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聖子ちゃんの冒険 その1

詳細

風変わりな5人組

黒髪の乙女な聖子ちゃん

森田聖子ちゃんは京都の大学の3回生だ。最近、成人式を迎えたばかりである。小柄であるがとてもキュートである。髪の毛は比較的短く、その色は真っ黒である。例えてみれば森見登美彦の小説「夜は短し 歩けよ乙女」の主人公の「黒髪の乙女」を想像してもらえれば良い。古い人なら松田聖子の若い頃を思い出すかもしれない。そんな可愛い女の子だ。

聖子ちゃんは、まだ子供気分が抜けきらないので、フリフリの服をきて喜んでいる。専門は物理学である。頭は父親譲りでとても良く、成績も良い。しかもとても知的好奇心に富んでいる。容貌は母親譲り、頭は父親譲りであるといえよう。

ロリコンの森先生

聖子ちゃんの恋人の森度自尊(もりどじそん)准教授は、聖子ちゃんと同じ大学の数学の先生である。専門は人工知能や量子コンピューターの数学的基礎である。まだ30歳を過ぎたばかりなのにすでに准教授であるということは、森先生が天才であると言うことを意味している。森先生はその大学の総長が作った白髪プロジェクトというものに大学院生の時に応募して選ばれたのだ。白髪プロジェクトとは世界中から天才的な若者を集めて、助教や准教授にして、5年間審査なしに自由に研究させるという試みである。聖子ちゃんのお父さんの森田教授も森先生を非常に高く評価している。

森先生は大学を出て、始めは小学校の先生になり、聖子ちゃんの担任となった。森先生は聖子ちゃんのお父さんの持つマンションに部屋を借りた。森先生はやはり勉強が続けたく、大学院に入り直し数学を専攻した。大学院を出てMITのメディアラボに留学し、また英国のオックスフォード大学に留学し、人工知能、シミュレーション現実などについて研究した。若くして、すでに世界的に認められている。その業績で現在の地位を築いたのだ。

森先生は数学の天才だが、SFオタクでもある。しかし文弱ではなく、合気道の達人でもある。その頭の異常な良さと、知識のいびつさと、腕っ節の強さは、名探偵シャーロック・ホームズに似ている。容貌はたとえてみれば、BBCの新しいシャーロック・ホームズを想像すればよい。非常にハンサムなのである。聖子ちゃんが夢中になるのも、当然というものだ。

<名探偵シャーロック・ホームズ 日本語版>

森先生は聖子ちゃんが中学生、高校生の間、家庭教師を務めた。聖子ちゃんは小学生の時は森先生に「お話をして頂戴」とつきまとい、中学生、高校生の時は「勉強教えて頂戴」とつきまとい、大学生になっても「先生、先生」と犬のように無邪気につきまとっているのである。

だから聖子ちゃんと森先生は留学中も含めれば10年来のつき合いなのである。このように長い付き合いであるからお互いに好意を持つようになったのも当然であろう。聖子ちゃんは子供のときから「大きくなったら、先生のお嫁さんになる」と公言してきた。もっとも二人が恋人であると世間に晴れて言えるようになったのは、聖子ちゃんが大学に入ってからである。

森先生は大人の女性に対して、とても臆病で恋人とかガールフレンドというものがつくれなかった。しかし聖子ちゃんに対しては、先生と生徒という関係で、気安く話すことができた。まあいうならば、森先生はロリコンなのである。そういうわけで結局は、2人は周囲から見れば恋人関係になったのであるが、それは言葉だけのことで、聖子ちゃんは相変わらず子供気分で、森先生は恥ずかしがりで、2人の関係はそれ以上には進まない。実際、二人はキスどころか、その気になって手を握ったことすら無いのである。

ヤキモキするお母さん

聖子ちゃんのお父さんは森田教授と言って、聖子ちゃんの大学の工学部の教授である。専門は人工知能、音声認識、ロボットなど情報工学である。現在は工学部長をしている。森田教授は、将来は学長になり、定年退官したら国会図書館長になる野心を持った大物である。森田教授は、とっても金持ちでマンションを所有している。森先生はその一室に住んでいるのである。

森田教授の奥さん、つまり聖子ちゃんのお母さんは、森田昌子という。若い頃はさぞかし美人であったろうという風格を残している。容貌は森昌子そっくりなのだ。実際、お母さんのカラオケでの十八番は「越冬ツバメ」である。しかし現実は、お母さんは悲しい恋をした訳ではなく、成長株の若き森田教授をガッシリと捕まえたのである。

お母さんは森先生のことを非常に買っているし、気にいっている。だから森先生を何とか聖子ちゃんの婿にしたいと考えている。森先生は教授になるのは確実だし、10年来の知り合いで、その人柄のよさはよく分かっている。それに森先生は恥ずかしがりで、他の大人の女性に手を出しそうにない。とても安心なのである。さらに森先生は末っ子であるというし、実家を継ぐ必要はないだろう。だから森先生を森田家の跡とりにして、早く孫の顔を見たいと思っている。そうして自分たちの所有するマンションを譲り、安心したい。だから2人が早く結婚すればよいと願っているのだ。二人が結婚するのは、何も将来のことである必要は無い。できればすぐにでも結婚してほしいのだ。聖子ちゃんが大学生であっても構わない。大学生で結婚して何が悪いというのだ。子供ができたら自分が面倒をみるつもりである。

だいたいこの頃の若い男女はなかなか結婚しない風潮がある。聖子ちゃんの姉は大学を出て東京で就職しているが、なかなか恋人ができそうにない。妹はまだ高校生だ。頼れるのは聖子ちゃんのみだ。

森先生を聖子ちゃんと結婚させるためには、子供ができてしまえば良いと思っている。つまり森先生が聖子ちゃんに手を出せば良いのだ。 この頃はいわゆる「できちゃった婚」が結婚の近道である。例え聖子ちゃんが大学生のままでも、無理やり結婚させてしまうつもりである。しかしながら、2人の間には、なかなかその兆候が見えないので、お母さんは焦っているのだ。

聖子ちゃんは、普段から森先生の部屋に遊びに行って、夜遅くまで話している。また森先生は、聖子ちゃんの部屋に来て夜遅くまで話している。そんな関係なのに、どうしてそれ以上進展しないのか、お母さんには不思議でならない。

どうして近頃の若い者ってこうなんだろう。私の若いころなんか、森田とつき合ってすぐに大学4年生で結婚して、そしてすぐに子供が生まれた。学内新聞に「竹本さんご出産おめでとう」と書かれたものだ。森田の秘書たちもみんなそうだった。みんないきなり森田のところにやって来て、出来ましたので、結婚して退職しますと言ってきたものだ。お母さんの哲学は、恋愛とは好きな男の子供を産む事というものだ。もっとも子供を産むからには、ちゃんと責任を持って生活の面倒を見て、一生幸せにしてもらわなければならない。その為には良い男を狙わねばならない。森先生はそんなお母さんの計画にうってつけなのである。

だからお母さんは、聖子ちゃんにそんなフリフリの服ではなく、もっとスケスケの服をきなさいとか、もっと胸元の開いた服を着なさいとアドバイスしているのだが、一向に効き目がない。聖子はいつまでたっても子供なんだから。お母さんはこのように1人でヤキモキするのであった。

超オタク高山准教授

森田教授は非常に偉いのだが、その偉さが災いして、現在は工学部長をやらされている。そのために好きな研究に割く時間がない。そこで研究室は主として准教授の高山先生と助教の林君に任せている。高山先生と林助教はある建物の地下にある自称「秘密研究所」にいる。彼らは、現在は人工知能やシミュレーション現実、ロボットの研究をしている。

高山准教授について少し述べておこう。高山先生はコンピューター、ロボットなどに関する研究で、世界の第一線を走っている超天才である。しかし同時に超オタクでもある。彼の知識は専門の研究以外には軍事、天文学、心理学、SF、ミステリーと特定の範囲に限定されているのだが、得意の分野に関しては語りだしたら止まらない。オタクの常としてアニメにも詳しい。

彼は森先生同様に、現実の女性に対して非常に恥ずかしがりである。だから恋人もガールフレンドもいない。しかし女性に興味がないわけでは無い。むしろ女性に対する憧れは人並み以上である。ただしその対象は現実の女性ではなく、コンピューターゲームに出てくるような二次元女性である。高山先生は二次元女性に対して、フェティシズム的な愛情を注いでいる。

高山先生は学生時代以来、下鴨泉川町にある崩壊寸前のアパート「元待機宿舎」に住んでいる。ここは本来は警察の寮であったのだが、現在は近くに新しい待機宿舎ができたので、この戦前の古い建物は払い下げられて、民間のアパートになっているのだ。その建物は二階建てになっていて、入口から入るとそこに一間がある。その他、小さな台所とトイレもあるが風呂は無い。入り口を入ったところに、二階へ上る急な階段がついていて、二階にも一間がある。そこは高山先生の寝室兼書斎になっている。一階の部屋は食堂兼居間である。

高山先生も全く女性にモテないわけではない。実際あるとき、ある女性が研究室に当時は大学院生だった高山先生を訪れた。高山先生に対する恋を告白しようと、勇気を振るって訪問したのだ。ところが室内にいた高山先生は、訪れて来たのが若い現実の女性であることを知って、パニック状態に陥った。そして友人の森先生に携帯電話をかけた。その時の高山先生の言葉が伝説になっている。

「おい、森、今部屋の前に若い女が来ているのだ。3次元だぞ、動くのだぞ、助けてくれ」

高山先生はそれでも、バーチャルな女性に対する愛情は激しく、何とか3次元のバーチャルな女性を作ろうと考えている。彼はシミュレーション現実の世界を構築して、その中に理想の女性のアバターを作ろうと日夜研究に励んでいる。

ムキムキ林君

助教の林明(はやしあきら)君についても語っておこう。彼もある種の天才である。特にコンピュータープログラミングに関しては天才的なところがある。しかし、それ以外の知識はほとんどないと言う、デルタ関数的な天才である。

彼は毎日マックのコンピュータ、つまりMacBook Airを抱えてマックことマクドナルドをさまよっている。マックでマックというのが彼の密かな誇りだ。下宿や研究室よりはマックの方が、勉強がはかどるというのだ。こういったスタイルをノマドライフとよんでいる。彼はマックの電池がなくなるまで5時間、マックに粘って、マックでプログラミングをするのである。

林君は天才であるからエキセントリックである。どれほどエキセントリックかというと、林君には様々な伝説がある。大学院生の時、指導教官の山田先生に向かって

「大学教授の言うがままに研究テーマを選ぶような学生は馬鹿だ」とか「大学院生に論文を書かせるのは無駄である。論文を書く時間があれば勉強したほうがはるかに良い。この大学はクズだ」などと暴言を吐いて山田先生を激怒させた。

そこでさすがに人格者の山田先生も林君に対する指導を放棄して、知り合いの松谷名誉教授に林君の指導を依頼した。松谷先生は林君にコンピューターシミュレーションの研究を提案した。松谷先生の発明したアルゴリズムをCUDA言語を使ってGPGPU上で並列化する研究をしたらどうかと林君に勧めた。林君はそれには乗り気であった。そのようなわけで非常識な林君でも何とか卒業できたのだ。

林君はプログラミングの能力を森田先生に買われて、助教になれたわけだ。全くもって松谷先生のおかげであるということができよう。林君とは要するに世間常識のない天才なのである。

林君は大学時代はボディビルに凝ったムキムキ男であり、筋肉増強の為にステロイドホルモン剤も飲んでいる。結構ハンサムでもあり、毎日自分の肉体を鏡に映して見てはニヤニヤしている。つまり非常なナルシストである。

彼も女性に非常に憧れているのだが、やはり森先生や高山先生同様、非常な恥ずかしがりで、現実の女性を相手にできない。彼はときどき女性を蔑視する発言をするが、それは彼が女性を嫌っているのではなく、女性に対する憧れの裏返しにしか過ぎない。よく子供が、好きな女の子をいじめることがあるが、そのようなものだ。つまり林君は、メンタリティが子供時代から成長していないのである。

そんなわけで林君は女性が好きなのだが、現実の女性には全く相手にしてもらえない。そこで助教になってボーナスをもらって初めて買ったのが、リアルドールという人形である。これは人間そっくりな人形なのだが、非常に可愛く、セクシーにできた女の子の人形なのである。林君はこの人形に「詩織ちゃん」という名前をつけて、非常にかわいがっている。下宿に帰ると詩織ちゃんにキスをする。夜は一緒の布団に寝るのである。

林君は疏水縁にある銀月アパートメントという、これも戦前にできた、古めかしいアパートに住んでいる。

マンドサイエンティストの松谷先生

松谷先生は某大学を既に定年退官した名誉教授である。専門は物理学、流体力学、天文学である。数値シミュレーションを得意としている。

松谷先生の趣味はハードSFである。ハードSFとは、科学的考証をきっちりするSFの一分野である。松谷先生の得意の分野はタイムマシンとかタイムトラベルである。松谷先生はタイムトラベルをSFとしてではなく、科学として研究しようとしている。松谷先生の理想はバックトゥザフューチャーに出てくるドクというマッドサイエンティストである。松谷先生はドクのようになりたいといつも言っている。

ドク

松谷先生はシャーロック・ホームズのファンでもある。先生はホームズやワトソンより、ホームズの仇敵で悪の天才、モリアティ教授を尊敬している。モリアティ教授は「小惑星の力学」という著作があるのだが、松谷先生も小惑星の天体力学に一家言がある。実際、松谷先生は自分の名前を冠した小惑星を持っているのである。

松谷先生は、映画の007も好きだが、ジェームス・ボンドよりは、悪漢とそのの秘密基地に非常な興味を持っている。

松谷先生の究極の夢は「世界征服」なのだ。つまり松谷先生も変人なのである。

続く

   
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