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サロン・ド・科学の眼差し

”科学を語る場” サロンへのお誘い


科学に特別興味を持っておられる方々は、インターネット上に発信される情報や大学や研究所、あるいは学会が催す講演会などから、沢山のことを学んでおられると思います。

確かに、インターネット上の情報源はたくさんあって、私たち科学者自身の専門外のことを知りたいときは使っています。
しかしながら、インターネット上の情報には間違ったものもあり、「これは本当なのか?」とか「ごまかされていないかな?」「基礎知識がないのでわからないな」と感じることもたくさんあると思います。そういう疑問がそのままになっていると、だんだん本当のことが分からなくなってしまいます。
他方、講演会に参加したような場合、目の前で直接話を聞くことができるのと、講師にある程度の信頼性が認められる場合が多いので、その意味ではより正確な情報を入手できる可能性が高まるのですが、大勢の聴衆の前で一方的に話が進み、途中で疑問が出てきても納得できるところまで質問することは、なかなかできません。

そこで、これを解決する手段を模索していた当研究所では、2013年に「サロン・ド・科学の散歩」(JST科学コミュニケーション機関支援採択企画)という企画を実施し、翌年の2014年からは「サロン・ド・科学の探索」と名を変えて、狭い分野にとらわれない様々な話題を取り上げながら、その道のプロが解説し、たっぷり時間をとって科学好きのみなさんといっしょに心ゆくまで議論する場を提供してきました。

2018年度に入り、2月以降は諸事情からなかなか開催することができずにいたところ、会員をはじめとする多くの方から「いつ始まるのですか?」「もう再開しないのですか?」といったお問い合わせをたくさんただいておりました。

これを受け、2019年度は新たに名称を「サロン・ド・科学の眼差し」に変更し、いよいよ再開することとなりました。また皆さまとお会いし、白熱した議論ができるのを楽しみにしています。ふるってご参加ください。


 テーマ

計画通りにテーマを進めるというより、参加者から「こういうテーマでやってほしい」「この問題は掘り下げた議論がしたい」という希望を出してもらい決めていくという方法も採りたいと思います。
「こういう話は他で聞けないので、ここで議論してほしい」と持ち込んだり、市民の皆さんから、日ごろ疑問に思っていること、ぜひ議論したいこと、解説を聞きたいことがあれば遠慮なく出してください。「日常の現象の中に面白いことがたくさんある」という寺田寅彦やロゲルギストの精神を目指しています。
率直に疑問を投げかけ、自由に気兼ねなく議論できる場にしましょう。当法人にはその道のプロもたくさんいますので、その方々に話題を提供してもらいますが、時には市民が自ら調べてきたことの紹介、大学院生や学生さんたちにも話題を提供してもらえることも期待します。

 実施方針

話題提供者が一方的に話をするのではなく、途中で質問やコメントもできる方法にします。
当法人では「学問に上下はないと考えていますので、年齢や身分を超えて議論するやり方をとっています。これは、湯川秀樹先生の京大理学部物理教室の伝統でもあります。私たちは、湯川秀樹先生に学生が反論するのも見てきました。このとき湯川先生は、それこそカンカンになって(つまり真剣に)議論されていました。また、参加者があまりに専門的な話をすると、湯川先生は「ようわからん」といって、根掘り葉掘り質問されたものです。
ここには、物理の専門家だけでなく、いろいろな分野の方々が個集まっています。専門に偏らず、生物学・医学・工学分野、企業研究者などいろいろな分野の人が交流できる場です。
素朴な質問も愚問もOKです。この率直で楽しい雰囲気をおおいに楽しもうではありませんか。 これは、科学者自身にとっても、日常の研究に集中していて、ともすれば視野が狭まることもあるので、きっと視野が開け研究の発展にとっても分野横断的な視野を取り戻す機会となると思います。
また市民の中からは、さらに探索的な思考を養い、科学的知識を科学者と共有する中間が増えることを期待しています。

 参 加

中学生以上の方ならどなたでも参加できます。学校の先生、大学の学生や大学院生、教員、そしてお父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん、興味のある方はぜひ参加してみてください。

 主 催

基礎科学研究所(NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん 附置機関)

 問い合わせ

NPO法人あいんしゅたいん事務局 TEL:075-762-1522 E-mail:secretariat [at] jein.jp


【講座案内】

2019年度

講 座 名 テ ー マ
 本川達雄講演会 ゾウの時間・ネズミの時間・私たちの時間
  ~ ネズミもゾウも心臓は15億回打って止まる・ハツカネズミの心臓はドキンに0.1秒、ゾウは3秒 ~
 松田卓也連続講座(全6回)
~ 迫り来るシンギュラリティと人類社会の未来 ~
 
リニューアルしたサロン、「サロン・ド・科学の眼差し」。
2019年度最初のサロンは、基礎科学研究所副所長で、NPO法人あいんしゅたいん副理事長でもある松田卓也氏にお願いしようということになりました。
メディアへの露出も多く、多方面からの講演依頼も殺到している、今人気絶好調の松田さん。4月からは本サロンで毎月直接にお話が聞けるのは、とても楽しみです。

2020年度

講 座 名 テ ー マ
続・松田卓也連続講座
(全10回)
物理学者からみた脳・腸・健康の本
 
最近マイクロバイオームという言葉が、健康、食事、栄養などの分野で大きな話題になっています。マイクロバイオームとは人間と共生する微生物のことですが、中でも特に腸内細菌が重要で、人間の健康に対して大きな影響を及ぼすことが分かってきました。様々な慢性疾患、例えば肥満、糖尿病、炎症性腸疾患、脳卒中、心臓病、喘息、アレルギー、慢性痛、老化などの多くの病気は腸がひとつの原因です。さらにうつ病、自閉症、パーキンソン病、アルツハイマー病などの脳の病気も腸に原因があるらしいことがわかってきました。健康な人間であっても、気分ややる気、つまり人間の幸福感は腸が多くを決めていることも分かってきました。

私はそのことに興味を持ち関連する10冊以上の英語の本を読み勉強しました。そして上記の病気の予防、治療には腸の調子を整えることが最重要であることを知りました。本講座では、それらの本の内容を簡単に解説し、どうすれば健康な生活が送れるかに関して、特に食事と栄養の面から話します。アルツハイマー病やパーキンソン病は数十年かけてゆっくりと進行するもので、年を取り病気になってからでは手遅れで、若いときからすでに手を打つ必要があります。そのためにはどのような生活を送ればよいかについての指針を話したいと考えています。各回、一冊の本を取り上げます。

2021年度

講 座 名 概 要
on-line cafe 湯川博士の贈り物
(全5回)
2020年は、コロナウイルス感染症の拡大により、予定していたサロン・ド・科学の眼差しの講座(続・松田卓也連続講座)を延期・中止とせざるを得なくなりました。
 
そこで、コロナ禍が終息しない現状を踏まえ、Web会議ツールであるZoomを使って、オンライン経由でご参加いただける講座を開催いたします。
この講座は、誰でも気楽に参加できて、ざっくばらんに意見交換できる場したいとの思いを込めて、冒頭に「cafe」との名称を付与することにしました。オンライン経由ではありますが、講演者の一方的なトークで終わるのではなく、自由に質問し、意見が交換できるようにして、皆さんが楽めるcafeとの名にふさわしい場にしたいと考えています。
 
2021年のスタートは、「湯川博士の贈り物」というテーマで、NPO法人あいんしゅたいん名誉会長である佐藤文隆氏をスピーカーとして、湯川秀樹博士にまつわるお話しをしていただきます。
佐藤氏は、最近行われた「玉城嘉十郎教授記念公開学術講演会 50周年記念Zoom講演会」で湯川博士の話をされ、そのために新たに多くの資料を収集されました。まだまだたくさん話すことがあるとのことですので、この機会にご披露いただきます。
 
湯川研究所長(基礎物理学研究所所長)を長らく経験された佐藤氏は、湯川博士との思い出をたくさん持っておられます。湯川博士のご自宅に挨拶に行かれたときのエピソードなど、他では聞けないお話を盛りだくさん聞かせていただけるでしょう!
科学者としての深い思索や何事も深く追求してやまない湯川精神の神髄を、市民・科学者問わずみなさんで共有し、同時に現代の問題につなげつつ、共に考える機会にできればと思います。
 
湯川博士の贈り物をしっかり受け取り、次の世代に受け渡していきたいと願っています。

2022年度

講 座 名 概 要
on-line cafe 続・湯川博士の贈り物
(全5回)
2021年2月より5回のシリーズとして開催したサロン・ド・科学の眼差しの講座、on-line cafe “湯川博士の贈り物”は大変好評いただきましたが、もっと湯川先生にまつわるお話を聞きたいという皆さまの声にお応えし、湯川邸が京都大学の所有になったことを記念して、2022年1月より続編の講座を開講します。
 
2021年9月15日、旧湯川邸が京都大学所有となったことという新聞発表をご存知の方も多いかと思います。
実は、この講座を企画したきっかけは、これまで湯川邸のいく末を案じ湯川を慕う科学者や市民の長い間の思いと物理学会京都支部の皆さんの助けが当法人によって繋がり、湯川邸の保存と活用への運動となったのですが、その中で、湯川邸に所蔵されている膨大な残された遺品がたくさんあることがわかり、多くの科学者や市民の関心が集まって、遺品の中に潜んでいる湯川博士の思いや教えをみんなで知りたいという声が高まりました。
 
そこで湯川邸が京都大学の所有になったことをきっかけに、湯川邸が「湯川精神」を子どもたちに引き継いでもらい、大人も一緒に振り返りたいという遺族の思い、京大構成員の夢、市民の敬慕などが実を結ぶ場になることを願って、2021年2月より当法人主催でon-line cafe 湯川博士の贈り物を開講しました。
 
全5回のon-line cafe 湯川博士の贈り物は8月に終了しましたが、その後も参加者からも引き続きの湯川博士のお話を聞きたいと願う声が多く寄せられた結果、今回「続・湯川博士の贈り物」として続編を開講する運びとなりました。
 
湯川邸に残されている遺品の中には、湯川博士の研究資料だけでは計り知れない新しい側面を浮き彫りにする多くの遺品が見つかりました。湯川の幅広い文化人との対話や交換書簡、あるいは読書歴に伴うメモなどは、純粋な素粒子研究者(物理学者)としての湯川の側面だけではなく、幅広い文化人と交流し、哲学、法学、など多方面にわたって幅広い分野との交流を通じて、様々なテーマについて議論し研究会を開いたその軌跡が見えてきました。
20世紀が個別科学の深化の時代だとすれば、21世紀はSDGsと連動してグローバルな地球を統括する課題に直面している地球人の問題に迫る科学が求められています。
しかし、現実には従来の細分化された学会組織に安住した環境からなかなか抜け出せていません。湯川博士のあくなき探求心は、新しい21世紀型の科学者の在り方を先取りしていたのでともいえます。そして多くの市民に子どもたちに残すものがたくさんあることを痛感しました。
 
こうした中で、この機会に「続・湯川博士の贈り物」を通じて、市民と交流し科学者同士の交流を深めることは大変意義深いと思います。今日そこはかと漂う宇宙的規模の視座を湯川博士から学び受け継ぐ機会として活用できればと思っています。
 
講 座 名 概 要
on-line cafe 湯川博士の贈り物 3
(4回+特別企画)
サロン・ド・科学の眼差しの講座として、2021年2月よりon-line cafe “湯川博士の贈り物”、続けて2022年1月より第2弾としてon-line cafe “続・湯川博士の贈り物”を通算10回開催してきました。
 
ちょうど1年前、湯川邸が京都大学の所有になったことが発表され、現在湯川邸の新しいオープンに向けて改修計画が進んでおります。
新しい湯川邸が市民と科学者の交流の場となるようにとの願いを込めて始めたこれまでのシリーズに続けて、2022年9月より新シリーズとして「on-line cafe 湯川博士の贈り物 3」を始めることにしました。
現在、湯川旧宅市民の会の皆さんのご努力のおかげで湯川邸に遺されたたくさんの遺品の整理が進んでいます。純粋な科学に関するものだけでなく、文化人湯川博士の「文化や社会や平和問題」に思いをつづった遺品もたくさん出てきております。
これら多くの遺品に宿る湯川精神を引き継ぎ、共有したいという思いを込めて、これからオープンの日まで日本物理学会京都支部とあいんしゅたいん共催で湯川博士の贈り物を続けることになりました。
 
さらに、この企画の一部として、湯川博士のノーベル賞受賞を記念して設立された京都大学基礎物理学研究所が、共催という形で年に1回湯川博士の誕生日にあたる1月に特別企画を用意いただくことになりました。

2023年度

講 座 名 概 要
on-line cafe 湯川博士の贈り物 5
(全5回)
このシリーズもすでに通算20回を終えました。来年の秋には旧湯川邸の改築が完成し、いよいよ湯川記念館がオープンします。ここで思索を重ねてこられた湯川博士の雰囲気が漂う記念館になるでしょう。

湯川博士は、分野を横断して広く学問をされ、また社会と積極的に関わられました。この博士の精神を、未来を担う子供や若者が受け継いでいければという願いを込めて、本シリーズ「湯川博士の贈り物」が始まりました。
シリーズ4(on-line cafe 湯川博士の贈り物 4)でも紹介したように、湯川博士はご自分の専門の素粒子論から物理学の領域を超えて、生き物の謎や人間の特質である意識と脳の仕組み、そして言葉の起源など、幅広い視野で実に多くの思索の跡を残されています。
さらには、原子核研究者として、社会に衝撃を与えた原爆の被害を深く受け止め、科学と社会の在り方のみならず戦争の起源にも深く立ち入って、一生を核兵器廃絶にささげられました。

博士にまつわる話題はたくさんあり、シリーズ4のあとは世界連邦の話にしようかと考えていたところ、ChatGPT 4が登場して世界を驚愕させ、大きな転機を迎えた人類の未来の話が浮上してきました。
ウクライナ紛争の勃発によって、戦争の問題―戦争の起源から、どうすれば戦争のない世界を実現できるか―も緊急ですが、人類の未来を変えるかもしれない人工知能の飛躍的な発展を取り上げるべきではということになりました。

湯川博士の「やり残した問題」が量子コンピュータであり、関連して人工知能・脳の構造の問題があります。実際、湯川博士の「脳とコンピュータ」の比較検討の思いはさまざまな人に引き継がれています。特に素粒子論研究者の梅沢博臣博士は、その分野で大きな影響を与えた方です。
こうした歴史もひも解いてみたいとは思いますが、いま世間で沸き起こっているのは、「ChatGPTは人類社会にプラスとなるか、マイナスとなるか」という議論です。
しかしその基本になる、湯川博士の疑問に食い込む議論があまり見られません。

そこで私たちは、基本に戻って「ことば」の持つ意味から始めたシリーズを計画しました。この機会に、言葉を通してコミュニケーションし、考え行動するヒトの特質について、みなさんと様々な方向から追求し議論したいと思っています。

 

講 座 名 概 要
on-line cafe 湯川博士の贈り物 4
(全5回)
湯川博士は「「世界」創刊号(1946年1月)に次のような文章を書かれています。

「真の社会教育は学校教育のように、先生は先生、生徒は生徒といつも地位の定まっている性質のものではなかろうと思う。我々は社会の一員として、何かの方面で詳しい知識と経験を持つと同時に、その他の方面では素人であることを免れない。従ってある特定の問題に対する先生は、他の問題に対しては生徒とならねばならぬことは自明の理である。各人が独りよがりの指導者となるよりも、かえって国民全体が互いに教えつつ、教えられつつ良識と教養の水準を高めて行くことが社会教育の理想であろう。その場合各人が常に自己を教育する熱意を失わぬことがこの目的達成のために最も大切な条件となるであろう。」(旧書体は現代書体に書き換えました)

実際、湯川博士は、自分も科学についてはある程度専門家であっても、他の分野では教えてもらわねばならないとおっしゃっているのです。この謙虚な姿勢は、湯川研究室での中でも同じで、若い人であろうとベテランであろうと、老いも若きも関係なく、いつも同じ姿勢で質問されていました。同じ方向を向いている科学者としての姿勢を崩されなかったのです。

今の私たちはインターネット上の情報源はたくさんある時代に生きています。誰もが、知りたいことをインターネット上で検索して、知識を得ることができます。こんな中で、大人も子供も、知ろうと思えばたくさんの情報を得られる時代です。ただ、問題は、インターネット上の情報には間違ったものもあり、「これは本当なのか?」「ごまかされていないかな?」と感じることもたくさんあると思います。そういう疑問がそのままになっていると、だんだん本当のことが分からなくなってしまいます。Zoomの講演会もたくさんあり、それに参加することが多くなってきました。でも、こうした講演会でよく経験することですが、結局お話を聞くだけで、根掘り葉掘りわからないことを聞ける機会はそうざらにありません。講師が一方的に話を進め、途中で疑問が出てきても納得できるところまで質問することは、なかなかできません。

このシリーズでは、こうしたもやもやをできるだけ解決する手段を模索してきました。そのため、「湯川博士の贈り物」では講演時間と同じぐらいの時間を、質問やご意見を交換できるように努力をしてきました。
今後計画通りにテーマを進めるというより、参加者から「こういうテーマでやってほしい」「この問題は掘り下げた議論がしたい」という希望を出してもらい決めていけるようにと願っています。「日常の現象の中に面白いことがたくさんある」という寺田寅彦やロゲルギストの精神を目指しています。これが湯川博士の残された「湯川精神」です。「こういう話は他で聞けないので、ここで議論してほしい」と持ち込んだり、市民の皆さんから、日ごろ疑問に思っていること、ぜひ議論したいこと、解説を聞きたいことがあれば遠慮なく申し出てください。

皆様のご希望に合うようにやり方を工夫しつつ、市民と科学者、そして子供たちにも親しめる集いの場として、湯川邸オープンの日を迎えるように、そして、オープン後は湯川邸での定着したイベントとなるようにと期待しています。

   
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