2017年05月26日

第73回:「電子化と図書館」by 家富

私は昨年11月から大学の附属図書館の館長を務めています。このところ本の執 筆には力を入れてきたものの,附属図書館からはすっかり足が遠のいていました.それにつれて,私の意識の中でも図書館の存在がどんどん希薄化していきました.いまではインターネットを通じて簡単に電子化されたジャーナルの閲覧ができますし,アクセスできなければWEB上で文献複写依頼ができるからです.昔の私は,図書館にずいぶんお世話になりました.高校時代は,夏の暑さを避けるために,毎日,市立の図書館に出かけて行き,勉強したものでした.また,学科の図書室へ週に一度は通い,新着雑誌をぺらぺらめくりながらのんびり過ごした学生・助手時代が,懐かしく思い出されます.せっかく館長となり,図書館に詰める時間が多くなったのだから,そのような至福の時を取り戻 したいと思っているのですが...

このような私が館長に就任し,戸惑っていたのもつかの間,さっそく新潟のテレビ局の取材を受ける機会がありました.取材記者の方を案内しながら館内を巡ると,ふと何とも言えない居心地安さを覚えました.多数の本に囲まれながら勉強した若かりし日々が蘇ったのです。この感覚はネットサーフィンでは絶対に味わえないものです.インターネットの仮想世界はあまりに茫洋とし,長居をすると妙に疲れます.テレビに映し出された私は,「インターネットでは目的をもって検索をするので,書棚から本をひょいと取り出して出会う意外な発見を体験できない!」と口にしていました.

図書の館(ほんのやかた)として蔵書の充実を主任務としてきた図書館は,いま大きな変革期にあります.存在そのものが問われていると言っても過言では ありません.大学から図書館という言葉も消え始めています.本を含めて様々なメディアに記録された情報が,日々電子化されています.情報機器の発達やインターネットの普及とともに,そのような電子化情報に私たちは容易にアクセス可能となりました.すでに文部科学省はデジタル教科書の導入に向けて検討を始めているとのことです.学生たちが冊子体の教科書を持たず,タブレットPCだけを抱えてキャンパス内を闊歩している近未来の光景が目に浮かびます.

附属図書館の使命として,大学内の電子化に対応した知の集積拠点としての重要性は言わずもがなですが,リポジトリーなどを通じての学内で得られた研究成果の外部発信も大切です.情報氾濫の中で大学から良質の学術情報を広く社会に提供することになります.また,学生が勉学のホームとして快適に過ごせる時空間の提供や異分野の学生同士が楽しく語らえるスクエアの設置も期待されている役割でしょう.このように新時代における附属図書館の有り様をあれ これ考えてみることは楽しいことです.皆さんからもいろいろとご意見が伺えれば有り難いです.