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脳・コンピュータ結合と超人類誕生

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シンギュラリティとは人工知能、生命科学、ロボット工学が発達して社会が大きく変容する時期である。それは米国のレイ・カーツワイルによれば2045年のこととされている。シンギュラリティは人工知能が発達して超知能が出現する時とも定義できる。超知能とは現在の人間の知能よりもはるかに強力な知能を持つ存在である。

超知能の二つの形態として超人類と機械超知能が考えられる。人間の脳とコンピュータを脳・コンピュータ・インターフェイスでつなぐことで知能増強された人間が超人類である。機械超知能とは、人間の知能を遥かに凌駕する人工知能を搭載したコンピュータそのものである。私は超人類のほうが人類の観点からは望ましいと思う。今回は超人類がいかにすごいかを想像を交えて語ってみよう。超人類の知力はほとんど神同然である。

接続方法による分類

脳とコンピュータの繋ぎ方として1)非侵襲的方法と2)侵襲的方法がある。非侵襲的方法とは頭蓋骨に穴を開けない方法であり、侵襲的方法とは頭蓋骨に穴を開ける方法である。現状の手法はすべて非侵襲的である。

現状のコンピュータやスマホのモニター、キーボート、イヤフォン、ヘッドマウント・ディスプレイなどは非侵襲的な手法である。将来はモニターに変わって、網膜に直接レーザー光線を入れるとかコンタクトレンズが使われるようになるだろう。その手法はすでに一部実用化済みである。それも非侵襲的である。

もっと進んだ非侵襲的手法として、頭蓋骨に近赤外光をあてて神経細胞(ニューロン)の状態を観測する方法がある。現状では、多くは散乱光を利用している。頭蓋骨に光をあてると、一部は表面から散乱されるが、一部は頭蓋骨を透過して中に入り込んで、脳の内部で散乱されて外に出てくる。それを観測する手法である。我々がものを見るのは、普通は散乱光を利用している。その延長の技術だ。つまり脳に光を当ててを直接見るのだ。

さらに散乱光ではなく透過光を用いる手法が研究されている。いわば脳を透かして見るやり方だ。フェイスブックで研究されている。このほうが散乱光よりは効率が良いはずだ。

侵襲的方法

侵襲的手法の例としては、電気自動車のテスラ社のイーロン・マスクが作ったニューラリンク社の手法がある。それは細いニューラル・レースとよぶ糸状のものを注射器で頭蓋骨を通して脳内に直接注射するのだ。ニューラル・レースは脳の組織と親和性があり、脳の神経細胞とくっついてその一部になる。ニューラル・レースは電気信号を伝えることができるので脳内のニューロンの電位を測定することができる。まだ完成していないが、できれば強力な手法になるだろう。

脳とコンピュータの直接の結合

侵襲的手法による脳・コンピュータ結合としては、疎結合と密結合がありうる。疎結合とは、文字通り少数の神経細胞とコンピュータをつなぐことである。密結合とは、多数の神経細胞とコンピュータをつなぐ。もちろん密結合が望ましいが、疎結合でも現状の脳波測定やfMRIによる測定よりは、はるかに精密な測定ができるであろう。

例えばテレビカメラの信号を大脳後頭部にある視覚野につなぐことができたとする。そうすると被験者は練習を積めば、カメラの画像を目を通さずに、直接見ることができるだろう。

脳の可塑性という現象があり、神経細胞は練習さえすればいろんなことができるのだ。よく知られた例としては、生まれたばかりのフェレットの視神経を視覚野から切断して聴覚野につなぐと、本来は音を聞くはずの聴覚野で、ものが見えるようになるという。またカメラからの電気信号を舌につなぐと、舌で映像が見えるようになるという。もちろん現状では精密な像が見えるわけではないが、それでも視覚障害者には有益であろう。そもそもこの手法は非侵襲的である。

カメラからの電気信号を視覚野につないでものを見る装置は、当面は視覚障害者のための装置であろうが、将来は健常者も使用できるようになるだろう。すると可視画像だけでなく、赤外線カメラとかレーダーの画像を直接見ることもできるだろう。

聴覚についても同様だ。マイクと聴覚野をつなぐのだ。その場合、可聴音だけでなく、超音波を可聴音域に変調して、あるいは変調せずに聞くことができる。コウモリのエコロケーションのように、音で外部の様子を見る事ができる。これも当面は視覚障害者のための装置であろうがゆくゆくは健常者も利用できるだろう。

ロボットアームと運動野をつなぐと、考えるだけでアームが動かせる。腕がなくなった人のための装置である。現状は、もっと簡単な方法として、皮膚の神経とロボットアームを結ぶ方法がすでに実現している。

脳ではないが、のどの筋肉の動きをセンサーが察知して、声に出さずに自分の声の音声認識を行うことも考えられる。現状の音声入力の問題点は、静かな場所でしかできない事、また人のいる場所でやるのは迷惑になることなどがあげられる。自分の脳内の声(内声)で音声認識できれば、キーボードに取って代わるだろう。

ロボットアームと体性感覚野をつなぐと、ロボットアームの触覚が直接感じられるようになるだろう。

超人類の誕生

密結合が実現すると、コンピュータと脳が直接的に多くの情報をやりとりすることができる。それによりできるかもしれないことをSF的に妄想してみよう。

コンピュータ上の人工知能にもし意識があれば、それを感じることもできるだろう。東大の渡辺正峰(まさたか)さんが考えていることだ。またトノーニの統合情報理論によれば、人工知能の意識と人間の意識はひとつに統合されるかもしれない。

人間の脳の働きの時間単位は10ミリ秒程度、つまり1秒の100分の1程度である。周波数でいうと100ヘルツ程度である。一方コンピュータの基本的なクロック速度は1GHz、10億ヘルツである。つまりコンピュータは人間より千万倍も速く考えることができる。

生身の脳とコンピュータ脳を密結合できれば、原理的には人間の1000万倍速く考えることができるかもしれない。1年は3000万秒だから、それを1000万で割れば3秒である。つまり人間の1年はコンピュータにとっては3秒である。超人類は3秒で、普通の人間が1年かかる思考をできるかもしれない。だとすればコンピュータの2時間半分は人間の3000年分に相当する。囲碁の歴史は3000年というから、その歴史を超人類は2時間半で追いこす。実際、人工知能アルファゼロは8時間で人間を追い越したのだから。

我々は3次元世界に住んでいる。目の網膜は2次元であり、大脳新皮質も薄い膜であり基本的には2次元的広がりしか持たない。つまり我々は直接には2次元画像しか知覚できないのだ。3次元像は両眼視や経験から奥行きを判断しているのだ。

もし3次元の奥域のある人工網膜を作って、機械脳の大脳新皮質に相当する部分も3次元化すれば、それと繋がった超人類は3次元世界を直接、知覚することができるかもしれない。我々が3次元像を展開したり回転させたりして2次元的に知覚する。それと同様に超人間は4次元像を回転させて3次元像的に知覚して、4次元世界も頭の中で簡単に想像することができるかもしれない。このようなことができる超人類は、普通の人間から見たら、もはや次元を超えており神ではないだろうか。

まとめ

人間とコンピュータを脳・コンピュータ・インターフェイスを使って侵襲的に密結合することができれば、人間の意識と機械の意識は一体化する。その知能は人間の1000万倍にもなるだろう。3秒で1年分の経験を積むことができる。ほとんど神のようになれるだろう。神になる、これが私の夢である。

   
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