京都秘密名所巡り 1・・・音羽川

今回からは、京都の知られざる名所を紹介しよう。これから述べる名所は、私にとっての名所なのであり、観光案内には書かれていないかもしれない。知る人は知る、知らない人は知らない名所である。知らなくても困らないし、有名になって、観光客が大挙して押しかけられても困るのである。

第1回目は音羽川を取り上げたい。音羽川は比叡山から流れ出る川であり、修学院離宮の横を流れている小川である。実は京都には音羽川は清水音羽川、山科音羽川もあるそうで、区別する場合は修学院音羽川という。源流は「ロテル・ド・比叡」の西の谷にあり、そこから山を下り、西に流れて高野川に合流する、長さ5.4キロメートルの小さな川である。

比叡山と大文字山に囲まれたこの地帯は、風化、浸食に弱い花崗岩で出来ているため、下流に土砂災害をもたらしてきた。それを防ぐために、昭和初期から工事がされて砂防施設が作られた。平成になり修学院離宮に隣接する地域は、砂防学習ゾーン・モデル地区として整備がされていて、一種の公園になっている。上流には砂をためる小さなコンクリートや石積みの堰堤(えんてい、ダムのこと)がたくさんあり、そこを超える流れが滝になっている。中流には巨大なコンクリート製の砂防堰堤があり、ここが私の一番のお気に入りである。

まず行き方であるが、叡電の修学院で下りて曼殊院に行く。途中に鷺の森神社があり、ここも隠れた名所なのである。曼殊院の西側にある天満宮の中には食事処がある。池には、コイと亀が多い。曼殊院から北の方に歩くと関西セミナーハウスがある。ここには喫茶店もあるので、トイレを借りたり、タクシーを呼んでもらったりすることが出来る。関西セミナーハウスには能楽堂もある。関西セミナーハウスの北隣に音羽川がある。もちろん、白川通りから修学院離宮道沿いに来ることも出来る。

音羽川に沿って、東に向かう上流の方向に歩いていく。きらら橋の所で、比叡山に登る「きらら坂」と、音羽川に沿って行く道に分かれる。「きらら坂」は、平安の昔、比叡山の僧兵が日吉神社の御輿を担いで強訴に及んだとか、親鸞聖人がここを通ったとかと言われている。

大堰堤にはきらら橋を渡って行く道と、川に沿って親水公園を経由する道がある。ここは春には桜、秋には紅葉見物や、バーベキューをしているグループがいる。そこから上流に行くと大堰堤にたどり着く。大堰堤の横には急傾斜の階段がある。ここを登るのは、なかなかの骨であるが、登り切るとダム湖があらわれ、その横には木を張り渡したボードウオークがある。ここが私のもっとも気に入っているところだ。ボードウオークに沿って、2箇所に木のテーブルと椅子が作られている。夏には読書する人もいる。ボードウオークの一番奥まった部分が、私の目的地で、ここで弁当を食べたり、学生諸君とゼミをしたりする場合でもある。その少し上流に石積み堰堤があり、滝がある。水垢離をしている外国人を見たこともある。夏でも涼しいとは、正にこの場所のことである。灼熱の市街地からわずか数百メートルあがっただけなのに、肌寒いほどである。少し上で戦死した千種卿の怨念のせいではないかと、冗談を言っている。