、人生が暗く不幸になるのである。逆に海馬の神経細胞が増えると、物忘れしないだけでなく、人生がイキイキハツラツとして、幸せなものになるのである。

従来、脳の神経細胞は20代までは増えるが、それ以降は減る一方だと信じられていた。しかし最近の研究では、そうではなく海馬の神経細胞はいつも新しく生まれることがわかって来た。しかし年齢により、また生活態度により神経新生の速さは異なる。しかも新しく生まれた神経細胞は、そのままほっておくと根付かずに死んでしまう。

だからどうしたら海馬の神経新生を促進できるか、さらに生まれた神経細胞を定着させられるかが、中年以降の人生にとって重要なのだ。特に私のような後期高齢者にとっては非常に重要な関心事なのだ。

ネズミを使った実験において、ネズミにイキイキとした刺激的な生活環境を与えると海馬の神経新生が増えるという話をした。刺激的な生活環境とは、ネズミが運動するための輪とか、探検する場所とか、新しい巣の材料とか、仲間とくに異性のネズミとかだ。つまりネズミにリア充な生活を送らせると、ネズミの頭が良くなるのだ。

ネズミの話は人間にも適用できる。人間もつねに刺激的な生活環境にいることが重要だ。つまり適度な運動をすること、知的好奇心を持つこと、他の人々と楽しく付き合うこと、異性との良い関係をもつことなどが重要なのだ。さらに食べ物の選択も重要である。

今回はとくに食べ物の話をする。どんな食べ物やサプリメントが神経新生の役にたつかの話をする。この話はアメリカの心理学者ブラント・コートライトの著書「神経新生のための食事とライフスタイル」に詳しく書いてある。ここではその本の食事の部分を紹介する。

コートライトは神経新生に役にたつ食品とサプリメントの長大なリストを挙げている。それを全部詳しく紹介することはできないが、特に重要な5種類を紹介しよう。それは1)ブルーベリー、2)オメガ3脂肪酸、3)緑茶、4)ターメリック、5)大豆である。これらは比較的簡単に食事から得ることができる。

まずブルーベリーである。カートライトはブルーベリーが神経新生にとって最も効果があると述べている。ブルーベリーとは、紫色のベリー、つまりいちごの一種だ。日本ではあまり馴染みがないので、生のブルーベリーを買うのは容易でないかもしれない。しかし冷凍のブルーベリーはスーパーで普通に売っている。私はそれをヨーグルトをかけて食べている。冷凍なので硬いが、冷凍庫から出してしばらくすると柔らかくなる。冷凍ものが手に入らなければ、サプリメントとして摂取する方法もある。

ブルーベリーのどんな成分が頭に良いかというと、紫色の元であるアントシアニンというポリフェノールである。植物にはさまざまな種類のポリフェノールがあり、野菜や果物の鮮やかな色の元である。ビッグカラーといい鮮やかな色をした野菜や果物を食べることは、体に良いのだ。

ブルーベリーの次がオメガ3脂肪酸である。脂肪酸とはいわゆる脂肪のことである。昔は、脂肪は体に良くないので食べ過ぎないようにと言われていた。しかし現在の栄養学では常識は逆になった。脂肪はどんどん食べろという。脂肪が頭に良いというのは、そもそも脳はその1/3が脂肪からできているからだ。脳を構成する材料である脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸は頭に良いのだ。

ただし脂肪にもいろいろあり、体に対する作用は異なる。まずバターやラードのような飽和脂肪酸がある。これは常温では固体である。さらに不飽和脂肪酸というものがある。これは常温では液体である。不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸がある。オリーブ油は一価不飽和脂肪酸である。多価不飽和脂肪酸はさらにオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸に別れる。これらは必須脂肪酸と呼ばれていて、体内で合成できない。問題のオメガ3脂肪酸は魚油に含まれる。オメガ6脂肪酸は普通の食用油に多く含まれている。

注目しているオメガ3脂肪酸は魚油、つまり魚の油に多く含まれている。具体的にはイワシ、鯖、サケ、タラ、マグロなどである。この中でお勧めはイワシや鯖である。やすいからだ。イワシやサバの缶詰が手頃で良い。

普通に油を使った料理を食べると、オメガ6脂肪酸が多くなる。オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の割合は1対1程度が良い。しかし現代の食事ではオメガ6脂肪酸が多すぎるのが問題なのだ。オメガ3脂肪酸を増やすには、意識的に魚を食べる必要がある。

料理法も問題である。バターやラードは高温にしても問題ないが、不飽和脂肪酸を高温にすると酸化する。酸化した油は体に良くない。とくに油で揚げたものは問題だ。ポテトチップスやフライなどは大量に食べるのは避けた方が良い。ココナッツ油とオリーブ油は比較的高温に強いとされている。一般的に言って料理はあまり高温でするのは良くない。煮たり焼いたりする程度は良いが、揚げるのは問題だ。とくに焦げは良くない。

次は緑茶である。これは日本人ならたくさん飲んでいるだろうから問題ないだろう。緑茶の何が良いかというと、カテキンとくにエピガロ・カテキン・ガレートというながたらしい名前のカテキンである。私がこれに注目したのは、新型コロナやインフルエンザ、風邪予防に効果があるからだ。その機構に関しては別に述べたが、亜鉛を細胞内に取り込んで、細胞内でのウイルスの増殖を妨害するのだ。私はコロナ予防のために亜鉛のサプリメントをのみ、緑茶をたくさん飲んでいる。緑茶が神経新生の役に立ち、さらにコロナ予防になるのなら、飲み物は緑茶にするのが良い。

次はターメリックである。ターメリックとはカレーの黄色の元である。東洋医学ではターメリックはウコンと呼ばれている薬草である。ターメリックに含まれるクルクミンという化合物が神経新生の役にたつのだ。

皆さんの中にはカレーライスが好きな人も多いだろう。カレーライスはレストランで食べる場合と、自宅で料理して食べる場合がある。料理する場合、普通はカレーのルーを買ってきてそれを入れる。もっと凝ってくると、スパイスカレーと言って、さまざまなスパイスを自分で調合して入れて作る方法がある。私はそうしている。スパイスカレーの作り方だけで、一遍のエッセイがかけるほどだ。そのスパイスの中心はターメリックである。そのほかにクミン、コリアンダー、カルダモン、カイエンペッパーなどがある。カイエンペッパーはカレーが辛い原因である。私はあまり辛いものは好きでないので、少なく入れている。これらをあらかじめ混ぜたガラムマサラを使う方法もある。

大豆に関しては特にいうこともないだろう。我々日本人は豆腐、納豆、味噌という形で大豆をたくさん食べている。欧米人と違って、特に大豆を食べるように注意する必要もないだろう。

コートライトは以上の他にたくさんのサプリメントを挙げている。朝鮮人参、イチョウ、ケルセチン、ビタミンE、ビタミンD、黒胡椒に含まれるピペリン、などなどである。この中で黒胡椒はターメリックの吸収に役にたつので、スパイスカレーには黒胡椒を入れるのが良い。

まとめると神経新生に役にたつ食べ物として、ブルーベリー、オメガ3脂肪酸、緑茶、ターメリック、大豆をあげた。この中でブルーベリー以外は日本人の食生活に馴染んでいる。魚を食べて、緑茶を飲み、カレーを食べて、豆腐・納豆を食べて味噌汁を飲んで入れば頭が良くなるのだ。簡単な話だ。 

   
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