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放射線から健康を守る学習会 in 白河市

日本学術振興会 産学協力研究事業に係る説明会チーム(通称:学振—放射線計測・説明会チ−ム)の一員として、福島県白河市にての学習会に参加しました。この学習会は、白河市のなかでも比較的放射線量の高い地域の方々に、放射線から健康を守る正しい知識を知ってもらうため、地域単位で以下の日程で開催されました。夜6時から開かれ、9時ぐらいまで開かれました。

10月19日 白河市白坂 泉岡集会所
10月20日 白河市大信町 大信農村環境改善センター
10月21日 白河市泉田 小田川行政センター

内容

1)低線量放射線の生物への影響と食の重要性 宇野賀津子(ルイ・パストゥール医学研究センター)
2)放射線と環境汚染、その除去方法 佐瀬卓也(徳島大)
3)地区周辺の放射線測定結果から 木村吉秀(阪大)、永井滋一(三重大)
4)放射線と医学 長谷部光泉(東邦大、放射線科)
5)質問にお答えします! Q&A
6)個別相談(希望者)

我々チームの特徴はなんといっても、単に講演をするだけでなく、この学習会に先立って、事前に地区を回り、車内および学校や集会所などでは降りて特に念入りに放射線の計測をしていることです。
測定された空間線量は0.1- 0.7uSv/h程度、学校のグランドは0.2−0.5 μSv/hの範囲にあり、特にグランドの除染効果が現れていることを、計測時に私達は実感していました。校庭の汚染土は運動場の中央に埋めたとのこと。
現在の状況は、子供たちにとって一番放射線の低いところはグランドともいえ、しいていえば、おおいにグランドで遊ぶのがいいということですね、となりました。
このことは講演するものの確信となりました。

学習会でも計測チームは、実際に測定した結果を報告。グーグルマップの上に、表示される計測値、小学校の校庭や、雨樋の下のホットスポットなど、実際の航空写真の上に、数字が表示されました。
さらに2日目には永井先生の手により、プログラムは進化して、写真も組み込めるようになり、放射線量の高い位置の写真も同じ画面に表示されるようになりました。住民の方々にとっては身近な場所だけに、納得という様子でした。最近では、サーべイメーターですでに測定されている地域も多く、ホットスポットについてもかなり詳細に把握されていました。また、今回の計測で、ホットスポットというわれるところの特性が、かなり明らかになってきました。まさに雨が集まって流れ落ちるところです。1-8 μSv/hといった数字でした。
除染の専門家の徳島大佐瀬先生は、初期は全体グレイであったところから、最近はパンダ状にかわってきていると説明されました。従って、ホットスポットというところを、いかにそっと取り除くかが、廃棄物を少なくして、放射線量を低下させるために必要かということでした。実際サーベイメーターを30センチほど離すと、数字は大きくさがるので、本当にスポット的に高いところがあることがわかりました。そのためには高圧洗浄機などよりは、デッキブラシか、カナぶらしでこすって少量の水で洗い、廃液は吸い取る。また、ホットスポットを形成している、落ち葉や砂なども、移植ごてで最小限の範囲でとって、ちょっと丈夫なビニール袋にいれ少し掘った穴に入れ、子供や動物が散らかさないよう、上から5~10cmも土をかければ(これで厳重保管ということになる)かなりの除染効果があがるとのことでした。もし、放射性汚染物を収集するということになれば、そのとき出せばいいとの事でした。高圧洗浄より廃棄物も少なく、周辺にまきちらさない家庭でできる方法として、現実的対応だと思いました(佐瀬先生には、シミ取りの要領ですよと言われました)。実際高圧洗浄は、廃液が多量に出て、隣人とのトラブルの原因にもなっているとのことでした。避難圏周辺の高線量のところでは、方法も異なってくるでしょうが、この方法は、東京辺りでも気になる場所があれば、誰でも出来る方法として役立つやり方だと思いました。

講演会では、宇野は「低線量放射線の生物への影響と食の重要性」ということでこれまでお話してきたように、低線量放射線の影響のかなりの部分は活性酸素によるものであること、がん化を抑制する何段階もの生体の防御システムを紹介しました。そしてがん化のリスクは、今後の生き方しだいで変わること、その際、食、特に抗酸化作用のある野菜をしっかり食べる事はとても重要なことをお話しました。
また福島出身の佐瀬先生は、福島の空気と水はもう大丈夫なこと、外干しも大丈夫なことを具体的データでもって説明されました。また、除染の方法も、アスファルトでは0.3mm位までしか放射能は検出されないので、大型重機でアスファルトをはがすような方法は汚染物の拡大に繋がること、むしろデッキブラシで表面をこそげるような方法の方が現実的であることを示されました。また計測の時に見つかった雨樋の下のようなホットスポットについても同様の方法の除染が有効であることをお話されました。
佐瀬先生のお話は、非常に具体的であり、家庭でも出来る方法ということで、多くの方が納得された様子でした。また長谷部先生は放射線科の医師として、御自身のお仕事を紹介され、放射線医学の進展が医療に大きく貢献したことを紹介されました。多分自分が一番放射線を浴びているといいつつ。

今回は、チームリーダーの志水、越川先生(阪大)、放射線計測の木村先生(阪大)、長井先生(三重大)、佐瀬先生(徳島大)、長谷部先生(東邦大、放射線科)というすごいチームでいきました。昼に測った放射線の値がグーグルマップに表示されるという方式は、住民の方にもとても身近なものと思っていただいたようです。阪大の先生方の作られた計測システムです。

blog91-7ともかく、始まる前は緊張した面持ちの方々が、終わる事には皆様ニコニコして帰っていかれて、よかったなと思いました。中には、少しパニックに陥っているかたもおられたのですが、講演会のあとも個別相談で、長谷部先生とはなされたのち、私の方にこられて、子供の肥満も返ってよくないのですねと言われました。
子供にもっと野菜を食べて、これからは外でも遊ぼうと言っておられました。でもこられたときよりは、少し微笑みもみられるようになって、帰られました。こういうのをみていると、本当に、チームで行ってよかったと思いました。もちろん、これは白河という、福島県内では比較的放射線量の低い目だったところだからだったかもしれません。
住民の方々には地区ごとにかなりサーベイメーターが行き渡っていて、幼稚園では先生が毎日測られて掲示されてもいました。時とともに、ニーズは異なってきますが、その時々に応じた適切な情報発信が科学者からなされるべきだと思いました。大きな立場での方向性と、今回のような個別対応のようなきめ細かい活動の両面が必要と感じました。

もう一つとても印象に残ったのは、行く先々の学校で、子供達が、皆、一様に見知らぬ私たちに、元気な挨拶をしてくれたことです。にこっと笑って、「こんにちは」と皆が言ってくれました。都会では挨拶する子供が減っているだけに、子供の明るさが印象に残りました。

改めて、このような計測に参加して、今回の事故がとても大変なものであると言うことを実感しました。校庭の除染は出来ても、その周囲の山はとても出来ません。雨降る毎に少しずつですが、校庭にも流れ込んできます。
でも一方で、山々の木々が大量の放射線を受け止めてくれたとも考えられます。福島の方々はこれから先まだまだ、放射線と向き合って生きて往かねばならないと思いました。多分、白河あたりの放射線量は、健康への影響もあったとしても、わずかでしょう。むしろその何倍も、風評やストレスによる被害の方が大きいかも知れません。問題点は問題点として伝え、解決可能な部分は順次解決していくことで、皆様に前向きになっていただくことが必要と思いました。学習会に参加された人は、かなりの方がそうであり、また学習会を通じてそうなったと思いました。

学習会が終わると、講師一同脱兎のごとく会場をあとにしました。たいていは最後まで質問攻めに会っている佐瀬先生はあとに残して。というのはホテルのラストオーダーが9時半で、この時間を過ぎると食事が出来なくなるおそれがあったからです。(実際前回来たときの初日は、晩ご飯が食べられなかったとのことでした。)9時半ぎりぎりに手当たり次第にともかくラストオーダーをして、ほっと一息という状態でした。時には、あれもこれも売り切れといわれつつ。

私自身は、その現場での活動の一翼を担えたこと、本当によい勉強をさせていただけたと思っています。志水先生が、ぼくの功績は、このチームに佐瀬先生と宇野を引き込んだこと、と言われました。3.11以前なら考えもしなかった関係者の組み合わせに、チームの一員となったものそれぞれが、その役割をかみしめていました。

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