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超知能への道 その17 ロックスソロス社設立

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世界一極委員会での会話である。ゼウスが口火を切った。

「アテナの報告では、阿修羅、文殊菩薩、弥勒菩薩システムと順調にスーパーコンピューターシステムは完成した。その後の計画は?」

「はい、いよいよ最終システム、事代主命(ことしろぬしのみこと)システムに取りかかる段階です。しかしそれには膨大な費用がかかります。数兆円を見込んでいます」とアテナは答えた。

「マーキュリー、その資金をどうして稼ぐ?」とゼウス。

「はい、株や先物の売買だけでは、そこまでは行きません。やはり物を作る実業が必要です」とマーキュリー。

「どんな実業がある?」とゼウスは聞いた。

「はい、ロボット、コンピュータと周辺機器、ICチップ、電気製品、航空機、ロケット、船舶などの重工業、原子炉、石油と天然ガスなどのエネルギー産業、映画などの娯楽産業、観光産業、廃品回収業、さらにはマスメディア進出も考えています。農業、漁業、畜産業も」とマーキュリー。

「農業とか漁業などの第一次産業もか?」とゼウスは訝って聞く。

「いえ、これらは全て最新の遺伝子工学を応用した、近代的工業に仕上げます」とマーキュリー。

私は大学のクラブの先輩で、今はあるIT関係の会社の社長をやっている藤原定価さんに頼み込んで、新しいロボット会社ロックスソロス社を設立してもらった。藤原さんは社長である。私はやはり顧問である。藤原さんは実業界や政界に顔が効くのである。表の顔は、やはりそれなりの人を立てねばならない。父親では無理だ。ちなみにロックスソロス社という社名は映画「イノセンス」に出てきたものだ。やはりロボット、アンドロイドの会社である。本社は択捉島(えとろふとう)にあるという設定になっている。

ロックスソロス社のヒト型ロボットはいろんな役に立つ。最初は災害救助とか、原子炉での作業とか危険な作業の補助をさせた。それから介護ロボットも開発した。これらは一体数百万円もするものである。さらに改良を進め、家庭用のお掃除、料理、子守をするロボットを開発した。これは一体数十万円である。工場は北海道の苫小牧工業団地に作った。

ロックスソロス社の本社としては、初めは大阪の貸しビルを借りた。しかし事業が大きくなったので、大阪のJRの梅田駅跡の巨大な空き地に高層ビルを立てた。もっとも実は本社機能はほとんどが弥勒菩薩システムでやるので、本社の人間はそれほど必要ないのだ。それでも将来の事業拡張のために、大きなビルを作った。空いた空間は貸している。 

グランフロント

介護ロボットのようなものだけではマーケットは知れている。そこで我々はもっと大きなマーケットを狙うことにした。それは外部骨格(エクゾスケルトン)つまりパワードスーツだ。私が武術の訓練で使ったものはファブレットでできた完璧なものである。しかしそんなものをいきなりマーケットに出すわけにはいかない。そこでありきたりの電動モーターと電池を使ったものを開発した。ここでの1番のポイントは電池のもちである。そこで我々は弥勒菩薩システムを使って、従来の何倍も長持ちする電池を開発した。

このパワードスーツは、下半身専用のものと上半身専用のもの、および全身用のものがある。下半身専用のものは歩行困難な老人をターゲットにした。これを着ると、よちよち歩きの老人でも、若者より速く歩くことができるのだ。ほとんど寝たきりの老人でも、起き上がって歩くことができる。もちろん健常者も使うことができる。たとえば山登りの時にこれを使うと、さっさと山に上れてしまう。上半身用のものは、建設労働者などが使うと非常に効果的だ。介護する人が使うこともできる。こちらの方が介護ロボットよりもはるかに安上がりだ。このパワードスーツは日本で大きく売れた。値段も数10万円台にした。寝たきり老人の数が減ったので、医療費の削減に貢献して政府を喜ばせた。

 さらに次の改良は、モーターと電池を人工筋肉に変えることである。私はポートアイランドに医学・生物学研究所を作った。そこで遺伝子技術を用いて、人工筋肉を作ることに成功した。その理論は、弥勒菩薩システムを使って数値シミュレーションをして研究した。このパワードスーツには心臓があり、筋肉には血液が流れている。エネルギー源は血液の中に溶け込んだ栄養である。しかし消化器はないから、エネルギードリンクを注入してやる必要がある。実はこのパワードスーツには、視覚、聴覚、触覚が装備してあり、小型人工知能が搭載されている。その役割は秘匿している。

我々は商売のシステムを大幅に変えた。売り切りからレンタルに変えたのだ。レンタル料は安く設定した。エネルギードリンクで稼ぐのだ。プリンターの商売と似ている。プリンターは安く売りインクで儲けるというあのやり方だ。他社のエネルギードリンクを使うと動かなくなるように設定してある。これもプリンターと同じことだ。私は日本中にロックスソロス社の代理店を作り、そこでパワードスーツを取り扱わせた。このパワードスーツを使うのは主として老人であるから、プリンターのように「使い方はマニュアルを読め」では済まない。懇切丁寧に世話をする必要がある。そのためにたくさんの社員を雇い、日本中に配置した。ロックスソロス社の本社も工場も人員は最小限で良い。しかし出先には人間が必要なのだ。海外にも輸出した。海外で売れるようになったので、現地資本と組んで海外に支社網を構築した。こうしてロックスソロス社は世界的大企業に成長していった。

このパワードスーツには犯罪と軍事使用禁止の規定を盛り込んだ。ただし災害救助での使用は認める。感覚器官と人工知能を盛り込んだのは、犯罪や軍事的使用かどうかを判定するためである。そのようなな使用だと人工知能が判定すると、筋肉が動かなくなるのである。

ロックスソロス社の次は電機会社を作った。新たに作るのではなくて、すでに潰れてしまった「三洋電機」の名前を買った。この会社にはまだ十分にブランドイメージがある。新しい会社は三星電子に対抗して三洋電子と命名した。社長にはやはり藤原さんになってもらった。この会社では家電のほかに、コンピュータやインターフェイス用の機器、ICチップ、スマートフォンを作り、販売することにした。

今更スマートフォンかとも思うが、メモリやスピードで競合製品の数倍の能力を付与し、値段は同じか安く設定するということで、マーケットの制覇を狙った。 Appleは台湾の会社に委託して中国でスマートフォンを作っている。その会社は中国で100万人もの労働者を雇用している。われわれは完璧な3Dプリンターを作り、スマートフォンを労働者なしで、完全自動で製作することにした。だから工場を中国に置く必要はなく、われわれは三重県で製造することにした。我々のスマートフォンは、 OSはAndroidでもiOSでもなく独自のものにした。我々のOSは弥勒菩薩システムが製作したもので、穴はない。完全無欠なものである。バグは人工知能が徹底的に潰した。だからウィルスに汚染されることも無い。アプリも山のように作った。

さらに筐体も一体成型とし、開けられないようにしてある。部品はいろんな業者から仕入れるのではなく、すべてその場で、 3Dプリンターで作る。こんなことが出来るのも全て弥勒菩薩システムのおかげである。これを売り出したので、 Appleとサムソン電子のシェアーを大きく奪うことになった。安いバージョンも作ったので、中国の会社のシェアーも奪った。サムソンはいいとして、 Appleを怒らせるとアメリカが敵になるので、ちょっと恐ろしいかな。こうして我々はアメリカ、中国、韓国を潜在的な敵にしてしまった。

文殊菩薩システム、弥勒菩薩システムのチップは韓国のサムスンに作らせたが、今後の我々のコンピューターチップはすべて三洋製になる。そのためのチップ製造プラントをやはり三重県の亀山に作った。次ぎのシステムこそ本命である。それをわれわれは事代主命(ことしろぬしのみこと)と名付けている。その命名はもちろん九十四露(ことしろ)神社から来ていることは言うまでもない。これは日本ではなく海外に置く予定である。壮大な事代主計画が密かに始まったのである。

続く

   
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