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続・松田卓也連続講座

テーマ:物理学者からみた脳・腸・健康の本

最近マイクロバイオームという言葉が、健康、食事、栄養などの分野で大きな話題になっています。マイクロバイオームとは人間と共生する微生物のことですが、中でも特に腸内細菌が重要で、人間の健康に対して大きな影響を及ぼすことが分かってきました。様々な慢性疾患、例えば肥満、糖尿病、炎症性腸疾患、脳卒中、心臓病、喘息、アレルギー、慢性痛、老化などの多くの病気は腸がひとつの原因です。さらにうつ病、自閉症、パーキンソン病、アルツハイマー病などの脳の病気も腸に原因があるらしいことがわかってきました。健康な人間であっても、気分ややる気、つまり人間の幸福感は腸が多くを決めていることも分かってきました。

私はそのことに興味を持ち関連する10冊以上の英語の本を読み勉強しました。そして上記の病気の予防、治療には腸の調子を整えることが最重要であることを知りました。本講座では、それらの本の内容を簡単に解説し、どうすれば健康な生活が送れるかに関して、特に食事と栄養の面から話します。アルツハイマー病やパーキンソン病は数十年かけてゆっくりと進行するもので、年を取り病気になってからでは手遅れで、若いときからすでに手を打つ必要があります。そのためにはどのような生活を送ればよいかについての指針を話したいと考えています。各回、一冊の本を取り上げます。

 

トーク:松田卓也(基礎科学研究所副所長・NPO法人あいんしゅたいん副理事長)

日 程:2月15日~11月予定(全10回)

回 数 日 程 各回テーマ
第1回 2月15日(土)  脳腸相関:体内の密かな会話が我々の気分、直感的選択、健康にどのように影響するか?
                                エメラン・マイヤー
第2回 3月28日(土)
↓ 変更
4月25日(土)
 脳の健康つくり:腸内細菌の力が脳を癒やし、保護する デービッド・パールムター
第3回 5月30日(土)  神経新生と食事、ライフスタイル:脳と健康を改善しよう ブラント・コートライト
第4回 未定  腸反応:健康な体が体重、気分、幸福を改善する
             ジャスティン・ソンネンバーク、エリカ・ソンネンバーク
第5回 未定   アルツハイマーの終焉:認知症を防ぎ、治す初めての試み デール・ブレデセン
第6回 未定   食事にまつわる神話:我々の食事の本当の科学 ティム・スペクター
第7回 未定   長生き食:老化を遅らせ、病気と戦い、体重を最適化するためのステム細胞と再生の新しい科学
                                    ヴァルター・ロンゴ
第8回  未定   病気に打ち勝つために食べる:体が自然に良くなる機構の科学 ウイリアム・リー
第9回  未定   全回復:慢性痛と鬱の謎を解く ギャリー・カプラン、ドナ・ビーチ
第10回 未定   微生物負荷:老化と老化に関連した病気の主原因と老化防止法 マイケル・ルストガルテン

※ 開催は月1回を予定しています。日程については、講師の都合等で変更になる場合があります。

時 間:13時30分(13時15分入室開始)~16時

スケジュール
13:30 ~ 15:00 講 演
15:00 ~ 15:10 休 憩
15:10 ~ 15:40 質疑応答
15:40 ~ 16:00 交 流

会 場:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室(〒606-8225 京都府京都市左京区田中門前町103-5)

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アクセスはこちらをご覧ください

定 員:50名

参加料:500円(飲物・お菓子代込) ※ 参加料は当日会場にてお支払いただきます

申 込:参加申込フォームよりお申込みください

共 催:(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター
     ※ ルイ・パストゥール医学研究センターのホームページにも案内を掲載予定

備 考: 参加申込いただいた場合は、当日欠席されないようご協力ください。やむを得ず欠席される場合は、事前にメールないしは電話にて欠席連絡をお願いします(無断欠席された方には、次回以降のご参加をお断りする場合がございます)。
  当日は、コーヒーなどの飲み物と、ちょっとしたお菓子をお出しする予定です。セルフサービスとなっておりますので、片付けなどのご協力をお願いします。

 講演概要
 
第1回 脳腸相関:体内の密かな会話が我々の気分、直感的選択、健康にどのように影響するか? エメラン・マイヤー
The Mind-Gut Connection: How the Hidden Conversation Within Our Bodies Impacts Our Mood, Gut Choices, and Our Overall Health, by Emeran Mayer

腸にはたくさんの神経細胞があり消化活動を司っている。その意味で腸は第二の脳と言われている。脳は交感神経系を通じて腸を支配している。ストレスを感じると食欲が落ちるのはこのせいだ。しかし逆に腸は脳を支配している。人の気分とか直感的意思決定に腸は大きな影響を及ぼしている。このように脳と腸は密接に関わり合っている。この関係を脳腸相関とよぶ。腸には、人体の細胞数と同程度の数の腸内細菌がいる。腸の活動はこの腸内細菌で大きく規定されている。その意味で脳腸相関は脳腸・マイクロバイオーム相関ともいう。腸を良くすることは脳を良くすることであり、健康を促進することである。そのためには植物中心食にすること、発酵食品を食べ、糖分と加工食品を制限すること、動物性脂肪を避けるなど食事を改善する必要がある。伝統的な日本食は実はかなり理想的な食事なのであるが食事の欧風化が慢性病をもたらしている。食事を改善するだけで、肥満、さまざまな慢性疾患、認知症などを予防することができるだけでなく、気分が明るくなり幸福になる。
第2回 脳の健康つくり:腸内細菌の力が脳を癒やし、保護する デービッド・パールムター
Brain Maker: The Power of Gut Microbes to Heal and Protect Your Brain-for Life, by David Perlmutter

近年、子供の自閉症や老人の認知症が急速に増えている。最近の研究の進展で、これらの病気は人間の腸に住む腸内細菌が大きな影響を及ぼしていることが明らかになって来た。腸内細菌は神経系を含む人間の健康に大きな影響を及ぼしている。本書では自閉症の子供を浣腸と糞便移植で治した劇的な例から話が始まる。子供の腸内細菌は正常分娩か帝王切開か、母乳か人工栄養かで決まり、大人の腸内細菌は食べるもので決まる。腸内細菌のバランスが崩れると肥満や慢性疾患、さまざまな脳疾患に罹患しやすくなる。腸を整えることが健康と脳にとって決定的に重要である。ここでは具体的な食事法についても述べる。
第3回 神経新生と食事、ライフスタイル: 脳と健康を改善しよう ブラント・コートライト
Neurogenesis Diet and Lifestyle: Upgrade Your Brain, Upgrade Your Health, by Brant Cortright

これまで神経細胞の数は20歳台で最大になり、それ以降は減少するだけだといわれていた。しかし最近の研究では、神経細胞は死ぬまで増える可能性を秘めていることが分かった。これを神経新生とよぶ。神経新生は特に海馬と呼ばれる短期記憶に関連した脳の部分でみられる。神経新生の大きさは我々の人生全体に重大な影響を及ぼす。神経新生の割合が小さいと認知障害、記憶減退、不安とストレス、鬱、免疫力減退を経験する。逆に神経新生の割合が大きいと、認知能力向上、学習の容易さ、強靭な感情、不安・ストレス・鬱の減少、免疫力の強化が得られる。本書では神経新生の具体的な方法を食事、運動、学習、人間関係、瞑想などの観点から述べる。
第4回 腸反応:健康な体が体重、気分、幸福を改善する ジャスティン・ソンネンバーク、エリカ・ソンネンバーク
Gut Reactions: How Healthy Insides Can Improve Your Weight, Mood and Well Being, by Justin and Erica Sonnenburg

我々は腸という重要な器官を長い間無視してきた。その結果、食物アレルギーや潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患は当然のこととして、がん、喘息、糖尿病などの慢性疾患、生活習慣病が近年、急速に増大している。我々の腸内には1200種類ほどの腸内細菌が住んでいるが、昔はもっといた。なぜ減少したのだろう。腸内細菌の多様性とバランスは健康に重大な影響を及ぼす。どうしたら健康な腸内細菌を復活することができるかを具体的な食事のレシピも交えて解説する。
第5回 アルツハイマーの終焉:認知症を防ぎ、治す初めての試み デール・ブレデセン
The End of Alzheimer's: The First Program to Prevent and Reverse Cognitive Decline, by Dale Bredesen

ガンは治るがアルツハイマー病は治らない病気であるといわれてきたし、現在でも多くの医者や研究者はそう信じている。しかしここに画期的な研究が現れた。アルツハイマー病は予防できるだけでなく、治せるのだという。著者のデール・ブレデセンはアルツハイマー病とは単一の病気ではなく、すくなくとも3種類に分類できるという。さらに詳しく見ると36の原因があるという。だからアルツハイマー病は1種類の薬で治せるようなものではなく、生活習慣を改めることから始めなければならないという。実際、まず10人の患者で実験して9人が治った。さらにその後、100人で実験した。現在ではもっと多くの被験者で治験が行われている。本書ではアルツハイマー病の予防、および治療に関する具体的な手法が述べられている。
第6回 食事にまつわる神話:我々の食事の本当の科学 ティム・スペクター
The Diet Myth: The Real Science Behind What We Eat, by Tim Spector

よい食事法とされるものには流行がある。例えば一昔前は、脂肪は悪いものとされ、低脂肪が健康に良いとされてきた。しかし現在では、むしろ脂肪をとれという食事法が幅を利かせている。よい食事法とされるものには流行があり、それは科学というよりは、むしろ一種の信仰みたいな側面がある。つまり食事法には神話が多いのである。欧米の健康上の大きな問題に肥満がある。従来は食べる量を減らして運動をする減量法が推奨されてきた。しかしことはそんなに単純でないことが分かってきた。腸内細菌の存在である。その人の腸内にある腸内細菌の種類や多様性により、人は太るか痩せるかが決まるという側面がある。本書で著者は脂肪、カロリー、ビタミン、栄養素に関する誤概念について解説する。
第7回 長生き食:老化を遅らせ、病気と戦い、体重を最適化するためのステム細胞と再生の新しい科学 ヴァルター・ロンゴ
The Longevity Diet: Discover the New Science Behind Stem Cell Activation and Regeneration to Slow Aging, Fight Disease, and Optimize Weight, by Valter Longo

何を食べるか、どう食べるかにより、どれだけ長生きするかが決まる。老化、栄養、病気についての著者の25年に及ぶ研究は長生きをするための食事を明らかにした。著者が推奨する食事は低タンパク質、低糖分、健康な脂肪分を主体とする魚を含む植物中心食である。もう一つ著者が推奨するのは年に数度の短期間断食である。著者はイースト菌、ハエ、ネズミの研究から断食は体の組織を再生させ、長生きにつながることを発見した。その理論に基づき、具体的な断食法が述べられている。 
第8回 病気に打ち勝つために食べる:体が自然に良くなる機構の科学 ウイリアム・リー
Eat to Beat Disease: The New Science of How Your Body Can Heal Itself, by William W Li

ガン、心臓病、脳卒中、糖尿病、肥満などの生活習慣病が急速に増えている。最近の科学研究によれば、これらの病気を予防し治す最適な薬は食事である。著者によれば人間の体にはこれらの病気に対する5つの防護機構が備わっているという。血管新生、細胞再生、マイクロバイオーム、DNA防護、免疫である。これらは食事と密接に関係している。著者は長生きするための200種以上の食物による、5x5x5法を提案する。つまり健康に良い食物を5種類、一日に5回、上記の5種類の防護機構を考慮して選んで食べる方法である。具体的な食品とレシピも紹介される。
第9回 全回復:慢性痛と鬱の謎を解く ギャリー・カプラン、ドナ・ビーチ
Total Recovery: Solving the Mystery of Chronic Pain and Depression, by Gary Kaplan and Donna Beech

多くの人が慢性疼痛に悩んでいるが、その原因は多くの医者には謎である。あなたが原因のよく分からない痛みで医者に相談したとしても、さまざまな検査をした結果、何ら異常なしとして追い返されるケースがほとんどだ。それは痛みについて現代西欧医学が間違った考えを持っているからだ。著者は最新の研究と自身の治療実績から慢性疼痛と感情的な痛みは密接に関連していることを発見した。痛みは人生を通じてのトラウマ、けが、感染、感情的打撃の集積の結果である。だから現状の治療法は役に立たない。痛みの症状だけではなく、その根本原因に目を向けることにより、慢性疼痛からの全回復の道を探る。
第10回 微生物負荷:老化と老化に関連した病気の主原因と老化防止法 マイケル・ルストガルテン
Microbial Burden: A Major Cause of Aging and Age-Related Disease and What We Can Do To Fight Back! by Michael Lustgarten

百年以上昔の主な死因は感染症であった。しかしここ百年の間に感染症による死者の数は激減した。それでは我々は細菌やウイルスのような微生物との戦いに勝利したか? まったくそんなことはない。微生物の数は圧倒的であり、我々の免疫系は微生物の侵入を完全には阻止できない。体内に侵入した微生物は、急性の感染症だけではなく、循環器病、ガン、脳卒中、アルツハイマー病、糖尿病などの慢性病を引き起こす。その理由は、微生物はインシュリン抵抗、慢性炎症、テロメアの短縮、酸化ストレスを通じてこれらの病気の原因となるからだ。著者は老化と老化に伴う疾患は微生物が原因であるという仮説を立て、それを論証する。どうすれば老化とそれに伴う疾患に打ち勝てるか? それは微生物が体内に侵入する口を塞ぐことである。侵入口は腸、皮膚、口腔である。本書ではその侵入口を塞ぐ方法を論じる。著者はそのために自分自身の体を使って人体実験をしている。
   
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