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CIA The World Factbookに見る、世界に於ける日本の位置

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CIAというと悪の巣窟、アメリカ帝国主義の先兵みたいな印象がある。私もこのホームページで連載しているWeb小説「悪の秘密結社猫の爪による世界征服計画」では、そのように描いている。
しかし、これはステレオタイプな見方に過ぎないのかも知れない。CIAのホームページを覗くと、中央情報局の名に恥じず、さまざまな情報が得られる。The World Factbookがそれである。
The World Factbookは世界の267の国、地域についての歴史、人々、政府、経済、地理、通信、交通、軍事などについての情報が記されている。そのなかでも興味深いのは、各国の比較である。ここでは私が興味を持った項目について、各国比較を行う。あらゆる国についての比較をするのではなく、トップ10とかワースト10、あるいは日本を含む主要国についてのみのデータを抜き出す。

1. 人々

1.1 人口

人口は言うまでもなく、重要な指標である。ここではトップ10を上げる。単位は100万人である。日本は人口が多いと思っていたが、世界10位なのだ。

1.  中国 1,336
2.  インド 1.189
3.  アメリカ 313
4.  インドネシア 245
5.  ブラジル 203
6.  パキスタン 187
7.  バングラデシュ 158
8.  ナイジェリア 155
9.  ロシア 138
10.  日本 126

1.2 人口増加率

人口増加率のトップ10はほとんどがアフリカ諸国である。ジンバブエなどは経済が最低で、人口増加率が最大だから、非常に発展が困難な国である。この国は昔、ローデシアといって、白人による少数支配の国として悪名高かった。黒人の解放運動は、一時、正義の代名詞のように言われていた。しかしいざ黒人が国を支配するようになると、期待した国作りはできなかったようだ。
興味あるのは日本であるが、日本の人口が減少していることは我々はよく知っている。しかし日本より人口が減少している代表的な国としてロシアがある。その他、グルジア、セルビア、ラトビア、ウクライナ、エストニア、モンテネグロ、ブルガリアなど旧ソ連圏、東欧圏の国が人口減少している。この原因は多分日本とは違うだろう。経済の困難さによるのではないだろうか。あるいは共産体制から資本主義体制に変わり、社会保障が無くなったか少なくなったことに原因があるのだろうか。南アフリカはアフリカの国なのに人口が減少しているのはHIVが原因である。南アフリカはHIVによる死亡率が世界1位である。

1.  ジンバブエ 4.31%
2.  ニジェール 3.64%
3.  ウガンダ 3.58%
177.  韓国 0.23%
189.  オーストリア 0.03%
214.  日本 -0.28%
219.  南アフリカ -0.38%
222.  ロシア -0.47%
227.  ブルガリア -0.78%

1.3 平均寿命

モナコ、マカオ、サンマリノ、アンドラといった小国を除けば、日本の平均寿命が世界一である。このことは日本の医療制度が、多分世界一良いことを意味しているのであろう。ワースト10はアフガニスタンをのぞけばすべてアフリカ諸国である。アフリカもアフガニスタンも、その原因は食料、医療、衛生などの不足によることは明らかであろう。主要国で目を引くのがロシアの平均寿命の短さであろう。これはソ連時代より遙かに短くなっている。自殺が多いことが原因の一つと言われている。

1.  モナコ 89.7年
5.  日本 82.2年
7.  シンガポール 82.1年
28.  英国 80.0年
41.  韓国 79.0年
50.  アメリカ 78.3年
95.  中国 74.6年
161.  ロシア 66.2年
220.  アフガニスタン 45.0年
221.  アンゴラ 38.7年

1.4 教育費のGDP比

この指標に関しては、一部ではよく知られていることなのだが、日本の教育費のGDP比は先進国の中で最低なのだ。非常に恥ずかしい話だ。政府も国民もこれで良しとしているのであろうか。アフリカ諸国と小規模島嶼諸国が比較的上位に来るのだが、そもそも分母になるGDPが低いせいかもしれない。

1.  東チモール 13.8%
2.  キューバ 13.6%
11.  デンマーク 7.8%
18.  ノルウエー 6.8%
43.  アメリカ 5.5%
44.  英国 5.5%
95.  韓国 4.2%
107.  ロシア 3.9%
117.  日本 3.5%
163.  赤道ギニア 0.6%

2. 経済

2.1 GDP

Gross Domestic Product(GDP)とは、一国が1年あたり生産するものとサービスの総額である。単位は10億ドルである。いわば国力の指標である。ここで注意する点は、このドルは購買力平価(Purchasing power parity)であることだ。これは普通のドルの交換率とは同じではない。中国のGDPが日本の倍以上あるのは、中国の物価が日本より安いため、同じ1ドルでもたくさんのものがかえるので、それを補正したものが購買力平価であるからだ。別の統計では、日本はインドに抜かれて、EUを除いたとしても4位である。日本は日本人が意識している以上に凋落しているのではないだろうか。その点は別に議論したい。

1.  EU 14,820
2.  アメリカ 14,660
3.  中国 10,090
4.  日本 4,310
5.  インド 4,060
6.  ドイツ 2,940
7.  ロシア 2,223
8.  英国 2,173
9.  ブラジル 2,171
10.  フランス 2,145

2.2 国民一人あたりGDP

これはGDPを人口で割ったもので、豊かさの指標である。やはり購買力平価で計算してある。これは重要な指標なので、かなり詳しく記した。上位には石油産出国と小国が並ぶ。日本は情けないことにこのデータでは38位である。アジアの国ではシンガポール、香港、台湾に抜かれているのである。国民一人あたりGDPはIMFや世界銀行も出していて、値や順位は微妙に異なる。しかし日本が上位につけていないことは、いずれのデータを取っても事実である。
慰めはドイツ、英国、フランス、イタリアといったヨーロッパの大国と肩を並べていることだろうか。この指標の低さは日本が90年代の初頭から、一貫して凋落してきた結果なのである。

1.  カタール 179,000$
3.  ルクセンブルク 82,600$
5.  シンガポール 62,900$
7.  ノルウエー 54,600$
9.  アラブ首長国連邦 49,600$
10.  クエート 48,900$
11.  アメリカ 47,200$
13.  香港 45,900$
17.  スイス 42,600$
18.  オーストラリア 41,000$
19.  オーストリア 40,400$
20.  オランダ 40,300$
22.  カナダ 39,400$
23.  スエーデン 39,100$
28.  デンマーク 36,600$
32.  ドイツ 35,700$
37.  英国 34,800$
38.  日本 34,000$
39.  フランス 33,100$
43.  イタリア 30,500$
45.  韓国 30,000$
47.  ギリシャ 29,600$
48.  スペイン 29,400$
71.  ロシア 15,900$
125.  中国 7,600$
194.  北朝鮮 1,800$
196.  バングラデシュ 1,700$
197.  ケニア 1,600$
202.  ビルマ 1,400$
206.  ネパール 1,200$
211.  エチオピア 1,000$
224.  ジンバブエ 500$
227.  ブルンジ 300$

2.3 政府の借金のGDP比

この数値について、日本がジンバブエについで大きいことは驚くに値しない。これは政府の借金なのだが、注意すべき事は、国内から借りたか、外国から借りたかで大きな差があることだ。だからこの数値の大小だけで、国の困難度を言うことはできない。ギリシャ、アイスランド、イタリア、アイルランド、ポルトガルと言った経済に問題を抱えている国は、この数値が大きい。アメリカに関してはこの数値は比較的低いのだが、その借金が多くは外国からのものであることが問題なのだ。この数値が最低であるリビアが崩壊したのだから皮肉なものだ。

1.  ジンバブエ 234.1
2.  日本 197.5
4.  ギリシャ 142.8
7.  アイスランド 126.1
8.  イタリア 119.1
9.  シンガポール 105.8
11.  ベルギー 100.9
15.  カナダ 84.0
16.  ドイツ 83.2
17.  フランス 82.4
24.  英国 76.3
32.  アメリカ 62.3
49.  インド 51.9
124.  ロシア 9.0
133.  リビア 3.3

2.4 外国に対する借金

単位は10億ドルである。先に述べたようにアメリカの借金が多い。日本も外国に借金があるのだが、それ以上の債権があるので、この点は問題ない。むしろヨーロッパ諸国の借金が問題である。

1.  アメリカ 13,980
2.  EU 13,720
3.  英国 8,981
4.  ドイツ 4,713
5.  フランス 4,698
6.  日本 2,441
7.  アイルランド 2.253
8.  ノルウエー 2,232
9.  イタリア 2,223
10.  スペイン 2,166

2.5 外貨と金保有高

よく知られているように中国と日本はアメリカの債権を大量に買っている。つまりアメリカに金を貸しているのである。この順位は国の余裕度と言うことができよう。

1.  中国 2,876
2.  日本 1,063
3.  ロシア 497
4.  サウジアラビア 445
5.  台湾 387
6.  韓国 291
7.  ブラジル 288
8.  インド 287

2.6 資金保有額(Stock of money)

それで結局、いくらお金があるのよと聞かれたらこの数値になる。日本はEUと並んでトップである。なんでビルマがここに入ってくるのか分からない。単位は10億ドルである。

1.  EU 5,542
2.  日本 5,417
3.  中国 2,434
4.  アメリカ 1,436
5.  ビルマ 622
6.  カナダ 356
7.  インド 278
8.  スイス 275
9.  ロシア 252
10.  オーストラリア 248

2.7 輸出

これも10億ドル単位である。ドイツががんばっているが、これは多くがEUの域内である。中国と日本は相互の貿易と、アメリカとの貿易が多い。

1.  EU 1,952
2.  中国 1,581
3.  ドイツ 1,303
4.  アメリカ 1,289
5.  日本 765
6.  フランス 517
7.  オランダ 485
8.  韓国 464

2.8 輸入

アメリカは輸出の割には輸入が多すぎることが見て取れる。

1.  アメリカ 1,936
2.  EU 1,690
3.  中国 1,327
4.  ドイツ 1,099
5.  日本 639
6.  フランス 590
7.  英国 561
8.  イタリア 473

2.9 貿易黒字

輸出と輸入の差が貿易黒字である。中国、ドイツ、日本が三傑である。ワースト8位も示した。アメリカはダントツに赤字である。フランス、英国、スペイン、イタリアといったヨーロッパの大国の赤字が大きい。

1.  中国 305
2.  ドイツ 188
3.  日本 166
4.  ロシア 71
5.  スイス 70
6.  サウジアラビア 70
7.  オランダ 60
8.  ノルウエー 53
189.  トルコ -48
190.  カナダ -48
191.  インド -51
192.  フランス -54
193.  英国 -56
194.  スペイン -63
195.  イタリア -67
196.  アメリカ -470

2.10 電力消費

単位は10億KWHである。日本とのGDP比を考慮すると、中国の電力消費が大きい。つまり不効率と言うことだ。

<
1.  アメリカ 3,873
2.  中国 3,438
3.  EU 2,901
4.  日本 858
5.  ロシア 857
6.  インド 568
7.  ドイツ 547
8.  カナダ 536

3. 軍事費のGDP比

この値が先進国の中で低いことは誇って良いことである。中曽根内閣の時に、アメリカに言われてこの値を1%にしようとしたが、いつのまにか0.8%に戻ってしまった。問題の中国は、やはり軍拡していることがこの数値から読み取れる。

1.  オマーン 11.4
2.  サウジアラビア 10.0
6.  イスラエル 7.3
23.  中国 4.3
24.  アメリカ 4.0
26.  ロシア 3.9
52.  韓国 2.7
63.  英国 2.4
149.  日本 0.8
172.  アイスランド 0
   
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