2017年11月25日

自然放射線 その1

放射線災害でカッカしている時に自然放射線の話は迂遠の様に思われるかもしれないが、危険を予想して色々な規制をする線量はみな自然状態を参考に決められている。だから、基準にされている自然放射線の中身を理解しておくことは大事である。
なぜ「自然」を基準にするかは、人間も生態系もこの放射線環境で生活しているという壮大な実験結果があるからである。放射線に対する破たん的でない耐性を持ったものがこの環境で生存しているわけだからである。
国連科学委員会UNSCEARのHPのQ&Aには自然放射線の人体への吸収量として次の表が載っている。

源又はモード mSv/y ばらつき ばらつきの要因
吸入:ラドン気体 1.26 0.2-10 住宅による
地球:外部照射 0.48 0.3-1

地域による

体内摂取 0.29 0.2-1  
宇宙線 0.39 0.3-1 高度による
合計 2.4 1-13 かなりの比率の住民グループは10-20


「源又はモード」としては四つ挙げられている。次の列の数字は(世界的な平均の)年間吸収量であり、その右の数字は「ばらつき」のレンジである。「吸入」の平均は1.26だが実際は0.2のとこも1のとこもある、という意味である。このばらつきの主な要因がその右の「ばらつきの要因」である。一番下の「合計」は年間2.4mSvとなっている。しかし現実には地域の特性で年間10-20mSvのグループ(想像だが数百万単位で)があるので、平均値で表しにくい事情を述べているのである。
まず最初に注意しておくと、この表はUNSCEARの2008年報告を踏まえたものだが、この表で「吸入:ラドン気体」の部分が、それ以前のものに比べて変わっている。例えば2003年理科年表UNSCEAR1988年版では合計は一緒だが別な帳簿付けになっている。その情報と合わせると2.4の内訳は「体外照射」0.8、「体内照射」1.6である。じつはラドンRnの効果は現在ホットな研究課題なのである。ちょっと昔の解説だとこのラドンが抜け落ちていた。
自然放射線の理解は、従来、源を「宇宙線」と「地球」の二つとし、各々による「体外」と「体内」を分ける、2行2列的な表で理解していた。この整理は今でも正しいのであるがラドンは別格に大きいので別扱いになったと思えばいい。以前の分類だと「地球―体内」の一つである。人体への効果で見ると「宇宙線―体内」では炭素14、「地球―体内」では(ラドン除いて)カリリューム40が代表である。
このラドンの効果が日本の平均的地域や住宅構造でどのあたりかという考察は進行中と言ってよい。住宅となると一概には言いにくい。しかし、規制の値は「自然」を基準にしてるからラドンの効果で「自然」が上がると、規制の値もあがる(甘くなる)のである。自然放射線というと何か純粋に科学的な興味の様だが、じつはすべての行政的数値のもとなのである。そこでもまだ色々新しいことが分かってきているのである。こういう現実は見詰めねばならない。