2017年03月31日

第42回:「放射線とダークマター」by 今井

定年に近くなって暇になるだろうと期待していたのだけれど、現実はなかなかそうはならなりません。

一方そういうつもりで、高校生相手の教育プログラムや教員研修プログラムやら公開講座などを気軽に引き受けてしまいました。だけど話を作るのにはいつもほんとに四苦八苦しています。私の専門である原子核や素粒子物理は目で見えない世界で、かつ量子論や相対論の概念がついついちゃんとした説明なしにはいってしまって、わかりやすく解説するのは簡単ではありません。どうすれば理解してもらえるかは相当な工夫が必要です。特にこのあいだ国家予算の事業仕わけを見ていて、基礎科学研究は国民の理解なしにはすすめられないという思いを強くしたし、この工夫はますます重要になってきています。あいんしゅたいんの役割の一つはそこにあるのでしょう。

放射線を目で見るというのは、原子核素粒子の世界にはいる入口なように思って、高校生たちに霧箱をみてもらったり、作ってもらったりしています。霧箱は放射線の飛跡を目で見えるようにした最初の装置で、初めて見る人にはいつも大変好評です。見えないものを見るというのが興味のはじまりであり科学の原点です。放射線を小学生や中学生が簡単に見られるようになればすばらしいと思います。そのために簡単な(1000円ぐらいの)放射線検出器を作って、小中学校の理科教材にできるようにすることを、私のこれからの仕事にしたいと思っています。

見えないものを見るという意味で、現在最大のテーマのひとつはやはり宇宙のダークマターでしょう。われわれはダークマターをアクシオンという素粒子だとして、北白川のキャンパスで極低温とレーザーを使って探索しています。見えない放射線を見る工夫の歴史をふまえて、ダークマターを“見る”ことにチャレンジする若者に期待しています。

実体験と深いなぞがあることが若者を基礎科学に向かわせると思います。