2017年10月18日

あいんしゅたいんアピール:京大総長への要望書「東京電力福島第一原発事故による避難者の医療に係わる協力のお願い」

松本紘総長 殿

東京電力福島第一原発事故による避難者の医療に係わる協力のお願い

自由の学風を誇る京都大学も激動の変革期を迎え、さまざまな取り組みに挑戦されており、私どもも期待を寄せております。

さて、このたび、どうしても松本総長にご協力をお願いしたく、思い切ってお願い文書を出す決心をいたしました。それは、体内から発している放射線を測定する「ホール・ボディ・カウンター(WBC)」を、1日だけ福島から京都に避難されている方々の測定に使わせていただけないかということなのです。このWBCは京都大学では原子炉研究所にあるということです。

3月11日の東日本震災に続いて、福島第一原発事故は、環境に放出した放射性物質が大きな混乱を巻き起こしました。この激動期に、大学人に対して多くの課題を突きつけられたことは、重く受け取るべきだと痛感いたしております。

当NPOは震災以後、低線量放射線の検討会を集中的に行い、またホームページを通じて情報発信を行ってきました。そうした中、民間事故調委員長である北澤宏一氏からの紹介で、京都に避難されているお母さんが当NPOを訪ねてこられました。この方のお話しから、避難者の方々は放射線の影響について、極端に異なる情報の洪水の中で正確な知識を得る機会が少なく、また自分の被曝量に関してもほとんど点検がされないまま、今日に至っているということを知りました。
そこで私どもは、「京都府在住避難者の健康診断に係わる協力依頼」を京都府に提出いたしました。福島県内に在住の方の健診は一定程度進みつつありますが、県外避難者にはなかなか手が回らない現状のようです。避難者にとって一番何が不安なのか、それは一体自分や子供たちがどれだけの被ばくしたのかということです。そのため一度はきちんと知りたいというお気持ちが強く、これは私どもにもよく分かります。こういう思いに少しでも応えることが、今とても大切だと思います。家族を亡くし、友人たちと別れ、さらに原発事故による放射能汚染の恐怖のまま京都府へ避難してから、すでに一年半を過ぎました。避難者の不安は募るばかりなのです。

このように、やむなく避難された方々に対して被ばくチェックや診断にまではなかなか手が回らなかったとのことですが、最近ようやく甲状腺検査県外検査が始まりました。その受け入れ機関一覧によると、京都はこの段階ではまだ決まっておりませんでした。その後様々な方の努力の末、京都府立医大が受け入れると聞いております。
しかし、現在の被爆状況を個人個人で測定するWBC をお望みの避難者が多数おられます。特にお子様を抱えたお母さんたちの、正確な情報がないことによる不安は大きなものがあります。私どもも、こうした避難者の方々の思いを実現するべく、さまざまなルートを通じて福島とも連絡をとり、WBC車を派遣できる可能性も探ってきましたが、移動式以外のWBC も含めて所有しているところを探したところ、原発立地周辺(原発で働く方々の測定に必要です)など限られた施設にしかないことを痛感しました。
このようななか、京都大学原子炉実験所にWBCがあることを知りました。実は医学部にもあったそうですが、廃棄になったそうです。原子炉のWBC も最新のものではありませんが、原発事故後に福島へ行かれた放射線測定チームの皆さんが、測定を終えた後で、このWBC でチェックをされていることを聞いています。

もし、京都大学原子炉実験所のWBC を、県外避難者への医療サポートとして1 日でも使わせていただければ、初の県外避難者のWBC 調査という先駆けの取り組みとなります。原子炉実験所まではかなりの距離がありますが、たとえ10人でもご招待して測定をしていただければ、県外避難者のサポートとして、初めてWBCによるチェックでき、その効果は大きいと思います。そして、県外避難者の被ばく調査の実現というブレイクスルーとなるのではないでしょうか。

もちろん、京都大学原子炉実験所のWBCですべての方々のご希望を叶えられるとは思いません。なにしろ、ここ京都には、避難者が約1000人もおられるということです(2012年1月末現在)。特に京都は、関西広域連合の中の分担で、被災地支援として福島県を割り当てられていると伺っています。これに対応する形で、総長室には「福島県被災地復興支援京都府・京都大学連携プロジェクト」が地方自治体と連携して設置されていると聞いています。

予算としては、原子炉までマイクロバス1台のチャーターし、ミニマイクロバスで10人ぐらいをめどに測定をしていただければと思います。測定と同時に、データの見方やその意味、これからの生活の仕方などをアドバイスするスタッフがサポートすることは必須ですが、その件についてなら私どもの方から呼びかけて、今までご一緒にこの問題にかかわってきた医学関係や生物関係、物理関係などたくさんの方々に、ご協力をお願いすることもできると思います。

たとえ10人程度の方々の検査でも、行ったということで支援となり、皆さんの安心につながります。それはまた、科学者と市民の間にある信頼感を回復するもとにもなると思います。私どもの気持ちをお届けすることが今とても大切で、貴重な支援活動になると思っています。また、京都大学がこういう企画に協力してくださることで、今後の福島と京都の自治体同士の連携にもつながって、さらに、大きく支援の輪が広がっていくのではないでしょうか。どうか、この気持ちをお汲み取りくださり、お力を注いでいただきますよう、よろしくお願いします。

NPO法人 あいんしゅたいん 理  事  長 坂東 昌子    
常務理事 宇野 賀津子

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