2017年07月22日

第47回:「大学物理教育雑感~授業の経験から~」by 前

大学理工系学生(主に低回生)向け物理教育に携わってきた経験から感じたことを書いてみたいと思います。

授業・実験(主に入門物理)の担当は今年で7年目になります。始めの頃は、教える科目を自分なりに再構成して、一つ一つは平易な内容であり、それを繋げて行けば体系的で強力な知識となる、なるべく論理の飛躍のないものをと、日々教科内容をブラッシュアップして、ここまでは教えたいという気持ちでやっていました。このころは教科内容を最優先していたように思います。授業中に学生の反応をみる余裕はあまりなく、学生の学習実態/考え方を知るのはテストのときぐらいだったように思います。それなりに勢いはあったからだと思いますが、「授業外でも教えて欲しい」と言われることがありました。ですがそれはやる気のあるごく一部の学生です。

それから、教える内容が一応確立してきたからか、授業中に学生の様子が気になるようになってきました。とりわけ、少人数の再履修クラスでは一目で学生全体の様子が分かるので、全ての学生がそっぽを向いているときには大変いたたまれない気持ちになります。授業を同じ調子で続ける気にはなれません。これは忘れられない苦い経験です。学生が授業に積極的に関わる為には、「何を教えるか」だけではなく、「誰に教えているか」も重要な要素であることを実感しました。また、逆の意味で印象的な経験もしました。それは、昨年見学したアメリカの物理教育研究で有名な先生の授業です。そこでは先の経験とは真逆の、ほぼ全ての学生が授業に積極的に関わった非常に活気のある授業を目のあたりにしました。こんな授業が実際に可能であることに勇気とやる気を得ました。アメリカの物理教育研究に基づく授業では、「学生が授業にどういう姿勢で臨んでいるのか」を踏まえて「人が物事を理解する/学ぶ仕組み」から「学生の学びたい欲求に如何に火をつけるか」について蓄積され共有された研究成果が授業に活かされているようです。

物理教育研究の論文;
 ・Physical Review Special Topics - Physics Education Research
 ・American Journal of Physics
 ・The Physics Teacher
 ・プレプリント

最近では、50~70人以下ぐらいのクラスでは授業中に学生の意見を引き出してそれを授業の流れに反映させることができるようになってきましたが、100人を超えるぐらいになるとなかなか難しいものがあります。先の物理教育研究もそうですが、物理学を教える上で教科内容/学習科学/教授法などを物理学者の批判精神/繋がりを見抜く力/実際の現象と照らし合わせる視点で研究/実践することは面白そうに思います。ですがいかんせん非常勤講師という身分は、基本的に授業のときだけ大学に行くので、意見・情報交換の機会が少ないという問題があります。

当NPOには大学物理教育の経験豊富な方が沢山います。最近、坂東さん、松田さんと大学教育における教授法のセミナーを開きたいねという話がありました。当NPOの目的の一つであるポスドク支援の面でも、非常勤講師等の若手に教育能力向上の場を与えることは意義があると思います。是非、大学物理教育に関わる教育研究に繋がるものとして教育のセミナーを開けたらと思います。ご関心がおありの方、是非、是非、どうぞよろしくお願いいたします。