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食物と健康

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マイクロバイオームが一部の研究者の話題になっている。マイクロバイオームとは人間と共生する細菌などの微生物のことである。とくにそのなかでも腸内細菌が重要である。腸内細菌のアンバランスが肥満、糖尿病、喘息、炎症性腸疾患、アレルギー症など多くの慢性疾患の原因になっている。先進国の人々は食生活が偏っていることにより、腸内細菌の多様性がなく、そのために慢性病にかかりやすいと言われている。それを防ぐためには、積極的に食物繊維を取るのが良い。

どのようなものを食べれば良いのだろうか。一言で言えば野菜と果物と全粒穀物だ。それらに含まれる食物繊維を積極的に取るべきだ。どのくらい取れば良いのだろうか。日本を含む先進国の人々の食物繊維の平均摂取量は1日15グラム程度である。日本の厚生労働省の勧めでは1日20グラム以上と言われている。発展途上国の人々は1日平均35グラム、アフリカ・タンザニアの狩猟採集民は1日150グラムも取っている。食物繊維の摂取量には上限はないのだが、我々は150グラムも食べることはできない。ある研究者は35-50グラム食べろと言っている。それだけ食べようと思うと、現状の倍以上の食物繊維を食べなければならない。相当気をつけないと、これだけ食べるのは難しい。

どのようなものが食物繊維を含むか。野菜と果物、豆、穀物である。穀物といえば米であるが、精米は食物繊維を取り除いたものであるから、玄米でないとダメである。精米は炭水化物、つまりエネルギーの供給には良いのだが、食物繊維もビタミンもほとんどない。

私個人の工夫について話そう。野菜をたくさん食べると言っても、生野菜はかさばるのであまり食べられない。そこで私は生野菜をみじん切りにして体積を減らして食べることにしている。具体的には人参、玉ねぎ、りんご、キャベツなどをフードプロセッサーでみじん切りにする。それらを混ぜたチョップド・サラダにドレッシングをかけてスプーンで食べる。

生野菜だけでは、必要量の野菜を食べることは難しい。そこで温野菜も食べるのが良い。温野菜は加熱しすぎるとビタミンが壊れるという問題点はあるが、体積が小さくなるので大量に食物繊維を取るという点では優れている。そこで以前紹介した電気圧力鍋を使っている。これに人参、じゃがいも、玉ねぎなどの根菜を大量に入れて加圧して炊くと、細胞壁が壊れてとても食べやすくなる。またほうれん草やブロッコリは電子レンジで加熱して、それに鰹節をかけてポン酢で食べると美味しい。いくらでも食べられる。

先に食物繊維をもっと大量に取るべきであるという話をした。もちろん食事には食物繊維だけではなく、エネルギーの元になる炭水化物、タンパク質、ビタミンなどいろいろの要素がある。しかしこれらは比較的よく知られているので、ここでは触れない。

食物繊維と並んで重要な要素として抗酸化食品という点に触れたい。抗酸化食品とはなにか? 活性酸素の害を防ぐ食品だ。活性酸素とは何か? それはようするに生の酸素である。

酸素は生物にとって毒なのだ。でも酸素がないと生物は生きていけない。それが毒とはどういうことか? 酸素は食べた食物からエネルギーを取り出すときに必要なのだ。酸素は炭素と結合して二酸化炭素になる。ところがそれに使われなかった酸素は、そこらにあるものと手当たり次第に結合する。つまり酸化である。わかりやすくいえば錆びるのである。ガンも老化も、体の酸化が原因といわれている。

酸化を防ぐには二つの考えがある。積極的な方法と消極的な方法がある。消極的な方法とは、酸素の必要量を減らすことだ。酸素は食物を分解するのに必要なのだから、食べなければ良いのだ。しかし全く食べなければ死んでしまう。そこで食べる量を減らすことがよい。定期的に断食するとか、あるいは小食に徹するのが健康と長生きに良いとされている。日本人がそれなりの大国の中で、最も長命なのは小食だからだろう。欧米のレストランで食事をすると、その量の多さに閉口する。またヨーロッパの旅行番組を見ていると、彼らの食べる量の多さに圧倒される。あれでは日本人ほどには長生きできないわけだ。

積極的な方法とは食べたときに出てくる活性酸素をなくしてしまう方法だ。これが抗酸化食品である。具体的にはビタミンCとかビタミンEが良いと言われている。ここではポリフェノールについて述べる。ポリフェノールとは植物に含まれる化合物で、例えばブドウとかブルーベリー、トマトなどカラフルなものに含まれている。野菜や果物の色は抗酸化物質のマークなのだ。ビッグカラーを食べろと言われている。フランス人は赤ワインを飲むので体に良いと言われるのはそのためだ。

先進国とくにアメリカの食生活は食物繊維が少なく、肉が多く、脂肪が多く、体に良いわけはない。そこで米国で注目されているのが地中海料理である。野菜や果物を多く使う。肉は控えめにして魚を多く食べる。

また腸内細菌を助けるために発酵食品を取れと言われている。日本なら納豆、味噌、漬物、ヨーグルト、外国ならザワークラウト、キムチなどだ。日本料理の問題点は塩分が多いことだ。これさえ気をつければ、日本料理は結構な健康料理であると思う。

まとめると、マイクロバイオームを改善するには、食物繊維をできるだけ取る。そのためには野菜、果物、豆、全粒穀物を積極的に取る。野菜を多く食べるには、電気圧力鍋で温野菜を大量に食べるとか、生野菜はフードプロセッサーで刻んで小さくして大量に食べるのが良い。また抗酸化食品としてカラフルな野菜や果物を食べるのが良い。

   
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