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アルツハイマー病は治る その2

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前回はデール・ブレデセン博士という米国人が書いた「アルツハイマーの終焉」という本を紹介した。アルツハイマー病は治らないと言われてきたが、彼の開発した手法ReCODE(Recovery from Cognitive Decline : 認知減退からの回復法)について紹介しよう。

ブレデセン博士によればアルツハイマー病は一つの病気ではなく、さまざまな原因で起きるが症状としては一つの病気だという。その原因は基本的には3つのタイプに分類される。

1)  ホット型または炎症型:細菌感染や不適切な食事などによる神経の炎症
2)  コールド型または脳萎縮型: 脳を支える栄養やホルモンの欠如
3)  毒物型: 重金属やカビ毒などによる毒

アルツハイマー病に罹患しやすい遺伝子型という危険因子がある。それはApoE4という。ApoにはE2, E3, E4があり、父と母からそれぞれ一つの遺伝子を受け継ぐ。ApoE4を一つ持つ人、つまり2,4とか3,4 の組み合わせの人はアルツハイマー病にかかる確率が30%増え、4,4 と二つ持つ人は確率が50%から90%に増える。

ホット型つまり炎症型のアルツハイマー病にかかりやすい人はApoE4を一つないし二つ持っている。だからこれは遺伝する。コールド型つまり脳萎縮型もApoE4を一つないし二つ持つ人に発症しやすい。しかしコールド型つまり脳萎縮型が発症するのはホット型つまり炎症型より十年も遅い。ホット型とコールド型は同時に起きることもある。毒物型はApoE3を持つ人に多く、発症は40-50台と若い時に多く、治療は困難である。

3型の毒物型アルツハイマー病の治療法は何といっても、毒物を特定することである。そしてその原因となる毒物を除去しなければならない。例えば、ある紳士はこのタイプであったのだが、その原因は水銀中毒であった。しかも水銀中毒の原因はなんと寿司のマグロの食べ過ぎと、歯の詰め物のアマルガムに含まれる水銀であったという。

だからリコード法では、魚は食べても良いが、マグロとかカジキ、サメのような大型の魚は水銀に汚染されている可能性があり、できるだけ避けることとしている。食べて良い魚は英語でSMASHというがサケ、サバ、カタクチイワシ、イワシ、ニシンなどの寒流にすむ魚である。

また古い建物の水道水がカビなどで汚染されているというケースもある。毒物型は原因の特定が難しい。

毒物型は特殊だが、ホット型つまり炎症型とコールド型、つまり脳萎縮型の予防法は共通していて、適切な食事をすることと健康な生活をすることである。この手法はアルツハイマー病の予防に限らず、その他の慢性病つまり糖尿病、心臓病、脳卒中などの予防にも共通しているので、たとえ危険遺伝子を持たなくても、みんなが実行して決して損はしない。

アルツハイマー病を予防するには脳の慢性炎症を防がなければならない。そのためには慢性炎症を引き起こしやすい食べ物を避けることである。具体的に避けるべき食べ物はジャンクフード、コーラなど砂糖の多く入った飲み物、コーンシロップのような人工甘味料の入った食べ物や飲み物、オメガ6脂肪酸の多いものなどである。つまり加工食品はできるだけ避ける。また消化吸収の良い単純な炭水化物も制限する。具体的には小麦粉とか白米などだ。これは食後の血糖値をあげやすいからだ。玄米は良い。

食べるべきものは新鮮な果物と食物繊維いっぱいの野菜である。よい脂肪分は十分とって良い。良い脂肪分とはオメガ3不飽和脂肪酸などで、先に述べた寒流に住む魚から摂れる。そのほかオリーブ油、ココナッツ油などもよい。肉は食べても良いが、主食にすべきではなく、つまみ程度にすべきだ。

次は議論の多いところだが、グルテンを含む食べ物、具体的には小麦粉でできたパンとかパスタを避けるとある。グルテンが悪影響する人は少ないのだが、安全側に振っているのであろう。

脳の栄養素に関してはビタミンDとビタミンB1, B6, B12,葉酸が重要である。またミネラルとしては亜鉛とマグネシウムが重要だ。

ブレデセン博士はケトフレックス12/3というアルツハイマー対抗用の食事法を提案している。ケトフレックスのケトとは、ケトジェニック法のケトのことだ。しかしケトジェニック法をしろというのではない。ちなみにケトジェニック法とは、肉などの動物タンパクをたくさん食べるよう主張する食事法だ。

ブレデセン博士の食事法は基本的に植物中心食である。しかしビーガンやビジタリアンほどには厳密ではない。つまりフレキシブルなビジタリアン、つまりフレキシタリアンなのだ。ケトフレックスのフレックスはここからきている。それではケトはなにかというと、食事間隔を十分に開けることで、糖分からではなく脂肪からエネルギーを得るマイルドなケト状態に持っていくのである。

もっと具体的にいうと、12/3の12は夕食から朝食までの間隔を12時間開けるということである。つまり食事をしない時間、断食時間を十分にとるのだ。3は夕食から寝るまで3時間は開けるということである。この数字は大きいほど良い。つまり夕食と朝食の間隔はできるだけ開ける、また夕食から就寝までの時間もできるだけ開けるのだ。それをするためには夕食を早くするとかがありだろう。

さらに十分な睡眠をとり、適度な運動をして、タバコは吸わない。また口腔を清潔にする。歯茎から歯周病菌が血流に入り込み、脳に行くのを防ぐためだ。

そのほか、いろんなハーブ類とかホルモン剤などが挙げられているが、詳細を知りたい場合は、本を読んでほしい。ひとつだけレスベラトロールというサプリメントだけを挙げておこう。これは赤ワインに含まれるポリフェノールで、脳に良いとされている。

まとめるとアルツハイマー病を予防するには健康な食事が第一だ。その健康な食事とは、植物中心食である。野菜と果物を十分に取る。また健康な脂肪分も取る。肉類はつまみ程度にする。砂糖とかデンプンのような簡単に消化吸収される糖分は制限する。加工食品は避ける。夕食と朝食の間隔は12時間以上開ける。夕食と就寝の間隔は3時間以上開ける。栄養素としてはビタミンBとDが重要だ。ミネラルは亜鉛とマグネシウムが重要である。また十分な睡眠をとり、適度な運動をする。すべて健康のためには常識的なことなので、アルツハイマー予防でなくても、やって損はない。

   
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