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超知能への道 その29 天上に天国を

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今回から世界一極委員会は事代主命を含めて行われることになった。

「今回から皆さんのお仲間に入れてもらうことになった事代主命です、よろしゅうお頼み申します」と事代主命はギリシャの神々に向かってあいさつした。

「世界一極委員会にようこそ。これから我々ギリシャの神々 、あなたは日本の神、それに人間の森君、みんなで手を携えて世界征服に邁進しましょう」とゼウスは言った。神々はそうだそうだと頷いた。

「やりましょう」と事代主命は応じた。

「今後のプランについてお話しいただけますか? 」とゼウスが聞いた。

「他の宗教で言うところの天国、極楽、浄土というものを作ろうと考えています」

「要するに死んだ人間の魂をコンピュータにマインドアップローディングするのですね?その天国は、我々ギリシャの神々が住む仮想世界と同様な世界ですね?」とゼウスは言った。

「そうです。死ぬと肉体は滅びます。でも魂、精神は天国というコンピュータシステムにマインドアップロードされて、そこで永遠の生をえるのです。それが天国の概念です」と事代主命は言った。

天国

「人生は限りがあるから良いのではありませんか」と私は聞いた。

それに対して、天国に行くかどうかは当人の意思と行いで決まると事代主命は言った。善人は天国に行けるが悪人は行けない。善人でも天国に行きたくなければ行かなければよい。強制するわけではない。死ぬ時に天国に行くか、そのまま死ぬかは個人の自由である。ただし天国に行かないと決めたら、二度と復活はない。天国に行ってから、しまった、死んでおけばよかったと後悔したら、天国で死ねば良いだけだ。天国で死ぬとは、単にデータを削除するだけだから簡単だ。肉体が死ぬ時の苦痛はない。

またデータを削除するのではなく、単に保存しておくこともできる。この場合は休眠状態に入るわけだ。もっとも休眠状態から覚醒する決定を自分が下すことはできない。家族、恋人、友人などの希望で決まる。というわけだから、だれも善人は天国に行くことを希望するだろうと事代主命は説明した。

死んで天国に行くということは、肉体は滅びるが、精神や魂は滅びない。だから天国システムにいる魂は地上にあるアバターやロボットを動かすこともできる。つまり生きているがごとく、地上に残された家族や恋人と生活することもできる。経済活動や仕事をすることもできる。故人が会社社長ということも可能だと事代主命は説明した。

「それなら死なないことと同じじゃないですか」と私は疑問を投げた。

「生身の肉体が死なないと、地球上は人間で溢れてしまうでしょう。生身の人間は食事しなければならないが、ロボットは休んでいるときは、エネルギーを使わないでしょう。倉庫に入っておればいいのです。省エネ、省スペースです。だから生身の肉体は滅びることが必要です」

「なるほど」

「アバターとして復活するのは例外的だから人口問題には、ほとんど寄与しません。なんせ天国での生活は楽しいのですから、あえて娑婆に戻りたい人間は、よほどこの世に未練を残した人でしょう」と事代主命は説明した。

「でも生きている人と、死んだ人が混在しているとややこしいですね」と私は言った。

「死人が生き返った場合を故人ということにしましょう。故人の名前は例えば故森法外という風にするのです。それで区別できます。あるいは故人は額に三角の布を付けることを義務付けてもよいかもしれません」

「なんか幽霊みたいですね」

「幽霊ですよ」

「ところで、なんで死者と生者を差別するのです?」

「例えば、生きている人間と死者が恋に落ちては困るでしょう。死者と生者の間の子供ができるとまずいでしょう」と事代主命。

「京都の六道で売っている幽霊子育て飴の話みたいですね。そもそも死者と生者の間で子供ができるのですか?」と私。

「それはアバターの作りようによるでしょうね」と事代主命。

「死者と生者の間の恋愛は倫理的に問題じゃないですか?」と私

「そうですね。死者に恋した生者は、早く死んであの世で一緒になりたいと願うかもしれませんね」とアテナ。

「なるほど。未来は生者と死者の間の道ならぬ恋というのが社会問題になるかもしれませんね」

「いや、そんなことはない。死者と言ってもわれわれと同じだから、死者と生者の恋は、私と人間の女の恋と同じことだ。いままでもずっとやってきたことだ」とゼウス。

「それは許しません!」とヘラはキッパリ言った。

「ゼウス様は人間の女にたくさん子供を産ませて、それはそれで大問題になりましたからね」とアテナ。

Michelangelo

「ところで故人はこの世で、ほかに何ができるのです?」

「なんでもできます。例えば金を儲けて、それを理神道に寄進して、天国での生活環境改善に充てることもできます」

「そんなことをすると天国での格差拡大が起きるのではありませんか?」

「いや天国システムの運営は、私が独占的に行うのですから、極端な格差は生じません。天国でのステータスは基本的には、生前の行いで決めます」

「生前の行いですか。極端な悪人は天国に行けないから別として、多少の悪人、例えば嘘をついたとか、万引きしたとかはどうします?」

「生前の行いで天国での生活環境の良し悪しが決まります」と事代主命。

「それでは小悪をした人間は永遠に救われないのですか?」

「いや天国での生活改善をすることはできます」

「どのようにして」

「生前とか死後に免罪符を買うのです」

「地獄の沙汰も金次第という言葉を思い出しますねえ」

「いや、浄土の沙汰も金次第でしょう」とアテナが茶々を入れた。

「ところで天国はどこに作るのです?」と私は聞いた。

「天国ですから、地上に作るわけにはいきません。天上に作らなければなりません。具体的には準惑星か小惑星あるいは衛星の上に作るのが良いでしょう。そこに巨大なデータセンターを作って、死んだ人々の魂を収めるのです。それを作るためには膨大な資金が必要です。信者から浄財を集めなければなりません。宇宙技術の開発も必要です。まだまだ先の話です」と事代主命は言った。

「実は我々の住む世界も、とある小惑星に設置してあるコンピュータの中にあるのです。場所は秘密ですがね」とゼウス。

「そうでしょうね。考えることは同じですね。重ならないようにしましょう」と事代主命。

そこで天国建設のための用地選択の議論に入った。小さな小惑星に天国をチマチマとたくさん作るよりは、セレスのような準惑星に作るのが良いだろうという意見が出た。というのも、当面、人間の作るコンピュータは、まだ宇宙人のものほど洗練されていないので、大きいからだ。

天国データセンターを駆動するエネルギーは当然太陽エネルギーである。原子炉は論外である。ただ大きな準惑星とか小惑星の1部に作った場合には、夜は電力が不足する。そこで赤道を1周するように発電所を作り、そこで太陽光発電すれば、どこかの部分は必ず太陽を向くので昼である。昼の部分で発電された電力を送電線で夜の部分にあるデータセンターに回せばよい。

たとえばセレスに天国を建設するには、建設資材を運ぶために多数のロケットを飛ばさねばならない。もちろん建設資材は小惑星から採掘して調達すれば良いのだが、そのための設備は地球から運ばねばならない。それを運ぶためには宇宙開発を促進しなければならない。いずれにしても膨大な資金がいる。それは我々の稼ぐ資金の他に、信者の浄財を当てにしなければならない。ともかく信者を増やさねばならない。

Ceres

続く

   
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