2017年度緊急勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第11回)報告

 1.概 要

日  時:2017年12月10日(日) 14:00~17:00
場  所:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室
話題提供:松田卓也(NPO法人あいんしゅたいん副理事長)
話  題:教育の未来像・・・技術的失業時代に生き残るには ・・・
     親子理科実験教室100回を目前にして

2.参加者感想

今回のサロンは、東京からわざわざでかけて参加したのですが期待に違わないものがありました。行ったかいがいった・・・という以上のものがあったということです。それは何かといえば、
1)AIの最先端の情報、とりわけシンギュラリティの意義とその時期、そしてそれ以降の未来予測に真実と迫力が感じられた
2)講演後の参加者との意見交換に参加できて、とりわけ市民ネットワークの参加者からの教育・研究における体験ならびに意見にサロンがこれまでに育んできたものの独創性と発露と未来への間口の可能性も見た

今回の講演者・松田卓也氏は、私が京大理学部の学生だった頃に講義をされていた先生です。ーー約40年前に3回生だった頃の〝一般相対論〟(黒い電話帳GRAVITYがテキスト)は最も面白い講義でしたが、今回の講演も往時を彷彿とさせるものがありました。当時と変わらず、講演は極めて判りやすく〝相変わらず冴えているなあ!〟と、感銘を受けました。ここにもサロンのカルチャーを感じた次第です。 講演の本題であるシンギュラリティの解説は初心者へのイントロダクションとして大変informativeかつstimulativeでした。

講演後のQ/A及び意見交換では、九州から親子理科実験教室に参加されたという宮岡さんのお母さんの話はとても興味深く、親子理科教室のこれまでに果たしてきたものの意義深さと同時に現在の教育が抱える問題の断面がよく浮き彫りにされていたと思いました。
ありていに言えば、今の中高教育の良いところ(丁寧な指導)と足りないところ(生徒の特性に合わせたフレキシブルな教育の欠如)が対照的にあぶり出されていました。
私にも中高生と接する機会がありますが、彼らはとても発想豊かで色々と教えられる言葉あります。その一方で大学生はますます画一化されてきているように感じるところがあります。15年前くらいに相変化があったような気がします。
大学の研究教育現場では時の政権の指導のもと、様々な局面で〝選択と集中〟が提唱され実践され始めた頃です。
大学生の何が変質したかはなかなか一言では言いがたいところがありますが、比較的順応性が高く(言い方を変えれば従順で)授業に真面目に足繁く通う姿が顕著になったと感じます。
中高受験の延長で “お勉強のできる良い子”が増えたとの印象です。つまり、与えられた問題を解くのがうまいと同時につねに〝正答〟を追い求めているーその一方で問題提起はあまりしない/できない。
AIの時代に急激に転換している世の中で、単に、暗記したことが最も効果的な今の受験勉強で済ます子供は世の中についていけなくなりますが、急激にか変化している中で、単に受験勉強→大学→有名企業に就職(一生そこでは同じ仕事をする)→定年という構図は急激に世の中についていけなくなる時代へと転換しているとき、一番必要なのは「一生勉強する積極性」「いろいろな新しいものに挑戦する好奇心」がないと職を失ってしまう。
そういう時代がもう目の前に来ている。いったいどういう教育システムが生き残っていくのかーーこういう現状は、教育界ではどう受け止められているのか等々。 約3時間の短い時間ではありましたが、この機会に多くの考えるヒントを得ることができたと考えています。

(澤田哲生(東京工業大学教員)

 

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