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新型コロナウイルス: マスクをするかしないか、それが問題だ

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これはシェークスピアの戯曲ハムレットの有名なセリフ「生きるか死ぬか、それが問題だ」のパロデイである。しかし、冗談ではなく「マスクをするかしないか、それは生きるか死ぬかの問題だ」というべきだろう。

実際、ほとんど全員がマスクをしている中国、多くの人がマスクをしている日本、韓国、香港、シンガポールの新型コロナにおける死者数と、欧米の死者数を比較すると圧倒的な差がある。4/11現在の総死者数と人口百万人当たりの死者数を比較しよう。

クリックすると拡大映像でご覧いただけます

  総死者数 人口百万人当たりの死者数
 中国 3339  2    
 韓国 211  4    
 香港 0.5 
 シンガポール 1    
 日本 99  0.8 
 米国 18761  57    
 英国 8958  132    
 イタリア 158273  312    
 スペイン 2736  344    
 フランス 13197  202    
 ドイツ 2736  33    

特に、人口百万人あたりの死者数を見ていただきたい。アジア諸国と欧米諸国には圧倒的な差がある。もっとも健闘しているドイツですら、中国の16倍ある。スペインに至っては172倍である。米国はまだ比較的小さいが、これからどんどんこの数値は大きくなるだろう。

この巨大な差は何によるのだろうか。人種の差? 私はそうは思わない。文化の差、とくにマスクにたいする考え方の差であると思う。欧米の医療・保健関係の指導者は医療関係者以外の一般の人たちがマスクをすることを奨励しないばかりか、むしろマスクをするなとまで言っていた。

例えば米国の軍医総監であるアダムス博士は3月3日に一般の人々がマスクを買うことを控えるようにツイートした。

Surgeon General asking people to stop buying masks (軍医総監は人々がマスクを買わないように訴えた)

英国の進歩系の新聞ガーディアンも2月5日に、医療関係の編集者が一般の人々がマスクをしないように勧めている。もっともコメント欄を読むと、彼女は徹底的に批判されている。

Coronavirus outbreak: should you wear a face mask? (コロナウイルス勃発:マスクをすべきか?)

英国の公共放送のBBCは3/22に同様の趣旨の放送をしている。それも公衆衛生の専門家がそういっているのだ。これもコメント欄で激しく批判されている。そこで注釈に、このビデオは3月13日に収録されたといっているが、それなら放送するなよと言いたい。

Coronavirus: Do face masks work? - BBC News (コロナウイルス: マスクは効果があるか?)

この欧米のマスクに対するスタンスはWHOのそれと同じである。WHOの2月6日のビデオ広報である。欧米の指導者の言い訳はWHOがそういっているからだそうだ。だとすればWHOは大きな過ちを犯したといいたい。

Can masks protect against the new coronavirus infection? (マスクは新型コロナウイルスの感染を防げるか?)

このマスクに対する欧米のスタンスは最近大きく変わってきた。例えば先に述べた米国の軍医総監のアダムス博士は4月5日になって簡易マスクの作り方を自演している。というのも米国のCDCがマスクに対するスタンスを変えたからだ。

Surgeon General shows how to make face masks (軍医総監がマスクの作り方を教える)

米国のコロナ対策の大元締めのファウチ博士もしぶしぶ、マスクの効果を認め始めた。

Top Chinese health official warns not wearing a mask is a ‘big mistake’
(中国の健康関係担当者はマスクをしないことは「巨大な過ちである」と警告した。)

なぜマスクに対するスタンスが変わったのか。WHOをはじめとする欧米の医療・保健指導者は始めこう言っていた。マスクは医療関係者にとっては必須である。しかし一般人がマスクを買うとマスクが不足して医療関係者にいきわたりにくくなる。

それにそもそもマスクには新型コロナに感染するリスクを下げる能力は小さい。ウイルスは小さいので医療用のN95マスクでなければ、マスクを通過するからだ。

もっとも感染している人が、他人に感染させる危険性を下げることはできる。だから新型コロナに感染した人はマスクをすべきである。しかしそうでない健康な人はマスクをするのは好ましくない。

医療・保健指導者は、マスクは推奨しないが、手洗いを徹底的に推奨した。しかし目の前で他人が咳やくしゃみをして、それであわてて自分の手を洗って意味があるのか?

なぜマスクに対するスタンスが変わったかというと、症状が出ない感染者が多くいて、彼らが大きな感染源であることが分かってきたからだ。つまりマスクは自分が他人から感染する危険性を下げるというよりは、自分が知らないうちに感染していて、それで他人に感染させる危険性を下げるのである。だから中国のように全員がマスクをしていれば、感染の危険性を減らせるのである。つまり高級な医療グレードのマスクでなくて、安物のマスクであれ、アベノマスクであれ、全員が公共の場でマスクをすることに意味があるのだ。

またくしゃみや咳、あるいは発声の際に口から飛び出す水滴や極めて微小な水滴の飛翔距離を過小評価していた。WHOなどは2メートル離れればよいとしていた。しかし研究によれば、くしゃみで7-8メートル、咳で5-6メートル、単に息をする、しゃべるだけで2メートルも飛ぶという。

私は英国のキャンベル博士のコロナに関する解説を毎日聞いているが、ついに彼もマスクに対するスタンスを変えた。

To mask or not to mask (マスクをするかしないか)

これら欧米の健康・保健指導者のマスクに対する過小評価をはじめ、その他の失態は巨大な人命損失として結実した。この騒動が終わったときには、米国では彼らは巨大な損害賠償訴訟の対象になるのではないだろうか。

 

追加 4/15/2020

マスクをするかどうかは文明の衝突である。アジア人はマスクをする習慣があり、新型コロナがはやっている現在ではなおさらだ。国によっては公共の場でマスクをすることは義務付けられている。しかし欧米では逆だ。マスクをしている人間はテロリストか何かで、悪いことを企んでいるとみなされる。米国のアニメで正義のヒーローは目を隠すアイマスクはするが、口を隠すマスクはしない。日本の忍者は口を隠すが目は隠さない覆面をしている。文化の差である。

Coronavirus: Face Mask Culture Clash?(コロナウイルス:マスクは文化の衝突?)

 

しかしアメリカでもマスクをめぐる環境は大きく変わった。

Man not wearing face mask dragged off Philadelphia bus
(フィラデルフィアのバスでマスクをしていない乗客が引きずりおろされた)

   
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