2017年07月24日

角山先生の親子理科実験教室(ブログ その109)

角山先生の魅力 みえないものをどうしてみるの?

1.実験教室の場所が変更!

いつもの場所(セミナーハウス)ではなく、放射性同位元素総合センター教育訓練棟講義室です(変更は講座案内にも出ていますのでご覧ください。)

ここは、角山先生たちが授業をしたり、講習会を開いたり放射線管理者のための講習等を開いているところです。そこの様子は、以前にブログにも書きましたが、いろいろな測定器や展示もあって、学べることがたくさんあります。この場所で、いろいろな行事(大人のための科学教室京都光華中学校高等学校 SPP企画連携授業 等)で既に使わせていただいています。

まだ定員に達しておりませんので、今からでも遅くありません。この機会に一度、京都大学医学部のコーナーにある放射性同位元素総合センターを見学も兼ねて来られると、とてもいい体験になると思います。

角山先生には、大人のための科学教室では放射線を目で見る道具”霧箱”を作る指導をしていただきましたが、今回は耳で聴くGM管というのに挑戦です!

私たちのまわりからはたくさんの放射線が飛んできています。「目に見えなからわからない」というけれど、放射線を目で見る、耳で聞く、そんなことできるのでしょうか?

自然の環境の中で暮らす私たちにとって、こんなことを考えたり、自ら工夫した経験をもつことは、私たちが自然を見る目を変えてくれます。人間は、自分の目や耳などで直接感覚で味わうほかに、いろいろな工夫をして遠くのものを見たり、目に見えない小さなものを見たりしてきました。それが顕微鏡や望遠鏡だったわけですね。

そうか、こんな風にして、私たちは、私たちの世界を広げてきたのだ、とわかるのはとても楽しいですよ。

2.見えないものを見たり聞いたりする!

「どうして目に見えないものを見ることができるのか」「どうして聞こえないものを聞くことができるのか」

 みなさん、そんなことを考えてみたことがあるでしょうか?

きっとあると思います。その道具を、今度は自分で作ってみて、そして見たり聞いたりすることは感激ですね。これこそ、今まで見たり聞いたりすることをしっかり学んで観察してきた子供たちにとって、新しい一歩を踏み出すことになるのです。科学とは、こうして見えないものを「可視化」することで、科学の妙味が一層大きくなり、好奇心をそそることになります。

放射線もまた、自然の環境の中で私たちが接しているものなのです。特殊なところにあるものではありません。宇宙から地球の中から、そして私たちの体の中からも出ています。

放射線のような、人間の感覚では感知できないものを感知するにはどうしたらいいのでしょう。感知できるには、どうしても、音にしたり、色を付けたりする必要があります。そのためには、放射線を目に見える光に変えたり、音に変えたりしなくてはなりません。じゃあ、どうして変えるのでしょう。それは、放射線の性質をよく知って、うまく性質を利用しないといけませんね。そのためには、自然の仕組みの中から学ばなければなりません。

放射線の体験する方法としては、目に見えるようにする簡単な道具がしよく使われています。それが霧箱です。ウイルソンは、この原理を、ビールを飲んでいる時見つけたそうです。ビールにはいっぱい二酸化炭素がぎゅうぎゅうに詰まっていて、ちょっと刺激を与えると泡が周りにできます。これを見ていたウイルソンは、「これだ」と思ったそうです。空に飛行機が飛んでいる時、あまり遠くで飛行機は見えないけれど、飛行機の通った後に「飛行雲」が見えることがあります。あれも、空に水蒸気がいっぱい詰まっていてちょっと刺激を与えると水滴になって光を反射するからですね。この原理をうまく利用して、そっと見えないように走ったつもりなのに、跡を残すことになるのですね。この霧箱づくりは、昨年、当あいんしゅたいんでも、大人の科学教室で、挑戦しました。その時の指導は京都大学・環境安全保健機構・放射性同位元素総合センター(RIセンター)におられる先生方でした。戸崎先生と角山先生にはじめてお話を聞きに行ったときは、RIセンターができたいきさつも聞かせていただき、勉強になりました。

3.角山先生の魅力

角山先生は、若くてとても優しい先生です。初めてお会いしたのは1年ほど前だったでしょうか。もっとも印象に残っているのは、その頃角山先生がノートルダム小学校で講演されることを聞いて、理学部学生の間浦君、医学部の水野君と一緒に見学に行った時でした。

「どうしてそんなに子供に分かるように話ができるのだろう」

私は角山先生の優しいまなざしとその語り口のうまさに、感銘を受けました。調べてみると、角山先生は、もともとプレゼンがうまいようで、日本放射線安全管理学会で優秀プレゼンテーション賞を受け表彰されています。

その時のお話は、「細胞レベルの放射線影響を調べるためのα線銃の開発」角山雄一氏(京都大学放射性同位元素総合センター)とあります。ご専門のお話ですね。とてもわかりやすく、しかも学問的にも明瞭にお話されることが分かります。それに加えて、子どもに話しかけるときの様子がとても楽しそうなのです。

だいたい大学の先生は、難しい言葉を使ったり、相手がどういう風に考えるかよりは、自分がどう考えているかが先立つ場合が多いのですが、角山先生は違います。だから、「僕は子供が好きでして」と言われると「なるほど」と思います。話す相手によって、言葉も話しかけ方も、こんな風に対応できる人はあまりないでしょう。

これに感心してしまったので、その後、いろいろなところで、授業をお願いしました。女子高校生への授業では、アニメキャラの何とかちゃんが出てきて話をひきつけたりなさるので、私などは「え?それなに?」って感じでした。

そんな角山先生は、大人のための科学教室(2012年第2回講座)でも、霧箱を作って放射線の通った後にみえる軌跡が見せていただきましたが、この時も、いろいろな測定器(放射線を測るのにいろいろなタイプの測定器を開発されています)をじかに見せてくださる、どの種類の放射線がどの測定器でどう測れるか、手にとるように教えてくださいました。例えば、昆布には、狩生鵜がたくさん含まれているので

放射線が出ていますが、これを自分で日常の生活の中にあるものを使ってうまく見せてくれます。何となく、今まで「こわい」としか思っていない人も、日常の中にある放射線の量を知ると、ほんとに怖い量とはどれくらいか、どういうときには、しっかり防護しなければならないか、分かるようになります。何も知らないと、なんでも怖いお思ってしまったり、なんでも安全だと思ってしまったりするのです。大切なのは、きちんと知ることです。むやみやたらに怖いと思うと生きていけませんし、逆にあまりに無頓着だと危険にさらされても自分を守ることはできません。「知ることは、よりよく生きること」につながります。科学は、試験にパスするためにあるのではなく、本当に生きる力を与えてくれるためにあるのです。

4.日本の理科教育にかけていたもの

実をいうと、放射線のことは、小学校でも、中学校でも、高等学校でも、出てこないばかりか、今学校の先生になっておられる年代の方は、みんな素通りでどこでも勉強していないのです。どうしてなのでしょうね。

日本の科学教育で一番欠けているのが、「物は原子からできている」という考え方からいろいろな現象を説明してみようとする試みです。例えば、仮説実験授業というのが、古くから板倉聖宜先生はじめたくさんの熱心な先生たちによって、取り組まれて来ました。ここでは、どの授業も、原子論的な自然観で貫かれているのです。このことについて、板倉聖宣先生は次のように言っておられます。

「原子(粒子)とその運動の考え方は、それよりずっと以前から、科学研究のための導きの糸でした。」

そうなのです。科学者たちは、この自然界がすべて原子からできており、その原子のミクロなふるまいから、物質の性質が導かれることを、頭にイメージして、研究をすすめてきたのです。それはごく自然な発想で、自然認識の発展をはかるためにぜひ必要なのです。

外国では小学校で、原子の概念が出てきます。ところが、日本の学校では原子という言葉は小学校では使えないのです。でも、仮説実験授業の経験からすると、多くの子ども達が、分子原子のイメージを豊かにとらえているというのです。例えば、温度というわけのわからない概念は、「原子がどれだけ活発に動き回っているか」という度合いを表しています。こういう原理原則を知っていると、電子レンジで水分子が活発に動き回る様子を思い描くことができるのです。

仮説実験授業のグループには、『もしも、原子が見えたなら』という授業書があるそうです。今度、次の親子理科実験で、山田先生が紹介されると思います。そして理科実験教室のあと、続けて、午後には、山田先生に仮説実験授業の解説を、当あいんしゅたいんのサロン・ド・科学の散歩でじっくり聞くことにしています。(興味のある方は是非、申し込んで下さい)。

「空気の中にあんなにたくさんの気体がまじっているなんてびっくりした。窒素、酸素、水素、塩素、二酸化炭素、水の分子、アルゴン、ネオン、ヘリウム、硫黄、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素、などがふくまれているなんて。それも、みんな目に見えない気体。それらがすごいスピードで跳びまわっている姿を思い描いえみてください。

この原子論の導入がないと、「粒子が高速でぶっ飛んでいる」のが放射線だというイメージを持ちにくいですね。

さて、今度角山先生にお願いしたのは、親子理科実験教室で「放射線を音で聴く」です。放射線のエネルギーを音に変えるって?どういうことをするのでしょうね。子どもたちが豊かな想像力を持つことにつなげていってくださるのでは、と思っています。

ようやく日本でも、中学校理科の「エネルギー資源」に関わる項目で「放射線」の話が出てくることになりました。しかし、先生方も、初めてのこと、みんなで一緒に勉強する必要がありそうです。

5.放射線を正当に怖がる

今回、親子理科実験教室を行うにあたって、理学部の当該委員会から、問い合わせが来ました。放射線源としてランタンマントルを使うことについての安全性の確認でした。今、放射線については、みんな敏感になっています。どの程度が危ないのか、そういうけじめは、科学者だって、ちょっと自信がないような状態です。角山先生におききしたら、すぐに、添付のような回答

NPO法人あいんしゅたいん 親子理科実験教室(実施日11月10日 (日))における
「ランタンマントル」の使用について

 

本実験教室において工作予定のYY式ガイガーカウンター(空気GM)は、身近な材料で簡単に作成できる簡易の放射線検出器である。作成した検出器の作動を確認する目的で、キャンプ用品として市販されているランタン用マントルを放射線源として使用する予定である。

使用予定のマントル中には、天然鉱物より精製した放射性物質(トリウム系列の放射性同位元素)が含まれている。ランタン1枚当たりの放射線量は、マントル1cm以内で最大0.3~0.6μSv/h(日立アロカ社製γサーベイメータPDR-301による実測値、バックグラウンド値平均0.15μSv/hの環境下における測定)である。仮に実験中、常にマントル間近に滞在したとしても外部被ばく線量は自然放射線に加えて数μSv程度であり、国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告による一般公衆の被ばく限度(年1000μSv)を大きく下回る線量である。また、マントルから10cm付近ではバックグラウンドレベルである。よってセミナーハウス内の受講者座席付近等での空間線量率は実験中であっても自然放射線の範囲内である。さらにマントルの場合、放射性物質は繊維中に練りこまれており、飛散物質の吸引等による内部被ばくの恐れは無い。

このランタンマントルは小中高等の教育現場において良く知られている教材であり、例えば文部科学省委託事業・簡易放射線測定器「はかるくん」(http://hakarukun.go.jp/)の測定器レンタルの際、マントルは測定器と共に教材用放射線源(測定試料セット)として貸与される。従って、教育現場において使用実績が十分にある線源と言える。

尚、マントルの販売、所持または使用に関する法的規制は存在しない。このような市販製品に関しては、文部科学省による平成21年通達「ウラン又はトリウムを含む原材料、製品等の安全確保に関するガイドライン」があるのみである(ガイドラインであり、法的規制を意図するものではない)。

以上のことから、本実験教室におけるランタンマントルの使用については、安全上かつ法令上全く問題のないことをお知らせ申し上げます。

平成25年9月24日 

京都大学環境安全保健機構・放射性同位元素総合センター・助教
角山 雄一(第一種放射性取扱主任者

第一種放射性取扱主任者は、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」
 に基づく放射性物質の管理及び安全取扱いに関する国家資格

を作ってくださいました。

さすが、放射線安全管理をしっかりと押さえている先生です。まだまだ、危ないことと危なくないこととの境目をしっかり把握していない大人も含めて、一緒に勉強するいい機会ではないかと思います。

「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなか難しいことだと思われた。」という寺田寅彦の名言をしっかり身につけておられるのですね。

放射線に関する授業をしたことがない、受けたことがない先生も多い現状の中で、今、放射線教育を普及するための活動がいろいろなところで取り組まれています。角山先生は大忙しです。こういう機会に、大人も子供も、同じ気持ちで、放射線の姿に触れてほしいものと思っています。